【大人鐡C】JR四国「四国まんなか千年ものがたり」編

■はじめに
 さて、4回目の「大人鐡」である。前回までの3回は、結果論であるがメインとなる観光列車はすべて「第三セクター鉄道」の「水戸岡デザインの車両」であった。ということで、意匠的な面では似ている部分がかなり多かったと思われ、よって車両内部の雰囲気も似通っているところもあった。
 今回はJRであり、そして車両のデザイナーも別人である。そういう面でも、楽しみである。
 JRということで、指定券等の申し込みも通常の切符と同様に「乗車日の1か月前」からである(第三セクターでは、早いものでは3か月前から申し込みができる)。それ自体は問題ないが(発売初日に駅に行けばいいだけ)、問題は現地までの移動手段である。近場なら適当に新幹線などで移動すればいいが、四国や九州の場合は飛行機が必須となる。となると、1か月前になったのでは「安売り航空券」は手に入らない。
 結局、「2月ならそれほど混まないだろう」との予測に基づき、かなり前に高知までの航空券を手配してしまった。課題の指定券等についても、発売初日に「みどりの窓口」に行き、無事に一人用のカウンター席を押さえることができた。
 それと同時に、食事券も手配。値段は5,600円である。4回目で初の4桁(1万円以下)であるが、今までの3回は料金にすべて(乗車券やフリー切符、お土産。列車によっては飲み物も)が含まれている額であり、単純な比較はできないだろう。
 第1回と第2回の大人鐡では、そこそこ盛況であったが空席もちらほらあり、第3回(前回)に至っては「車両貸切」状態であった。しかし、今回は出発の1週間くらい前には「残席なし」になっていた。となると、やはり観光列車の割にはお手頃な値段なのであろうか。

@大歩危駅にて

■2020.2.1
 さて、観光列車への乗車は明日(日曜日)であるため、今日は移動+普通の観光だけである。
 朝一便で高知へ飛び、9時頃に到着。連絡バスで市内へ向かった。まずは、市内電車の「乗り潰し」である(微妙に残している部分があったため)。

@一日券+はりまや橋

 続いては、「元」国宝(「現」重文)である高知城へ。上記の切符があると割引になるのが嬉しい。
 さて、この時点で時刻は11時過ぎであり、お昼時でもある。「大人グルメ」というほどでもないが、ここで一つだけ紹介したいものがある。それは「うつぼ」である。
 10年以上前に四国お遍路をした際に、高知県で初めて「うつぼのたたき」を食べたのであるが、個人的には好きな部類の食感であった。しかし、なかなか関東では食べられないのと、それなりにお値段もするので、その後はご無沙汰であったものである。
 お城の近くにある「ひろめ市場」へ行き、その品をゲット。さて、問題は食べる場所である。この市場にはフリースペース(机)がたくさんあるが、たばこの臭いが気になるので、私的にはアウトである。ということで、近くの公園でいただくことにした。

@ビールと「かつおめし」も

 その後は、最後の「乗り潰し」で路面電車に乗り桟橋方面へ。これで高知県の鉄道は完乗である(JRや第三セクター(いわゆる国鉄)はかなり前に完乗しているが、私鉄はあちらこちらで乗り残している)。
 後はJR高知駅へ戻るだけであるが、見所は上記で紹介した切符の表紙にもある「ダイヤモンドクロッシング」(鉄道同士の平面交差)である。伊予鉄やシカゴなどで見たことがあるが、なぜか気を惹かれるものである。

@車内より

 JR駅からは、各駅停車で阿波池田(今日の宿泊地)へと向かった。
 1両だけの各駅停車はほぼ満席で12時49分に出発したが、土佐山田までに学生は下車してしまい、車内は3人くらいになってしまった。
 しかし、各駅停車であるからこそ、見所もあれこれとある。その後は、スイッチバック駅である新改にも久々に再訪できた。もう一つ有名なのは、「橋の上に駅がある」土佐北川であろう。

