とにかく特急に乗るだけの旅 Part2(近畿編)

■はじめに
 これまで乗ったことがない特急に「ただ乗るだけ」というこのシリーズであるが、今回は「くろしお」と「(ワイドビュー)南紀」である。要するに、紀勢本線は各駅停車の思い出ばかり、なのである。
 切符についてあれこれ探したところ、「くろしお」についてはJR西日本の「おとなび」専用切符で安く手配することができた。前回もJR西日本の「どこでもきっぷ」である程度安く買えたため、要するにこのシリーズで「乗り放題切符や安い切符がなくて各駅停車の思い出ばかり」であったのは、実はJR東海だけであった、ということになる。
 いずれにせよ、旅程は以下となった。「南紀」で名古屋に到着してからそのまま帰るのは面白くないため、大井川鉄道を追加してみることにした。

初日:飛行機で伊丹に飛び、新大阪から紀伊勝浦へ(くろしお)。
2日目:紀伊勝浦から名古屋へ行き(南紀)、新幹線と各駅停車で金谷まで行き、大井川鉄道とバスを乗り継いで寸又峡温泉へ。
3日目:大井川鉄道で井川まで行き、鉄道と路線バスを組み合わせながら金谷まで戻り、各駅停車で首都圏へ。

@千頭駅にて

【過去のシリーズ】
とにかく特急に乗るだけの旅 Part1(山陰編)

■2022.1.3
 7時25分の便で羽田から伊丹に飛んだが、これは値段優先(新幹線より安く)で選んだだけであり、今日は12時15分に新大阪を出発する「くろしお11号」を押さえているため、時間が余り過ぎている。よって、しばしカードラウンジで時間調整をしてから、徒歩で蛍池駅に行き、阪急で三国まで移動して、そこから歩いて新大阪駅に向かった。伊丹空港から新大阪駅に行く人はある程度いるであろうが、こんなアクセスをする人は皆無であろう。
 駅に着いたら、予約済みの切符の入手である。JR西日本の券売機を探して(JR東海の券売機では互換性がないため)、無事に発券した。

@安切符

 駅構内の店舗で車内用の食材などをあれこれ買い、12時過ぎにホームへと降りて行った。出発の4分前くらいになって、やっと新宮行の「くろしお」が入線してきた。今日は9両編成であり、後ろの3両は途中の白浜で切り離される。

@残念ながらパンダ柄ではない

 定刻の12時15分、新大阪を出発した。
 さて、このシリーズはただ単に特急に乗るだけであり、特にすることもない。ということで、まずは新大阪駅で買った総菜をツマミにして、JR西日本限定の変わったビールなどで一献である。

@早速

 この特急「くろしお」であるが、東海道本線から大阪環状線に乗り入れるルートが限られるため、梅田貨物線を経由する(大阪は通らない)。私はJRや第三セクター鉄道(旧国鉄)の路線はすべて乗車済みであるが、このような例外はいくつか手つかずであった。それをクリアするためにわざわざ訪問しようとは思わないが、いずれにせよこれで梅田貨物線はクリアである。

@大阪駅は遠くに(手前は梅田貨物線の地下化工事中)

 貨物線も通り過ぎ、西九条からはいつも通りの景色となっていった。しかし、各駅をすべて通過していくのは心地良い。
 12時32分、天王寺を出発した。阪和線であるが、大昔は私鉄であった(国鉄に買収された)ため天王寺では線路が繋がっておらず、よって私の子どもの時分は「くろしお」=天王寺発着であった。今は線路が繋がっているので、関空快速等と同様に直通である。
 さて、総菜に続いては、新大阪で買った弁当である。

@豪華に

 駅弁にしようかと思ったが、大阪名物というのが思い浮かばず(しかも駅弁売り場が大混雑であったので)、以前から気になっていた神戸牛の店のステーキ弁当である。
 阪和線を走り終え、13時18分に和歌山を出発した。海南を過ぎると、右手に海も見えてくる。大きな製油所や蜜柑畑などもあり、和歌山っぽい景色も続いて行った。各駅の反対側のホーム(大阪方面行)は、帰省客らしき人で賑わっているようであった。

