「駅舎に泊まる」旅 Part1(田川伊田駅編)

■はじめに
 さて、「大人鐡」シリーズ(食事付観光列車の旅)などのネタ切れも間際に迫り、またコロナ禍もあって海外旅行はまだまだ先であることを考慮して、新たな旅のテーマである。表題にある通り、「駅舎内に宿泊できる」駅を探して、そこに泊まることが目的である。なお、それだけでは写真数枚のネタになってしまうため、適度に他の鐡ネタを追加するようにしたい。
 これを書いてしまうとこの先の「ネタバレ」になってしまうが、旅行者にとって有名であるのは、北海道の函館本線・比羅夫駅にある「駅の宿ひらふ」であろう。同宿はプラットホームで行われるバーベキューでも有名であり、書籍等でもよく取り上げられている(実は、もう4月分の予約をしてある)。
 さらに有名であるのは、「東京ステーションホテル」であろう。東京駅の赤レンガ駅舎内にあるホテルであり、かなりの高級ホテルである。これについては、ラスボス的な感じで、このシリーズの最後の方で泊まろうかと思う。
 日本各地にある駅舎ホテルや駅舎宿を探してみると、「両手」までは行かないものの、「片手」以上はあるため、海外旅行が復活するまでの繋ぎとしては充分なネタ数である。
 第一番手として、田川伊田駅(JR九州及び平成筑豊鉄道)を選んだ。2016年にJR所有の駅舎が自治体に売却され、2019年の9月に駅舎内にホテルが開業。現在では、鉄板焼き屋やうどん屋、パン屋なども開業しているという。
 同ホテルに泊まって、おまけとして門司港駅舎内にあるレストランにも寄ってこようと思う。

@田川伊田駅にて(ホテルの部屋から)

■2022.2.5
 飛行機の便は値段優先で選び、今日の往路は昼前の福岡空港、明日の復路は夜の山口宇部空港である。
 11時05分の便で羽田から福岡に飛び、地下鉄で博多へ。篠栗線などを経由する列車に乗り(未だに「福北ゆたか線」と言われてもピンと来ない)、新飯塚からは、北九州を代表するボロローカル車両である。

@久々に

 1両編成のディーゼルカーに揺られながら、ぼた山やセメント工場などを見つつ、終着の田川後藤寺で2両編成の小倉行に乗り換えて、今日の目的地である田川伊田には15時27分に到着した。この駅にはもうJRの駅員はいないため、切符は下車時に車内の運賃箱に入れた。
 まだ時刻が早いため、駅ホテルには行かず、まずは観光である。歩行者用のトンネルを抜けて、駅の裏手に回っていった。

@トリックアートあり

 なぜこちら側に来たかというと、石炭・歴史博物館があるからである。かと言って、鉱業や石炭にそれほど興味があるわけではない。この手の博物館(石炭関係)であれば、ほぼ間違いなく鐡ネタがあると思われるからである。
 博物館の敷地に近づくと、もうすでに鐡ネタ(SL)の発見である。

@敢えて後方から撮影(貨車をメインで)

 博物館内に入り、400円を支払って見学した。それにしても、手掘り時代の労働条件の酷さは印象的であった(女性ですら上半身裸である。というか、女性が労働者であったこと自体が驚きである)。
 もちろん、その他の鐡ネタ収集も継続である。

@機関車

 博物館の見学を終えてからは、驚くほどの「シャッター商店街」を経由して(開いている店を探す方が困難であった。地方自治体は全国的に衰退しているが、ましてや炭鉱が拠り所の町では、仕方ないのかもしれない)、駅前の神社を参拝してから駅に戻って来た。
 駅舎自体は、自治体買収後に大幅に改築されているため、かなり新しい。

@今日の宿でもある

 待合室の横にパン屋があったようであるが、もう営業はしていないようである。1階には、グッズ等を売っている売店とうどん屋があるが、それらは営業中。売店には、なぜか「さくら」のヘッドマークが置いてあった。

@なぜ

 それはさておき、ホテルである。階段で2階に上がると、右手には大きな鉄板焼きレストランがあり、左手がホテルの入口である。

@手動ドア

 中に入り、チェックイン。格安料金(約4,000円弱)はネット決済してあるが、自治体の宿泊税200円だけ現金払いをした。
 さて、今日の部屋であるが、私は1人旅なので本来であればシングルベッドの部屋でいいのであるが、敢えて4人部屋にしてある。というのも、「寝台列車」をモチーフにしているという点に惹かれたためである。部屋内が「使用しないベッド」で埋め尽くされてしまうのが玉に瑕ではあるが。

@私が使うベッドは1つのみ

 寝台のスペースとしては、「解放A寝台の下段」よりも広いくらいである。テレビもあるし、電源もあるし、小さな金庫も付いている(ただし、机や冷蔵庫などの設備はない)。
 シャワーやトイレは、共同である。私の部屋からは、いずれも近い距離にあった。

