JR北海道の様子を確かめに行く旅part2

■はじめに
 今年の6月17日、JR北海道が4路線の廃止を発表した。対象となったのは、留萌本線の全線、日高本線(鵡川−様似)、根室本線(富良野−新得)、札沼線(北海道医療大学−新十津川)である。またこれらより一歩先に、石勝線の夕張四川(新夕張−夕張)は廃止が確定している。夕張支線については随分前から地元自治体と合意に至っていたものであるが、残りの線区でも目途がついたのであろうか。
 これらの路線は、収支のおぼつかない路線や、災害によって不通になったままの路線ばかりであり、その将来は明るいものではなかった。よって今年の1月に、「JR北海道の様子を確かめに行く旅」として上記5路線のうち札沼線を除く4路線に乗車してきたばかりである。ついに正式に報道されたので、改めてこれらの路線を訪問してくることにした(ただし、すでに対象区間すべてがバス代行になっている日高本線は、日程の関係で割愛することとした)。

@新十津川駅にて

■2018.8.24
 ここ最近は旅が連続しているため、往復は予算を考慮してLCCである。
 9時頃に新千歳空港に到着し、9時30分発の快速列車で千歳へ向かった。夕張行との乗り継ぎは南千歳駅であるが、青春18きっぷを持っているため、当該列車の始発駅である千歳まで行った次第である。
 駅前のスーパーで時間を潰してから駅に戻ると、1両編成のディーゼルカーはもう入線していた。

@貫禄の1両

 いつもの車両(白地にグリーンのライン)を予想していたが、入線していたのは日高本線で使用されていたカラーであった。日高本線は水害の影響で鵡川から先がずっと不通であるため、余っている車両がこちらに回されてきたのであろう。今回の旅では日高本線に乗れないので、その埋め合わせとしては丁度良い。

@カラーは日高本線、行先は夕張です

 さらに嬉しいのが、「宇都宮富士重工」という銘板である。私は小学校高学年から宇都宮市で数年を過ごしたが、家の近くにこの工場があり、出来立てホヤホヤのキハ183系や客車の50系が係留されているのを、何度となく見たことがある。この車両のことも、もしかしたら見ていたかもしれない。
 定刻の10時38分、千歳を出発した。出発時点で各ボックス2〜3名乗車している状態であり、次の南千歳では立つ人も出始めた。
 石勝線に入り、追分で特急に追い抜かれるためしばらく停車した。

@特急待ち

 停車時に運転手のアナウンスがあり、「終点の夕張では必ず荷物をもって一旦降りること」などを繰り返している。乗客同士のトラブルになり、警察沙汰にもなったことがあるという。やはり、廃止が近くなると色々な人が多くなるため、できるだけ早めに来るのが正解であろう。
 同駅を出発し、新夕張でまた少し乗客が増え、ここからが石勝線の夕張支線である。最初の停車駅は、沼ノ沢。

@崩れそう

 その後も、各駅に停車して行った。半年前に来たばかりであるが、前回は冬であったので、雰囲気は大きく違う。
 12時26分、終着の夕張に到着した。車内もそれなりに混雑していたが、駅で待ち構えている人(これから乗車する人や、ただ単に撮影だけをする人)もかなりいた。

@私も撮影

 さて、いつも夕張に来ると、10分程度で折り返す列車に乗っているが、今回はしっかりと観光するために次の列車で戻ることにしている。4時間ほど時間があるため、名物のカレーそばを食べたり、石炭に関する博物館へ行ったりする予定である。
 駅付近や列車の撮影をして、カレーそばの店へ行く前に「観光地図でもあるかな」と思ってふらっと駅舎内に入ると、無線の音声で「夕方以降は運休」と聞こえるではないか。確かに台風は近づいているが、通過するのは夜中のはずである(いくらなんでも予防線張りすぎ)。ということで、観光などできずに慌てて12時38分発の列車に飛び乗った。

@残り僅か

 あまり大きくない無線の音(駅舎の外では聞こえない)であったため、あのままカレーそばの店に入っていたら、駅に戻ってくるまで運休に気づかず、夕張で途方に暮れていたかもしれない。
 13時01分に新夕張に到着。今日は十勝清水駅に近い宿を押さえているため、新得まで青春18きっぷの特例を用いて特急列車で移動し、そこで乗り換えて1駅だけさらに移動する予定である。時刻表を見ると、本来乗るべき予定であった17時21分発まで、なんと列車は皆無であった。
 しかし、これは「不幸」ではなく「幸い」であった。というのも、上記以降の夜の列車はすべて運休が決まっていたからである。
 問題は、何もないこの町でどうやって4時間を過ごすか、である。

