JR東日本(特に北東北)の様子を確かめに行く旅

■はじめに
 11月24日から12月6日まで「大人の休日倶楽部パス」(たったの15,270円でJR東日本の全路線が新幹線を含めて4日間乗り放題)の利用可能日であるが、11月末の週末は仕事で出張に出ていたため、どこかに行くとなると12月の最初の週末である。しかし、路線図を眺めても、これといって行きたい場所もない。
 そこで今回は、今年8月の大雨によって路盤や橋梁が流出したり歪んだりしたため長期運休となっている路線を訪問することにした。代行バスなどに乗り、現状を把握するためである。ついでの観光として、津軽鉄道のストーブ列車にも乗ってこようと思う。
 不通になった路線のうち、大動脈である奥羽本線は災害の約2か月後に復活したが、下記の路線は未だに運休中である。
・花輪線(鹿角花輪から大館まで)
・津軽線(蟹田以北)
・五能線(鯵ヶ沢から岩舘まで)

 なお、同様の旅行(代行バスなどを巡る旅)は、以前にも行っている。なぜか2018年に集中しているが、災害が多かった年であっただろうか。
JR北海道の様子を確かめに行く旅 2018年1月
JR九州の様子を確かめに行く旅 2018年3月
JR四国の様子を確かめに行く旅 2018年7月
JR北海道の様子を確かめに行く旅part2 2018年8月


@千畳敷駅にて

■2022.12.2
 最寄駅から近郊列車を乗り継いで大宮に向かい、9時59分発の「はやぶさ13」号に乗り込んだ。盛岡までの停車駅は仙台だけであるため、速達に近い。
 11時46分、盛岡に到着した。花輪線の出発時刻まで45分以上あるため、しばし駅付近を散策である。

@こんなもの発見

 売店等であれこれ買ってから在来線ホームに入ったが、どこにも花輪線の表示がない。そこでふと気づいて、駅員に「花輪線は銀河鉄道のホームですよね」と聞いたら、もちろんそうだと言う。うっかりしていたが、旅慣れない人なら本当に迷ってしまうかもしれない。
 再度改札を出て、いわて銀河鉄道のホームへ。12時35分発の花輪線はすでに入線していた。

@行先票がいつもと違う

 定刻に、盛岡を出発した。しばらくの間はいわて銀河鉄道(元東北本線)の路盤を走り、好摩からは花輪線となる。
 車内では特にすることもないので、昼用にあれこれ買ってある。旅でランチとなれば通常は駅弁であるが、「盛岡なら福田パンだろう」ということで、総菜パンを1つ買ってある(甘いパンより総菜の方が好きなので)。そこまではいいが、コンビニに寄ったら、岩手っぽいツマミと雫石のビールを発見してしまい、それまで買ってしまった(日本酒は完全に「ジャケ買い」である)。

@うっかり買い過ぎ

 一式を頂き、後はぼんやりと車窓を眺めるだけである。どちらかと言うと地味な感じの風景であるが、雪景色の季節に花輪線に乗るのは恐らく初めてであるので、印象的であった。

@以前の思い出と違う

 雪景色を見ながら時折微睡んでいるうちに、14時31分に鹿角花輪に到着した。ここからは代行バスとなる。
 しかし、JRが用意する代行バスは朝晩に少しあるだけである。その代わり、盛岡から大館に行く高速バス「みちのく号」にも乗ることができるようになっている。なおその場合は、駅窓口で「振替輸送依頼書」をもらわなければならない。

@このような紙

 そもそも論として、大館から盛岡への交通手段は、ほとんどがこの高速バスなのである(花輪線で乗り通すのは、一部の鉄道マニアくらい)。バスの方が安いし、早いし、乗り換えなくていいのだから、当然と言えば当然である。
 待ち時間があったのでバス待合室でテレビを観たりしてから、15時09分発の大館行高速バスに乗り込んだ。

