惜別「江差線」(そして三陸にも寄ってみる)

■はじめに

 JR北海道の江差線の木古内より先(木古内−江差)は、2014年5月限りでの廃止が決定している。廃線直前はそれを惜しむマニアで大混雑するので、それを回避するため私は今年の3月に訪問したばかりである。(江差線ぶらり訪問」 http://tadanokokuden.web.fc2.com/esashi.htm )。
 その頃はまだ雪がかなり残っている時期であったので、今回は「本当の最後」ということで、紅葉の時期に訪れることにした。なお、それだけでは面白みがないので、復路では三陸に寄り道をして復興具合などを見てくることにしている。
 利用する切符はJR東日本の「三連休乗車券」で、東北地方の第三セクター鉄道にも乗れるだけでなく、なぜかJR北海道の津軽海峡線と江差線も乗車できるものであり、まるで私の今回の旅行のためにあるような切符である。

@湯ノ岱駅

■2013.10.12
 今日は三連休の初日である。この日の午前中に移動したのでは、飛行機は料金が高いし新幹線は指定席が取り難いので、11日(金)の夜便で羽田空港から青森空港へ移動し、1泊3,500円以下の安ホテルに投宿している。
 朝、目覚めていると、天気予報に反して晴れであった。
 8時05分の津軽線各駅停車で蟹田へ移動し、そこから特急で木古内へ移動した。蟹田から木古内までは普通列車が走っていないので、青春18きっぷと同様に三連休乗車券でも特急券なしで自由席に乗れるのである。晴れていた空はいつの間にか大雨になり、その後は雨が上がったり再度降り出したりを繰り返している。
 木古内着は9時46分であった。ここで2時間以上の時間があるので、鐡ネタを求めて散策することにしている。

@新幹線駅(と高架)建設中

 土曜日も建設作業中である新幹線の高架を潜り抜け、木古内町公民館へと向かった。ここで鉄道に関する展示会が行われているという情報を得ていたためであるが、確かにフロアの片隅に江差線に関する展示コーナーがあった。これだけに限らず、新幹線開通に合わせた町おこしのような企画をあれこれ町で考えているようであり、苦労の跡が伺える。

@江差線が廃止されると、このコーナーも充実されてしまう?

 その後は公民館の裏山に登って、展望台から街全体の景色を眺めてから駅前へと戻った。
 次の目当ては、「駅前飯店急行」という食堂である。一部マニア(?)には有名な店なのであるが、かなりご高齢で少し癖のある方が切り盛りしていた店であり、メニューはやきそばだけである(詳細は各ブログ等を参照してください)。以前はその名の通り駅前にあったが、駅前の整備事業に伴い店が移転したとのことであった(廃業することも考えたそうであるが、継続を決意したとのこと)。先ほど移転先の前を通りかかった際に、ほんの1週間前に再開業した旨の貼り紙を確認している。
 11時の開店直後に行ってみたが、確かに癖のありそうな感じの女性で、直接対応するのは少し大変かもしれないが、新聞報道(店に貼ってあった)によると再開後しばらくは息子さんが手伝いに来てくれているということで、その人が接客をしていたので客とのやりとりもなんとか(?)なっていた。

@美味しく頂きました

 木古内駅へ戻り、まずは売店で木古内の隠れた名品である「おっぱいまんじゅう」を購入する(画像は後ほど)。
 その後は、ホーム上で函館からやってくる江差行の入線を待った。11時43分頃にやってきたが、なんと2両連結ではないか。廃線を惜しむ観光客が増えているという報道もあったので、それへの対応であろうか。

@まさかの2両連結

 車内はすでに6割ほど埋まっていたが、なんとか窓側の席を押さえることができた。出発直前には青森からやってきた特急から数多くの乗客が乗り換えてきて、乗車率は100%近く(空席ほとんどなし)になった。
 列車は定刻の11時48分に木古内を出発した。満員の車内ではあるが、マニア集団が醸し出す「殺伐とした」雰囲気はあまり感じられない。というのも、いかにも鐡な感じの人は1/3程度で、残りはカップルや家族連れなのである。中には幼児連れで駅弁を開いて楽しんでいる人もいて、鉄道旅行も少しは様子が変わってきているようである。

@町も営業努力をしている模様(左側の中吊り広告)

 境内の中を線路が横切っている禅燈寺などを通り過ぎ、しばらくすると峠越えになる。天候は相変わらず、曇ったり晴れたり大雨になったり、を繰り返している。風も強く、雲の動きも目で追えるほど速い。
 沿線には、いわゆる「撮り鉄」と言われる人があちこちでカメラをこちらに向けている。彼らは撮影後すぐに車で疾走し列車を追い越し、次の撮影ポイントでまた待ち構えている。ちょっと見ていて危なっかしい(道路交通法上)。
 私が江差線の最終訪問をこの時期にした一つの目当ては紅葉であったのだが、今年は全国的に10月は異常気象(猛暑)であり、北海道もその例外ではなく、紅葉にはまだまだ手前であった。

