「動かない列車」に乗る旅 Part3

■はじめに
 3回目となる「動かない列車に乗る旅」であるが、過去の2回では以下の宿泊施設を訪問している。
1回目(2010年10月)
 ・阿久根ツーリングSTAYtion(鹿児島県阿久根市)
 ・ブルートレインたらぎ(熊本県多良木町)
 ・TR列車の宿(宮崎県日之影町)
2回目(2017年5月)
 ・トレインホステル北斗星(東京都中央区)
 ・ブルートレインあけぼの(秋田県小坂町)

 3回目の今回は、岩手県の「ふれあいらんど岩泉」にある「ブルートレイン日本海」である。寝台特急「日本海」で使用されていた開放型A寝台とB寝台車両があり、泊まれるようになっている施設なのだが、その存在自体は前々(2014年オープン)から知っていた。ではなぜ訪問が後回しにしたのかというと、開業以降しばらくは「1両単位」でしか予約を受け付けていなかったのである。つまり、私のような一人旅派にとってはハードルが高い宿泊施設であった(もちろん、1両分の料金を支払えば泊まれるが、現実的ではない)。
 しかし、昨年からBOX貸(寝台単位)が可能になったと耳にしたので、さっそく予約して訪問することとした。

@ふれあいらんど岩泉にて

■2019.11.3
 岩手北部方面はここ数年内でも何度となく来ているが、値段優先で検討した結果、いつもJALパック(三沢空港往復+宿泊)であった。しかし今回はホテル不要ということで、単純往復の料金を比較して鉄道という結論に至っている。「鐡旅」などというウェブを作成していながら、盛岡までの新幹線に乗るのは実はかなり久々である(前回がいつだったのかすら思い出せない)。
 ネットで25%割引の切符を買っておいて、上野発7時22分の「はやぶさ」で盛岡へ向かった。

@東京ではなくて上野から(少しでも安くするため)

 盛岡着は10時01分。値段優先で列車を選んだため、ここで2時間半以上の暇がある。ということで、徒歩圏内をあれこれと一般観光した(今日は文化の日ということもあり、それが理由で無料になっている施設もあった)。
 時間は昼時である。盛岡と言えば麺類(冷麺、蕎麦、じゃじゃ麺)が有名であり、じゃじゃ麺のとある有名店に行ってみたがやはり大行列であったので諦め、駅で売っていたパン(これも有名)に落ち着いた。

@これで充分

 12時40分発のJRバス(龍泉洞行)に乗り込み、岩泉方面へと向かう。岩泉には何度となく行っているが、盛岡から直接アクセスするのは初めてである。
 腹もくちくなったので少しウトウトとしたが、目を覚ますと岩洞湖付近はもう紅葉真っ盛りであった。

@学校のような道の駅で休憩

 岩泉まで残り10キロになると、旧岩泉線の路盤が寄り添うようになり、あちこちで橋脚を見ることができた。岩泉線は、災害→運休→(復活せず)廃止というように、なし崩し的に廃線となったため、「これが最後」という意気込みで乗車していないのが心残りである。

@南無

 14時43分、岩泉橋バス停で下車。ここで降りたのは、まず駅跡に行くためである。4年前の訪問時(拙文「久々の岩泉線」参照)はまだレールが残っていたが、それも撤去されてしまい、雑草の大群に押し寄せられて廃墟に向かいつつあるようであった。

@南無その2

 その後は、古い街並みを適当に歩いた。ここを歩いたのは初めてであり、過去の訪問では国道沿いしか知らかなったので、意外な感じがした(観光向けに整っている感じがした)。それらを写真に収め、スーパーで夜用の地元刺身を買い、散策は終了である。

@横道に入ったら、こんなものを発見

 さて、続いては今回の旅のメインである宿泊先へと向かう。手頃なのは路線バスであるが、問題は本数が少ない点である。次のバスは17時半頃であり、「18時までチェックイン」に間に合うが、もう日も暮れて真っ暗になってしまう。ということで、歩くことにした。幸い、紅葉の季節であるし、それらを眺めて歩けば6キロはすぐである。

@こんな景色を見ながら

 ひたすら歩き続け、16時半頃に「ふれあいらんど岩泉」に到着した。もう日も暮れ始めており、チェックインはさておきまずは写真撮影である。

@ご対面

 あれこれと撮影してからセンターハウスでチェックイン手続きをした。利用料金は、たったの2,040円である(BOX料金(A寝台の場合は上下段)が1,020円と、1人の利用料金が1,020円)。貸切ならば2万8,560円にもなるので、BOX貸「様様」である。
 そして車内へ。7年前、予約しながらも「直前の運休」で諦めざるを得なかった「日本海」の開放A寝台であるが(拙文「惜別『きたぐに』『日本海』」参照)、やっと乗ることができた(動かないが)。

