【petit-tetu】老婆心ながら三江線に乗っておく旅

■はじめに
 2か月ほど前に、「JR西日本が地元自治体に対して三江線廃止を打診」というようなニュースが伝わってきた。「まさか」というよりは、「ついに」という感じである。
 三江線は首都圏からはアクセスが悪くて乗りにくい路線であるが、過去に数回乗ったことはある。つい3年前には、バス便を追加するという「社会実験」を体験するために訪問したりもしている(拙文「サンライズ出雲で行く『三江線増便社会実験』検証の旅」参照)。
 いずれにせよ、こういうニュースが出てきたということは、早かれ遅かれ廃止される可能性は高いと思われる。ニュースでは2017年という数字も出ていたが、廃止前になると変な騒ぎになってしまうため、早めに再訪しておくことにした。

 三江線は便数もかなり少なく、明るいうちに乗り通すためには三次発9時57分発の石見川本行で乗り継ぐしか方法はない。そこで、22日の夜のうちに広島へ移動し、23日(祝日)に上記の列車で乗り通し、翌24日は有休を取ってプラスアルファで周遊してくることにした。
 今回も、JALのパックツアーである。往路が広島空港で復路が北九州空港、これに広島駅前のホテル(朝食付)を1泊付けてたったの2万5,500円であるから、新幹線には手が出ないのは仕様がない。

@粕淵駅にて

■2015.12.23
 広島駅から徒歩3分程度のところにあるホテルを出て、広島駅へ。7時53分発の三次行は5両も連なっていたが、途中で切り離されるということで、終点まで行くのは先頭の2両だけとのことであった。

@この車両は三次までは行かない

 今日明日と、残念ながら曇り時々雨の予報である。ただでさえ地味な芸備線の三次までの景色であるが、今日は燻っているのでさらに地味である。
 ちょうど2時間で三次に到着した。跨線橋で別のホームへ行き、すでに入線している「観光地カラー」の三江線車両に乗り込んだ。

@塗装は新しい(車両はそれなりに古い)

 1両だけの車内には20人弱の乗客がいて意外に賑わっているが、これは先ほど記したように「明るいうちに乗り通せる」のがこの列車しかないからである。地元民らしいのは1組の家族だけで、あとは目的を共にする同志(ソロ、カップル、家族と多様であるが)である。
 定刻の9時57分、列車は出発した。
 三江線は、区間によって開通日が違う。古い時代に開通した部分は江の川に沿い続けるため、路盤の条件も良くなく、時折30キロの速度制限もあったりするため、対岸を走る軽自動車にも抜かれてしまうようなスピードである。

@ゆっくり

 比較的新しい時代に開通した部分は、江の川からは少し浮気して、トンネルや鉄橋の連続となる。ディーゼルカーも、先ほどまでの鬱憤を晴らすかのように快走していった。
 橋の途中にある「空中楼閣」のような駅である宇都井も、この区間にある駅である。

@階段で上がるのは大変です

 11時20分、潮に到着した。7年前に三江線に乗った際は、江津から南下し夕方に潮に到着して、駅の近くにある温泉ホテルで1泊し、翌朝の列車で三次へ向かったのである。その宿もまだ残っており、懐かしく駅周辺の風景を眺めた。

@思い出の地

 しばらくして粕淵駅に近づくと、ホームの上で本格的な三脚を従えてこちらに向かって構えている人がいた。「熱心な撮り鉄さんだな」と思ったがそうではなく、駅で乗り込んできたその人たちは、なんとテレビ局の人であった(三脚はテレビカメラ用)。
 出発後の車内は、インタビュー場と化していった。幸い私はフィルムが回っている場面では何も聞かれなかったが、車内の様子をあれこれ撮影していたので、もしかしたら私の間抜け面がお茶の間に流れてしまうのかもしれない(撮影スタッフは日本海テレビというローカル局であったが、素材が中央局に流れることもありうるだろう)。
 テレビスタッフと一緒に江の川沿いを走り続け、定刻の12時09分に石見川本に到着した。

@カメラマン(車両右)は家族連れに焦点を合わせて撮影中

 改札口では、商工会の人が手作りのパンフレットを配って飲食店などの案内をしていた。列車の本数自体が少なく、ダイヤの悪さから観光客が乗りそうなのはこの列車くらいであろうし、なかなか大変であろうとは思う。
 昨晩と朝(ホテルの無料朝食)を食べ過ぎたため昼食はパスし、そのパンフレットに記載されていた散策コースを歩いてみた。

@お手製パンフレット

 13時43分の列車で、江津へと向かう。テレビスタッフを含めて面子はほぼ似たような感じであるが、地元のおばさんや高校生がそれに加わり、格好の「被写体」となっていた。
 江の川沿いであるため所々で30キロ制限があり、ゆったりと走り続けた。終点の江津には、定刻の14時49分に到着した。

@三江線ポスター

 さて、これで一番の目的は達成である。折り返しの列車で広島に戻るという手もあるが、正直なところ冗長気味になってしまうため、ここから先は山陰本線沿いに移動して適当に観光することにしている。
 15時21分発の快速に乗り込み、益田で乗り換えて東萩へ(18時40分着)。萩市内にある安宿に投宿した。

■2015.12.24
 萩は散策に適した町であるが、以前に少し歩いたことがあるため、今回は泊まるだけである。しかし、さすがに日が暮れてから到着して日が昇る前に出発してしまうのは、少しもったいない。
 7時08分の普通列車で西へ移動し、長門市で乗り換える。今日も曇り空だが、海辺の景色は悪くはない。

@曇天

 小串でさらに乗り換え、川棚温泉で下車。目的は、温泉と「瓦そば」である。
 散策も兼ねて温泉街まで歩き(約25分)、温泉街にある寺院などを適当に見学してから、お目当てのものへ。瓦そばは元祖の店が有名だが、昼時は混むらしいので、ホテルの温泉+併設するレストランの瓦そばのセット券を利用することにした。
 現代美術のように山頭火の言葉をちりばめた温泉で湯に浸かってから、隣接するレストランでそばを頂く。瓦に接地している部分の麺は、パリパリである。

@ごちそうさまでした

 路線バスで川棚温泉駅まで移動し、11時38分の列車で下関へ。それから小倉へ移動して乗り換え、門司港へ。もう何度も訪れている門司港であるが、「なんとなく適当に」歩いて時間つぶしをするのには最適な町である。
 門司港で一番有名で目立つのは、駅として初めて重要文化財に指定された門司港駅舎であるが、今は約6年にも及ぶ大改修工事中である。その工事を覗くことができるデッキがあるので、とりあえず行ってみた。

@バラバラ状態

 それからレトロ街を適当に歩き、その足で、九州鉄道記念館へ。以前に一度訪れたことはあるのだが、2013年に展示品や展示車両が追加されたということなので、いそいそとやってきた次第である。

@定番

 見学を終えた後は、北九州空港から帰るだけである。
 三江線廃止問題がどうなるかは不明であるが、早かれ遅かれなくなりそうな気もするので、また違う季節に訪問したいと思っている。

 

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