【大人の社会科見学C】立山カルデラ砂防体験学習会
■はじめに
立山黒部方面で有名な鉄道関連ツアーと言えば、関西電力による「黒部ルート見学会」であろう。トロッコ列車の終着駅である欅平から先の専用路線に乗って黒部ダムまで行くものであり、しかも無料である。ただし競争倍率は高く、私も過去に応募してみたが撃沈であった。なお、次年度からは有料化されるということなので、参加はしやすくなるであろう(お金を払えば参加できるため)。
上記ほど有名ではないが、一部の鉄道好きには有名なツアーとして、立山カルデラ砂防体験学習会がある。これは富山地方鉄道の立山駅から先、砂防工事用のトロッコに乗車できるというもので、一番の見所は「18段スイッチバック」である。参加費は3,000円のみであり、やはり競争倍率は高いが、ダメ元で応募してみたところ、なんと9.4倍(私の参加する日の倍率)を潜り抜けて当選してしまった。私は1班で、往路はバスで復路がトロッコである。できれば往路がトロッコで登って行く2班の方が面白そうであるが、贅沢は言っていられない。
富山へ行くとなれば、最安は「お先にトクだ値」の3割引である。しかし、復路は空席があるものの、前日移動の往路で席が見つけられない。往路を1割引にすると往復合計で2万円を超えてしまうため、千円ほど追加して大人の休日倶楽部限定の「北陸フリーきっぷ」にすることにした。これならば多少高くなるが、前日に北陸地方を鉄道散策できる。
・過去のシリーズ
【大人の社会科見学@】新幹線車両基地見学ツアー
【大人の社会科見学A】貨物線乗車体験ツアー
【大人の社会科見学B】会社線車両基地見学ツアー
@水谷連絡所にて
■2023.8.1
もう何度も購入している「北陸フリーきっぷ」であるが、都区内発(22,410円)だけでなくて埼玉県内(南限は川口及び戸田公園)発もあり、値段は21,390円である。その差は1,020円。私の定期が使える都区内某駅から川口までは片道230円であるため、安くなるのは明らかである(新幹線も、大宮までは低速なので時間差もあまりない)。今回は時間に余裕があるため、初めてこちらを購入してみた。
浮かせられる額は小銭程度であるが、これは実益よりも、それを机上で計算することの楽しさのためであると言える。
@お得で楽しい
大宮で新幹線に乗り込み、金沢へ。
さて鉄道散策であるが、当初は城端線観光なども考えてみたが、7月後半から全国各地で猛暑であり、とても歩く気になれない。ということで、ただ単に越美北線(九頭竜線)を乗るだけにした。
金沢から特急サンダーバードに乗って福井へ移動し、しばし駅前ビルで時間を潰してから九頭竜線乗り場へ。1両編成なのは当然であるが、まさかの「ほぼ満席」であった(出発時には、立つ人も)。ということで、先頭に立つことにした。
@1両編成
12時50分に福井を出発。この路線は先月の豪雨で運休となっていたが、7月29日に再開したばかりである。路盤を確認するためか、保線員が同乗してやはり先頭に立って機器類で確認したり動画を撮ったりしている。
運行再開の工事に使用したのであろうか、途中の美山ではディーゼル機関車と貨車(チキ)が係留されていた。
@珍しい
25キロ制限の徐行区間が多数あるのは元からであるが、越前薬師を過ぎると明らかに色が違う路盤が見えてきた。恐らく、被災が酷かった区間であろう。
@復旧後
14時23分、九頭竜湖に到着した。ゆっくりしたいが、折り返しの出発までは10分しかない。よって、前回訪問時と同様に隣接する道の駅で夜用食材(舞茸ご飯)を買い、駅前にある恐竜(動いて声を出す)を見たら、もう終了である。
なお今回は、舞茸ご飯だけでなく、天ぷらもあったので買ってみた。
@ここに来ると必ず買うご飯
福井へ戻り、特急と新幹線を乗り継いで富山に移動して、安宿に投宿した。
■2023.8.2
安宿は富山地方鉄道の稲荷町駅に近いため、今日はそこから乗車である。7時過ぎに宿を出て駅に向かい、係留されている元近鉄の二階建て車両の写真を撮ったりしてから、券売機で立山までの切符を買った(今日は普通の切符を買うのが一番お得である)。