@代行バスとしても機能

 定刻より少し遅れて鹿角花輪駅前を出発。残念ながら鉄道の路盤とはほとんど沿わないので、花輪線の被災状況などは確認できなかった。
 乗客は少なかったが、運賃支払いに手間取っている乗客がいたため、終着の大館駅前には定刻より13分遅れの16時18分に到着した。
 しかし、大館から乗り継ぐ特急の出発時刻は17時23分であるため、まったく問題はない。駅前にある秋田犬の施設に行ってガラス越しに秋田犬を眺め、スーパーに行って夜用食材を買ってから駅に戻り、青森行の特急「つがる5」号に乗り込んだ。

@花輪線終着駅として復活できるか否か

 せっかくの特急列車であるが、もう日が暮れてしまい車窓を見ることはできない。ということで、この旅行記の作成などをして時間を潰した。
 18時38分に青森に到着し。駅から徒歩20分くらいの場所にあるホテルへ。1泊5,000円だが、旅行支援で3,000円になり、そしてクーポン券が3,000円分付くので、支援様々である。

■2022.12.3
 津軽線の代行バスは1日に3往復(朝晩だけ)しかないため、今日は6時16分発の列車に乗らなければならない。路面が凍結して歩きにくいことも考えて、5時40分頃にホテルを出た。
 青森駅に到着。蟹田までは、これまでと同様の鉄道である。

@早朝

 定刻に青森を出発。蟹田が近付くと、右手に奇麗な海が広がって来た。
 6時58分、蟹田に到着した。ここで7時07分発の代行バスに乗り換えることとなる。バスには私を含めて2人乗り込んだが、私以外の人もあれこれ写真を撮ったりしているので、明らかに「乗ることが目的」の人である。つまり、まともな乗客はゼロである。

@大きなバス

 五能線は観光要素があるからJRとしても再開させたいだろうが(現に、もうすぐ一部区間が再開する)、花輪線はバス相手に勝負にならないし、津軽線はこの乗客数であるから、JRとしても再開には二の足を踏むかもしれない。
 定刻に蟹田駅前を出発。中小国、大平と過ぎ、これ以降の津軽二股までの区間が被災が酷かった地域であるが、道路は路盤から離れてしまうため状況は把握できない。

@線路と交差する(不通区間)

 なおバス車内では、清算はしないシステムとなっている。切符を持っていない人は、有人駅で乗降する場合は駅窓口で支払い、無人駅で乗降する場合は「代行輸送証明書」を車内でもらって後日有人駅へ行って清算する必要があるという。後者はかなり面倒そうであるが(わざわざ有人駅まで出かける必要があるため)、逆に言えば、そういう利用をする人がほとんどいないのであろう。
 峠を越えて、7時37分に津軽二股駅前に到着した。終着の三厩までは行かず、ここで下車することにしている。
 隣接する道の駅はまだ営業前なので、新幹線駅に行ったり、連絡橋内で実施されていたパネル展「はたらくくるま展」を見たりして時間を潰した。

@津軽二股駅(ここに列車は戻ってくるのか)

 駅前の駐車場近くでバスを待ち、8時29分発の代行バスに乗り込んだ。今度は8人ほど乗車しており、それなりの人数ではあるが、少ないことには変わりない。
 蟹田到着の予定時刻は9時05分であったが、実際には8時58分に到着した(交通事情を考慮して余裕を持たせているのであろう)。
 物産館でシマアジの塩焼きを買ってから、蟹田発9時13分の列車で青森に戻り、奥羽本線の各駅停車で川部へ。川部で五能線に乗り換えた。

@明日も乗りますが

 10時38分に川部を出発し、11時05分に五所川原に到着した。
 トイレに寄ってから隣接する津軽鉄道の津軽五所川原駅に向かったが、大行列である。列車の出発まで40分以上あるため、町内への散策へと向かった。
 11時半過ぎに駅に戻ったが、やはりまだ行列である。並びながら様子を眺めていると、どうやら外国人観光客が切符購入に手間取っているようであった。
 出発の10分くらい前になってやっと私の番になり、通常の切符とストーブ列車の券を入手した。

