「駅舎に泊まる」旅 Part3(平岡駅編)+とにかく特急に乗るだけの旅 Part4(東海編)

■はじめに
 今回は、2つの旅テーマの融合である。まずは、宿泊施設として整備された駅舎に宿泊するシリーズの3回目として、飯田線の平岡駅に泊まることにしている。そして、未乗車の特急にただ乗るだけのシリーズの4回目として、「ワイドビューふじかわ」と「ワイドビュー伊那路」に乗ることにしている。特急に乗るシリーズは、これをもって最終回である。

 駅ホテルについてであるが、平岡駅はあまり有名ではない。というのも、複合施設(宿泊施設・売店・レストラン・温泉)のビルに、駅が併設されているだけだからである。「その考えからすると、グランヴィア大阪なども該当するのか」と言われると、そうはならない。あそこまで巨大なビルになると、「駅に泊まっている」という感覚が皆無だからである。同じような形態(田舎の複合施設が駅と融合)は、秋田内陸縦貫鉄道の阿仁前田温泉駅にも言えよう。これについても、このシリーズでそのうち泊まってみようと思う。
 いずれにせよ、建物の本来の目的は駅でないにしても、実際は駅に泊まるようなものである。せっかくであるから、今回は併設されているレストランも利用してこうと思う。

【過去のシリーズ】
「駅舎に泊まる」旅 Part1(田川伊田駅編)
「駅舎に泊まる」旅 Part2(高野下駅編)

 特急に乗るシリーズについては、JR東海の2つの特急に乗ることで終了となる。結局このシリーズは、ほとんどが「割引切符のないJR東海の特急」に乗るだけの旅であった。旅のスケールとしては小さいが(身延線も飯田線も、特急に乗る必要がないくらいの路線)、こんなテーマでもなければ乗ることもなかった特急であったのは確実である。

【過去のシリーズ】
とにかく特急に乗るだけの旅 Part1(山陰編)
とにかく特急に乗るだけの旅 Part2(近畿編)
とにかく特急に乗るだけの旅 Part3(中部編)+おまけでSLパレオエクスプレス


@平岡駅にて

■2022.3.12
 身延線との接続駅である富士までどうやって安く移動するかを考えたが、最終的には「三島まで新幹線格安回数券」「三島から富士まで青春18きっぷ」に落ち着いた。
 東京発6時57分の「こだま」で移動し、三島で在来線に乗り換え。沼津でさらに乗り換えて、8時27分に富士に到着した。
 まずは駅窓口に行き、甲府までの切符購入である。ローカル路線の特急であるから自由席で充分であろうということで、乗車直前の購入である(こうして普通に特急の切符を買うのは、私としては珍しい)。

@普通に買う

 「ふじかわ」自体は静岡が始発であり、ここ富士でスイッチバックをして身延線へと入っていく。最初は「新幹線で静岡まで行って乗り換え」も考えたが、「身延線だけ乗り通せばいいや」という結論に至ってこのような行程になった。
 しばしホームで待っていると、8時44分発予定の「ふじかわ1号」が入線してきた。

@やって来ました

 3両編成であり、先頭(スイッチバックする富士以降は最後尾)だけが指定席で、残り2両は自由席である。「どうせガラガラだろう」と思って2号車に入ると、意外にも乗車率は50%くらいもあった。なんとか、進行方向左手の窓側をキープした(富士以降は、左側の方が景色が良いため)。
 定刻に同駅を出発。今日は晴れていて富士山が良く見えているが、少し靄っている。

@富士山

 車両自体はハイデッカー仕様ではなく、普通の座席である。「これではワイドビューではないな」なんて思ったが、今日(3月12日)のJRダイヤ改正に伴い、JR東海の特急からは「ワイドビュー」の言葉がすべて外されたという。
 富士宮出発以降は路盤の坂もきつくなり、左右に曲がっていくため車輪も軋んでいる。速度も、特急とは言い難い鈍足である。
 9時38分、観光で何度か訪れたことがある身延に到着した。反対方面の「ふじかわ」と行き違う。

@あちらはガラガラ

 9時39分、同駅を出発した。
 さて、このシリーズ(特急に乗るシリーズ)は、「出発してしまえば、もう過去に何度も乗った路線」ということで、特にやることがない。いつもは停車している各駅を通過するのは爽快であるが、手持無沙汰であり、このシリーズでは「駅弁と酒」を買うのが常である。ということで、実は富士駅で買おうと思っていたのだが、売店には名古屋駅でも買えるような普通の弁当(復刻盤であったが、中身は幕の内)しかなくて、食指が動かなかった。しかし、何もないのも寂しいので、静岡県に来るとつい買ってしまう「バリ勝男クン」などを買ってある。身延出発後は、それらで一献を始めることにした。

