惜別「留萌本線(の一部)」

■はじめに

 留萌本線の先端(留萌から増毛まで)の廃止申請が今年の4月に出され、それを前倒しする申請も6月に出された。これにより、留萌から先の区間は2016年12月をもって廃止されることとなった。
 いつものパターンで、廃止直前はご専門の方で混雑するため、一足先に訪問することにした次第である。

 留萌本線は国鉄時代から「本線らしくない本線」であった。距離は短く(66.8キロ)、枝分かれする支線も羽幌線だけであり、しかもそちらの方が長かったのである。国鉄の赤字路線は線区ごとの収支によってその廃止が決まったため、本線の一部であったため命拾いした線(函館本線の上砂川支線など)もあった。もし留萌本線が砂川から留萌を経由して羽幌までであったら、こちらが生き残って、そして留萌から増毛まで(増毛線?)はJR発足前に消えていたかもしれない。
 いずれにせよ、廃止については「驚き」というよりは、「よくこれまで走っていたものだ」という感じで受け止めた。

 上記の上砂川支線はさすがに1994年に廃止となったが、路線の一部であるために廃止を免れている区間(北海道内)として、札沼線の浦臼から新十津川までや、石勝線の新夕張から夕張までの区間がある。前者は最近の時刻改正によって「1日1往復」となり、新十津川発9時40分の列車は「日本で一番早い時刻に出発する最終列車」となっている。後者に関しては、つい最近になって正式に廃止の話が持ち上がってきて報道されている。
 旅のついでとして、前者(札沼線の末端)についても、久々に乗ってくることにした。
(8月後半に集中して北海道に上陸した複数の台風の影響で、根室本線や石北本線は部分的に壊滅状態となってしまったが、私が行く方面は幸い大丈夫なようであった)

@増毛駅にて

■2016.9.3
 いつもならJALやANAのツアーを利用するが、今回はさらに経費削減でLCCである。しかも、往路と復路で違う航空会社を使うという徹底した「ケチぶり」である。

@安さ優先

 新千歳空港発10時15分の列車で、北上する。札幌から深川までは特急列車はたくさんあるものの、各駅停車の数が限られているため、途中下車しながらの旅となる。まず最初は、札幌である。
 日本各地でICカードが普及し、それに伴い磁気カードが廃止されているが、札幌でも2015年春にそれが廃止になってしまった。私は以前は出張等で良く来ていたのだが、部署が変わってからは国内出張はご無沙汰であり、「共通ウィズユーカード」がまだ残っているのである。それの払い戻しが、札幌での途中下車の目的である。

@さようなら

 1,950円戻ってきたので、これが今日の昼食代+αとなる。
 11時16分の快速に乗り、向かうべきは野幌である。事前に下調べをしており、駅近くに鶏の半身揚げとザンギ(唐揚げ)の評判が良い店があり、そこに行くことにしている。
 出発してから、念のため場所等を携帯で確認しようとしたところ、1時間前に店主の投稿があり「今日の営業は午後4時から」とあるではないか。その場で他の候補がないか江別や岩見沢まで対象にして調べたが、これというものがなく、結局予定通り野幌で下車することにした。
 念のためその店に行ってみたが、やはり閉まっていた。他の店でも良いのだが、数日前からあれこれ調べていたため、脳内が「鶏肉」から離れなくなってしまっている。結局、すぐ近くにあった激安スーパーで安弁当を買い、昼にすることにした。

@超平凡

 残念ではあるが、おかげで予算は夜に回すことができる。
 続いて、12時25分の列車で岩見沢に向かった。別の旅行記(東北地方)で、ロングシートのせいで旅の醍醐味が低下した旨を書いたことがあるが、同様のことが最近はJR北海道でも言えるようになってきた。今乗っているのも、旅には似合わないロングシートである。
 定刻より少し遅れた12時50分に到着。ここで1時間以上の時間があるため、いつもの「鐡ネタ探し」である。駅から歩くこと約20分、「みなみ公園」にあるSLの撮影である。

@2両あります

 駅へと戻り、14時00分発の列車で深川へと向かった。14時56分着。やはりここでも、1時間以上の乗り換え時間がある。
 では鐡ネタを、と言いたいところであるが、事前のネットでのスクリーニングで何も見つけられなかった。駅前付近を10分くらい適当に散歩し、駅構内にある物産館で買い物をし(後述)、その後は待合室の椅子に座ってこの旅行記の素案を書いたりして時間を潰した。
 旭川から増毛行がやってきたのでそれに乗り込み、20分以上停車してから16時09分に出発。

@やっと本題に

 1両のディーゼルカーに乗ってから気づいたのであるが、非冷房である。ドアが開いた状態+回る扇風機(国鉄マーク付)の列車に乗るのも、久しぶりのような気がする。
 廃止が決定しているからか、車内の乗車率は9割以上であった。
 留萌本線自体は、以前に何度か乗車したことがある。約10年くらい前には、SL「すずらん」にも乗ったことがある。

@その際の画像

 17時07分に到着した留萌で地元民らしき乗客が降り、代わりに鉄道が目的の人らしき人が数人乗り込んできてすぐに出発した。
 今から20年前、バイクでツーリングに来た際に留萌のライダーズハウス(格安簡易宿)に泊まり、黄金岬に行って奇麗な夕日を見たことがあるが、今日は残念ながら曇り空である。
 この区間に乗車するのは今日が最後となるはずなので、先頭に立って前を眺め続けた。