@製油所

 御坊を出発して15分くらいすると(14時15分頃)、右手に海が広がって車内アナウンスもあった。雄大な海であるが、超絶逆光であるため撮影はままならず。
 さすがに特急だけあって、停車駅は少ない。梅まつりの季節に2回来たことのある南部(みなべ)なども、通過してしまう。
 14時41分、白浜に到着した。ここで後ろ3両を切り離すが、停車時間は2分しかないためホームに降りることはやめておくことにした。

@係留されている車両を車内から撮影

 14時43分に白浜を出発。これ以降の区間は、かなり久々の乗車である。カーブも多くなり、スピードも遅くなった感じがする。
 15時00分、紀伊日置で運転停車。パンダ柄の特急「くろしお」と行き違った。
 周参見や串本を停車していくと、進行方向も東側になったため、逆光なしで海も見えるようになった。特に、太地付近の海は奇麗であった。

@イルカで有名

 新大阪を出発してからちょうど4時間、16時15分に紀伊勝浦に到着した。この特急は新宮まで行くが、明日に乗車する「南紀」が紀伊勝浦始発であるため、ここで下車することにしている。
 街中を適当に散策してから、安民宿に投宿した。正月三が日で休みの店舗が多く、地元食材(刺身など)が買えないのは残念であるが、仕方ない。

■2022.1.4
 民宿をチェックアウトして、海際にある朝8時開店の物産館に寄ったりしてから駅に向かった。今日は8時55分発の特急「南紀4」号からであるが、指定席は取っておらず、自由席である。

@今日の切符

 年始のUターンラッシュの時期であるが、始発である紀伊勝浦から満席にはならないであろう(だから自由席で充分)、との目論見である。JR東海には格安切符の設定がないため、「せめてもの抵抗」として、新幹線との乗継割引である。
 8時45分頃、新宮方面より列車が入線してきた。JR東海のウェブサイトでは2両編成となっていたが、今日は4両編成である。

@ワイドビュー車両

 定刻の8時55分、紀伊勝浦を出発した。帰省の時期ということもあり、出発時点で自由席も1/4くらいは埋まっていた。
 続いての停車駅は新宮であるが、ここでかなりの乗客が乗ってきて、自由席の乗車率はすでに9割程度である。
 なお、上記で「自由席で充分」と書いたが、実は「自由席の方が良い」とも言える。というのも、この車両の先頭は前方が見渡せるようになっており、名古屋行の場合は先頭が自由席になるため、最前列に座ることができればずっと前方の景色を眺められるからである。

@海も見える

 熊野市には9時32分に到着した。ここでも乗客が増え、ちらほらとデッキに立つ人も現れ始めた。
 その先の新鹿(あたしか)では、各駅停車と行き違った。2両編成のあちらをよく見てみると、なんとロングシートである(せっかくの紀勢本線もロングシートでは台無し)。色々な意味で、「これからは特急かな」という思いである。
 リアス式海岸であるため、数多くのトンネル+それらを抜けると小集落、というパターンである。先頭にいるだけに、それらが余計に面白い。

@側面の景色も奇麗

 そのうちリアス式海岸も終わり、多気以降は普通の景色となっていった。
 なおこの時点で、6分ほど遅れていた(理由は、松坂付近の踏切で非常ボタンが押されたとのこと)。今日は名古屋で乗り継ぐ新幹線(こだま)に乗れないとその後が面倒になってくるが、紀勢本線や伊勢鉄道は元々の運転密度が低いため、これ以上遅れることはないであろう。
 11時48分に津を出発してしばらくすると、伊勢鉄道に乗り入れて行った。高架は複線分あるが、線路は単線である。

@諸事情による

 1両のディーゼルカーが少しだけ走る伊勢鉄道であるが、中瀬古より先は立派な複線区間である。これにより、遅れがさらに増える心配は皆無である。
 新宮時点でかなり混んでいた車内であったが、松坂以降は近鉄が並走することもあり、それ以上の大混雑にはならなかった。

