「駅舎に泊まる」旅 Part7(日田駅編)

■はじめに
 駅舎内に宿泊するこのシリーズであるが、今回はJR九州の久大本線にある日田駅である。過去のシリーズでは、古くから民宿として営業しておりかなり有名な比羅夫駅や、リゾート用に改築されている高野下駅などに宿泊しており、これらは余所様のブログなどでも頻繁に取り上げられている。それに対して、日田駅に宿泊できるというのはあまり有名ではなく、紹介記事などもほとんどない。
 唯一気になるのが、ゲストハウスであり「ドミトリー」であるという点であるが、数少ない紹介記事や口コミを参考にすると、どうやら5人部屋と2人部屋(と共用部分)があり、予約をすればどちらかのスペースは専用で使用できそうである(しかし、現地に行って見るとこれも変更されているようであった)。予約サイトで決済し、6,000円也。
 ここに泊まるだけではネタ不足であるため、九州北部や山口県の観光スポットなどもいくつか巡ってくることにした。

【過去のシリーズ】
「駅舎に泊まる」旅 Part1(田川伊田駅編)
「駅舎に泊まる」旅 Part2(高野下駅編)
「駅舎に泊まる」旅 Part3(平岡駅編)+とにかく特急に乗るだけの旅 Part4(東海編)
「駅舎に泊まる」旅 Part4(比羅夫駅・阿仁前田温泉駅編)
「駅舎に泊まる」旅 Part5(天塩弥生駅編)
「駅舎に泊まる」旅 Part6(二俣本町駅編)


@日田駅付近にて

■2022.7.23
 日田に行くのに一番便利な空港は福岡空港であるが、それでは面白くないため、往路は長崎空港(特典航空券)を手配してある。
 7時30分の便で羽田を飛び立ち、長崎空港へは9時15分頃に到着した。歩いて対岸への橋を渡り、殉教関係の碑をいくつか見たりしながらやって来たのは、今年9月に開通する西九州新幹線の新大村駅である。建屋は完成しているようだが、駅前の整備はこれからのようであった。

@在来線の駅もできる

 開通するのは9月23日ということであるから、開業フィーバーが落ち着くであろう10月頃にでも乗りに来たいと思う。
 在来線の駅もあるがまだここからは乗れないため、炎天下の中を歩き続けて竹松駅へとやってきた。新大村駅とはすぐ近くの距離であり、駅前に集落もあることから「新幹線駅はここでもいいのでは」と思うが、駅周辺の土地の空き具合からしてここでは難しいのであろう。開業後は、ハウステンボス駅と南風崎(はえのさき)駅のような関係(すぐ近くに新駅が開業するため駅間が短い)になるのだろう。
 駅のホーム上には、河童の石像がある不思議な駅であった。

@新大村まですぐそこ

 10時58分発の快速「シーサイドライナー」に乗車。新しい車両になっているが、座席のほとんどがロングシートなのが玉に瑕である。
 しかし、せっかく海が奇麗な路線であるから、身をよじらせながら外を見続けた。しばらくして南風崎に到着したが、いつの間にか新しいホームができて列車の行き違いができるようになっていた。

@いつの間にか

 11時40分に到着した早岐(はいき)で下車。中途半端な乗り換え時間は駅前のスーパーで買い物をしたりして時間を潰し、12時39分発の鳥栖行に乗り込んだ。車内はほとんどがロングシートであったが、隅の一部分だけにクロスシートを発見。無事にそこを確保して鳥栖へと向かった。14時14分到着。
 さて、この駅でやるべきことは、夜用に焼麦(しゃおまい=シュウマイ)を買うことである。

@開業間近

 上記写真の左側に見えているのが駅弁屋であり、焼麦はここで買えるのだが、どうにも駅前が騒がしい。買う前にまず外に出てみると、偶然にも今日はお祭り(鳥栖山笠)の日であった。しかも、ちょうど山車が練り動くタイミングである。急ぐ旅でもないので、しばしそれを見学した。伝統的な山車に混ざって、SLがあったのは鳥栖ならでは、である。
 国内を旅行していると、このようにして地元のお祭りに予期せず出会うことがあったが、コロナになってからはすっかりなくなっていた。このような巡り合いが復活してきたのも、嬉しい限りである。

@交通の要所ですから

 祭りを見学してから駅に戻って焼麦を買い、各駅停車で久留米へと向かった。出発するとすぐ左手に、SL人吉号が煙を吐いているのが見えてきた。調べてみると、肥薩線が水害であのような状態になっているため、今は鳥栖から熊本までを走行しているようである(そして今日は運行日)。
 久留米で下車し、ここから先は久大本線へと乗り換える。

