【大人鐡34】錦川鉄道「利き酒列車」編
■はじめに
全国津々浦々に「食事付き観光列車」はあるものの、このシリーズも30回を超え、有名な列車についてはほぼほぼ乗車してしまった。残すところは、地方の私鉄や第三セクター鉄道が不定期に運行させるものだけであり、それらに関する情報をまとめたサイトもないため、各社のウェブサイトを直接閲覧するか、フリーワードで検索して探すしかない。
1月29日に乗車予定であった由利高原鉄道の「日本酒ソムリエ列車」がコロナの影響で運休になってしまったため、2月末頃に「日本酒列車」などのワードでネット検索を続けてみたところ、検索日のつい数日前に募集を開始したばかりであった錦川鉄道の「利き酒列車」に行き当たった。ということで、早速予約である。利き酒と言っても少量をちびちび飲むのではなく、各1合ずつで5種類、つまり5合(一升瓶の半分)も日本酒が提供される。特製弁当と往復券も付いて、7,500円也。
問題は、本州の端までどうやって移動するか、である。「国鉄がSLやまぐち号を山口線に走らせたのは、新幹線に延々と乗らせるため」という逸話もある通り、東京から新岩国まで新幹線で往復したのでは4万円を超えてしまう。そこで、いつものパターンで航空会社のパック旅行を検索した。岩国空港は安いのがなかったが、往復とも広島空港にすると、広島駅前のホテル1泊が付いて約28,000円。よって、これに即決である。
また、時折実施しているサブテーマ「大人グルメ」として、宮島の「あなごめし」を頂いてくることにした。
@岩国駅にて
■2022.3.26
今朝は7時00分の便で広島に飛ばなければならないが、最寄駅から始発の電車に乗っても羽田空港に到着するのは6時33分である。しかも、京急空港線内で行き違いのため2分遅れたため、駅到着後は必死に走ってなんとか荷物検査前のゲートを6時38分に通過した(あと2分で締め切られるところであった)。
急いで搭乗ゲートに向かい、機内へ。外を見ると、なんだか人が多く、しかも動画などの撮影クルーまで駆り出されている。調べてみると、今日は「鬼滅の刃デザイン2号機」の就航日であるとのこと。つまり、この広島便が初便であるという。
@偶然
広島へ飛び、7分遅れの8時37分に到着した。前の方の座席であったため、8時45分発の白市駅行バスには無事に乗り込むことができた。白市駅まで移動して、9時11分発の列車に乗り込んだ。
今日はここから青春18きっぷでの移動となるが、岩国に直行しても時間が余ってしまうため、途中の西条で下車することにしている。
ほどなくして到着した西条で下車。もう何度か散策したことがある町であるし、美酒鍋(日本酒だけで煮込んだ鍋)も頂いたことがあるが、今日はこれから利き酒列車に乗るわけであるから、その前座としては丁度良いであろう。
@しかし大雨
駅に戻り、広島行の列車に乗車。広島での乗り継ぎ時に少し買い物をして、岩国行に乗り込んだ。
定刻から少し遅れた11時45分、岩国に到着した。利き酒列車の受付は12時頃からということなので、いったん改札を出てコンビニに寄ったりしてから再度駅構内に戻り、0番線へと向かった。
@事前に送られてきている一式
仮設受付で7,500円を支払い、弁当を受け取った。列車の入線は12時16分頃で、出発は12時32分であるという。
この手の観光列車の場合、座席が指定されているのが普通であるが、今日の列車は自由席であるという。もう何度も乗った路線であるし、しかも今日は大雨であるが、どうせならば川が見える右側の座席が良い。ということで、並ぶことにした。
待つことしばし、大雨の中、2両編成の列車が入線してきた。
@普通の車両
車内に入ると、ロングシートの部分には日本酒の段ボールが山積みになっていた(乗車人数×5本であるから、大量である)。クロスシート座席の右側、窓と相性の良い位置に陣取った。
さて、出発までまだ時間があるが、まずはビールである(最初の1杯はビールが良い、ということで、岩国駅で買ってある)。広島駅で買っておいた広島風ツマミと一緒に、一献の開始である。
@まずはこれから
出発前から呑み始めていると、日本酒が一斉に配られた(表紙写真)。せっかくであるから1本ずつ紹介したい。
まずは、明治4年創業の酒井酒造の五橋(ごきょう)である。岩国といえば錦帯橋、錦帯橋といえば5つの橋、ということで五橋である。
@五橋
続いては、明治10年創業の八百新酒造の雁木(がんぎ)である。日本酒にそれほど詳しくない私でも、耳にしたことがある銘柄である。ちなみに雁木のラインナップには、純米酒しかないとのこと。
@雁木
次は、江戸中期創業(山口の酒蔵では最古)の堀江酒場の金雀(きんすずめ)である。雀の字のフォントが独特であるため、最初は読めなかった。
@金雀
4番手は、黒背景で緑文字なので写真では見えなくなっているが、明治初期創業の森乃井酒造を昭和34年に継承したという村重酒造の金冠黒松(きんかんくろまつ)である。
@金冠黒松
そして最後は、私のような日本酒素人でも知っている、旭酒造の獺祭(だっさい)である。創業は昭和23年と比較的新しいが、岩国に限らず山口県内の大きな駅や空港の売店では、結構目立つ位置で販売されている酒である。純米大吟醸であるのも嬉しい。
@獺祭
なおこれら日本酒はビニール袋に入れられて配付されたが、袋の中には箱が1つ入っていた。開けてみると、利き酒列車用のお猪口である。過去の余所様のブログでは木製の枡が配付されたような記述もあったが、実用性が高い(車内で呑みやすい)のはお猪口であろう。