@「橋にある駅」で行き違い

 14時57分に大歩危到着。このまま阿波池田に行っても早すぎるため、ここでしばし散策タイムである。
 橋を渡って、道の駅まで。ここまでは、以前も歩いたことがある。今日は、このまま小歩危駅まで歩くことにしている。
 天気も良く、渓谷も奇麗である。明日の観光列車でもこの区間を走行するが、鉄道の路盤はトンネルや草木が景色を遮るので、歩きながらゆっくり見た方が実は奇麗である。

@渓谷美

 小歩危発17時48分の列車に乗り、阿波池田へ。2食付の駅近旅館に投宿した。

■2020.2.2
 朝食を頂いて、「うだつ」のある街並みを散策してから駅へ。7時57分発の琴平行に乗り込んだ。8時15分、秘境駅として最近有名になってきた坪尻に到着。私は約1年半前に「【どこかに鐡D】徳島空港編」でこの駅を訪問している。
 なお、特急追い抜きの関係で出発は8時29分であり、14分も停車時間がある。「坪尻駅に行ってみたいけど長時間の滞在はちょっと…」という方には、この列車がおすすめである。

@特急通過中

 峠区間を越えて、琴平には8時58分に到着した。
 私が乗る「四国まんなか千年ものがたり」の下り列車は「そらの郷紀行」と名付けられており、始発は多度津であるが、私は琴平から乗ることにしている。理由の一つは、車内での本格的サービスが行われるのが琴平以降であることで、もう一つは、琴平駅にあるこの列車専用待合室でゆっくりしたかったからである(多度津から乗っても、10分程度は滞在できるが)。
 出発まで1時間半以上あるため、もう何度も登っているが、取り急ぎ金比羅山へ。

@天気よし(展望台より)

 下山してから駅に戻り、専用待合室「TAIJU」へ。先客は1組だけである。
 ここで予約済の切符や食事券を係員に渡す。適当に座ると、ペットボトルの水と温かいスープ(これは食事のコースに含まれている)が渡された。

@ここは座りにくい(見るだけ)

 掲示されている写真や展示物を見たりしたが、それほど多いわけでもなく、「多度津から乗ってもよかったかな」と思っていたところ、手持無沙汰の私の雰囲気を察したのか、係員が「車内販売メニュー」を持ってきてくれた。1杯目は地元のビールにすることを心に決める。

@食事メニューと切符類も

 私の後にも2組ほどやってきたが、うち1組は台湾からのようである。この手の列車の乗客も、国際色豊かになってきた模様。
 肝心の列車であるが、高松付近で人身事故があったということで、その影響で20分以上遅れているようである。今日は飛行機で高知空港から戻らないといけないが、若干余裕を持たせているため、大歩危から先は予定の次の特急(1時間後)でも充分間に合うこととなっている。
 10時57分頃、音楽を鳴らしながらやっと「千年ものがたり」が入線してきた。

@お出まし

 乗っていた人すべてが専用待合室に向かったため、ガラガラの車内に入っていった。私の席は3号車「秋彩(あきみのり)の章」の1Aであり、最後尾のカウンター席である。
 デザインの良し悪しについては人それぞれの「好み」もあるであろうし、そもそも私は専門家でもなんでもないので詳細な批評は避けるが、少なくともカウンター席に関しては今回の列車が今までで最高であると思う。これまで乗ってきた車両のデザインのカウンター席は、机も小さく、椅子も存在感がなく、「おまけ」のような感じであったが、今回のカウンター席は広さも豪華さも充分である。

@今日の宴の席

 座席には、食器以外にも案内地図やタイムテーブル(食事提供時間等)も準備されてある。
 全体的に、車内の空間にゆとりがあるように思える。カウンター席だけでなく、4人席などもかなりゆったりしている。
 時間があるので隣りの2号車に行ってみたが、こちらはさらに余裕がある。「人を詰め込むだけ」を目的としていないのがよくわかる。

