「動かない列車」に乗る旅 Part8
■はじめに
鉄道車両を再利用した宿泊施設等に泊まるこのシリーズであるが、過去には以下のような内容で実施してきている。
1回目(2010年10月)
・阿久根ツーリングSTAYtion(鹿児島県阿久根市)
※2014年閉鎖
・ブルートレインたらぎ(熊本県多良木町)
・TR列車の宿(宮崎県日之影町)
2回目(2017年5月)
・トレインホステル北斗星(東京都中央区) ※2021年7月営業休止
・ブルートレインあけぼの(秋田県小坂町)
3回目(2019年11月)
・ブルートレイン日本海(岩手県岩泉町)
(2008年に閉鎖された小岩井農場にある「SLホテル」の外観も見学)
4回目(2021年9月)
・モーニングサラダ(山梨県富士河口湖町)
・民宿あずさ号(長野県上田市)
5回目(2021年11月)
・くじゅうエイドステーション(大分県玖珠郡)
・汽車ポッポ食堂と民宿[別邸](大分県中津市)
6回目(2022年6月)
・北斗星スクエア(北海道北斗市)
7回目(2022年11月)
・長瀞オートキャンプ場(埼玉県秩父郡長瀞町)
今回の宿泊先は、日之影にある「列車の宿TRAIN
INN」である。しかし、これは1回目に宿泊した「TR列車の宿」のことである(名称が少し変わっただけ。旧名称もまだ使われている)。
なぜ再訪することにしたのかというと、前回は1人部屋(3,500円)に泊ったためである。値段は安かったが、鉄道の名残は窓や網棚くらいであり、それ以外は「小さなビジネスホテル」のようであった。そこで今回は、4人部屋(10,000円)を予約してある。こちらは、運転台や料金箱など、ほとんどそのままに残っているため、いかにも「鉄道車両に宿泊する」という雰囲気を実感することができる。
@日之影温泉駅にて
■2023.7.1
夏も近づいてきて旅行シーズンでもあり、普通に九州まで行ったのでは大散財である。ということで、往路は特典航空券、復路はLCCである。
7時45分発の宮崎行は条件付き運行であったが、雷雨の合間を縫って着陸することができた。しかし、着陸直後の大雨(雷)の影響で陸上での作業ができず、20分ほど待機である。
10時過ぎにやっと乗降口が開き、機外へ。10時13分発の列車には間に合うことができた。待ち構えていたのは特急「にちりん」であるが、宮崎までは乗車券のみで乗ることができる。
@特急に乗る
しばらく乗車して、宮崎に到着した。今日は延岡まで移動するため、このまま乗り続けて特急料金を払ってもいいのだが、急いだところで延岡でやることもないので、宮崎からは各駅停車に乗り換えである。
節約した特急料金の使い道は、宮崎名物の椎茸めしである(本当は途中下車できない距離であったが、駅員さんが改札の外に出してくれたので買うことができた)。
@特急より駅弁
弁当を頂いてから、10時59分に宮崎を出発した。長閑な景色であるが(リニア実験線跡もある)、雨で窓が雨粒だらけであるので、結局ウトウトとしてしまった。
延岡到着後はスーパーに行って夜用食材を買ったりして、14時00分発のバスに乗り込んだ。本来はこんな早い時刻に移動する必要はないが、日之影駅前を経由する一般道ルートが災害により迂回中であるため、バイパス経由に乗って青雲橋から歩く必要があるためである。
@高千穂線代替ルートバス
延岡市内を抜けると、五ヶ瀬川に沿いつつ走っていく。時折、廃線となった高千穂線の路盤を確認することもできた。
バイパスを経由して、青雲橋には14時55分に到着した。それにしても、延岡駅乗車時からここまで乗客は私1人だけである(近郊利用もなし)。高千穂線廃線の直接的な理由は災害であるが、仮に災害がなくても継続することはできなかったであろう。
時間もあるため、道の駅へ行ってみた。
@展望台より
かなり昔に来た際はここで「うずら」の丸焼きを買ったことがあるが、道の駅自体がかなり新しくなっていた。残念ながら、うずらは売っておらず。
ここはかなり高い位置にあるため、前回「TR列車の宿」に泊った際は歩いてここまで上がってくる必要があったが、軽トラのお婆さんが乗せてくれた思い出がある。
今日はまず、降りて行くだけである(明日、登る必要があるが)。急な坂を降りて行くと、見えて来るのは高千穂線の廃線跡である。
@廃線
やっと下界に降り、日之影駅跡へと向かう。宿泊手続きをする前に、駅跡にある施設(温泉と売店がある)に入って行った。というのも、ここには高千穂線に関するミニ鉄道資料館があるからである。
@ミニ資料館
見学後は、別の小さな建屋にある宿泊受付に行って手続きをした。宿泊料10,000と、温泉(3割引で350円)を現金で支払い、部屋へと向かった。1人部屋に泊った際は入口が普通のドアであったが、4人部屋は本来のドアであるのが嬉しい。
@乗降口そのまま
室内(というか車内)に入ると、やはり目立つのは運転席である(1人部屋は運転席がない部分で、2人部屋は運転席部分がトイレになってしまっている)。洗面台があるのが通常の車両とは違うが、料金箱は動かせることができ、運転室内に入って座ることもできる。
@そのまま
座席部分は豪華な広い机になっているが、個人的には座る部分は鉄道のものを残してくれても良かったかもしれない(古くて座り心地は悪いであろうが)。網棚はそのまま残っており、窓枠もそのままである。なお、「簡易宿泊所」という枠組みなので、アメニティやバスタオル等はないため、持参が必要である。
@居室部分
テレビや冷蔵庫、ポットやお茶セットなどがあり、必要なものは揃っている。1万円も出せば2食付きの旅館に泊まれるが、私の目的はまったく違うところにあるから問題はない。
なお、あれこれ改造されているこの車両であるが、ちょっと面白いのがトイレの部分である。ウォシュレット完備のトイレであるが、本来の乗降部分であるため、ドアがそのまま残っているのである。もちろん開かないが、少しく面白い空間となっている。
@出入口
この時点でまだ4時過ぎであるため、テレビで野球中継を見ながらしばし休憩。その後は町内にあるコープに歩いて行って追加の総菜を買ってから部屋に戻り、それから温泉へと行ってみた。トロリとしたお湯であり、充分に温まることができた。
@温泉券と部屋の鍵
温泉の後は、することもないので18時台から呑み始めである。テーブルに延岡などで買い揃えた刺身やチキン南蛮などを並べて、一献の開始である。
列車自体は動かないが、窓の外は川が流れているし、なんだか個室寝台車にでも乗っているような雰囲気である。
@豪華個室寝台?