@こんな感じ

 しばらくすると、下部温泉に到着した。この温泉も泊まったことがあるが、「無人駅のため切符は車掌が回収します」というアナウンスに驚いた。そこそこの観光地というイメージがあったが、下車する人も少なく、駅前の雰囲気も廃れ気味である。そのうち、またに来ようと思う。
 同駅出発後もひたすら呑み続け、甲府に近づくにつれて平凡な景色になっていき、定刻の10時31分に甲府に到着した。
 さて、ここで乗り換え時間が28分ある。富士で駅弁を買えなかったため、再チャレンジである。

@個人的には左側の味が勝利

 ベンチで弁当を平らげてから、10時58分の各駅停車に乗り込んだ。岡谷到着は5分ほど遅れたが、12時29分発の列車(天竜峡行)は接続を取ってくれていた。
 2分ほど遅れて、岡谷を出発した。辰野からは飯田線となるが、正直なところ、辰野から飯田を過ぎて天竜峡までは平凡な景色である。この区間こそ特急でさっと通り抜けたいが、飯田から辰野までの区間の優等列車は国鉄時代に無くなって久しいので、仕方がない。

@遠くの景色を楽しむ

 14時41分、飯田に到着した。ここで下車し、買い物等(詳細後述)をすることにしている。しかし、次の列車まで1時間40分もあるため、SLがあるという情報を元にそちらに歩いて行った。
 その近くに行くと、「動物園」という標識があった。しかも無料である。どうせ時間も余っているので、まずはそこに入ってみた。

@かわええ

 無料の割には、あれこれと多種類の動物がいた。園内にはミニSL(子供用)も走っており、ある意味鐡ネタである。
 30分以上も動物園で過ごしてから、本来の目的であるSLを探した。すぐに見つけることができたが、野晒しであるためかなり塗装も剥げている状態であった。

@ボロボロ

 スーパーで食材を買ってから駅に戻り、16時19分発の豊橋行に乗り込んだ。
 天竜峡を過ぎると、景色が一変する。以前途中下車したことがある田本などに停車していき、17時25分に今日の宿でもある平岡に到着した。
 無人駅となっているため駅員はいないが、改札であった場所を出て数歩でフロントである。1階がレストラン、2階が売店と改札とフロント、3階が宿泊施設、4階が大浴場となっている。

@徒歩すぐ

 料金はネットで支払い済みであるため必要事項の記入だけ済ませ、早速部屋に入った。素泊りで5,900円であるが、洋室であるとシングルユースで1,000円高くなってしまうため、今日は和室である。部屋にはすでに布団が敷かれている状態であるが、テレビや湯呑、浴衣などの最低限の品は揃っている。冷蔵庫はないが、廊下に共用冷蔵庫とレンジがあるので充分である。

@今日の部屋

 構内の踏切の音がしたので障子を開けてみると、トレインビューの部屋であった。ベランダに出られるようになっていたので、外に出て撮影である。

@早速

 1階にあるレストランに行く前に、まずは風呂である。「いわゆる大浴場的なものかな」と思っていたが、肌触りに滑りが感じられる泉質であり、本当の温泉であった。これはポイントが高い。
 宿泊者はもちろん無料で入ることができるが、日帰り入浴でも300円しかしないため、地元民で混雑していた。

@温泉(翌朝撮影)

 風呂も終わってやっとレストランに、となる前に、まずは部屋で一献である。というのも、飯田のスーパーで「おたぐり」(馬のモツ煮込み)を買ってあるからである。以前にも買ったことがある品であり、それを狙って飯田で途中下車していたのである(しかし、件のスーパーは来月末で閉店とのこと…)。
 廊下にあったレンジで温めて食したが、やはり美味い。モツ(しかも馬)であるのに臭みがないし、沖縄のヤギ肉のように大量の薬味で煮たりしておらず、あっさりした塩味である。
(註:私は羊肉等でも普通に食べられるタイプなので、香りに敏感な人は要注意です)

@あっさり味

 馬モツと焼酎を平らげ、19時過ぎに1階にあるレストランに向かった。
 まずはツマミであるが、馬刺しにしようと思っていたところ、メニューの部分が塗りつぶされている。仕方ないので、ジンギス(ジンギスカン)とやまめの塩焼きにした。この辺りはジンギスカンも有名であるし、やまめについては言うまでもない。
 しばらくして、まずはジンギスがやって来た。

@日本酒でいただく

 やまめの塩焼きは、メニューにも「30〜40分かかります」とある通り、時間がかかるようである。テレビを見ながら日本酒をちまちまと呑み続け、本当に30分以上もかかって提供された。

@言うまでもない味

 締めの一品であるが、「清流丼」という品を追加注文してある。やまめの唐揚げに甘辛たれを絡めたものである。

@一匹そのまま

 唐揚げであるので、頭から頂けた。少し余らせておいたジンギスと共に白飯を美味しくいただき、その後は部屋に戻って寝るだけである。

■2022.3.13
 6時から開いている温泉に入ってからチェックアウトをして、直結している駅ホームへと向かった。今日の予定であるが、当初は飯田まで戻って「伊那路」の始発から乗ることにしていたが、そこまで拘る必要もないと思いを改め、秘境駅訪問+廃線跡散策をして、平岡から「伊那路」に乗ることにしている。
 2両編成の列車に乗り込み、車掌に青春18きっぷの日付を記入してもらった。6時48分に出発したが、乗客は私1人だけである。
 しばし乗車し、中井侍で下車した。まずは秘境駅探索である(一番の秘境である小和田駅は前回訪問済み。その時の様子や、平岡駅で買った「ていざなす」については、拙文「【petit-tetu】なんとなく、飯田線」参照)。

