久々の岩泉線

■はじめに
 年末年始の豪州旅行以降、その翌週のインドネシア旅行はマレーシア航空の大遅延でキャンセルとなり、そしてその後はしばらくご無沙汰であった。しかし、何週間もどこにも行かないのは精神上よろしくない。
 取り急ぎ、1月末に2月21日の「ほくほく十日町雪祭り」号の切符を押さえたが、それまで何処も行かずに待ってもいられない。そこで、JALのサイトで安いパックツアーがないかを探してみた。季節柄南方面より北方面の方が安かったが、北海道はそれなりに観光シーズンであるため、激安というほどでもない。結局、安さ優先で探し続けて、辿り着いたのが三沢空港であった。
 続いては、鐡ネタを考えなければならない。そこでふと思いついたのが、岩泉線である。この路線は国鉄時代から大赤字であったが、「代替の道路が整備されてない」というわけのわからない理由によってJR時代まで生き延びた路線である。しかし、平成22年に災害(土砂崩れ)によって不通となってしまい、その後は代替バスによる運行が続き、昨年(平成26年)4月には正式に廃止となってしまい、その後は路線バスに引き継がれている。鉄道はもうないが、久しぶりに岩泉駅を訪れてみようと思う。
 ついでに、つい3か月前に三陸方面に行った際に(拙文「東北沿岸の旅」参照)、「リゾートうみねこ」が強風の影響で運休になってしまい乗車できなかったので、そのリベンジも果たしてこようと思う。

 ちなみにパックツアーでの宿泊先であるが、この手のもの(航空会社の公式サイトでのツアー)であると、たいていは都会のビジネスホテルである(温泉宿もなくはないが、1人利用だとかなり高価になってしまい、格安パックの利点がなくなってしまう)。今回も「盛岡駅前辺りのホテルかな」と思っていたが、あれこれ探してみたところ、龍泉洞温泉ホテルのビジネスプラン(2食付)に行き当たった(往復航空券込みで2万8,700円)。当該宿泊プランを独自に申し込んでも7,500円くらいするようであるから、充分にお得感はある。迷わずそこを選択して決済した。

@在りし日の岩泉線(岩泉駅にて。1998年撮影)

■2015.2.14
 京急で羽田空港へ向かい、三沢空港へ。「雪のため引き返すことがあります」とアナウンスされていたが、10分ほどの遅れだけで無事に着陸した。連絡バスに乗って三沢駅に向かったが、10時40分発予定の「青い森鉄道」の八戸行が、20分ほど遅れているという。

@バスが到着したのは、十和田観光電鉄の旧駅前

 乗り継ぎに余裕を持たせてあるため今日中に岩泉に着くことは可能であるが、いずれにせよ30分以上も待たなければならない。そこで時間潰しとして思い付いたのが、先ほど降り立った十和田観光電鉄の駅跡である。十和田観光電鉄自体は平成24年に廃止になってしまったが、ボロボロの駅舎自体は残っており、その中に味わいのある蕎麦屋が未だ営業中なのである。これまで何度か使用したことのある駅であるし、件の蕎麦屋で土産用の七味を買ったこともあるのだが、蕎麦自体はまだ食べたことがない。本来の旅程では盛岡で時間があったため「そこで冷麺でも」と思っていたが、旅程自体が少し狂ってしまったし、寒い季節であるから温かい蕎麦はうってつけである。

@こういう店構え

 「スペシャル蕎麦」を頂いてから、11時にやってきた快速列車に乗って八戸へ向かった(見慣れない車両だったが、どうやら1年前に導入された新型車両とのこと)。八戸には11時16分に到着。本来は11時07分発の「はやぶさ」に乗る予定であったが、次の列車まで待たなければならない。時刻表を見ると次は12時16分発ということで、中途半端に1時間の待ち時間が出来てしまった。しかし焦る必要もないので、駅構内や駅近くの観光センターなどを適当にぶらぶらと歩いて観て回った。