@どちらも硬券

 改札を通ってホームに向かうと、仮設の机が置かれていて高校生たちが数人いる。近づいてみると、「無料のお弁当ですので、どうぞ」とのこと。12月の土曜日2回のみ、30食限定で無料配布しているという(試作品の配布であるという)。ありがたく、1ついただくことにした。私の前にはストーブ列車に乗る観光客が行列しており、明らかに30人以上いるが、最後の数個が残っている状態であった。

@ラッキー

 しばらくして、ストーブ列車の車両がバックしてきた。ここでまた幸運であったのが、車両が停まってから後ろ側のドアも開き「こちらからもどうぞ」と言われたため、本来は一番後ろであった私が真っ先に車内に入ることができ、ストーブの目の前の席を確保できたことである。「最後に入口に入ったものが最初に出る」、とはまた違う意味であるが、これも幸運であった。

@ストーブ列車の車両(昭和20年台の製造)

 ということで、ストーブの前に陣取る。ストーブは1両内に2つしかないため、ストーブの目の前で進行方向側の席は2つしかない。なおストーブ列車の料金は500円であるが、これは「施設の運営維持の寄付」みたいなもの、と思っている。

@こんなストーブ

 出発前に、係員が来てストーブに石炭を追加していった。これは、この後にスルメを焼くために火力を上げるためであった。
 駅員や高校生に見送られて、定刻の11時50分に津軽五所川原を出発。車内では、乗客が購入したスルメを女性係員が次々とストーブ上で焼いて行った。私も買いたかったが、酒があって1時間なら確実に買うものの、シラフで30分だけで、しかも一人旅ではスルメ1枚を持て余してしまうこと確実なので、余所様のスルメが焼けるのを撮影するだけである。

@他人のスルメ

 スルメは駅だけでなく車内販売でも買えるが、不漁等によって調達料等も値上がりしているため、これまで500円であったが700円に値上がりしたとのこと。時代の流れである。
 それにしても暑い。まだ12月初旬でそこまで寒くないし、スルメを焼くために火力全開であるため、ストーブの目の前にいると汗ばむくらいである。
 しばし景色を眺めていたが、隣のボックスの男性客(一人旅)から、「食べきれないので、よろしければどうぞ」とスルメのお裾分けを頂いた。今日は「タダ飯の日」のようである。
 12時16分に到着した金木で、かなりの乗客が下車した。私は、予定通りにその次の芦野公園で下車した。

@お疲れさまでした(今後もがんばれ)

 さて、終着の津軽中里でなく、観光地の金木でもなく、芦野公園に来たのは、旧駅舎を利用した喫茶店で馬肉料理のランチを頂こうと思ったためである。しかし、今日は予想外に無料弁当を頂いてしまっている。ということで、予定変更ということにして、待合室でこの弁当を頂くことにした。
 シャモロックの炊き込みご飯以外にも多くのおかずがあり(しじみのバター炒め、豆腐いがメンチ、リンゴのきんぴら、温野菜のリンゴドレッシング)、中でも温野菜のドレッシングは印象的でとても美味しかった。

@ご馳走さまでした

 食後は、せっかく芦野公園まで来たので太宰治の記念碑を見に行き(朝まで晴れていたのに、津軽鉄道乗車時から雨が降り始め、時折大雨になっている)、歩いて金木まで向かって物産館でクーポン券を使ってあれこれ土産を購入し、金木駅へ移動して13時56分発の列車に乗って津軽五所川原に戻った。そこからはJRで弘前に向かい、今日はここで終了である。
 夕食は、弘前に来ると必ず「虹のマート」で買う「いがめんち」などである。幸い、この店でも例のクーポンが使えたので、夕食代はタダ同然であった(今日はとにかく、タダ飯の日であった)。