@駅前も寂しい

 階段を降りていくと、そこに道の駅やスーパーがあった。さらに幸いであったのが、夕張の鉄道に関する展示があったということである(怪我の功名)。ただし、少ない展示であったので、ものの10分で見終えてしまったが。

@鐡ネタ発見

 その後は集落内を30分ほど歩いたが、特に何も見つけられず退散。不幸中の幸いは、駅の待合室に無料Wi-Fiがあったため、パソコンで暇つぶしができたということであろうか。
 ネットを彷徨ったり、この旅行記を書いたりしたが、1時間もするとまた暇になってきたので、何もない町に再度繰り出した。雨も降っておらず、風もほとんどない。ここ数年、台風による大きな被害が出ているので予防線を張るのは分かるが、ちょっと行き過ぎのような気がしなくもない(せめて、雨が降り始めてから止めてもよいのでは)。
 道の駅近くで、日曜日に行う予定のお祭りのリハーサル(バンド演奏)を見たり、またまたスーパーに行ったりして、またまたまた駅に戻ってきた。

@この駅名を知る人は年配の人

 再度パソコンをつついていると、夕張方面への代行バスの案内があった。結果論からすると夕張観光ができたということであるが、それはそれ、新夕張駅付近の「なにもない旅」も悪くないものである。
 しばらくすると、追分方面からやって来た夕張行の代行バスが到着した。通常の旅であれば「こっちの方が面白そうかも」と思いそうになるが、今日は夕張支線の乗り納めのつもりで来ているので(気が変わってまた直前に再訪するかもしれないが)、ディーゼルカー単純往復が正解なのである。

@代行バス

 台風情報でも見ようと思って専用サイトを開けたら、なぜか別の台風情報になっている。どうやら、警戒していた台風は北海道の西側で温帯低気圧になったようである。
 17時21分発のスーパーとかち5号で新得まで移動し、20分ほどの待ち合わせで各駅停車に乗り換えて、18時58分に十勝清水に到着した。スーパーで食材を揃え、ホテルに投宿。
 さて、明日の旅程を再考しなければならない。本来は新得からの代行バスで幾寅へ行き、観光してから東鹿越まで歩いて根室本線に乗り継ぐ予定であるが、すでに運休が発表されている(もう台風ではなくなったのに…。振り上げた拳を戻せない感覚であろうか)。仕方ないので、新得から富良野までのバスをネットで決済しておいた(帯広から旭川へ行くバス)。

■2018.8.25
 朝起きてJR北海道のサイトを確認すると、なんと帯広付近の各駅停車も午前中はほとんど運休になっているではないか。当然、十勝清水から新得までも運休である(普通の雨が降っているだけなのに…)。仕方ないので、決裁したバスをいったんキャンセルし、乗り場を清水にして取り直した。
 ゆっくりテレビを見て土曜の朝を過ごし、8時45分頃に宿を出た。9時00分発予定のバスは、5分ほど遅れてやって来た。

@今日はバスから

 車内は、数えるほどの乗客(10名弱)である。新得を過ぎて峠になると、雨脚も強まってきて霧も濃くなってきた。
 峠を越えると、南富良野町である。幾寅駅付近で2時間強過ごし、歩いて東鹿越駅まで行く予定であったが、急な旅程変更により今日は不可能である。しかし、訪問予定であった「道の駅南ふらの」でこのバスが10分の休憩を取ったため、少しは観光することができた。
 根室本線沿いに走り続け、富良野駅前には10時50分に到着した。降りたバス停の隣りには、「新得方面」と書いたバスがあり、どうやらJR代行バスが動いていたようである。

@代行バスがあったとは

 それに乗れば予定通りの旅も…と思ったが、十勝清水から新得までの足が不確定であり(代行バスがあるのかどうか不明)、それに、代行バスでは廃止予定の富良野−東鹿越に乗れないのは同じことである。
 さて、本来の旅程では、富良野線で旭川へ行き、そこから留萌に直行する列車に乗る予定である。しかし、この先だけで青春18きっぷを消化するのは腑に落ちないし、それに、富良野線などは何度も乗っている路線であるので、刺激も少ない。
 ということで、「今日はバス旅にしよう」と急遽テーマを変更した。沿岸バスなどが旭川から留萌行のバスを運行しているのは知っているので、富良野−旭川もバスで移動し、今日の移動すべてをバスにするのである。
 それぞれのバスの時刻を調べてから、北海道中心標などを観光し、自分用のお土産を買ってから駅に戻った。まず乗るべきは、12時50分発の旭川空港経由旭川駅行の「ラベンダー号」である。

