惜別「留萌本線(石狩沼田から留萌まで)」

■はじめに
 留萌本線の石狩沼田から留萌までの運転が、今月いっぱいで終了となる。廃止直前は混雑するため、2月に乗りに来ようと思っていたが(飛行機も手配していたが)、諸事情があって3月に変更となってしまった。混雑覚悟で、3月の土日に特攻である。
 土曜日は大混雑の列車に乗るにしても、最後の乗車(日曜日)くらいは閑散としている列車に乗りたい。そこで、石勝線夕張支線の廃止前と同じ作戦に出ることにした。それは単純な考えであり、「留萌に泊って始発に乗る」というものである。夕張支線の際には、夕張に泊って翌朝にガラガラの列車に乗ることができた。
 留萌本線は、元々は増毛まで通っており、留萌から増毛が廃止になる前にも乗りに来ている(拙文「惜別『留萌本線(の一部)』」参照)。十数年前は観光用SLも走っていた路線であるが、今年の春からは、深川から石狩沼田までの短小盲腸路線となってしまう(その区間も、近い将来(2026年3月)の廃線が決定している)。残念だが、世の流れからして仕方ないのであろう。
 往路の航空券は特典航空券で取り(ただし2月分の特割キャンセル料が7,000円発生しているが)、往路のLCCは変更手続きをして1万3千円以下にすることができた。後は、もう行くだけである。

@留萌駅にて

■2023.3.11
 7時40分の便で羽田から旭川へ飛び、空港連絡バスに乗り換えて10時23分頃に旭川駅に到着した。
 留萌本線が部分的に廃線となれば、もちろん留萌本線沿線ではあれこれ変化があるであろうが、例えば旭川駅構内にあるこのような料金案内図なども修正が必要になるのだろう。

@切符を買えるのは今月いっぱい

 今日は留萌までの移動である。距離的に近いし、最後くらいは「留萌」の文字が入っている切符が欲しかったため、事前に「えきねっと」で購入して発券して持参している(旭川駅で買ってもいいのだが、券売機で買うと「旭川→1890円区間」になってしまうし、空港連絡バスと列車の接続時間が10分しかないため、窓口に行って買うのは危険と思ったためである)。

@事前に手配

 自動改札を通り、5番線へ。10時35分発の滝川行各駅停車はすでに入線していたが、2両編成のうち1両が「山紫水明」シリーズ車両の山明号であった。深川までの乗車時間は短いが、幸先が良い。

@せっかくなのでこちらに乗る

 定刻に旭川を出発し、深川には11時02分に到着した。
 廃止が近いため、留萌本線はかなり混雑しているようである、先週末の様子が動画でネットにあったのだが、1両編成の車内は都内のラッシュ時並みの立ち客で混雑していた。今日は、幸いにも2両に増結されていた。

@一安心

 私が列車に近付いた時点でまだ席は空いていたが、今日は敢えて前方を見るために先頭に立とうと思っている。その場所もよく人に取られる可能性が高いが、今日は偶然にも空いていた。
 11時06分に到着する札幌方面からの特急列車から大量の乗客が移ってきて、デッキまで立つ人がいる状態となり、11時10分に深川を出発した。
 しばらく走ると、石狩沼田である。ここまではあと3年生き残るため、今回は省略である。

@来月からはここが終着駅(石狩沼田)

 石狩沼田を出発すると、もう来月以降は乗ることができない区間である。雪解けが始まり路盤も見えているようなところを走り続け、最初の駅は真布(まっぷ)である。木の板で出来た簡易ホームの駅であるが、なんと今日はホームに駅員がいるではないか。まるで映画の「鉄道員(ぽっぽや)」のようである。

@まさかの駅員配置(真布)

 同駅を出発し、路盤も少し勾配気味になってくると次の駅である恵比島(えびしま)である。この駅はドラマで「明日萌駅」として使用されたことがあり、駅付近にもセットがまだ残されている(「はじめに」で紹介した2016年の旅行でも訪問した)。今月の毎週土日は留萌本線に関連したイベントを実施中ということであり、ホーム上は大賑わいであった。到着時と出発時には、大きな駅で行われるようなアナウンスも行われていた。

