オーストリアで鉄道博物館とプチ登山鉄道

■はじめに
 久々のオーストリア出張である。前回も少し時間があったのでセメリンク鉄道に乗車したが(拙文「鉄道世界遺産と小ネタ」参照)、今回はフライトの到着・出発時刻の関係でさらに余裕がある。あれこれ考えて、到着日は郊外にあるストラスホフ鉄道博物館(Eisenbahnmuseum Strasshof)を中心にめぐり、帰国日はリンツにあるペストリングベルク鉄道(Postlingbergbahn)を中心に彷徨することにした。もちろん、それ以外の鉄道小ネタも満載である。

@Postlingbergにて

■2023.12.3
 12月2日に大洗までの「大人鐡」を終えてから自宅に戻って海外出張モードとなり、羽田空港へと向かった。夜遅くに出発するイスタンブール行に搭乗。
 翌朝、イスタンブールでウィーン行に乗り換えて、定刻より遅れた8時50分頃に到着した。今日はこれから市内に向かってホテルに荷物を預けるが、鉄道で移動することにしている。ただし、CAT(空港連絡鉄道)は高いので、利用するのは普通の在来線である。

@こちらは高い

 なお切符であるが、連邦鉄道(OBB)のウェブサイトで購入済である(目安の時刻で買っておけばよい)。
 S7に乗り、市内に入ってU1に乗り換えて、安ホテル(と言ってもオーストリアなので素泊まりで1万円以上するが)に荷物を預けた。
 すぐにまた駅に戻り、U1に乗ってLeopoldauにやってきた。ここからは、S1に乗ることになる。

@やって来ました

 ここから鉄道博物館の最寄駅であるSilberwald Bahnhstまでは18分程度の乗車時間であるが、切符(ホテル最寄駅からの通し)も、ネットで購入済である。
 雪景色を見ながら乗り続け、件の駅で下車した。周囲には民家がちらほらある程度の寂しい駅であり、この近くに鉄道博物館があるとは思えない。
 しばらく歩いてみると、鉄道博物館の看板があり、右に曲がってしばらく進むと、やっと入口が見えてきた。

@博物館発見

 ボロ小屋の入口で、入場券(11ユーロ)を支払う。意外に高いと思ったが、欧州の博物館系はそれなりの値段がするのが常である。
 ボロ小屋自体には、模型や写真が少しあるだけで、特に見るべきものはなかった。外に出てみると、数両の車両が係留されている。「これだけでは物足りない(価格に見合わない)な」と思いつつも、とりあえず撮影である。

@SL

 そのまま先に進んで裏手に行ってみると、いるわいるわ、車両の宝庫(ただし整備されている車両は少ないので、車両の「墓場」かもしれない)ではないか。指折り数えたわけではないが、70両以上はありそうである。

@その一部

 雪に足を取られながら敷地内を歩き続け、あれこれと写真を撮り続けた。
 さらに奥に行ってみると、転車台があって、そこはSLの宝庫(墓場)であった。いずれにしても、車両数自体はかなり多いため、現物の車両好きであれば入場料の元は取れるであろう。

@たくさん

 さらに敷地の奥を覗いてみると、まだまだ別の車両があるようである。ただし、もうあそこまで行く気力はない(他の人の足跡が少ないため、歩行困難である。なお、転車台までは足跡が少しあった)。

@見るだけ

 建屋の方に戻ろうとして移動すると、歩道橋のような高架があった。足跡がない(誰も歩いていない)が、ここからなら敷地全景が見渡せそうである。ということで、雪に足をうずめながらその橋の途中まで行ってみた。

@車両多過ぎ

 撮影を終えてから建屋近くに戻ってきたが、ここまでの印象は、ネットで事前に調べたものとは少し雰囲気が違う気がする。そこで、建屋のドアを恐る恐る開けてみると、そこはまた多数のSLや機関車が眠っているところであった。ここが、この博物館のメインであったのである。

@一部を撮影

 こちらも指折り数えたわけではないが、30両くらいはありそうである。建屋の奥の方は改修所になっており、数両の車両が補修されているところであった。
 建屋の2階は、展示室となっている。解説に英語がないので意味は分からないが、写真を中心に見て回った。

@博物館らしくなってきた

 小一時間滞在し、歩いて駅に戻り、S1に乗って市内に戻った。
 地下鉄を乗り継いで、次にやって来たのはSchlachthausgasseである。目的は、近くにあるウィーン交通局車庫・交通博物館である。
 季節的にクリスマスマーケットの時期であり、敷地内はそれモードであった。

@お祭りモード

 博物館自体は、大きな車庫の中である。こちらについては有名であり、紹介記事もたくさんあるため、私は写真一葉だけにしておきたい。

@たくさん

■2023.12.7
 月曜からは、ひたすら会議で自由時間はない。しかし最終日は少し早く終わったため、一番有名なクリスマスマーケットが行われている市庁舎前にやって来た。S3の駅からは、せっかくであるから市電に乗って移動である(ウィーン市内の交通機関がすべて使用できる「1週間定期券」を買ってある)。今は新しい低床車ばかりであるが、運よく古い車両に乗ることができた。

