「駅舎に泊まる」旅 Part6(二俣本町駅編)

■はじめに
 駅舎自体に宿泊するこのシリーズであるが、今日の目的地は天竜浜名湖鉄道の二俣本町駅である。以前は無人駅であったが、2019年の5月にホテル「INN MY LIFE」としてオープンした。1日1組限定の宿である(つまり貸し切り)。古い駅舎を改築して宿泊専用の施設にしているという点では、このシリーズの2回目で宿泊した高野下駅に似ている部類である。
 1人で予約するとなると平日だけが可能になってしまうが、6月1日(水)が私の勤務先の一斉休暇日であったため、この日の宿泊を予約してある。1泊朝食付で、14,300円也。
 サブテーマ的に、初日は天竜浜名湖鉄道にいくつかある「駅舎グルメ」を堪能し、翌日は未成線である佐久間線の遺構を探索してくる予定である。

【過去のシリーズ】
「駅舎に泊まる」旅 Part1(田川伊田駅編)
「駅舎に泊まる」旅 Part2(高野下駅編)
「駅舎に泊まる」旅 Part3(平岡駅編)+とにかく特急に乗るだけの旅 Part4(東海編)
「駅舎に泊まる」旅 Part4(比羅夫駅・阿仁前田温泉駅編)
「駅舎に泊まる」旅 Part5(天塩弥生駅編)


@都筑駅にて

■2022.6.1
 天竜浜名湖鉄道との接続駅は掛川であるが、新幹線で移動するとそれなりに高額である。ということで、先週の旅行に続いて今回も高速バスの利用である。
 7時00分に東京駅を出発して、掛川インターには定刻から24分遅れの10時55分に到着した。ここから掛川駅まで歩いて20分ほどかかるため、掛川発10時57分の列車には乗れないが、バスが遅れた場合に備えて11時57分発に乗る代替旅程案を考えてある。
 とりあえず、歩いて掛川駅へ。なお今回利用する宿泊施設を予約すると、数日前を目途にして天竜浜名湖鉄道の一日乗車券が送られてくる。今日は、それを利用することにしている。

@日付を入れる前

 宿泊代はそれなりに高いが、一日乗車券を買えば1,750円するので、これはありがたい。
 窓口で日付印を押してもらい、しばし待合室で時間を潰してからホームに向かった。ほどなくして11時57分発となる列車が入線してきたが、国鉄湘南色に染められた車両であった(ヘッドマークと車内広告はAKB48)。

@これに乗る

 定刻に掛川を出発し、長閑な景色の中を走り続けた。行き違う列車もラッピング車両が多く、SUZUKIの「刀」(バイクの車種)など多種多様であった。
 12時31分、今日の最初の目的地である遠江一宮に到着した。天竜浜名湖鉄道には登録有形文化財に登録されている駅舎等がたくさんあり、ここもそのうちの1つである。

@鄙びた駅舎

 しかし私がこの駅に来た一番の目的は、駅舎ではない。天竜浜名湖鉄道の駅舎には「駅舎グルメ」を味わえる店舗がたくさんあり、ラーメン屋やカフェやピザ屋など、多種多様である。新所原駅のうなぎ屋は以前に利用したことがあるので、今回の旅行では遠江一宮駅の蕎麦屋と都筑駅のパン屋を利用することにしている。
 駅窓口に置いてある名簿に記入してしばし待ち、蕎麦屋へと入って行った。

@こういう店構え

 店内はその気になれば15人くらい座れるが、コロナもあって3組までとなっている(テーブルが3つしかないため)。私は1人だけであるが、一番大きな席に案内された。
 蕎麦屋と言えば、たいていは多種多様のそば(冷温)があり、鴨やカレーなどの変化球もあるところが多いが、この店は「ざる蕎麦」だけであり、「もり」と「田舎」の2種あるだけという、超ストロングスタイル(?)である(蕎麦以外は、アルコール数種と酒のあての味噌があるだけ)。とりあえず、田舎を注文した。
 しばらくして、超シンプルな田舎蕎麦が提供された。

@これは美しい

 早速すすってみたが、歯ごたえの強いこと! なかなか印象に残る蕎麦であった。
 ちなみに、私の後に案内された2人組が「もり」を注文しようとしたところ、「すみませんもう切れていて田舎しかなくて」ということであった。その田舎も、さらに次に案内された2人組で終了。まだ13時前であるが、もう品切れで閉店である。
 蕎麦を食べ終えた後であるが、第一旅程案では森町病院前まで戻って香勝寺を参拝することにしていたが、高速バスの遅れによりそれはもう不可能である。ということで、遠州森まで戻ることにした。遠州森駅舎も、登録有形文化財である。
 13時01分発の列車で掛川方面に戻るが、やって来たのはこれまた国鉄気動車カラーの車両であった。