@待避線で各駅停車を追い抜く

 名古屋に近づくと、北陸地方に大雪を降らせている寒波の影響か、少し雨がパラついて、最終的には定刻からたったの2分遅れの12時43分に到着した。
 さて、旅のテーマに沿った内容はここまでであるが、大井川鉄道を無視するわけにもいかないので、この後についても簡単に紹介しておきたい。

 13時08分の「こだま」に乗り、掛川へ。Uターンラッシュで東京方面への「のぞみ」は軒並み満席であるが、「こだま」の自由席はガラガラであった。
 掛川からは各駅停車で金谷へ。14時32分に到着し、隣接する大井川鉄道の駅舎で2日間有効のフリー切符を購入した。
 さて、次の列車の出発は15時08分である。それまで待っていても仕様がないので、歩いて新金谷駅に向かった。こちらの方が、転車台や旧型客車があるので、見所が多い。

@その一例

 各種旧型客車や転車台の上にあったSLなどを撮影してから、ホームへと向かった。
 大井川鉄道では、私鉄各社の「おさがり」車両を多数使用している。どれが来るのか待っていたところ、やって来たのは旧南海の「青ガエル」であった。

@タヌキと一緒に撮影

 15時14分に新金谷を出発。それにしても、のんびりとしたスピードである。
 16時26分に到着した終着の千頭で下車し、駅前に停まっていた寸又峡温泉行のバスに乗り込んだ。16時30分に出発し、山道を40分ほど走り続けて山間の温泉へ。民宿に投宿し、ぬるっとした温泉に浸かってから、夜は鹿鍋などを食べつつ酒を呑んだ。

■2022.1.5
 早朝、夜明けと同時に散策に出て、夢の吊橋へ。やはりここに来たら、これは外せないであろう。

@2回目の訪問

 吊橋までは楽な道であるが、その後の階段がかなり厳しい。しかし、登り切ったところに森林鉄道の車両があるため、それは見に行かなければならない。
 必死に展望台まで行き、森林鉄道の車両も撮影して、その後は車道を経由して宿に戻った。
 朝食と朝風呂を頂いてからチェックアウトをして、温泉街のバス停へ。ここにも、森林鉄道の車両が展示されている。

@鐡ネタ多し

 路線バスに乗り、9時11分に到着した奥泉駅前で下車した。ここからは、井川線の乗車である。
 しばし駅舎内で時間を潰してから、9時42分発の井川行に乗り込んだ。客車は5・6両あったようだが(未確認)、暖房が効いているのは先頭2両だけということだったので、そこに乗り込んだ。
 しばし走行し、次の駅「アプトいちしろ」では後方にアプト式の機関車が連結される。これは当然、見学タイムである。

@無事連結

 同駅を出発すると、鉄道とは思えない急勾配である。大げさな言い方をすれば、ケーブルカーのようであった(過去に2回ほど乗ったことがあるが、いつ経験しても新鮮である)。
 急勾配区間は次の長島ダムで終了。その後も奇麗な景色の中を走り続け、終着の井川には11時00分に到着した。ダムの展示館は冬季閉鎖であるため、適当にダム周辺を散策してから駅に戻った。

@天気は良い

 11時29分発の列車で折り返し、次の駅の閑蔵で下車した。というのも、このままこの列車に乗り続けると千頭到着は13時15分であるが、バスに乗り換えると12時20分に着いてしまうのである。こうすることで、1本早い列車に乗り換えることができ、その時間を観光に充てることができるのである(もちろん、「景色をもう一度楽しみたい」のであれば鉄道推奨であるが、私は以前に乗っているので、今日はバスを選択した)。
 バスで一気に千頭駅まで行き、到着後は駅周辺を適当に散策した。
 さて、次に乗る大井川本線である。旧近鉄の車両辺りを願っていたが、残念ながら旧東急であった。

@無念(ロングシート車両)

 同駅を、12時45分に出発した。このまま金谷まで行ってJRに乗り換えたのでは面白くないし、せっかくバスで時間を作った意味がない。ということで、途中の門出(かどで)で下車して、約1年ちょっと前に新たに開業した複合施設「KADODE OOIGAWA」に行って、展示されているSLの写真を撮ったり、お土産を買ったりして、そして後はひたすら帰るだけである。

@SLカレー2種と寸又峡温泉の素を購入

 

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