@無計画の旅

 12時16分発の新幹線に乗り込み、約30分で盛岡に到着した。昼過ぎになって、やっと盛岡到着である。ケチケチしないで東京から新幹線に乗ってくれば3〜4時間早く来ることができるが、飛行機の方が安いし、それにマイルも溜まるので、ついこういう旅ばかりになってしまう(盛岡・八戸方面まで「片道1万円ぽっきり(対象列車限定)」なんて企画乗車券を出してくれれば、迷いなく新幹線を選ぶのであるが)。
 駅近くにある大型スーパーへ行き、徳用割れ煎餅などを買ってから駅に戻った。次に乗るべきは山田線である。

@快速「リアス」

 13時51分に盛岡を出発。市街地を抜けてしばらくすると、峠越え区間へと入っていく。山田線のこの部分は、人工物が少ない所を走行する区間としては日本でも指折りの箇所である。小まめに続くトンネルから、ひたすら続いて行く森林などを眺め続けた。
 下界へ降りてきて、15時32分に旧岩泉線との接続駅である茂市に到着した。私が大学院生時代に青春18きっぷを使って安旅行をしていた際、この駅の待合室で野宿をしたこともあるため、思い出深い場所である。

@すでに代替バスが停まっている

 小さなマイクロバスに乗り込んだが、意外(?)に先客は3人もいた(普通に考えればとてつもなく少ないが、岩泉線自体が超赤字路線であったため、もっと少ないと思い込んでいた)。車内にあるバス時刻表と私が持参した時刻表とでは岩泉到着時刻が変わっており、どうやら昨年12月に改正したようであった(もしくは、冬用のダイヤという可能性もある)。
 バスは定刻の15時40分に出発した。最初の停留所である刈屋(旧岩手刈屋駅)には9分後に到着したが、旧駅舎もまだ残っている。

@旧駅前に横付けする

 続いての停留所である中里も旧駅(旧中里駅)であり、数少ない乗客のうちここで1人が下車した。しばらく走行し、和井内(旧岩手和井内駅)でさらに1人下車してしまい、乗客は私を含めても2人だけになってしまった。
 整備されていた道路も次第に細くなっていき、16時18分頃、左手に駅ホーム跡が見えてきた。これは、「秘境駅」として一部マニアには有名になっていた押角駅である。周囲に集落等がないため、バスは何事もなかったかのように通過していった。

@案内標識だけ撮影

 押角駅の付近を過ぎ、鉄道用の押角トンネル入口がある辺りを過ぎると、道路はかなりの急勾配の峠道になっていった。この悪路では、やはり鉄道との差は歴然である。岩泉線の営業収支がもう少し良ければ、「バス代行」など許されなかったであろう(乗客が片手以下だからこそ、このような悪路を経由するバスが認められるのであろう)。バスは嶺の高い位置まで登って行くため景色も良いが、路線バスなので途中で停まってくれたりはしない。
 峠を越えてしばらく下って行き、久々のバス停である宇津野を過ぎてからやっと人家がちらほらと見えるようになってきた。道路と鉄道路線は完全には平行していないため、脇道に逸れるような感じで大川の集落に入り、旧大川駅の目の前で最後のおじいさんが下車してしまい、ついに乗客は私だけになってしまった。

@旧大川駅近くの鉄橋

 大川以降は、何度となく岩泉線の路盤(コンクリート橋や鉄橋)と交差していった。峠の前半と後半では人の流れも変わるため、どこかで別の乗客が乗って来るかと思っていたが、結局最後まで私だけであった。
 私が乗車しているバスは岩泉線の代行となるものであるが、終着は旧岩泉駅ではない。岩泉駅は集落の西側の外れにあったため、バスは町内の役場や図書館などを経由し、病院が終着地点となっている。
 とりあえず終着まで行き、そこから宿の送迎で温泉宿へと向かった。一風呂浴び、一献して就寝。