■2023.7.2
早朝に起きて、この旅行記の作成などをして時間潰し。そして高台にあるバス停を目指して、6時50分過ぎに部屋を出た(鍵は、テーブルの上に置いておけばいいとのこと)。
最初の10分は平たんな道であるが、その後は恐ろしいほどの坂道を登って行かなければならない。
@残念ながら
大汗をかきながら歩き続け(残念ながら、今日は拾ってくれる軽トラは現れなかった)、青雲橋バス停まで40分以上掛けて歩いて行った。
今日はここから高千穂まで行き、観光をした後は高千穂から延岡まで戻る旅程になっている。高千穂から延岡までは片道だけでも1,890円するため、昨日のうちに延岡の案内所で1日乗車券(2,000円)を買ってある。
@日付を入れてもらう前
7時45分にやって来たバスに乗り込む。今日は私以外にも乗客がいたが、それも1人だけであった(私を入れても2人だけ)。
バイパスを快走して、高千穂バスセンターには定刻から3分遅れた8時13分に到着した。
さて観光であるが、8時18分発のバスがあり、これに乗れば高千穂大橋まで行けることが今朝のネット検索で判明。一日券を最大利用してそのバス(日曜は1日に2本しかない)に乗り、大橋まで行ってから歩いて戻りつつ、あれこれと観光をした。
@高千穂神社
さて、観光のメインはこれらの橋や神社ではなく、高千穂線の廃線跡を利用して観光鉄道を運行している「高千穂あまてらす鉄道」に乗ることである。唯一の心配は天候であったが(昨日は九州各地で災害クラスの大雨であった)、幸いにも晴れてきている。
スマホでこの鉄道のウェブサイトを確認すると、今日は9時40分の朝一便から運行とのこと。ということで、9時過ぎには駅に到着して切符を購入した。
@無事に入手
係員によると、手前側の線路を歩いて車庫まで行って見学をしても良いとのことである。車庫に向かってみると、動態保存されている車両が2両係留されていた。これらを使った運転体験もできるが、それなりに高価である。
@運転も興味あり
これから乗車する車両はこれらの通常の車両ではなく、観光用に特別に製造されたものである(グランド・スーパーカートと名付けられている)。しばらくすると、その車両が入線してきた。2両編成であり、その前後に小さな動力車が付いている。
@こんな車両
定刻の9時40分に出発。私は2号車になってしまったため先頭側の写真は撮れないが、戻りの際は先頭になるよう、一番後ろ側の席に陣取った。
この列車は高千穂橋梁(現役時代は日本一の高さがあった鉄道橋梁)まで往復するが、その途中には2つのトンネルがある。トンネル内では、イルミネーションによる演出があった。
@このような感じで
トンネルを過ぎてしばらくすると、天岩戸駅跡である。ここを過ぎると高千穂橋梁になるが、ここで一旦停止をして、風速を確認することになる。一定の風速を超えると橋には入ることができずに引き返すことになってしまうが、幸いにも今日は無風であった。ということで、無事に橋へと進んで行った。
橋梁の中央部分で、しばらく停止となって撮影タイムである。双方は壮大な景色が広がり、車両の中央部分はガラスになっているので下を覗き込むことも可能である。
@高所恐怖症の人にはお勧めできません
説明等が終わってからは、橋を渡り切って次のトンネルの手前が終点となり、そこからは折り返して戻ることになる。
ということで、やっと私の席が先頭になった。あれこれ写真や動画を撮りながら、高千穂駅跡へと戻って行った。
@天岩戸駅跡
10時12分頃、高千穂駅跡に到着した。この後は路線バスとJRを使って宮崎空港へ移動して、15時45分発のLCCで成田へ飛ぶだけである。
なおJRの高千穂線であるが、ずいぶん前に乗ったような記憶がある。写真データを探してみると、今から23年前の2000年(平成12年)のことであった。まだネガフィルム時代でたくさん撮影できなかった時代であり、車両の写真は1葉だけしかなかった(橋からの写真は皆無)。
@これだけ