■2022.12.4
 6時半前にチェックアウトをして、弘前駅へ。今日も五能線に乗車である。

@夜明け前

 定刻の6時47分に弘前を出発。昨日は空いている座席を探すのが大変であったが、今日は2両合わせても6人くらいしか乗車していない。
 川部でスイッチバックをして、五能線の路盤へ。今日も雨模様であるが、時刻と天気が違うと、景色の印象がこうも違うものかと痛感した。
 五所川原で長時間停車して7時58分に出発したが、この時点で乗客は私を含めても2名だけになってしまった。安泰と思っていた五能線も、少し不安になってきた。
 8時25分、鯵ヶ沢に到着した。ここで小一時間以上時間があるため、海の駅に行って相撲関連の展示館(無料)を見たりした。海の駅では美味しそうな「貝焼き味噌」や鯵ヶ沢産のハタハタの塩焼きがあったので、早速購入。鉄道旅行であれば「酒も買って車内で一献」ができるが、バス旅ではそれができないのが残念である(奥羽本線のロングシートでも、できないが…)。よって、これらは夜用である。

@「わさお」が各所にいる

 雨の中歩いて駅に戻り、冷たくなった体を待合室にあったガスストーブで温めた。
 9時40分過ぎ、代行バスがやって来た。2台体制であるが、恐らく2台目の出番はないであろう(予想通りであった)。バスには「リゾート2便」とあるが、これは9時52分に鯵ヶ沢に到着する「リゾートしらかみ2号」に接続するからである。私もそれに乗ることはできたが、海がほとんど見えない観光列車に乗っても仕様がないので、各駅停車で来ることにしたのである。

@今日の代行バス

 リゾートしらかみ号から何人やってくるかと思っていたが、乗車して来たのは9人であった。私を含めて乗客は10人となり、定刻の10時00分に鯵ヶ沢駅前を出発した。
 海を見るためには右側の座席が良いが、今回は五能線の状況を見たいため、左側の一番前に陣取っている。乗客のほとんどは、右側の座席に座っていた。所々で、路盤の上に重機が入って修復作業中のところもあった。
 10時22分頃、千畳敷駅に到着した(表紙写真)。ここで8分ほど停車するということで(リゾートしらかみと同様の運用)、海まで行ってみたが、今日はなかなかの荒れ具合である。

@時化っている

 10時30分に、千畳敷駅を出発した。今日は風が強く、時折波が路盤に掛かっているところもあった。もしかしたら、鉄道であれば風速制限で運行が中止していたかもしれない。
 その後も数か所で修復作業中の現場を通り過ぎて行ったが、橋梁が流されたり路盤が完全に流出したりするような状況ではなさそうなので(九州の肥薩線のような大惨状ではないので)、復活の見込みはあるように思われた。現に、岩館から深浦までは、来週の12月9日頃を目途に復活するようである。

@作業中

 五能線の路盤を見てみると、信号は生きている(付いている)ようである。これは想像であるが、五能線全体の信号を一括管理しているため、不通区間の電気も入れた状態なのかと思われる。
 10時52分に深浦に到着し、1名の乗客が下車していった。トイレ休憩の後、11時00分に同駅を出発。ここから先は、上述した通り復活も近いため、工事中の場所はないはずである。11時13分に到着したウェスパ椿山でも1人下車して、温泉宿の送迎車に乗り換えて行った。
 11時47分、岩館に到着。ここから先はすでに鉄道が走っているが、東能代までそのまま走り続けるバスもあり、このリゾート2便もそれに該当する。
 12時35分頃に東能代に到着。これで、代行バス等を巡る旅は終了である。土曜の昼からずっと雨や雪で、時折吹雪いていたが、ここに来て青空も見えてきた。とにかく、後はひたすら乗り継いで家に戻るだけである。

@最後に晴れ(岩館行の五能線)

 

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