鉄道世界遺産と小ネタ

■はじめに
 今回の出張先は、オーストリア(ウィーン)である。長丁場となる滞在期間であるが、いつものパターンで朝から晩まで用事があり、自由に使える時間はあまりない。しかし帰国日については昼過ぎまで時間があるため、ここで鐡ネタを拾うことが可能である。
 行先はあれこれ考えたが、やはり「鉄道そのものが世界遺産に登録されている」というセメリンク鉄道に乗ることにした。距離的にも片道1時間半程度であり、「昼まで」という時間制限にもぴったりである。
 ウィーン郊外には鉄道博物館(Eisenbahnmuseum Strasshof)もあるが、今回は訪問している時間がない。しかし、可能な範囲で細々と他の鐡ネタを拾うことにしている。

@ミュルツツーシュラーク駅にて

■2015.11.16〜18
 仕事ばかりとはいえ、移動でも鐡ネタを拾うことは可能である。というのも、実はウィーンを訪れるのが初めてであり、地下鉄で移動するだけでも「初物」なのである。
 ウィーン市内の特定区間については「1週間定期券」というのがあり、これが圧倒的に便利で安価である(地下鉄だけでなく、路面電車やバスにも乗ることができる)。欧州や米国にありがちな「基本的に改札等はないが、まれにある検札で切符不携帯が判明すると多額の罰金」という形式であるが、とにかく、これを持っていれば様々な意味で安心である。

@定期券

 ウィーンの地下鉄は多数あり、人口もさほど多くない割に4分間隔程度で多発されているので、ラッシュ時でも混雑はさほどでもない。地上を走る区間も多いため、景色を堪能することも可能である。
 旧い路線はトンネルも丸く、車両もそれに合わせて天井が丸くなっており少し小さい。旧型車両の場合は開閉時に手でレバーを引くなど、いくつかの面でロンドン地下鉄に似ている(ロンドン地下鉄ほど劇的に狭くはないが)。

@地下鉄車両と国際都市(国連等が入っている建物)

 また上述したように、路面電車にも乗車可能である。なので定期券を使って、仕事終わりに市庁舎近くで開催されているクリスマス・マーケットへ行ったり、仕事前にシェーンブルン宮殿へ行ったりしてプチ観光をした。

@旧車両(新しい方は低床)

■2015.11.19
 最終日の仕事は、予定よりも早く午後3時に終了した。郊外にある鉄道博物館は午後5時までの営業であり、入場は午後4時までとなっている。仕事が奇跡的に2時半までに終われば間に合うので、念のために地図などの資料は用意しておいたのだが、徒労に終わってしまった。
 しかし、タダでは起きない。地下鉄の1号線で終点まで行き、そこから近郊列車に乗って市内に戻ることにした。
 近郊列車(ドイツと同じく「Sバーン」と呼ばれている)は、あまり待たないうちに入線してきた。

@やはり地下鉄よりこういう路線の方が気持ちが昂る

 プチ鐡を終え、ホテル近くのスーパーで買った食材で一献してから、帰国後の時差ボケ解消のため午後8時過ぎには就寝。

■2015.11.20
 さて、今日が最初にして最後の鐡旅である。月曜から木曜まで晴れ(時々曇り)であったのに、今日に限って雨模様であるのは愛嬌である。
 朝7時過ぎ、ホテルを出て中央駅へと向かった。最近になって改築工事が終わったということで、駅舎全体が新しい。電光掲示板で確認したが、私が乗る列車に遅れ等はないようである。

@新駅舎内

 列車の出発予定時刻は7時55分である。それまでまだ30分ほどあるが、ホームへ行ってみるとすでに入線していた。
 編成については、機関車を先頭に2等コンパートメントが3両、食堂車(カフェ)が1両、2等座席が1両、1等座席が2両の合計7両編成であった。コンパートメントが多いのは、欧州ならではである。