@まだ新しい

 この時点でまだ17時過ぎであったため、再度街に繰り出した。高台に行って町の景色を見たりして、最後はスーパーで安食材(半額シール付き)をあれこれ買ったりして、例のシャッター商店街を経由して駅ホテルに戻った。
 もうやることもないので、18時過ぎから一献である。エンジン音がしたのでカーテンを開けてみると、行橋行のディーゼルカーが目の前に停まっていた。

@迫力あり

 夕食の一献を終えてからは、テレビをイヤホンで聴きつつ就寝。

■2022.2.6
 部屋内には机などのスペースがないため、カウンター付近にフリースペース(と小さなキッチン)が付いている。部屋ではイヤホン越しでしか音を聞けないテレビも、ここなら普通に聞くことができる。

@こういうスペースもあり

 なお、食事のない素泊りで予約していたのだが、チェックイン時に「簡単な飲み物とパン」をセルフで頂けるという案内があった。早朝の時点で、すでにパンが並べられていたので、有難く1セット頂くことにした。

@せっかくですから

 8時頃にホテルをチェックアウトして、8時11分発の小倉行に乗車。今日もぼた山などの景色を見ながら乗り続け、終点で乗り換えて、9時19分に門司港に到着した。
 門司港駅は、駅舎自体が重要文化財に指定されている。数年前に訪問した際は大幅な改装中であったが(それはそれで珍しいものを見ることができたが)、そのリフレッシュ作業も終了し、2019年にグランドオープンしている。

@有名な駅舎

 駅舎自体に泊まることはできないが、改装に伴って同駅に古くからあった「みかど食堂」が復活している。今日は、そこに行くことにしている。
 食堂(というか高級レストラン)の予約はしてあるが、営業開始は11時30分である。ということで、まずは九州鉄道記念館に向かった。もう2回ほど訪問済みであるが、正直なところ「暇つぶし」である。
 展示車両等が増えたという情報はないが、キハ07形が重要文化財に指定される(気動車としては初めて)ということが昨年末に決定したということで、まずは祝福である。

@おめでとうございます

 館内を一通り見終えた後は、門司港レトロにある無料展示館系をあれこれと見学。ほとんどは訪問済みの施設であったが、訪れたのはいずれもかなり前であり、意外に新鮮であった。
 なお、適当に歩いていたところ、市電の車両を発見した。記憶に間違いがなければ、これは初めての出会いである。

@市電

 11時25分頃、門司港駅2階にあるレストランへと向かった。すぐには中に入らず、見学できる貴賓室などから訪問した。なおこの貴賓室はレストランとしても使用できるが、特別料金が必要である。

@見るだけ

 早速レストラン内に入り、自席へ。案内されたのは、窓側の4人テーブルであった。
 メニューはネット予約時に選択済みであり、門司港らしく「焼きカレーと季節のスイーツセット」にしてある(税込3,080円)。お冷の後にサラダとスープが同時に出てきて、しばらくすると焼きカレーの登場である。

@熱々

 焼きカレーはずいぶん前に門司港駅付近の食堂で1回だけ食べただけであり、比較できるほどの経験はないが、さすがに値段が高いだけあって海鮮の量が多かったと思う(トータルの分量としては控えめな量であるが)。
 それがなくなると、スイーツ3種である。コーヒーと共に、美味しく頂いた。

@締めに

 観光と食事も終わり、この後は山口宇部空港まで移動するだけであるが、普通にJRだけで移動したのではつまらないし、そもそもまだ時間が余りまくっている(当初は午後の便に乗る予定で航空券を買っていたが、コロナの影響で減便となり、夜の便になってしまっている)。ということで、トロッコ列車「潮風号」(観光列車)で関門海峡(「関門海峡めかり」駅)まで行き、人道トンネルで海峡を越えて、下関観光をしてからJRで移動することにしている。
 観光列車の始発駅である「九州鉄道記念館」駅へ移動し、切符を購入して、12時40分発の列車に乗り込んだ。

@観光列車

 定刻に出発。日本一遅くて(速度15キロ)、日本一短い(距離2.1キロ)観光列車の旅は、あっという間に終了である。
 終着駅である「関門海峡めかり」駅付近には、関門トンネル用の機関車と旧型客車が展示されていた。鐡ネタということで、まずは撮影である。

@逃さず

 終着駅からしばらく歩き、人道トンネルの入口に辿り着いた。関門海峡を渡るためには様々な移動手段があるが、橋(自動車)、トンネル(在来線・新幹線)、船(渡船)、徒歩、いずれも経験済みである。人道トンネルを通るのは、たぶん20年ぶりくらいかもしれない。
 エレベーターで下に降り、トンネルをひたすら歩く。久々に、徒歩での県境越えである。

@歩いて越える

 山口県側に辿り着いて地上に出てからも、いくつかの神社や海鮮市場、旧い建物などを観光した(鐡ネタは発見できず)。
 下関駅まで歩き、スーパーで食材を買ったりしてから、16時02分発の宇部新川行の列車に乗り込んだ。終着で乗り換えて空港最寄駅である草江に着くのは17時11分であるが、飛行機の出発は19時15分であるため、余った時間を使ってカードラウンジでこの旅行記を完成させたりするだけである。

@山口県らしい黄色

 

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