@団体さんにおすすめ

 11時10分頃、琴平を出発した。飲み物の注文伺いが来たので、予定通りに地ビール(この列車がデザインされているもの)を注文。係員がまだ近くにいるうちに別の係員がビールを持ってきたので、注文した時点で2号車のカウンターにそれが伝わるシステムになっているようである。

@最初はもちろん

 その後しばらくして、料理のセットが配膳された。地鶏や豚肉、海の幸、その他もろもろである。なかなかボリュームがあるが、この列車のコースはこのプレート以降は締めの料理(シチューとごはん)になってしまうため、これだけで完結しているとも言える。
(個人的には、上り列車「しあわせの郷紀行」の和食(箱入り)が気になっていたが、夕方の中途半端な時間の食事になってしまうため、今回は下り列車を選んだのである)

@美味しく頂きました

 車内では、当たり前だが「観光アナウンス」が繰り返されている。私は何度も乗車している区間なので、途中の見所はだいたい把握している(坪尻駅など、今朝も行ったばかりである)。
 しかし、初耳であったのは坪尻駅到着前にアナウンスのあった、駅建設用(治水用=川の流れを変えるため)のトンネルである。確かに、一瞬で過ぎてしまうため、よくよく注意している必要がある(今までは見逃していた)。

@こんなトンネル

 しばらくして、坪尻に到着した。ここで10分ほど停車時間があるため、乗客は一斉に下車してあれこれ写真を撮ったりしている。私にとっては数回目の訪問(今朝を含む)であるが、一緒になって右往左往した。
 今思えば、単純往復でなくて、往路は高松空港などにして別のルートでアクセスしてもよかったもしれない。

@駅写真はもう既出なので、スイッチバック部分から見える滝で代替

 車内に戻って出発すると、次の料理(シチューとごはん)である。お上品な量であり、牛丼気分で食べたら3口で終わってしまうが、そういう食べ物ではないのだろう。と言いつつも、あっという間に食べ終えてしまったが。

@締めの料理

 吉野川を渡ると、今朝まで滞在していた阿波池田である。ここでは、ホームで法被などを着た撮影会が開催された。
 阿波池田を出発すると、コーヒーとお菓子2点が提供されて料理は終了である。なお、この列車の料理は事前予約が必須でないため、座席指定だけで乗車して、車内メニュー(食べ物もある)だけで過ごすことも可能である(註:コース料理は予約必須)。また、「より豪華に」という場合は、コース料理+追加発注ということも可能である。

@最後のコーヒー

 出発時点で20分以上遅れていたが、この手の列車はスジ(時刻表)の合間を縫って走るため、次第に遅れは増えているようである(単線区間のため、行き違いが発生する)。抜いていく列車の様子を見てみると、特急列車のダイヤは定時に戻っているようであった。
 ということで、阿波川口駅でまさかの20分停車である(2本の列車と行き違うため)。いつもは見送るだけの妖怪たちも、ずっと手を振ったりして大変そうである。

@サービス中

 同駅出発後は、この観光列車の車窓としてのメインである小歩危・大歩危である。
 この旅行記の前半で「道路から見た方が綺麗」みたいなことを書いたが(列車からの車窓はトンネルや木々に遮られるため)、唯一の例外は、大きく見渡すことができる「橋の上」である。当然、列車も徐行することとなる。

@壮大

 大歩危峡を過ぎ、定刻から遅れること42分、13時30分に大歩危に到着した(表紙写真)。
 さて、後は戻るだけである。まずは13時51分発の特急に乗り、高知へと向かった。
 高知到着は14時42分。若干の時間の余裕があるため、日曜市(ほとんど終わりかけているが)に寄ってから空港連絡バスに乗るだけである。

 高知駅前には、JR四国で三番目となる観光列車で、2か月後にデビューする「志国土佐 時代の夜明けのものがたり」号の巨大な宣伝が置いてあった。カウンター席もあるようだし、皿鉢(さわち)料理風の弁当も提供されるということで、これはまさに「大人鐡」の対象である。デビューの直後は切符が取りにくいであろうから、秋以降か冬にでも乗りに来ようと思う。

@もうすぐデビュー

 

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