江差線ぶらり訪問

■はじめに
 JR北海道の江差線の木古内から先は、なぜ廃止を免れているのかが不思議なくらい乗客が少ない区間である。廃止されない理由はただ単に線名呼称の問題であり、江差線の五稜郭から木古内までが、本州と北海道を結ぶ幹線として機能しているからである。そういうわけであるから、江差線の木古内から先とほぼ同じ条件であった松前線(木古内から松前まで)は、もう25年以上も前の1988年に廃止されてしまっている。
 ただし、その「寄らば大樹」であった部分について、目前に迫った北海道新幹線の開通に際して第三セクター化されることになってしまった。北海道(自治体)としても、五稜郭から木古内までは補助が出来ても、その先の部分までは手に負えないという感じになってしまっている。
 2011年には北海道(自治体)が、2012年にはJR北海道が沿線地元に対してバス転換を提案し、つい先日(2013年3月1日)には、JR側が9億円という具体的な支援額を提案して地元自治体もそれに同意し、「2014年初頭に廃線」という案がいよいよ具体化してきてしまった。
 まだ先のことではあるが、以前に乗車してからずいぶんとご無沙汰しているので、まだ雪のあるうちに訪問してみることにした。
(実は3月の1周目に予定していたのだが、東北北部と道南地方の猛吹雪の影響で旅行が中止となり、2週間ぶりの仕切り直しである)

 今回、江差線だけでは味気ないので、まずは青森に行って五能線を乗ったりすることにした。
 出発日となる2013年3月16日は、ダイヤ改正の日である。前日付けで200系新幹線が引退し、そして16日からはE5系「はやぶさ」が世界最速タイである時速320キロでの営業運転を開始し、さらに秋田新幹線にはE6系がデビューすることになる。
 ホームページに「鐡旅」と名付け、そして3月16日に旅立つのであれば「どちらに乗るのか」と問われること必至であろうが、実は私は飛行機でのパック旅行にしてしまっている。その理由は、「金と時間」という現実的なものである。
 旅費に関して、航空会社のホームページからパック旅行を組み立てて申し込んだのであるが、料金は青森市でのホテル1泊を含めて2万3,900円である。これでは、逆立ちしても新幹線利用は敵わないであろう。時間にしても、往路はいいが、復路で渡島半島から帰ってくるにはやはり飛行機が最速である。
 新しい新幹線などは、そのうち(北海道に延伸でもしたころに)乗ればいいだろう。

@無くなるまでに、もう一度は来たい

■2013.3.16
 羽田離陸は、1人の乗客が現れなかったため10分ほど遅れた(1〜2人が遅れることはたまにあるが、今回は現れないまま出発することになるという、珍しいパターンであった)。
 その影響で、青森空港着も遅れてしまった。今回はまず大館方面へ行くのであるが、青春18きっぷを活用するため弘前行の連絡バスではなく青森行に乗ることにしている(その方がバス代が安いので)。しかし、バスの出発が15分以上遅れてしまい、青森発10時35分の各駅停車に間に合わなくなってしまったので、仕方なく弘前行のバス乗り換えた。
 しかし、弘前行のバスが出発した後しばらくするとアナウンスがあり、「浪岡」に停まるという。浪岡といえば、JRの駅があるところである。地図もないので位置関係もわからないが、ええいままよで降車ボタンを押して降りてしまった(一人旅ならではの判断である)。右も左もわからぬ交差点から、道路標識などを頼りに歩くこと数分、JR浪岡駅に辿り着くことができた。
 結局、青森に行くよりこちらの方がバス代は安かった。駅舎内には地元特産のりんごや繁殖しているフクロウの展示もあり、暇つぶしにもちょうど良い。

@建物の中にりんごの木がある

 浪岡発11時03分の(青森を10時35分に出発してきた)各駅停車に乗り、晴れたり大雨になったり雪になったり再度晴れたりと慌ただしい景色を最前方で眺めること1時間と少し、秋田犬で有名な大館に着いた。
 ここに来た理由は、「鶏めし」を食べるためである。1年ほど前に寝台特急日本海の乗り納めを計画した際にここの弁当を電話予約したのであるが、日本海が運休になってしまい、弁当屋さんがわざわざ携帯に連絡をくれて教えてくれ、おかげでキャンセル等の手続きをスムーズにできたといういきさつがある(拙文『惜別「きたぐに」「日本海」』参照)。というわけで、次回近場に来ればぜひ買おうと思っていたのである。
 弁当も買えるのであるが、本店にはお食事処もあるので、今回はそちらにした。何より、鶏めしが温かいのが良い。

@値段は弁当と同じ850円

 食事が終わった後は、市内を適当にぶらついた。駅近くには、5年前に休止してしまった小坂鉄道の踏切も雪に埋もれた状態で残されている。
 雷が鳴り風向きも怪しくなってきたので、急いで大館駅へと戻った。

@乗らずじまいでした(旅客営業は20年近く前に終了していた)