どんな車両が来るのか待ち構えていると、元西武のレッドアロー号であった。元ニューレッドアロー号も昨年から走り出したということなので、この車両もいつまで走るか不安である。
@まだまだ現役
元東急の車両はロングシートであるが、元西武などはクロスシートであるのが有難い。7時15分に出発した後は、のんびりと景色を眺め続けた。
立山に到着する直前(本宮駅以降)の10分間は草生してきて景色の良い区間である。そこで最前列に立って眺めていると、ブレーキが少し掛った。見てみると、鹿の親子である。
@山の証左(書類の上辺りを注目)
8時18分に立山に到着し、その足でそのまま砂防博物館へ。8時30分に受付が開始され、参加費3,000円を支払って資料一式と名札を受け取った。
最初は、ボランティアガイドによる博物館内の説明である(有料ゾーンにも入ることができた)。博物館内にもトロッコ用機関車があるが、今日は本物に乗ることができる。
@機関車
トロッコ関連資料のコーナーもあったが、時間がないため、そこは戻って来てから見ることにした。
トイレを済ませ、足裏の洗浄をして(異種を国立公園内に持ち込まないため)、ヘルメットを受け取ってバスに乗り込んだ。
@一式
9時05分に博物館を出発。ボランティアの説明員は、クマ避けスプレーや鈴、蜂対応のグッズなど、様々なものを持ち込んでいる。車内では、砂防に関する様々な説明が行われていた。
じきに車は、有料道路の林道へと入って行った。時折道路に沿うようにシェルターのようなコンクリートがあるが、これは冬季に人道として利用されていたものとのこと(なお、現在は使用されていない)。
@歩道のようなもの
有峰記念館前でバスは停まり、ここでトイレ休憩である。私は、湖の写真を撮りに行った。
同所を出発して、折立のゲートから先は、一般車両は通行止めである。なお、ここから先は工事区間となるため、バス内でもヘルメットを着用する必要がある。
なお参加者はバス乗車前に靴の裏を水で奇麗にしたが、車両もそうする必要がある。ということで、プールに入る前の消毒液のようなところに、バスも入って行った。
@ここを通ります
そこを過ぎてしばらくすると検問所があり、その先はもう立山カルデラ内である。
かなり急なコンクリートの道路を走り続け、最初の目的地は六九谷展望台である。今日は晴れているだけでなく雲も少なくて、何度も来ているはずのボランティアガイドや博物館職員(撮影をしていた)も、「今日はすごい!」と口を揃えていた。標高が高いため、晴れの日でもどうしても雲が掛かってしまうとのこと。
@絶景
同所を出発した後は、車内から泥谷えん石などを見学し、続いての下車地は立山温泉跡である。以前はかなり大規模な温泉で昭和初期などは賑わったようであるが、アルペンルートの開通などにより下火になり(災害により登山道もなくなってしまい)、昭和40年代に閉鎖されてしまったとのこと。
まずは吊橋を渡って泥鰌池に行き、そこから戻ってきて温泉跡へと歩いて行った。「秘湯ブームの今ならもう一度」などと思うが、ここにアクセスする手段がないから難しいであろう。
@風呂跡
同所の次の目的地は、国の重要文化財にも指定されている白岩堰堤である。その規模は非常に大きく、高所恐怖症の気がある私は下を覗き込むだけで勇気がいる場所である。
@雄大
その後、天涯の湯の駐車場で2班と合流した。これから2班はバス旅となり、我々1班は徒歩+トロッコとなる。
係員に誘導されて、歩いてトロッコ乗り場へと向かった。トンネルを通るが、足元にはレールがあるため、以前はトロッコ用のトンネルであったことが分かる(砂防博物館の展示によると、ここは「旧治山事業専用常願川線」であったとのこと)。
@廃線跡
トンネルを抜けたところで、昼食休憩となる。通常は芝生で食べるらしいが、今日は猛暑(下界ほどの酷暑ではないが、かなり暑い)であるため、事務所のフロアを開放してくれていた。
持参したものをそこで頂き、その後は付近の散策である。芝生内にもレールがあったりして、以前はかなり広い操車場であったことが伺える。