@残念

 江差には12時55分に到着した。駅構内には臨時の売店が開設されており、特別に作られた駅弁や記念品が売られており、マニアと家族連れがそれらに殺到していた(前者は、記念切符等を買うために駅窓口にも殺到していた)。
 さて、前回はすぐに折り返してしまったので今回はゆっくり江差観光をするという手もあるが、やはりすぐに折り返すことにしている。目的は、かけ流し温泉である。
 13時07分発の列車に乗り、湯ノ岱で途中下車した。歩いて10分くらいのところに日帰り温泉施設があるためである。

@いざ、温泉へ

 ほぼ満席の車内であったが、途中下車したのは私を含めて3人程度であった。しかも、私以外は撮影が目的の途中下車のようであり、温泉施設へ向かって歩き出す雰囲気はない。鉄道好きで温泉も好き、という人種は案外に少ないものなのかもしれない。
 歩くこと10分で、「国民温泉保養センター」に到着した。入浴料はたったの350円であり、浴場の床は沈積した温泉成分で鍾乳洞のようになっており、鉄分(鉄道好きの「鉄分」ではなく、温泉成分としての鉄分)多めの湯であり、私好みの温泉であった。
 しかも、休憩所では江差線に関する展示会が催されており、過去に走行した臨時列車のヘッドマークが数多く展示されているではないか。まさかの鐡スポットとの巡り合いである(「ホームページ等にアップしないで」との注意書きがあったので、写真は載せません)。
 湯上り後は、木古内で購入したおっぱいまんじゅうを「こっそりと」頂く。

@ドキドキ…

 しばらくテレビを見たりして休んでから、湯ノ岱駅へと戻った。次の木古内行は16時47分発であるが、それまでこの何もない集落で待っていても仕様がないので、15時20分発の江差行に乗って上ノ国で下車し、今晩の食材を探すことにしている。
 件の列車に乗り、上ノ国で下車。駅近くにスーパーがあり、ラベルに「上の国沖」と書いてある超地物の刺身2点を手にすることができたので、個人的には100点満点である。
 目的(江差線訪問、温泉、地の食材)はすべて果たしたので、16時24分発の列車に乗り、木古内と蟹田で乗り換えて青森へと戻った。

@蟹田の駅長(本物ではない方)は、生ものからゆるキャラに変化した模様

■2013.10.13
 さて、今日から2日間かけて三陸を訪問しつつ帰京することになっている。メインは江差線であるが、旅としてのウェイトは今日以降の方が大きな比重を占めている。
 6時38分の青い森鉄道の快速に乗り、八戸で乗り換え、陸奥湊には8時17分に到着した。目的は館鼻岸壁朝市である。
 全国に有名な朝市はたくさんあるが、中には観光客目当てが中心で朝市本来の体を成していないものも多い(マイナス評価に関しては具体例を挙げることを避ける)。私個人的な感想であるが、ここ八戸の館鼻岸壁朝市は、その規模といい内容といい、本来的な朝市として充分に魅力的なものであると言える(高知の日曜市も充実しているが、あちらは夕方までやっているので「朝市」ではない)。

@朝市なので、本当に9時頃には大部分が閉店してしまう

 お目当ては、うに飯である。実はこれから久慈駅へ行く予定であり、そこの名物駅弁である「うに弁当」(1,470円)を注文しようと数日前に電話したのであるが、今春からのNHKドラマの大ヒットの影響のおかげで、予約することができなかったのである。その代替というわけでもないが、この朝市で仕入れるのが目的である。
 無事にそれを手にして(たったの250円。もちろんうには超少量)、その他揚げ物などを今晩用としていくつか仕入れておいた。
 その後は40分ほど歩いて蕪島まで行き、神社を参拝してから鮫駅へ行った。

@鮫駅なので鮫がいます

 10時35分の列車で、久慈方面へと向かう。途中、対向列車が線路上にあった木と衝突したとのことで30分近く遅れてしまったが、なんとか三陸鉄道との接続には間に合うことができた。
 さて、三陸鉄道であるが、例のドラマの影響でとてつもないことになっていた。車両はまさかの3両連結で、しかも超満員である(通路もかなり埋まっている)。私はJRから乗り換えたから席を確保することができたが、久慈駅から乗車した人は30分以上も並んでいたとのことである。

@大混雑(になる直前)

 以前この路線に乗ったのは震災前であり、いかにもなローカル線で車内も空いていた。この手の第三セクターは経営に苦労しているところも多く、ドラマの影響とはいえ一時的に収支が良くなることは好ましいことである。ただ、のんびりとした旅を好む私としては、人混みや大声を出す子供など、それらに対して若干食傷気味になる点は否めない。
 出発後は、ドラマの撮影に関連した説明なども車内アナウンスでしてもらえる。そのドラマを1回も観ていない私にとってはピンとこないが、丁寧な演出であるといえよう。