@撮影が難しい
さて、ビールも早々に片付け、日本酒である。私は酒呑みなので4合瓶くらいなら平らげられるし、ちょっと頑張れば(?)5合も可能である。しかし、5合も呑んだのではその後の移動が嫌になってしまうので、今日は2〜3本呑んで、残りは持って帰ろうと思う。
車内での1本であるが、まずは獺祭、と行きたいところであるが、純米大吟醸であるし、持って帰って冷やして呑みたい気もする。ということで、まずは雁木から呑んでみることにした。純米吟醸であり、甘くて飲みやすい代物であった。
@小さいテーブルはこんな状態に
12時32分に岩国を出発。車内では観光アナウンスもあり、西岩国駅舎に関する説明などもあった。
続いては、弁当の出番である。幕の内的なランナップであるが、ツマミとしては充分である。
@弁当
2本目の日本酒は、金雀にしてみた。よく見ると瓶の左下に「御花見列車」とあるので、特別に用意されたものなのであろうか。
ここまで、景色の写真は皆無である。右手には川も見えてきているが、いかんせん大雨であるし、窓も曇っているので奇麗な写真は撮りようがない。
北河内で列車行き違いのため停車+換気のためドアも開けるということで、ホームに降りることができた。やっと撮影タイムである。
@対向列車がやって来た
同駅を出発後も、ひたすら日本酒である。3本目は、金冠黒松にしてみた。これまで2本の甘さとは違い、辛いというか、語弊はあるかもしれないが酸味というか、表現できないような特徴があった。
なお景色が広がるのは右側であるが、左側にも時折景観スポット(滝)がある。しかし、過去の乗車時に見たことがあるが、非常に小さい滝である。
ただし、今日はこの大雨である。その影響でかなり「滝らしい滝」になっており、乗務員同士も「今日は見ごたえあるな〜」と言い合っていた。
@今日は滝っぽい
続いての停車駅は「清流みはらし」駅である。この駅は、定期列車はすべて通過であり、観光列車しか停車しない駅なのである(駅にアクセスする道路等もないため、この駅に下車できるのは観光列車の乗客のみ)。よって、過去に何度も乗車して来た路線であるが、この駅で降りるのは初めてである。この駅に下車できるというのも、利き酒列車の一つの売りどころである。
@初めての下車
駅近くには滝もあり、今日は水量も豊富であった。
同駅を出発し、ひたすら日本酒を飲み続け(4本目以降は持って帰ることにした)、13時50分頃に終着の錦町に到着した。
さて、ここでやるべきことは、「鉄印マイスター」(第三セクター鉄道の「鉄印」をすべて取得した人が得られる肩書)の特典でもらえるペーパークラフトである。窓口へ行き、無事に頂いた。
@ありがとうございます
今日の目的はこれで終了である。この先、廃線跡を利用した「とことこトレイン」もあるが、過去に乗車経験があるため割愛である(過去分については、拙文「【petit-tetu】瀬戸内鐡散歩」及び「【第三セクター応援鐡旅A】近畿山陰及び山陽編」参照)。
というわけで、とんぼ返りである。14時19分発の岩国行は、先ほどまで乗っていた2両編成そのままであった。なんと数組は、そのまま再度酒盛りをするようである。
定刻に錦町を出発。景色は往路の「巻き戻し」であるが、大雨は止んでいる。
@桜は3分咲き
先ほどまで降っていた大雨の関係で徐行した区間があったため、岩国には9分ほど遅れた15時37分に到着した。2分の乗り継ぎで広島方面に行く快速に乗り込み、宮島口で下車した。このまま宿泊先である広島に行っても時刻が早すぎるので、青春18きっぷを活用して宮島に寄ることにしている(そして弁当も入手しなければならない)。
@島へ
雨後のため靄っているし、大鳥居は改装中のため覆われていて片鱗も見えないし、これが初訪問なら踏んだり蹴ったりだが、もう何度も訪問している宮島であるから問題はない。
適当に散策してから船で戻り、予約しておいた駅弁を買ってからJR駅に向かい、横川で途中下車してスーパーに寄って安食材を買い揃えてから広島に向かった。
広島駅からは、歩いてパック旅行に含まれているビジネスホテルへ。さて、宮島で買っておいた「あなごめし」とスーパー食材で一献である。
@久々に
やはり、安定した美味さである。レギュラーサイズで2,000円を超えるため、気楽には買えないが、値段が高いだけのことはある。巷にある穴子関係は、甘ったるいタレが大量に掛かっていたりして辟易とするが、それがまったくなく、香ばしい味である。
■2022.3.27
今日はただ帰るだけである。どこかに日帰り旅行をして夕方に帰るのがベストであるが、そうするとパック旅行の値段が上がってしまうため、12時50分の便で戻らなければならない。広島の近場で、鉄道関係の小ネタということで、ヌマジ交通ミュージアムに行くことにしている。
8時前にホテルをチェックアウトして、経費削減で城北駅まで歩き、そこからアストラムラインに乗って長楽寺で下車した。ミュージアムまでは、歩いて数分である。
ここに来た目的は、広電の被爆電車である。
@今日は晴れた
ここはかなり昔に訪れたことがあるはずである。施設名称が聞き慣れないが、案内板を見ると、以前は「広島市交通科学館」であったとのこと。たぶん、その時代に訪問したのであろう。
さて、時刻はまだ9時台であるが、そろそろ空港に向かわなければならない。アストラムラインで新白島へ行き、JRに乗り換えて白市に行き、空港バスに乗り換えるだけである。
@貨物停車中(新白島駅にて)