「駅舎に泊まる」旅 Part2(高野下駅編)

■はじめに
 宿泊施設として整備された駅舎に宿泊するシリーズの2回目であるが、今回は南海電鉄の高野下駅である。大正14年に普請された駅舎(近代化産業遺産に指定)を改装して2019年に開業したホテルであり、正式名称は「NIPPONIA HOTEL 高野山 参詣鉄道 Operated by KIRINJI」と非常に長い。NIPPONIAは古民家などをリノベーションして高級宿泊施設として提供している取り組みであり、その1つとして高野下駅が対象となったものである。
 駅舎内には、宿直室を改装した「高野」という大き目の部屋と、乗務員の待機室を改装した「天空」という小さ目の部屋、2つしかない。1人旅なので「天空」の方で空室検索をしたが、土曜に泊まるとなると、高級宿泊施設だけあって22,000円にもなってしまう。そこであれこれ検索すると、外資系の予約サイトでなんとか19,508円で決済することができた(レートの関係か何かであろうか)。
 宿泊の2日前に案内メールが送られてきて、専用サイトで必要事項を記入して、当日の入室方法などの情報を得た(ホテルには常駐している係員はいないため)。
 駅舎ホテルに泊まるだけではネタ不足である。地理的には「高野山に行けば」となるが、普通の観光からお遍路のお礼参りを含めて、高野山はもう何回も(7〜8回くらい)行ったことがある。結局、土曜日は和歌山電鐵再訪、日曜日は大阪府内の鉄道小ネタを収集してくることにした。

@高野下駅にて

【過去のシリーズ】
「駅舎に泊まる」旅 Part1(田川伊田駅編)

■2022.2.26
 7時30分のJAL便に乗り、関西空港へ。ホテルと同時期にかなり早めに購入したため、9,000円程度である。
 関空からJRに乗り、日根野で乗り換えて和歌山へ。和歌山電鐵の乗り場に向かい、1日乗車券(800円)を購入した。終点の貴志まで片道410円であるから、往復するだけでもお得である。
 ホームにいたのはチャギントンカラーの車両であり、車内の広告には岡山市電のチャギントン列車の広告もある。「チャギントン繋がり」かと言うとそうではなく、和歌山電鐡はもともとは南海電鉄であったが、赤字を理由に南海が廃止を検討し、両備グループである岡山電気軌道が経営を引き継いだためである。

@まずは普通の車両(チャギントンカラー)

 和歌山を10時00分に出発。長閑な景色を眺めつつゆっくり走り続け、10時32分に終点の貴志に到着した。
 貴志駅と言えば、駅長「たま」で有名である。私が前回この駅に来たのは2008年1月であり、その時点で駅長たま(駅長就任後1年程度)もそれなりに有名であったが、まだ全国的大人気になる前であり、たまは旧い売店の台の上に普通に座っている状態であった(制服や制帽は着ていたが)。直接触り放題であったし、売店のおばさんにお願いすると「抱っこ」させてもらえる状態であったが、その後急激に有名になって駅に人が大勢訪れるようになり、たまは駅長室という名の空間に入ってしまうことになり、来訪者が自由に触ったりすることはできなくなってしまった。
 そのたまも2015年に亡くなってしまい、もう6年以上も過ぎている。

@自由に触れた頃の「たま」

 貴志駅舎であるが、新しくなっていた。外に出て外観を見てみると、屋根が猫のようになっている。売店も残っていたが、以前は菓子パンやお菓子などが売っている「普通の売店」であったが、猫グッズ中心のお洒落な売店になっていた。

@「たま効果」か

 少し時間があるので大国主神社まで歩いて行って参拝し、駅に戻ってから、売店内にあった先代たまに関する資料(駅長任命書など)を見学した。
 今日の貴志駅長は「ニタマ」であるが、到着時は爆睡状態であったものの、私が駅に戻る頃には起きていた。

@おはよう

 ホームには「たま神社」まであり、たまの影響はまだまだ残っているようである。
 しばらくして入線してきたのは、2か月前にデビューしたばかりの「たま電車ミュージアム」号である。

@観光列車

 車内の意匠についての詳細は余所様のサイトにお任せするが、写真やイラスト、ガチャガチャ、からくり時計、ビデオ上映など、かなり賑やかである。座席も、多種多様なものが入り乱れ状態であった。