@車内の様子

 今日の予約は3組だけであり、よって他の宿泊者とは離れているため、耳栓は不要のようである(東京の「北斗星」に泊まった時は、他人の大いびきのせいでほとんど寝られなかった)。

@下段の様子

 車内には家庭用の冷暖房も付いているので、晩秋の東北であるが寒さもなんとかなりそうである。なお、この手の宿泊施設の場合トイレは使用不可になっているのだが、ここのトイレは現役時代と同様にまだ使用可能であった。

@洗面所も現役同様

 あれこれ車内を見学してから、上段に寝具をセットした。シャワーは別棟にあるということで、そこでお湯を浴びる。
 その後は近くにある道の駅へ行ってお土産+冷たいビールを買い、また戻る。せっかくのA寝台であるから下段の席で一献、と行きたいところであるが、車内は飲食禁止である。ということで、センターハウスにある休憩所で夕食をいただいた(テレビやレンジがあるので、こちらの方が快適ではあるが)。
 酔ってから自席に戻り、小窓のある上段で就寝。

@小窓

■2019.11.4
 6時頃から明るくなってきたので、外に出てあれこれ撮影(表紙写真など)。朝シャワーを浴びてから鍵を返し、道の駅の前にあるバス停から6時36分発の路線バスに乗り込んだ。
 6時51分、岩泉小本駅に到着。前回訪問時は建設中であった立派な駅舎が完成していた(駅だけではなく、役所関連施設も含まれている建物であるが)。

@以前とは大違い

 さて、問題はここから先の乗り継ぎである。本来なら7時01分の三陸鉄道で南下する予定であったが、先般の台風による被害で運休となってしまったのである。しかし代替案はあり、路線バスがある。
 ということで7時20分発の宮古駅行バスに乗り込んだ。三鉄の乗客分も乗り込むのかと思ったが、そうではなく、乗客は私を含めてもたったの2人であった。

@バス旅に

 ぼんやりと景色を眺め続け、駅までは行かず宮古市内のバス停で降りて散策を兼ねて観光してから宮古駅へと向かった。
 続いて乗るのは、JR山田線である。10時26分発の快速に乗り込んだ。
 定刻に出発。この路線は山深いところを横切って走るため、紅葉を見続けていれば飽きることはない。

@天気も良し

 11時33分に盛岡に到着し、続いて乗るのは11時45分発の「小岩井農場まきば園」行の直行バスである。勘の良い人ならば、私の意図がここで分かるであろう。
 1970年代の終わり、国鉄中村駅を嚆矢として数多くの「SLホテル(蒸気機関車+廃車となった寝台車)」が全国各地にタケノコのように完成したが、バブル崩壊と共に衰退し(そもそも、寝台車両は「狭い」「プライベートがない」ものであり、宿泊には向かない)、1990年代にはほとんどが営業を休止してしまった。最後まで頑張っていた小岩井農場のSLホテルも、2008年をもって営業を終えている。
 しかし、小岩井農場のSLホテルは、まだ車両の撤去はされていないという。ということで、それを見に行くのである。
 件のバスに乗り、農場へ。

@良い天気なり

 代替休日+晴れということで、家族連れで大賑わいであるが、私は人気(ひとけ)のない農場の片隅へ足を進めた。情報通り、まだSLと客車は健在であった。

@泊まってみたかった

 10年以上も前から営業していないため、客車の塗装はかなり剥げてきている。しかも、冬用のイルミネーションが準備中であり、余計に不格好になっていたのは愛嬌である。

@内装はどうなっているのだろう

 ミッションを終えてからは、家族連れのようにソフトクリームを舐めながら園内をあれこれ歩いて観光をして、13時40分のバスで盛岡駅に戻った。

 さて、後は帰京するだけである。帰りの切符は35%割引であり、たったの9,270円である。この程度なら「次回も新幹線で」と思えるが、しかしこの「トク35」はかなり取り難いもので、ネットでの売り出し日直後に売り切れてしまうことが多い(今回も、第二希望で取れたのが奇跡的だと思っている)。次回、北東北を訪問する際は、果たして航空パック旅行か、はたまた新幹線か、もちろんそれは料金次第である。

@久々の東北新幹線でした

 

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