@これで峠を越える

 30分も前に乗車しても仕様がないので、駅舎内を適当に歩き、ドイツからやって来たICEやその他の列車の写真を撮ったり、外に出て駅舎全体を眺めたりして時間を潰した。
 出発の10分前に2等座席に乗車。各ボックスに1人ずつくらい座っている。
 この列車はEC151で、スロベニアのリュブリャナまで直通する列車である。定刻の7時55分、乗車率50%くらいで出発した。約5分でウィーン・マイドリング駅に到着し、ここでさらに乗客が乗ってきて乗車率は85%くらいになった(私の隣りにもおばさんが座った)。
 しばらくは家並みの中を走り続けたが、同駅を出発して10分もすると、もう農園風景である。

@曇り

 8時31分にヴィーナー・ノイシュタット駅を出発すると、左手に大きく景色が開けていった。事前に調べておりそのことは知っていたのだが、あえて右側に座っている。というのも、復路は念のため指定席(景色が良い方)を押さえているため、往路は右側の景色を見るために敢えてそちら側に座っているのである。
 しばらくすると、右手にシュネーベルク登山鉄道に乗り継ぐことができるローカル鉄道が停まっているのが見えてきた。右側にもこういうネタがあるので、やはり往復で違う景色を見るのが最適である。

@あれにも乗ってみたい(登山鉄道は冬季閉鎖中)

 この時点から明らかに路盤は登り斜面となり、左手に広がる景色も次第に雄大になっていった。ノイシュタット駅で少し空いたとはいえまだ混雑しているため、左側の座席に移動することはできないが、写真などは復路で撮ればいいだろう。
 列車は右に左にとうねりながら登り続け、9時14分にセメリンクに到着した(ガイドブック等は「セメリンク」もしくは「セメリング」であるが、車内放送での発音はほとんど「セマリンク」に近いものであった)。

@車両展示もあり

 本当はセメリンクで下車して世界遺産登録の碑などを見て歩きたかったのであるが、復路に乗るべきRailjetがこの駅を通過してしまうため、残念ながら車窓から眺めるだけである。
 同駅を出発するとすぐに長いトンネルに入り、路盤も下り斜面となって、9時28分にミュルツツーシュラークに到着した。

@下車したのは数人のみ

 この小さな町は、ブラームスゆかりの地として有名なところである。とりあえず街中をぶらぶら歩いて、ブラームス博物館の前にある彼の像の写真を撮ったりした。
 その後は、鐡ネタ拾いである。まずは、駅前直ぐにあるトンネル関連の展示物である。意外に立派な建物であり、展示内容も充実した内容であった。

@入口

 続いては、駅の裏手にある鉄道博物館である。しかし、この施設は11月中旬から冬季閉鎖中であり、行ってみたところで入ることはできない。それを充分承知の上、入口付近まで行ってみた。もちろん中には入れないが、外にも車両が展示されていたので、その写真を撮ったりした。

@こちらも入口

 駅へ戻り、10時33分発のRailjetでウィーンへと戻る。車内は空いており結果として指定席(3ユーロ)は必要なかったが、これは結果論である。
 最新式の車両であるが、峠が厳しいため曲がる際にはギシギシと軋んでいる。「雄大な写真は帰りに撮ろう」と思っていたが、残念ながら窓が汚くて綺麗な写真を撮ることはできなかった。

@どんより

 所々で、旧い石橋を渡っていく。セメリンク鉄道を紹介しているガイドブックなどでよく目にするものであるが、乗車しながら撮影するのは困難である。
 峠を降りると、列車は快走し続けた(途中駅では、右手にSLが置いてあるのも目にした)。終着のウィーン中央駅には、定刻の12時04分に到着した。
 最後の鐡ネタは、空港連絡鉄道(CAT)である。ホテルに戻って荷物を受け取り、ウィーン・ミッテ駅に向かった。CATの入口は他の列車とは異なり、駅ビルの中にある。

@ここから入る

 空港までは約16分で、あっという間である。料金は片道12ユーロで、ネット割引だと11ユーロ(往復だとそれぞれもっと安くなる)。タクシーでも30ユーロ強程度であることを考えると、これに乗るのはお一人様かペアだけであろう。車内はそれなりの乗客がいたが、もっと安くても(5ユーロ程度でも)いいのではないかと思えた。

@これで締める

 

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