@1枚だけ紹介

 11時08分に貴志を出発して伊太祈曽まで移動し、駅からほど近い場所にある伊太祈曽神社まで行って「木の俣くぐり」をしたりした(これは前回訪問時と同じパターン)。
 駅に戻ったが、今日の伊太祈曽駅長である「よんたま」は駅長室内で爆睡状態のままであった。
 続いて、11時50分発の和歌山行に乗り込んだ。今度の車両は「うめ星列車」である。

@観光列車その2

 出発してすぐ、次の吉礼で下車した。というのも、飛行機が予定より5分ほど早着したため関西空港で予定より30分前の列車に乗車できており、全体的に30分前倒しで移動してきたのである。そして往路乗車時にこの駅のすぐ近くに地元のスーパーがあったのを発見していたので、そこに寄るために降りてみた。
 そのスーパーで夜用食材を少し買ったりして、再度和歌山電鐵に乗車。続いては交通センター前で下車した。目的は、市電の車両である。

@これが目的

 と言っても、これが和歌山電鐵の路線を走っていたわけではなく、大阪の天王寺付近で南海の路線として走っていたものである。上述した通り和歌山電鐵はそもそも南海電鉄であったため(2006年に経営譲渡)、ここにあるのだろう。
 交通センター前から再度乗車して、続いては日前宮で下車。駅名にもある通り日前宮を参拝したが、なかなか大きな神社であった。

@途中駅にて

 参拝後はまたまた和歌山電鐵に乗り、13時40分に和歌山に到着した。
 ここからは、JRに乗り南海との接続駅である橋本まで移動することとなる。2両編成の列車はほぼほぼ満席で立っている人もいたが、どうせロングシートであるので、先頭部分から前方を眺めることにした。

@残念なロングシート車両

 13時55分に出発。最初は混雑していたが、いくつかの駅を過ぎると空いてきたので、ロングシートに座って外を眺め続けた。
 14時57分、橋本に到着した。ここでするべきことは、夕食用食材の調達である。いかんせん、高野下駅付近には何もないため、ここで一式を買い揃えなければならない。
 駅から徒歩10分くらいの場所にあった大型スーパーで和歌山沖の刺身や酒などを入手してから駅に戻り、南海高野線に乗り込んだ。

@南海へ

 16時10分に橋本を出発。紀の川を鉄橋で渡り、入場券が受験生に売れている学文路などを過ぎて行った(観光列車「天空」とも行き違った)。
 16時24分、高野下に到着した。下車したのは私1人だけであるが、ここが今日の寝床でもある。
 改札を出て、ほんの7歩程度で部屋の入口である。

@徒歩すぐ

 事前にネットでのやり取りで入手していた番号でドアの鍵を開けて、室内へ。広さとしては「広めのビジネスホテル」程度であるが、冷蔵庫やレンジや皿は揃っているし(簡易自炊可能)、意味のない場所に電車の吊り革がぶら下がっているのも遊び心満載である。机の上には、高野山観光や南海高野線などに関する古い資料がラミネート加工されて、閲覧できるように置かれている。

@室内

 吊り革以外にも、色々な「鉄分」が部屋内には散りばめられている。一番目立つのは、テーブルの上にあるメーター類であろう。圧力計や速度計はもちろんのこと、ATSに関する注意事項もそのまま貼ったままである。

@切忘れ注意

 あと1つ目立つのが、ベッドの横に設置されている椅子である。実用性はなさそうにも見えるが、ここに座るとこの駅を発着する列車を窓から見ることができる位置になっている。

@特等席?

 なお、上記以外にも小ネタがいくつかある(目立たない場所に置いてあるものもあるので注意)。上記の椅子の横にある「禁煙」以外にも、入口ドアの上部や通用口の下や天井付近に銘板があったりするので、あれこれと探してみた。

@一式

 なおこの部屋の位置であるが、改札部分から見ると、机の前の窓が所謂「改札業務をやっていた場所」であることがわかる。

@この裏が部屋の机

 この時点でまだ16時40分頃であったため、しばし駅付近を散策した。駅裏手にある神社を詣でて戻ってきたが、駅付近に設置されていた地図を見てみると、「高野山森林鉄道」という記載のある道路があったので、そちらに行ってみた。確かに、線形がゆるやかであり、これは明らかに鉄道跡である(ホテルに戻ってから調べてみると、やはりそうであった)。