(なお、現在の砂防ダム用資機材は、午前中に走った林道で運ばれているとのこと)
@レールだらけ
これから乗るトロッコは、小さい機関車と客車3両で編成されている。機関車には、「薬師」のヘッドマークが付いている。レール幅は、黒部峡谷鉄道などのトロッコよりもさらに狭いたったの610mmである。樺平までは1929年に開通し、そして水谷平まで完成したのが1965年。林道が1974年に開通するまでは、ここに至る唯一の交通手段であったという。
@ミニ機関車
13時30分に係員から乗車時の注意事項アナウンスがあり、その後トロッコに乗車した。私は、一番後ろの車両の左側に真っ先に陣取った。というのも、スイッチバックが多いため、その際はそこが先頭になるのと、左手の方が、景色が大きく開けるからである。
さて、前置きが長くなってしまったが、やっとトロッコ列車の旅である。
@出発
出発して10分もすると、もうスイッチバックである。この路線のメインである樺平の「18段スイッチバック」であり、とにかくスイッチバックの連続である。
@ひたすら続く
なおスピードであるが、登るときが18キロで下るときが15キロ。下るときの方がスリップの危険性があるため、慎重に運転するようである。
下を除くと、たくさん線路が見えるが、どれも同じ路線でこれから通過予定である。写真では上手く伝わらないが、とにかく線路だらけである。
@○のところに線路あり
18段のスイッチバックの間に、200メートルも下るという。以前は手動で動かしていたポイントも、今は自動で切り替わるという。
@目視で確認可能
客車にドアはあるが、そこを閉めてしまうと蒸し風呂になってしまうため、鎖が1本掛けられているだけである。おかげで、撮影はしやすい(ただし、線路脇の設備との距離が近いため、手や頭を出すのは厳禁である)。
とある地点で、手動でポイントが変えられて列車は引込線に入って行った。どうやらここは行き違いができる場所であり、なんと別の車両とここですれ違うという。
@やって来ました
まさかの離合であったが、あちらは恐らく食料を運搬しているとの説明であった。
18段スイッチバックの最後の方では、保線作業を見ることもできた。
@ご苦労様です
やっと18段を降り終え、樺平連絡所を通過した。
その後は川に沿って平地になり…とはならず、しばらく走行すると、またしてもスイッチバックの連続である(それも数か所というレベルではない)。もう「お腹いっぱいでしばらくスイッチバックはいらない」くらいである。
@ひたすら続く
かなり降りてきて川も近づいてきて、鬼ケ城連絡所を通過。やっと普通の路盤かと思いきや、トンネルを抜けるとまたしてもスイッチバックの連続である。
@スイッチバックが終わらない
その次の桑谷連絡所を過ぎると、しばらくして当然スイッチバックである(もう写真は省略)。
路盤もかなり平坦になり、中小屋連絡所を過ぎてしばらくすると、左手に砂防博物館などが見えてきた。そして、そこへ行くために、最後はもちろんスイッチバックである。
@結局最後も
15時12分頃、スイッチバックだらけのトロッコの旅は終了した。噂には聞いていたが、本当にスイッチバックだらけである。下りだけであったが、それでも充分に堪能できた(こうなると、登りも経験したくなってくるが)。
予定より早く着いたため(当初予定は15時30分頃到着)、15時33分発の特急に乗って帰ることもできるが、急いでも仕様がないため、博物館に行ってトロッコ関係展示を見ることにした。
@せっかくですから
この学習会であるが、鉄道好き(特にスイッチバック)ならば、参加は必須の内容であろう(ただし、抽選に当たらないと参加できないのが玉に瑕であるが)。参加料金をもっと高くしても良さそうであるが、そうなると「学習会」ではなくて「ツアー」になってしまうので、頃合いが難しいところなのかもしれない。
16時00分発の列車に乗り、富山で新幹線に乗り換えて、後はひたすら帰るだけである。
@樺平連絡所