 大館からは各駅停車で東能代へ向かい、売店で今晩用の納豆(檜山納豆)を買ったりして、秋田方面からやってきた「リゾートしらかみ」号に乗り込んだ。
 普通席の海側は確保できなかったが、ボックス席(個室)の海側の席を押さえてある。繁忙期なら見知らぬ家族などと一緒になってしまい気まずいが、オフシーズンでもあるしその可能性は低いであろう(結局、青森到着まで個室を独り占めすることができた)。

@五能線観光の定番(前回乗車時との違いは、「15周年」記念のステッカー)

 しばらくすると、左手には海が広がり始める。快晴ではないが、時折それらを写真に収めたりした(リゾートしらかみについての感想はネット各所に数多あるので、控えめにしておく)。 

@惜しい(けど綺麗)

 強風の影響で、青森着は35分くらい遅れた20時少し前であった。青森駅近くには遅くまで営業しているスーパーがないので、コンビニやファミレスのテイクアウトを適当に買い漁り、雪が降り始めた中、パックで指定されているホテルに逃げ込んだ。

■2013.3.17
 今日もまだ余裕があるので、午前中しばらくは津軽半島を彷徨うことにしている。
 6時18分の蟹田行に乗り込み、定刻の6時55分に蟹田に着いた。
 話は逸れるが、北海道新幹線開通の際に、青函トンネル部分の速度が140キロに制限されるという話があり、その理由が「貨物列車との行き違いで安全を保つため」ということとなっている。素人の私は「貨物なんて夜中(新幹線が走らない時間帯)にでも走らせればいいし、新幹線を犠牲にする必要はないだろう」と思っていたが、今朝の蟹田までのこの短時間の間に、3つの長大なコンテナ貨物列車とすれ違った。貨物が衰退している中、これだけ物流の動脈を成しているのであり、そうそう簡単には減らすことができないのであろう。
 それはさておき、彷徨ついでに、久々に三厩まで往復した。

@何年ぶりか(おそらく、15年ぶりくらい。今日は快晴)

 蟹田に戻ってからは、しばらく街中をぶらついた。蟹田とは何かと縁のある街で、昨年も春先に旅館に泊まってここの名物である蟹としろうおを食べた。特に目立つような観光地はないが、今日は街中を20分ほど歩いて、高台の上にある太宰治の碑を見て歩いたりした。

@絶景(風で振り落されたら大変)

 駅近くへ戻り、地元の食材を売っている市場で葉ニンニクやニンニク味噌などを買う。それでもまだ時間があるので、事前にネットで調べておいた食堂で「からあげ定食」を頂いた。ボリュームがすごいとの記事を読んでいたが、まさにその通りであり、お腹はかなり苦しくなった。

@ご飯はお茶碗ではなく丼サイズです(これに味噌汁も付いてたったの490円)

 駅へと行き、10時56分発の函館行特急に乗り込む(蟹田−木古内は各駅停車が走っていないため、青春18きっぷでも特急自由席に乗車可能である)。
 木古内到着後は、すぐの乗り継ぎで1両だけの江差行へと乗り換えた。車内は16〜17人で賑わっているが、ほとんどが鉄関係の方(ファンもしくはマニア)である。

@この行先票も余命1年以下か…

 列車は、定刻の11時48分に出発した。しばらくは民家などが目に入ってくるが、ほどなくすると人工物のまったくない所を走り続けるようになる。吉堀を過ぎると峠越えになり、トンネルを抜けてもしばらく同じような風景が続いて行った。雪に埋もれた木々を見て、私は深名線の北母子里から白樺方面に冬場に乗った時の記憶をふと思い出した。

@窓が汚れていたため写真の質は良くない

 湯ノ岱で人家が多くなり、宮越以降は地形もなだらかになって駅ごとに2〜3人乗ってくるようになった。それぞれ、「あら、いっぱい」「あら〜」と声に出しているということは、平日はよほどガラガラなのであろう。
 しばらくすると左手に海が見え始め、列車は定刻の12時55分に終着の江差に到着した。あと1日余裕があれば、江差を散策したり(初夏のウニ漁解禁以降なら奥尻に行ったり)したいが、今日は滞在12分でとんぼ返りしなければならない。

@終着駅

 江差からタクシー等で移動したのはほんのわずかで、ほとんどの人がそのまま折り返しの列車に乗り込んだ。私もその一員となり、往路とは逆側の席に座ってぼんやりと沿線を眺め続けた。
 木古内では1時間ほど乗り換え時間があったため、市内を適当に歩いてスーパーで自分用土産(ジンギスカンのたれやインスタント焼きそばなど)を買ったりした。
 市内の橋を歩いて渡っていると、ちょうど14時44分発の江差行が走ってくるのが見えた。これに乗ると今日中に東京や札幌には戻ることができないためか、車内に鉄道ファンはほとんどいないようで、先ほどと違って閑散としていた。

@お見送り(後方に見える高架は建設中の北海道新幹線)

 私も、あとは函館へ移動し、空港から最終便で東京へ戻るだけである。

 

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