@ビジネスプランならば十分な内容

■2015.2.15
 8時過ぎに宿を出て、歩いて龍泉洞へ向かう。有名観光地であるが朝一番であるため、観光客は私だけであった。
 洞内の綺麗な水などを堪能してから宿へ戻り、歩いて市街地へと向かった。というのも、岩泉駅跡を確かめておきたいからである(送迎してもらわなかったのは、徒歩旅を楽しむためである)。
 10時過ぎ、随分と久々である岩泉駅に到着した。

@懐かしい

 しかし、鍵が掛かっており中に入ることはできなかった(観光センターは土日祝日は閉っているとのこと)。仕方がないので駅の周囲をあれこれ見て回ったが、路盤は当然の如く雪に埋もれており、駅名標なども外されてしまっている。
 廃線は仕方ないにしても、災害→成行きで廃止となってしまったため、中途半端感が残ってしまったことは否めない(ただし、正式な廃線の場合は最終日にマニアが殺到してしまい、それはそれで歪んだものになってしまうが…)。

@現状

 10時41分の路線バスに乗り込み、小本で下車。ここからは三陸鉄道で久慈まで北上するが、私はほんの3か月前に乗車したばかりである。
 小本といえば、三陸鉄道の田野畑から小本まで不通だった頃に代替バスに乗って来たこともあるが(拙文「惜別「江差線」(そして三陸にも寄ってみる)」参照)、思い出のある駅舎はすべて撤去されており、バス停のあった辺りも含めて全体的に工事中であった。

@駅舎建設中

 11時36分発の1両の久慈行に乗り込む。ここから先は色々と見どころがあるが、自分の旅行記で何度となく書いているため、省略。久慈には定刻の12時42分に到着した。
 三陸鉄道の久慈駅には、「うに弁当」で有名な店がある。しかし、昨今のグルメブームや朝のドラマの影響で、ほとんど入手不可能な代物となってしまっている。今日も当然のように「売り切れ」の札が掛かっているが、毎度毎度素通りするのもアレなので、今日は蕎麦を注文してみることにした。

@ほたて蕎麦(490円)

 蕎麦を頂き終わったが、それでも「リゾートうみねこ」の出発までまだ2時間ほどある。久慈といえば琥珀が有名であるが、私は装飾品には興味がないため、近場の道の駅に行って土産を買ったりして時間を潰した。土産といっても、「ほうれん草・しいたけ・卵・惣菜(イカの煮たもの)」であるから、お土産というよりは「スーパーで買い物」と言った方が正しいが。
 駅へ戻り、改札が始まるのを待ち、やっと「リゾートうみねこ」への乗車である。私は八戸線自体に何回か乗車しているし、車両にしてもこの地域の「リゾート○○」にありがちなもので目新しくはないが、前回は「東北沿岸を北上する」というテーマの最後の部分でこれに乗車できずに歯抜けになってしまったので、今回はその埋め合わせである。

@うみねこ

 定刻の14時56分に出発したが、私がいる3号車には4人くらいしか乗ってない。もとより人気のある路線ではないし、それに観光客の目は、少し前(14時20分)に久慈を出発した「東北エモーション」(車内で高級料理を味わえる)の方に向いている(現に、そちらは大盛況であった)。
 出発後しばらくの間は地味な景色が続くが、その後は海が見え始める。目の前に豪華な料理はないが、「リゾートうみねこ」でも充分である。

@海+うみねこ(本物)

 この路線に乗るのは4〜5回目くらいであるが、いつも遅れたりする(前回に至っては運休)。今日は快晴だから大丈夫かと思っていたが、やはり風の影響で対向列車が遅れてしまい、その影響で10分強ほど遅れているようである。

@蕪島に近づくと、もう八戸は近い

 17時少し過ぎに八戸に到着し、青い森鉄道と路線バスを乗り継いで三沢空港へ向かった(無事に乗り継げたが、やはりこの季節の東北地方の鉄道+飛行機の組み合わせは、少しく冒険的である)。
 今回の旅は特に内容が濃いというわけではなかったが、急に思いついた割には、なかなかの充実度合であったと思う。

 

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