@懐かしい

 遠州森には13時07分に到着。古い駅舎の外観や内部を撮影し、駅付近をふらふら散策してから13時27分の列車に乗り込んだ。次の目的地は、天竜二俣である。
 天竜二俣には13時48分に到着した。この時刻に到着するようにしたのは、13時50分に開始される「転車台・鉄道歴史館見学ツアー」に参加するためである。まずは窓口に行き、参加用の切符を購入した。

@鉄道利用者は250円に割引

 係員に引率されて駅構内を横断し、敷地裏手にある運転区へ。このツアーは原則毎日開催されているが、今日は平日である。「極端に少ないかも」と思っていたが、なんと私を含めて14人も参加していた。
 あれこれ説明を聞きながら、運転区の建屋に近づいていった。ほとんどの部分は現在も使用されているが、さすがに風呂はもう使用されておらず物置となっている。SLが現役であった時代は、ここで多くの運転手などが体に着いた煤を落としていたのだろう。

@風呂跡

 運転区のある建屋を過ぎて、辿り着いたのが転車台である。転車台ツアーであるが、ただ単に転車台を見るだけではなくて、実際に列車が転車台に乗って一周して出ていくまで、セットで見学することができる。
 ということで、全員でその様子の撮影である(動画で撮っている人多し)。

@動いています

 転車台の見学が終わると、続いては扇形車庫の横にある鉄道歴史館の見学である。実のところ、私個人としてはこの施設を見学したいためにツアーに申し込んだというのが正直なところである。
 時間は10分くらいあるということなので、ゆっくりと見学した。

@展示品多し

 見学を終えてから、参加者揃って駅へと戻った。
 さて続いては、パン屋への移動である。14時42分発の列車に乗り込み、都筑には15時34分に到着した。文化財に指定されている遠江一宮駅とは違い、こちらは普通の駅舎である。パン屋用にあれこれ装飾されているため、外見だけから判断すると、駅というよりはパン屋の要素の方が強そうである。

@見た目はパン屋

 取り急ぎ店内に入り、夜用食材として2種類ほどのパンを購入した。
 折り返し15時44分発の列車(エヴァンゲリオン塗装。表紙写真)に乗り、二俣本町には16時31分に到着した。ここが今日の宿泊地である。駅舎自体の外観は無人駅時代そのままであるが、宿泊施設の入口部分にはデザインされた塀が新たに作られている。

@ホテルです

 室内に入り、待っていた係員からあれこれ説明を受け、宿泊料を現金で支払った。もうこの後は、自由行動である。
 室内であるが、ベッドは2つある。写真には映っていないが右手にはハンガーがあり、地元産の寝巻が掛かっている。左手にはオーディオセットがあるが、レコード部分は壊れてしまっているとのこと(使い方の分からない若い人が壊してしまった模様)。

@こんな室内

 反対側はキッチンとなっており、食器棚には自由に使用できる皿やコップが置かれている。冷蔵庫の中にはミネラルウォーターやドレッシングが入っており、また朝食一式がタッパーに入った状態で置かれている。キッチン台のケトルの前に小さな筒状のもの(橙色)があるが、これは地元産のハチミツであるという(翌朝、パンに乗せて頂いた)。下段にある黒い箱は、ワインセラーである(別料金で利用可能)。なお、換気施設がないため、調理できる機器は備えていないとのこと。

@こんなキッチン

 部屋の奥は、トイレと洗面と風呂が付いている。まだまだ新しいが、排水設備があまりよくないということで、風呂のお湯を抜くとしばらくは水がたまった状態になるという(確かに、実際にやってみると3cmくらいの水たまりができた)。
 奥に行けば行くほど細くなっているが、この部分は駅員がいた時代は改札口のすぐ横であった部分である。

@風呂になってしまいました


@風呂の反対側はこんな感じ

 室内の確認も終えたので、自転車(自由に利用できる自転車が2台ある)でスーパーに行ってあれこれ食材を買い揃えてきた。
 部屋に戻り風呂を終えたが、もうやることがない。ということで、一献を始めてしまうことにした。
 室内にはテレビがないため、PCで動画を見ながらの一献である。御前崎のカツオや浜松の餃子や黒はんぺんなどの静岡食材一式と、都筑で買ったパンである。

@静岡セット

 なお室内には障子が何か所かあるが、いずれも持ち上げると外が見えるようになる。南側にある細長い障子を持ち上げると、駅側がそのまま見える状態になっている。ということで、時刻表を見ながら待ち構え、列車が入線してくるのを待って撮影してみた。