@景色が綺麗なところでは一時停車も

 列車は定刻より3分ほど遅れて、終着の田野畑に13時28分に到着した。ほとんどの観光客は折り返しの列車に乗る(もしくは待機していた観光バスに乗る)ので、ここから先の不通区間の代替バスに乗り込んだのは私を含めて12〜3人であった。
 列車の遅れに合わせ、バスも3分ほど遅れて出発した。出発後しばらくは、山道のようなS字カーブの連続を走り続ける。「陸の孤島」であった三陸沿線の集落にとって、鉄道がいかに重要な交通手段であったのかを思い知らされる道であった。

@小本に到着

 バスは小本に14時頃に到着したが、次の宮古行の列車の出発は15時05分である。代替バスとの連絡をもう少し考慮してほしいところであるが、全線開通するまでの辛抱であろう。
 することもなく、駅近くを適当に散策する。すぐ近くに小さな復興商店街があったので、そこで夜用の食材(豆腐田楽など)を買った。今日は北上に泊まる予定であるが、ホテル近くのコンビニなどで買うよりは、こういったところでお金を落とした方がいいと思ったからである。

@この先、来年(2014年)4月に開通予定(現在は折り返し設備)

 宮古行は定刻に出発、その後は宮古でJR山田線に乗り換え、盛岡で東北本線に、そして北上にある1泊3,000円の安ホテルに到着したのは19時過ぎであった。

■2013.10.14
 6時前にホテルを出発し、北上発6時13分の一ノ関行に乗車。一ノ関で気仙沼行に乗り換え、8時39分に気仙沼に到着した。なぜこのような回りくどいルートで三陸沿岸に戻ってきたのかというと、JR山田線の宮古から釜石までと三陸鉄道の南リアス線はまだ復旧しておらず、すべて代替バスになってしまうからである。宿泊できる場所も限られるので、三連休乗車券を活用した迂回ルートにしたのであった。

@晴れ(気仙沼駅)

 さて、今日のお目当てはJRの休止区間(実質廃止)を走行しているBRT(bus rapid transit)である。
 まずは8時59分発の盛行のBRT(大船渡線代替)に乗り込む。大船渡線は道路とかけ離れた場所に敷設されているところも多いため、しばらくは専用道路(元は線路であったところ)ではなく一般道を走行していく。小友の停留所からは、専用道路を走るようになった。
 終点の盛には10時15分に到着した。しばらく町内を散策し、駅へ戻って10時45分発のBRTに乗り込んだ。往路は10人くらいの客がいたが、今度は私1人だけである。

@出発前

 大船渡などで1〜2人増えただけで、BRTは閑散としたまま走り続けていった。
 このまま気仙沼に戻ったのでは芸がないので、途中下車をしていくつか観光することにしている。まずは、臨時停留所である「奇跡の一本松前」で降りて、今回の震災で有名になった松の木を見に行った。やはり名所となっているようで、観光客もそれなりにいる。

@震災と津波の象徴

 このまま気仙沼行のBRTを待ったのでは時間が余りすぎるので、再度盛行のバスに乗り込み、高田病院前で降りた。次に目指すのは神田葡萄園である(陸前高田付近で何か惹かれる観光スポットがないか必死になって探した結果、やっと見つけたものである)。
 バス停から10分ほど歩いて、件の葡萄園を発見した。試飲もできるそうなので3種類ほど呑み、赤ワインとサイダー(後者は飲み歩き用)を購入した。これで目的達成である。

@無事ゲット

 12時46分発のBRTに乗り、気仙沼へ。約25分の乗り継ぎで、柳津行のBRT(気仙沼線代替)に乗り込んだ。
 柳津行は13時55分に出発したが、大船渡線代替のBRTとは違って今度はすぐに専用路線へと入っていった。しかしそれは一駅区間分だけで、またすぐに一般道へ戻ってしまった。その後は、専用道路と一般道を繰り返していく。専用道路の部分では、駅舎やホームが少しだけ残っている駅もあった。

@まさに「駅」

 基本的に専用道路を走るのであるが、高架や橋脚が流されてしまっている部分については如何ともしがたく、そういう箇所では一般道を走らなくてはならないようである。

@こういう部分ではお手上げ(一般道を走る)

 なお、専用道路の部分ではトンネルもあるので行き違いができないが、トンネルに限らず各所に信号があり、「閉塞区間」を作って同じ区間に同時に進入することがないようにしているようであった。
 柳津着は、定刻から少し遅れた15時55分であった。この駅は元は普通の中間駅であったので、駅前には何の商業施設もなく、寂しいことこの上ない。
 さて、後は鉄道に乗り、前谷地と小牛田と仙台で乗り換えて東京を目指すだけである。

@終着駅となった柳津駅

 

■ 鐡旅のメニューへ戻る

 「仮営業中」の表紙へ戻る

inserted by FC2 system