@もちろん1両

 直前に出発する「ゆふいんの森」を見送り、15時14分に久留米を出発した。
 ぼんやりと外を眺め続け、河童の形をした駅舎で有名な田主丸(たぬしまる)を過ぎ、夜明では観光列車「或る列車」と行き違い、そして今日の目的地である日田には16時16分に到着した。

@「HITA」にするためには誰か必要

 駅舎の写真を撮影してから、駅舎に戻って宿泊の手続きである。駅構内に2階へ上がる小さな入口と階段があり、そこを上がると営業中のカフェが見えてくる。宿泊手続きは、このカフェで行うこととなる。

@右手がカフェで奥が宿泊場所

 宿泊料金は事前にネットで支払い済みであるため、必要事項を紙に書いただけで部屋へと案内された。入るとすぐに共用スペースがあり、テーブルやソファーが置かれている。なお、テレビはない。

@入ってすぐの共用スペース

 奥側には就寝スペースがあり、左手にはベッドが2つ並んでいる。今日の寝床はここである。

@寝室

 その右手には2段ベッドが2つあり、冷蔵庫やポットもある。つまり、寝具数だけで判断すると、ここは6人部屋である。
 あれこれ勘案するに、以前はホーム側の部屋(ベッド)と広場側の部屋(2段ベッド等)であったのが、今は寝室として1つにまとめられ、以前はトレインビューであったそのホーム側の部屋は、今は事務室になっているようであった。確かに、以前はサイトでの予約可能数が2であったが、今は1である(そして500円値上がりしている)のはこれが理由であろう。

@今回は使用しない部分

 となると、ドミトリーというよりは、貸切タイプであるとも言える(断言はできないが、サイトでの予約可能数が1であることから判断)。
 洗面とトイレとシャワーは、それぞれ別途ある。なお、タオルはあるが、これは別料金であるため注意が必要である(どこかでこの情報を読んでいたため、タオルは持参している)。

@トイレ等

 6,000円も出せば駅前のビジネスホテルに泊まれてしまうが、スペースの広さとしてはあちらの3倍くらいはあるので、あれこれ考慮すると及第点であろうか。
 この時点でまだ16時台であるため、駅北部にある旧い町並み(豆田町)を散策し(偶然にもこちらもお祭り中)、スーパーに行ってあれこれ夜用の食材を買って部屋に戻った。
 さて、スーパーであれこれ買ったが、夜の一献のメインとなるのは焼麦である。さすがに駅弁であって、冷めたままでも美味しくいただけた。

@美味

 テレビがないためPCで動画を見ながら、焼麦などを頂く。駅の中なので時折列車が出発していくのがわかるが、上述した通りトレインビューの部屋は事務室になってしまっているため、そこに入ることはできない。しかし、細長い窓が1つあるので、そこから覗き込むことができた。

@大分行

■2022.7.24
 今日は本来であれば九州北部を観光して福岡空港から戻るつもりで特典航空券を手配していたが、予想外に月曜以降に中国地方での仕事が入った。よって今日は、観光後は山口県の湯田温泉に泊まることにしている。手配してしまった特典航空券は、それこそ西九州新幹線乗車時にでも使おうと思う。
 まずは日田彦山線からであるが、出発は7時55分であり、私の旅行にしては遅めである。ネットで調べてみると、近くに筑後軌道の遺構があるということで、そこまで朝の散歩をすることにした。

@日田から久留米まで走っていた

 その後は、三隈川沿いに散策にピッタリな遊歩道を見つけ、温泉街経由で宿へと戻った。
 荷物をまとめ、駅で青春18きっぷに押印してもらい、7時55分発の代替バスに乗り込んだ。大きな路線バスタイプの車両であるが、乗客は私1人だけである。

@咳をしても一人

 夜明までは久大本線に沿うように国道を走り、それ以降は日田彦山線に沿うようにして北上していった。このバスの終点である筑前岩屋には、8時43分に到着した。日田彦山線代行バスには過去にも2回ほど乗ったことがあるが、途中の駅で降りるのは初めてである。というのも、日田彦山線は鉄道としての復活を諦めてBRT(バス高速輸送システム)としての再開を目指すことになったため、その工事具合などを見るためである。

@まだまだ工事中(筑前岩屋駅周辺)

 さて、工事具合を見るのはすぐに終了であり、次の添田行のバスは10時22分発である。ということで、予定通り近くにある岩屋神社へ向かうことにした。
 山の中にあるので坂道が険しいのだろうなと想像していたが、想像以上の険しさであった。特に本殿へ行く最後の階段は、落ちたら大怪我しそうなくらいの急坂である(鳥取県の三朝にある投入堂のような雰囲気である)。しかし登り切ってから気付いたが、実は迂回して本殿に辿り着く坂道もあった。