@秘境駅

 ここは、1日の乗降客が数人しかいない駅である。駅のすぐ横に民家が1軒あるが、それ以外の民家までは、急坂をかなり歩いて行かなければならない。
 必死になって歩き続けると、茶畑と民家が現れ始めた。曲がりくねる道路をずっと登って行くと観音様が拝めるようであるが、今日はそこまで行っている時間がない。途中まで登り、景色を眺めて終了である。

@美しい茶畑

 駅まで降り、ベンチにあった「駅ノート」(来訪者が自由に書くノート)を見てみる。今日は私もこれから2時間以上歩く予定であるが、それ以上に歩いている人がいる(平岡から中井侍や、中井侍から小和田など。後者は見た目上は1駅だけであるが、小和田駅がとんでもない場所にあるため、4〜5時間はかかるはずである)。
 7時38分にやってきた飯田行に乗り込み、鶯巣で下車した。ここから平岡方面に歩き、廃線跡を巡ることにしている。
 しばらくすると、鉄橋が2つ並んでいる場所と遭遇する。右側が現役の鉄橋で、左側が廃線跡である。

@左はコンクリの土台もボロボロ

 その後ものんびりと道路を歩き続け、鉄橋が見えるとそれを写真に収め続けた。現在の路盤よりも川に近いところに廃線跡はあり、もし古いままであればより奇麗な景色が見られたかもしれないが、今以上に鈍足であったことだろう。
 45分ほど歩いて平岡駅まで戻り、そのまま平岡の商店街を抜けて、2004年に開通したという新しいトンネルも抜けてさらに40分ほど歩いた。目的は、旧路盤跡に作られた橋である。
 誰も歩いていない旧道を経て、やっとたどり着いた。場所としては廃線跡であるが、橋自体は歩行者用に新たに造られている。

@渡る人皆無

 高所恐怖症の気が若干あるので渡りたくはないが、せっかくなので対岸まで渡ってみた。周囲に民家もないため生活道路でもなく、ハイキングなどにも使われていなさそうである。橋自体の目的は不明であるが、廃線跡にこういう施設が残っているのは嬉しい。
 橋を渡り終わると、トンネルの連続である。特に整備されているわけでもなく、自然そのままである。

@トンネル跡

 その後はまた橋を渡って戻り、平岡の集落まで帰って行った。その時点でまだ10時前であり、「伊那路」の出発まで時間があったので、街中を適当に散策して小さな社や番所跡を見学したりした。
 気になったのは、この「自転車のりば」の標識であろうか。飯田線沿線を徒歩で探索している人数人が山中で発見してそれをブログに掲載しているが、私は街中で発見してしまった。謎である。

@どこで乗ってもいいと思いますが

 駅に向かい、売店や自販機であれこれ買い(詳細後述)、ホームへと向かった。しばらくして、10時42分発の特急「伊那路」が入線してきた。

@今日の本来の目的

 先頭の3号車(自由席)に乗り込んだが、予想通りガラガラであった(先客は5人程度)。
 定刻に平岡を出発。さて、昨日と同様に、出発してしまえば「これまで何度も乗って来た飯田線」であり、やることがない。平岡駅の自販機で酒が売っているのは前日に確認していたが、問題はツマミである。しかし、今日の10時過ぎに売店を覗いてみたところ、手作り総菜が何種類も売っているではないか。ということで、唐揚げとスパゲティサラダを買ってある。

@夜用にジンギスも

 出発後は、通り過ぎていく秘境駅や川の景色を見ながら、それらを頂くだけである。
 しばらくして車掌が来たので、切符を買わなければならない。というのも、平岡駅は無人駅であるだけでなく、券売機すらないのである(さらに、乗車証明書を打ち出す機械すらない)。前もって「えきねっと」で買って発券しても良かったのだが、そうすると急な予定変更に対応できないため、仕方なくペラペラの車内補充券である。

@仕方ない

 昨日の飯田線は「特急らしくない」速度であったが(特に山間部)、今日は意外にも快走している。トンネルの多い新しい路盤が多いことも影響しているのであろうか(「新しい」というほど最近の建設ではないが)。
 総菜と酒3本を平らげ、少しウトウトとし、ふと目を覚ますと平凡な景色となっていて、もう豊川の手前であった。豊橋には定刻の12時31分に到着して、ミッション終了である。
 この後は青春18きっぷでひたすら東に向かうだけなので、旅行記にしなくてもいいであろう。車中では、この旅行記をひたすら仕上げるだけである。

@平岡の街中で見かけた猫

 

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