@こんなに人が多いのは初めて見た(恵比島)

 恵比島を出発すると、本格的な峠区間となる。トンネルを2つ抜けるが、この辺りはもう携帯の電波も届かないところである。
 峠を越えて路盤も下りとなり、到着したのが峠下である。留萌本線では唯一の「列車交換ができる駅」であるが、今日はここで数人の乗客が下車していった(何度も留萌本線に乗っているが、この駅で乗客が降りるのを見たのは、初めてである)。

@今日はどの駅にも撮影者がいる(峠下)

 同駅出発以降は勾配もなくなり、列車は意外な速度で快走していく。
 続いての停車駅は、幌糠である。旧い貨物車両を再利用した簡易駅舎であるが、こんなところでも今日は撮影者がいる。

@最後ですから(幌糠)

 またしても快走を続け、次の停車駅は藤山である。立派な駅舎があるが、恵比島や峠下と比べるとキャラが薄い(?)ため、ホーム上に人も見当たらないし、ここで下車していった乗客は1名だけであった。

@地味キャラ(藤山)

 続いての駅は、留萌の手前である大和田である。ホーム上に何人か撮影部隊がいるが、車内に乗り込んでくるわけでもないし、風貌からして鉄道ファンでもなさそうである(地元の人が、記念に見学に来ているようであった)。

@出迎えを受ける(大和田)

 その後も走り続け、定刻から3分ほど遅れた12時10分に終着の留萌に到着した。
 切符に使用済みの印を押してもらって構内に入ったが、とんでもない人である。12時18分発の深川行に乗ろうとしている長蛇の列だけでなく、いつもは閑散としている駅蕎麦屋にも今日はまさかの大行列である。
 さて、今日は駅だけでなく沿線で撮影している人もたくさんいたが、まずはその真似である。駅近くの川沿いに行って、深川行を見送った。

@行ってらっしゃい

 その後は歩いて道の駅に行き、再度駅へと戻って来た。人はかなり減ったが、蕎麦屋はまだ行列中である。
 今日の午後であるが、留萌本線に乗って恵比島でやっているイベントに行くのも一案であったが、敢えて増毛(ましけ)へ行くことにしている。留萌本線に乗る旅であるから、元は終着駅であった増毛へ行くのが自然であろう。
 駅構内にある留萌本線関連の展示(写真や絵画など)を見て時間を潰してから、駅前バス停を13時40分に出発するバスで増毛へと向かった。

@こんなバス停(「萌」ですから)

 留萌の市街地を抜けると、バスは海沿いを走り続ける。左手には、2016年に廃止となった区間の鉄橋や路盤が所々で確認することができた。
 14時15分頃、旧増毛駅バス停に到着した。路線自体は廃線となってしまったが、駅跡は立派に改装されて残っており、中には展示物や売店などがあり人もたくさん訪れていた。
 私が観光SLに乗ってここに来たのは確か2004年であるが、周囲はだいぶ変わった感じがする。

@駅跡(増毛)

 折り返しまで時間があるため、旧い建物がたくさんある街中を散策した。有名な酒蔵に入ってみると、当然のように酒関係の展示物がたくさんあったが、それらに紛れて鉄道関係の展示物もあった(ノロッコ号のヘッドマークなどもあり)。なお、本物の鉄道関係展示物に混ざって偽物も混ざっている辺りが、面白いところであった。

@これは当然、偽物

 その後は14時50分発のバスで留萌に戻り、まだ15時台であるが、予約済の安ホテルに投宿である。
 テレビを観ながらこの旅行記を書いたりして時間を潰し、17時過ぎに買い物に行って1,000円分の旅行支援クーポンで酒やツマミなどを買ってきた。
 さて、今日の夕食であるが、お昼に留萌駅で買ってあった駅弁である。事前予約が必須であるが、実は留萌駅にある駅蕎麦屋で駅弁が買えるのである(蕎麦屋は大行列であったが、予約済み弁当は横から申告すれば受け取れた)。