@古い方が絵になる

■2023.12.8
 今日はフライトの時間まで時間があるため、リンツへの日帰り旅である。
 6時半頃にホテルを出て、U1に乗ってウィーン中央駅へ。順調に移動できてしまったので、出発(7時28分発)までまだ40分くらいあり、大きな電光掲示にもまだ案内は出ていない。しばし、駅付近を散策である。

@日も出てきた

 駅構内もあれこれぶらぶらと散策し、しばらくするとやっと出発案内にも私が乗る列車が出てきた。ホームは7番線のAB付近ということである。
 7時10分過ぎにホームに行き、入線を待つ。同じホームでも2つの行先が違う列車が連結されており、しかも20号車や30号車からそれぞれ始まっているため、自分の車両がどの辺りに停まるのかを予測して待たなければならない。

@私が乗るのはチューリッヒ行の方

 7時17分頃、列車が入線してきた。ホームも大混雑であったが、車内も当然そうである。なんとか自席を見つけ(座っている人がいたが、指定券を見せてどいてもらった)、やっと落ち着いた。購入時に窓か通路かは選べるが、座席位置までは選べない。残念ながら、進行方向とは逆向きの席であった。
 定刻に出発。高速化されている路盤であるため、壁や土手が多く、あまり眺望は望めなかった。トンネルをいくつか抜けて郊外に出ると、やっと壁がない景色を拝むことができた。

@曇り気味

 車内は大混雑で、立つ人もいるくらいである。指定料金は3ユーロであるが、確保しておいて良かったと思う。
 高速で走り続け(最高速度は230キロ)、リンツには8時43分に到着した。
 先述した通りこの列車は行き先が違う2編成が連結されているため、編成の途中にも機関車がいる。これならば、ただ単に切り離すだけで良いから、効率的ではある(日本では見たことがない運用である)。

@途中にも機関車

 駅を後にして、まずは新大聖堂などの街中観光である(普通の観光写真は省略)。
 なおリンツの交通機関で少し面白いのは、ぱっと見トラムであるのに実はバス、という車両が走っている点である。もちろん、鉄道路線のトラムもあるのだが、線路がないところにもトラムっぽい車両が走っているのである。

@バスです

 徒歩観光をしながら旧市街に入り、広場にあるペストリングベルク鉄道の始発駅にやって来た。普通のトラム駅の横に寄り添うようにあり、車両が短めの50番系統の列車がそれである。

@小ぢんまり

 乗車する前に、切符を買わなければならない。山頂までの単純往復を買いたいのだが、市内トラムとのセット券などが最初に出てきてしまう。あれこれ操作して、やっと単純往復(7.60ユーロ)を購入した。

@無事購入(英語メニューがあって良かった)

 車両に乗り込み、9時30分に出発した。すぐに、大きなドナウ川を渡っていく。
 そもそも論として、なぜこの路線に乗ろうとしたのかというと、実は登山鉄道だからである。見た目はただのトラムであるが、Landgutstraseを過ぎると、とんでもない急勾配になっていった。ラックレールでもないのに、よくこんな坂を鉄道で上がれるものである。

@斜め具合を撮影

 勾配を走り続け、9時50分に終着駅に到着した(表紙写真)。石造りの古い建物に囲まれており、雰囲気は良い。
 近くにある聖堂を目指して歩いたが、まずはその近くにある展望台に寄ってみた。それにしても絶景である。「路面電車で20分」で来た場所とは思えない景色である。

@展望台からの写真ではなく、敢えて展望台を見下ろす写真を

 聖堂を参拝し、駅に戻って10時30分の列車で下界に降りて行った。
 しかし終着までは乗らずに、Landgutstraseで下車した。理由は、近くに鉄道博物館があるからである(しかも無料)。
 ただし、博物館が開いているのは土日だけである(今日は金曜日)。「屋外展示で車両でもないか」とい淡い期待があったが、外には何もなかった。入口ドアから中を覗き込んで、終了である。

@右手にあるのが鉄道博物館

 ドナウ川を歩いて渡り、旧市街で旧大聖堂などを見学しながら歩いてリンツ駅まで戻った。駅内放送で「ドイツでストがあって長距離列車に影響がある」と案内があり、ドイツ旅行時にストに遭遇して散々な目にあったことを思い出したりした。
 戻りの列車は12時32分発を買ってあるが、8分ほど遅れているようであった。実際は12時39分に出発し、230キロで快走して、ウィーンには14時10分に戻ってきた。
 フライトまでまだ時間はあるが、後はお土産を買ってホテルに戻って荷物を受け取って空港に向かうだけである。

@最後も一般鉄道で空港へ

 

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