@板だけの簡易駅多数あり

 徐行区間をゆっくりと過ぎ、17時39分に増毛に到着した。カメラを構えた数人および乗車を待つ人など、以前の増毛駅では想像できないくらいの人出である。

@ここに来るのは数度目か

 名残惜しいところであるが、明日以降の乗り継ぎを考えて17時47分の列車ですぐに戻らなければならない。駅舎や周囲の風景をカメラに収めてから、車両へと戻った。定刻に出発。
 留萌に近づくにつれて薄暗くなり、18時17分に到着した。歩いて15分ほどの場所にあるホテルに投宿。
 さて、昼に「北海道らしいもの」を逃してしまったため、夜は留萌で寿司にでもしようかと思っていたが、深川の物産館で「そばめし」なるものが置いてあり、しかもナントカ間際の半額セールであったため、つい買ってしまっている。結局、留萌のスーパーに行って発泡酒などを買い、いつも通りのパターンで酔うこととなった。

@晩餐(一応、北海道らしく)

■2016.9.4
 メインであった「留萌−増毛」間の乗車は昨日のうちにあっけなく終え、今日は別の小ネタをいくつか拾うだけである。
 早朝にホテルを出て、5時50分の列車で深川方面へと向かった。車内は私を含めて3人であり、すべて同業者(鉄道目的)である。
 6時19分、恵比島で下車。この駅は、NHKのドラマ「すずらん」のセットとして使用された駅が残っており、「明日萌(あしもえ)」駅と称されている。大きな「駅らしい」ものはセットであり、「便所」と書かれている小さな小屋が、実は本当の恵比島駅である。

@これはセット

 駅周辺や古い旅館(農民カフェ)、神社跡(鳥居のみ)などを散策したが、10分で終了である。隣駅まで歩いてもいいが、のんびりと次の列車を待つこととした。
 7時21分発の列車は、まさかの2両編成であった(本当に「列車」であった)。恐らく、平日の通勤通学対策なのであろう。今日は日曜であるため、余裕は十分である。

@これに乗る

 7時49分に深川に到着し、45分ほどの待ち合わせで滝川行の各駅停車に乗り換えた。滝川着8時53分。
 急いで隣接するバスターミナルに行き、9時00分発の中央バスに乗り込んだ。今回の旅は留萌本線の末端に乗ることが主目的であったが、旅程を練る上では1本しかない札沼線の末端の方が重要となるため、結局この辺りの乗り継ぎが旅程の中心となってしまった。
 とにかく、このバスに乗れば新十津川発9時40分に間に合うことができる。車内には数名の乗客がいたが、ほぼ同業者であった(途中から、地元民が乗ってきたが)。

@路線バスで移動

 役場前のバス停で降り、駅へと向かった。今日は「神社祭り」があるということで、小さな子どもを中心にたくさんの人が駅前広場に集まっていた。それ以外に撮影や乗車目的の人もたくさんおり、なかなかの賑わいである。
 9時28分、本日最初で最後の列車が到着した。

@コスモスの季節

 定刻の9時40分、多くの人に見送られて「最終列車」が出発した。これも非冷房(国鉄扇風機)である。
 さて、後は適当に観光をしてから帰るだけである。当初の予定では札沼線で札幌まで行き、その後は小樽まで行って海鮮丼でも食べようと思っていた。しかし、今日の早朝に付けっぱなしだったテレビのイメージ映像で「Lily Train」というのが映っており、調べてみると札沼線の沿線である。単なる園内の遊戯なら看過するのであるが、在来線と同じ軌道(1,067mm)の列車ということで、せっかくなのでそれに乗ってみることにした(このような急な予定変更ができるのも、ネット時代の象徴である)。
 石狩当別で乗り換え、百合が原で下車。歩いて10分弱で公園である。今日は土日であるため、20分に1回走っているようである。

@まずは撮影

 360円のチケットを買い、12時20分発の列車に乗り込んだ。車内は家族連れかカップルであり、お一人様は少ない(この列車の目的を考えれば、当然である)。
 時速10キロほどで走るため「列車に乗っている」という感覚はないが、今何が咲いているのかを係員が説明してくれるので、なかなか面白い。

@車内から

 お遊戯列車に乗り終え、さて、この先どうするかは未定である(空港へ行くには、まだ早い)。
 そこで思いついたのが、野幌のザンギの店である。別にどうしても行きたいわけではないが、昨日肩透かしを食らっているし、他に行くべきところもない(こちらも半分は意地である)。
 札沼線で札幌に向かい、そこから快速に乗り換えて13時31分に野幌に到着した。26時間ぶりの野幌である。
 件の店に行ってみると、今日は営業中であった。半身揚げに惹かれるが手に負えないことが予想されるため、ザンギ弁当を注文した。
 私の旅は「滞在型」ではなく「移動型」であるため、同じ場所で昼食を続けて取ることはめったにない(しかも同じメニューである)。値段は昨日の倍以上であるが、味はもちろん今日の方が数段上であった。

@熱々(火傷しそう)

 ザンギ弁当を平らげてから新千歳空港に向かい、LCCで成田へと戻った。

 12月にかけては他の海外旅行等の旅程を入れたりしているため、「もう一度留萌本線に」と思い立つことはないだろう。名残惜しいが、留萌まではまだ残るので、そのうち気が向いたら再訪したいと思っている(その時こそ、ぜひ寿司を)。

@帰りはこちらで

 

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