@トレインビュー

 一献を終え、まだ20時前であるが、早々に寝てしまうことにした。

■2022.6.2
 早く寝すぎてしまったため、4時過ぎには目が覚めてしまった。動画を見ながら時間を潰す。
 しばらくして小腹も空いてきたので、朝食セットを作ることにした。冷蔵庫の中にあるタッパーを取り出し、それぞれを皿の上へ。いったんその様子を撮影してから、パンなどはトースターで温めた。なお食べる際には、パンにはバターだけでなくてハチミツも垂らしてみた。

@今日の朝食

 今日はまず佐久間線(国鉄の未成線)の跡を巡ることにしているが、どうやって移動するかについてはかなり悩んだ。というのも、路線バスが1日に4本しかないのである。あれこれ悩み、往路は徒歩で1時間半程度+相津発10時17分のバスで戻って来るという案を考えたが、それを急遽変えることにした。理由は、この宿にある自転車である。昨日スーパーに行く際に使用してみたが、ギヤ付きでなかなか快適である。自転車であれば相津まで40分かからない程度のようであるし、出発時間も気にしなくていいため、これに決定である。
 ということで、6時半過ぎに宿を出発した。まずは、二俣川にある橋脚である。

@橋自体はありません

 橋脚に続いて、陸地上には立派な路盤が続いていた。もちろん、無用の長物である。
 その路盤に沿って北上し、その後は国道に沿って走り続けた。ダムを過ぎ、国道から逸れて旧道に入り、ボートパークへ行く道へさらに分岐して、そして未成線の路盤を使用した道へと入って行った。この道を進むと「夢のかけ橋」となるが、この橋は未成線の橋脚の上に人道用の橋を架けたものである。

@対岸より撮影

 これだけ立派な橋脚があれば、橋を架けたくなる気持ち(?)も分かる。それに、ただ単に橋脚があるだけでは建設に従事した労働者も浮かばれないが、こうして実用化されれば少しは慰められるかもしれない。
 橋を渡ると道の駅があり、その先も路盤は続いてトンネルへと繋がっている。トンネル部分はワインセラーとなっているが、コロナもあって現在は見学できないようである。

@トンネルはワインセラーとして再利用

 無事に見学を終え、35分ほどかけて宿へと戻った(復路は下り坂が多くて楽)。
 少し休んでから荷物をまとめて、二俣本町を8時55分に出発する列車に乗り込んだ(昨日はラッピング車両ばかりであったが、今日は普通の車両であった)。
 9時12分、遠江一宮で下車した。今日は観光する予定はなかったが、自転車の使用で時間が捻出できたため、「どこか観光できる場所はないか」と考え、思い付いたのが小国神社なのである。実は昨日に蕎麦屋の入店を待っている際に駅前にいたマイクロバスが気になり、小国神社のことを調べていたというのもある(マイクロバスは無料送迎バスであった)。
 駅に着くと、ちょうど蕎麦打ちをしているところであった。

@これがお昼に提供される

 しばし駅舎内で待ち、やって来たマイクロバスに乗り込んだ。9時30分に出発。小国神社までは6分程度の道のりである。
 神社に到着して早速参拝したが、残念ながら改装中(屋根の葺き替え中)であった。

@鳥居の写真で代替

 参拝を終えてからは御朱印を頂き、続いて目的である花菖蒲園へと向かった。奥地にある神社であるが意外に大規模であり、お土産やスイーツを売る店舗などもたくさんある。
 花菖蒲園の入口で料金を支払い、園内へ。「完全満開」というわけではないが、そこそこ咲いていた。

@様々な色あり

 目的を終えて、10時10分発のバスで遠江一宮駅へと戻った。この時点で10時17分頃であったが、次の掛川行は11時11分発であるため、時間が余り過ぎている。ということで、近くのコンビニに地場産野菜の即売所が併設されていたのを復路のバス内から発見していたので、そこに行って野菜を買ったりして時間を潰した。

@戦利品

 駅へ戻って上記の列車に乗り、掛川へ。11時45分着。後は、掛川インターへ移動して高速バスで帰るだけである。
 その前に、昼時であるため地元グルメを頂きたい。当初は静岡名物の「さわやか」(ハンバーグ)にでも行こうと思ったが(インター近くにも店舗がある)、まだ昼前だというのに数十人待ちである(ネットで分かる)。しかし、駅出口で駅弁を見つけてしまったので、それを買ってしまうことにした(ついでに静岡っぽいビールも)。これを、インターのバス待合所で頂くだけである。

@旅の締め

 

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