@鉄道跡

 部屋に戻り、(テレビがないので)ネット配信動画を見ながらこの旅行記を作成。19時頃から、スーパー食材で一献してから就寝した。アメニティに耳栓があるが(すぐ横にある構内用踏切の音が結構大きいため)、私には不要である。

■2022.2.27
 この宿は素泊りであるが、朝食が付いてくる。ただし、先述した通りこの駅付近には何もないため、隣駅の九度山駅にできた「おにぎりスタンドくど」の無料朝食券と、九度山までの往復切符が部屋に置いてあるのである。

@記念にもなる

 しかし、今日は九度山駅までは歩いて行くことにした。というのも、部屋にテレビがないので暇だから早めに出発して渓谷沿いの遊歩道を歩こうと思ったのと、昨日の夜に森林鉄道廃線跡に関する情報を調べたら、その遊歩道も実は廃線跡であることを知ったためである。
 8時頃に荷物をまとめて、部屋を出た。高野下駅の下は不自然に空間があって道路があるが、要するにここも森林鉄道の廃線跡なのである。

@なるほど

 鉄道の廃線跡であるため、カーブも緩いし起伏もないため歩きやすい。奇麗な渓谷を見ながら1時間弱歩き、役場前付近からは一般道を歩いて九度山駅に到着した。
 田舎町ではあるが、人家が数えるほどしかない高野下に比べると、なんだか大都会のようである。至る所が「真田」尽くしであるが、歴史に疎い私はピンと来ていない。
 駅の到着は8時50分。おにぎりスタンドの開店(9時)まで、しばし休憩である。

@開店しました

 メニューには様々なおにぎりがあり、無料朝食券がなくても再訪したくなる感じである。なお、無料朝食券のセット内容は決まっており、塩結びと黒米のひじき、そして味噌汁であった。
 作り置きではないため、提供まで少し時間がかかる。ということで、イートインスペースへ向かってみた。目印は南海電車のドアである。

@鉄分多めの食事スペース

 内部にはカウンター席とテーブル席が設置されているが、特に目立つのが一番奥にあるCTC(列車遠隔制御装置)である。違和感ありありであるが、ホテルの部屋と同様にこのような遊び心は面白いと思う。

@いきなり

 その後はホームにある花壇や真田関係のイラストを見ていたが、おにぎり完成のブザーが鳴ったのでスタンドに行って一式をもらって、イートインスペースに行っていただくことにした。
 おにぎりはいずれも「ふんわり」としており、柔らかい食感であった。優しい味である。

@ザ・朝食的

 さて、これで目的はほぼ終了であり、残すは大阪府内の鉄道小ネタである。
 九度山9時35分発の列車で橋本に移動し、そこから「なんば」行の列車に乗って新今宮で下車。JRで京橋まで移動し、京阪で樟葉(くずは)までやって来た。目的は、くずはモール内に展示されている京阪車両である。
 大敷地のモールなのですぐには見つけられなかったが、調べてみると道路を超えた南館にあるようであった。無事に発見。

@テレビカー

 車両だけではなくて、京阪電鉄の歴史に関する説明版や各種ヘッドマークの展示もあり、無料の割には充実した資料館であった。
 見終えた後は、京阪で門真市まで移動して、大阪モノレールに乗り換えである。
 値段のことを考えて1日乗車券を買う予定であったが、スマホ乗車券にすると50円安くなるという掲示を発見(秩父鉄道の時と同じパターン)。登録にあれこれ苦戦し、なんとか購入することができた。

@こんな画面

 大阪モノレールに乗ることにしたのは、摂津市にある「新幹線公園」に行くためである。南摂津で下車し、新幹線車両基地や貨物駅の横を20分ほど歩いて、目的地に到着した。展示されているのは、0系新幹線と電気機関車(EF15)である。

@貫禄ある0系

 今日訪問することにしたのは、日曜日には「内部公開」をしているという理由もあった。コロナ対策で車両内部に入れるのは1組に限定されているが、並ぶ人も少ないため、10分も待たずに中に入ることができた。なかなか、貴重な体験である。

@これまた無料

 その後はモノレールで大阪空港(伊丹空港)まで、移動し、16時30分の便で羽田に向かった。往路と同じくJALであるが、早期決済しているため、なんと8,000円以下である。

 

■ 鐡旅のメニューへ戻る

 「仮営業中」の表紙へ戻る

inserted by FC2 system