@にしんおやこ弁当(1,000円)

 鰊とカズノコを使った弁当を言えば、函館駅の「鰊みがき弁当」が有名であり、私が好きな駅弁のかなり上位である。留萌のこの駅弁は前々から知っていたが、予約が必須であるため、今日まで買いそびれていた。私は無類の鰊好きなので、もちろん美味しく頂いた(なお鰊が苦手な人にとっては、苦いという印象があるかもしれない)。
 あと一つ紹介したいのが、増毛の酒蔵で買った日本酒である。当初は見学だけのつもりであったが、地元限定販売の「留萌本線」を発見してしまったため(しかも箱には廃止となる駅も記載)、これはもう購入必須である。

@酒も留萌本線

■2023.3.12
 始発列車に乗るべく、5時25分頃にホテルを出発して駅に向かった。5時49分発の深川行始発列車に乗るためには、留萌に泊まる必要があるのはもちろんのこと、それなりに早起きもする必要があるため、列車内は昨日のような大混雑にはならないはずである。
 しばし歩き、駅に到着した。昨日の昼には整列乗車のために活躍していたポール類も、さすがにこの時刻は不要である。待合室には、同業者(乗車目的の人)らしき人が4〜5人待っていた。

@早朝ですから

 今日は青春18きっぷを使って移動するが、まだ朝早いため駅窓口は営業しておらず、勝手に改札口を通ってホームに入っていく仕様となっている。
 5時40分頃、深川方面から回送列車が入線してきた。昼以降の大混雑に備えて、今日も2両編成である。深川側がキハ54系で留萌側がキハ150系。留萌本線と言えば前者の印象が強いため、そちら側に陣取った。

@これがもう乗り納め

 定刻の5時49分、留萌を出発した。車内にいる乗客は、2両合わせても10人以下である(地元民はゼロの模様)。やはりこれくらい空いていた方がローカル線っぽいし、「これしか乗客がいないから廃線になる」と納得もできる。
 実は昨年末にもこの列車に乗ったが、その時は深川到着まで真っ暗であった。今日は、出発時点から明るいため、景色を充分に堪能することができた。

@朝日も

 峠下で留萌行の下り列車と交換し(あちらは結構乗客が多い)、そして峠区間を終えると、いつもの北海道の平原風景である。出発時点で10人もいなかった乗客であるが、峠下や恵比島で降りる人も多く、またこの時間帯であるから乗ってくる人もほとんどおらず(秩父別で地元民が1人乗って来ただけ)、6時44分に深川に到着した時点で下車したのは、たったの5人であった。作戦通りに閑散具合を体験して、最後の留萌本線は終了である。

@お疲れさま(これで石狩沼田から留萌までは最後)

 さて、今日は夕方のLCCで成田に飛ぶが、その前に追分にある道の駅に併設されている鉄道資料館を訪問する予定である。
 深川から各駅停車に乗って岩見沢に移動し、しばし時間調整の後、苫小牧行の室蘭本線に乗り込んだ。追分到着は9時48分。
 駅から15分ほど歩いて、道の駅「あびらD51ステーション」にやってきた。ここは以前に訪問したことがあるが、その際は車両の特別公開日であり、その手のイベントがある日は資料館が見られなくなってしまうのである(安全のため)。よって、再訪した次第である。

@SLの周囲に様々な展示あり

 この後の旅程であるが、空港方面(南千歳)へ行く列車が13時台までないため、意味なく新夕張まで往復することにしている。その新夕張行にしても11時40分発であるため、まだまだ時間がある。
 道の駅の売店などを見てみると、ベーカリーがあってそこからいい匂いが漂っている。総菜パンでも買おうかと思い、地元産のじゃがいもを使ったものを1つ手に取ったところ、D51プチ食パン(車輪の焼き印付き)が焼き立てで運ばれてきたので、ついそれも買ってしまった。

@誘惑に負けて

 食べ終えてからは駅に戻り、新夕張まで往復して新千歳空港へ向かい、LCCで成田へ飛ぶだけである。

 

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