@やって来た

 中国人客対応(おつりや荷物)により、バスは定刻から5分ほど遅れて出発した。
 国道はほとんど富良野線の近くを走るため、正直なところ沿線の風景は富良野線と大差ない。ただし、富良野から旭川までの料金は、バスの方が安く設定されている。
 美瑛の花畑などを通り過ぎ、空港を経由して、旭川駅には14時35分に到着した。
 少し時間があるので、新しくなった旭川駅構内を歩く。電光掲示には本来乗る予定であった15時14分発の留萌行があるが、先述した通り今日はバスである。
 駅前にあるバス停に向かい、15時00分発の留萌行路線バスを待つ。出発の5分前にやって来た。

@バス写真5連発(鐡旅なのに)

 定刻に出発し、旭川市内を抜けて神居古潭などを経由して深川へ向かっていった。最前列を確保できたこともあり、景色はすばらしい。
 深川を過ぎると、留萌本線に沿って走り続けた(このバスは路線バスであるため、高速には乗らない)。
 山深くなってくると、地名が「アイヌ語そのまま」になるのは、ここに限らずどこでもある「北海道あるある」である。中には、「跨線橋」なんていう安易なバス停名もあった。バス停名に困るほど周囲に何もないのであれば、バス停もなくていいような気がしなくもない。

@アイヌそのまま

 峠を過ぎて、大規模チェーン店が国道沿いにたくさん見え始めてきて、留萌駅付近を経由して17時03分に終着の留萌十字街に到着した。旭川から通しで留萌市内まで乗っていたのは片手くらいで、後は短距離利用が多かったようである(最後の十字街まで乗っていたのは、私だけであった)。
 バス旅の率直な感想であるが、鉄道好きとしては心苦しいが「この程度の距離ならバスでも問題なし」である。JR北海道が「単独では維持することが困難」な路線として稚内までの宗谷本線や網走までの石北本線も挙げているが、あれらが無くなっては大変なことになってしまう。しかし、今回廃止対象となった留萌本線や、対象とはなっていないが室蘭本線の岩見沢−沼ノ端、また根室本線の釧路以東などは、鉄道を維持する理由を見付けるのは難しいのかもしれない。

@お疲れさま(晴れてきた)

 ホテルに荷を置き、スーパーで食材を揃え(増毛産の刺身用エビを発見←剥くのが大変だった)、一献して就寝。

■2018.8.26
 いったん過ぎた雨雲であるが、朝起きるとまた雨になっていた(しかし、強い雨ではない)。
 5時半頃にホテルを出て駅に向かい、5時49分発予定のディーゼルカーに乗り込んだ。ホームには、1両のディーゼルカーが連結されていない状態で2両あったが、後ろの1両はこの後の6時47分発になるのであろう。
 定刻になって出発したが、車内は私を含めても2人だけであった。

@マニアが集結するのは来年くらいから?

 石狩沼田で1人、秩父別で2人増えたが、寂しい車内のままで定刻の6時44分に深川に到着した(平日は、通勤通学客で混むのであろう)。
 数分の乗り換えで札幌方面行の各駅停車に乗り換え、7時10分に滝川到着。
 前回は路線バスで十津川町役場まで移動したが、今日は時間があるため徒歩での移動である。

@石狩川の向こうに虹が

 50分ほど歩き、新十津川駅に到着した。1日に1本しか列車が来ない駅として変に有名になってしまったが、それを逆手に取って、観光色を強く出して売り出しているようである。1本だけの列車は9時28分に到着して10時00分に出発予定であり、まだ1時間半もあるためさすがに人気は少ない。

@前回訪問時(2年前)にはなかったパネルも登場

 それでも、8時半頃から自動車利用の訪問客がちらほら現れ、9時前には観光案内所の人が窓口の準備をし始め、さらには警備員も数人現れ始め、だんだんと賑わい始めてきた。窓口では記念切符以外にも、「終着駅まんじゅう」なんていうものまで、様々なものを売っているようである。
 遠くから汽笛が聞こえてきて、9時28分、今日の「最終列車」が入線してきた。

@今日最後の列車

 列車から降りてきたのは鉄道ファンばかりである。彼らは記念品などを購入し、写真を撮り、また車内に戻ってきた。地元の人はゼロかと思っていたが、出発の5分くらい前におばあさんが乗り込んできた。この列車が最終列車であるから、帰りは、バスか何かを利用するのであろうか。
 定刻に出発。件のおばあさんは、隣りの下徳富で下車していった。定期的に利用しているのかどうかは不明であるが、「ちゃんとした乗客」がいたことが驚きである。
 その後も、列車は長閑な田園風景の中を走っていった。最初は曇っていたが、石狩当別が近づくにつれて晴れ間が多くなっていった。

@見納めの風景?

 留萌本線や札沼線の一部が廃線になるのは、2020年頃と言われている。「もういいか」と思いつつも、結局あと1回くらいは来そうな予感もする。

 

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