@ここを上がる

 参拝後は汗だくになりながら下山し、筑前岩屋駅まで戻って来た。それでもまだ9時40分頃であり、バスが来るまでまだ時間はある。
 山間の集落であり、国道などのルートからも逸れている場所である。人里離れた地で一人のんびり・・・とはならず、自家用車がひっきりなしに駅にやってくる。というのも、この辺りの湧水が名水百選に選ばれているためである。やってくる人は、灯油などに使う18リットルの入れ物を何個も持ってきたりしており、中には焼酎の4リットルペットボトルを20個くらい持ってきている人もいた。

@大賑わい

 日田彦山線の代行バスは、ここ筑前岩屋から次の彦山までがボトルネックとなっている。峠を越える部分が並行する道路がないため、代行バスはいったん大行司まで戻り、そこから国道経由で迂回しているのである。BRTが開通すれば鉄道用のトンネルを通ることができるので、時間はかなり節約できるであろう。
 10時22分にやってきたバス(今度は小さいバス。先客は1人のみ)に乗り込んだ。左手には鉄道の路盤である「めがね橋」がいくつか見えるが、BRTに向けて工事中である。鉄道で復活できないのは残念であるが、再開したら乗りに来ようと思う。

@整備中

 添田には11時13分に到着して、ここで田川後藤寺行の鉄道に乗り換える。同駅を11時21分に出発して、田川後藤寺には11時35分に到着した。5分の接続で小倉行に乗り換え、小倉到着は12時33分。小倉発12時56分の列車で下関に向かい、下関発13時25分発の列車に乗って新山口には14時32分に到着。同駅発14時42分発の列車に乗って、山口には15時06分に到着した。湯田温泉に行く前に、軽く山口市観光である。
 まずは、歩いて山口博物館へと向かった。150円の常設展のみ見たが、結局気になるのは屋外にあるSLである。

@SLあり

 その後はさらに歩いて、一番の目的地である瑠璃光寺へと向かった。参拝して御朱印ももらったが、やはり一番印象的なのは公園にある五重塔であろう。

@定番

 その後は、ギリギリ開館時間内であった県政資料館を見学し、スーパーで食材を買ってから山口駅へ移動し、17時27分発の列車に乗って隣駅である湯田温泉に向かった。安ホテルに投宿。

■2022.7.25
 今日は仕事まで時間があるため、大津島へ行くことにしている。ホテルの無料朝食を頂いてからチェックアウトして、湯田温泉8時01分発の新山口行に乗り込んだ。

@湯田温泉駅前の白狐は巨大

 月曜日の朝なので通勤通学で大混雑と思いきや、ボックス席を確保できる程度であった。
 8時23分に到着した新山口で乗り換え、徳山には9時10分に到着した。駅から10分ほど歩いて、大津島へ行く船乗り場へと向かった。
 券売機で往復の切符を購入し、高速船に乗り込んだ。「月曜の朝だからガラガラだろう」と思っていたが、課外授業らしき高校生で船内は超満員であった。

@大津島到着時

 ここ大津島は、人間魚雷(海の特攻隊)として知られた回天の訓練基地があった場所である。到着後は歩いて、まずは回天記念館へと向かった。国の事情とはいえ、齢二十歳前後で自死に近いような形で命を落とさざるを得なかったという事実は、非常に残酷である。遺書などがいくつか展示されていたが、とても最後まで読む気にはなれなかった。

@乗りたくない

 小高い丘の上にある記念館を後にして港の反対側に歩くと、トンネルが見えてくる。これは訓練基地への鉄道があった場所である。廃線跡散策となれば、いつもであれば在りし日のことを想像しながら楽しく歩けるが、とてもそのような気にはなれない廃線跡である。
 レール跡もあるトンネルを抜けると、そこに待ち構えているのが訓練基地跡である。

@遺構

 散策を終えてからは、11時07分発の高速船で徳山に戻った。さて、そろそろ仕事モードになって、別の都市まで移動しなければならない。

■2022.7.27
 火曜の仕事を終えてからは防府に泊まったが、そもそもこの町に来ること自体が初めてのはずである。調べてみると、駅の近く防石鉄道のSLなどが展示されているということなので、ホテルをチェックアウトした後そこに向かってみた。

@小さい

 それを見てからは、山口宇部空港へと向かった。ただし、昼過ぎの便であるため時間が多少ある。ということで、常盤で降りて炎天下の中を歩き、ときわ公園にある石炭記念館へと訪問した。無料の割には、充実した展示内容であった。
 何より目を引くのが、屋外にあるSLである。今回の旅行で、都合4機目のSLである。

@SLを巡る旅になった

 

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