二度目(実質初めて)のモンゴルで小鐡旅

■はじめに
 コロナ禍も落ち着きつつあり海外旅行も可能になってきているが、国によってはまだ制限もあり、なにより航空賃が以前に比べてかなり高くなっている。「年末年始に欧州にでも行こうか」と思って検索をしてみると、運賃と燃油追加で30万円近くになってしまい、この時点で意気消沈である。海外への再進出は、来年以降に航空賃などもコロナ前に戻ってから、という心境である。
 そんな中、モンゴルへの出張が決まった。航空賃は気にする必要がないし、10月になってから日本帰国時の制限もかなり緩くなったため、コロナ関連の煩わしさもない。それに、旅程の関係で現地にて自由に使える時間もある。ということで、モンゴルの鐡ネタをいくつか拾ってくることにした。
 まずは、前回訪問時(3年前に北京からイルクーツクまで鉄道に乗車した時)に発見していた、ウランバートル駅付近にある機関車博物館(車両展示広場)である(拙文「中国→モンゴル、シベリア鉄道の旅」参照)。
 それ以外には、もちろん鉄道の乗車である。あれこれ検討して、ウランバートルからマンダルまで往復することにした(モンゴル鉄道のウェブサイトやアプリは、日本国内ではまったく繋がらなかったが、モンゴルに到着してホテルのWi-Fiで試みたらすぐに繋がった。もしかしたら、アクセスの制限があるのかもしれない)。目的地のマンダルは、モンゴル国内の鉄道は日に数えるほどしか運行していないため、無理なく日帰りできる旅程として選択したものである。よって、マンダルには特に目的とするものはない。

@ウランバートル駅にて

■2022.10.28
 海外旅行となると、2年10か月振りである(前回の目的地はインド)。よって、久々の成田空港である。
 少し残念なのは、モンゴル航空はアライアンスに加盟していないという点である(私はスターアライアンスとワンワールド、両方のステータスを持っている)。仕方ないので、出国手続前にあるカードラウンジで時間を潰してから、搭乗口へと向かった。

@初搭乗(背後にはフライングホヌがいる)

 14時過ぎに搭乗が始まり、14時40分に出発した。小さい737なので「海外に行く」という感じはしないが、日本語が通じない客室乗務員の姿などを見ていると、だんだんと海外に行く気分になって来た。
 モニターがない座席であるが、機内Wi-Fi(ネットはできない)があったので、それを使って映画を見たりして時間を潰した。しばらくして機内食がやって来たので、ビーフを選択してビールを頂いた。

@久々の機内食

 時差の関係で搭乗中に1時間時間が戻り、19時08分にチンギスハーン国際空港に着陸した。この空港は2021年に新たに開港したばかりであり、地理的状況が良くなったため欠航が少なくなったらしいが、しかし町の中心部からはかなり遠くなってしまっている。送迎の車に乗ってホテルに向かったが、到着したのは21時過ぎであった。

■2022.10.30
 本日は自由に使える日であるため、マンダルへの鐡旅である。到着日はそれほど寒くなく雪も皆無であったが、昨晩に大雪が降り寒さも本格的になってきている。

@雪だらけのスフバートル広場

 ホテルからウランバートル駅までは歩いて50分程度であるが、雪が積もっていて速く歩けないのと、信号が少なくて道路の反対側に渡れなくてかなり後戻りした区間もあり、結局1時間20分くらいかけて駅に辿り着いた。
 前回訪問時(9月冒頭)は穏やかな気候であったが、今日は雪だらけの駅である。

@久々の再訪

 なお駅舎自体は待合室や売店やトイレがあるだけであり、チケットは駅舎の左手にあるビルでの購入となる。窓口にて口頭で注文できる自信はないため、モンゴル到着後に接続可能となったモンゴル鉄道のウェブサイトであれこれと調べて、乗車したい列車の時刻やクラスを紙に書いておき、それを窓口に提出して無事に切符を購入した。

@戦利品

 10時少し前、列車が行先方面から入線してきた。貨物が4両で客車が16両である。後ろから(入線時は先頭から)貨物4両、25〜21号車(2等寝台)、15〜11号車(座席)、0号車(関係者用?)、5〜1号車(1等寝台)である。

@入線してきました

 しばし駅舎のトイレに行ったりしてから、10時20分頃に車内に入った。各車両の入口に女性車掌がいるので、彼女に切符を見せて車内に入っていく手順である(中国やロシアによくある手順)。なお往路は座席車両を購入してあり、私の座席は12号車である。座席といっても普通の席ではなくて、2段式寝台の上段を跳ね上げて横に3人座る形である。2時間15分も乗車するのに、運賃はたったの115円である。
 私の席は残念ながら通路側であったが、今日は空いているはずなので(ネットでシートマップも検索可能)、出発したら窓側に移るつもりである。

@こんな空間

 なお2等寝台は、同じ車両を寝台状態で利用できるようにしているものである。上下段向かい合わせだけでなく、通路側にも縦に寝台が備え付けられている。
 定刻から1分遅れの10時35分、ウランバートルを出発した。車掌が何やら聞きに来たが(恐らく飲み物の注文)、よくわからないので断っておいた。
 右手には、多種多様の客車や機関車が係留されている。この様子は3年2か月前にも見ているので、なんとなく覚えている。

@今日は雪ですが

 10時49分、最初の停車駅であるトルゴイットに到着した。15両以上もある長編成なのにどの車両がどこに停まるのかがわからないため、乗客はホーム上で右往左往している。
 同駅を10時52分に出発。真っ白の雪景色を見ていると、車両専用の車掌とは別の女性車掌が切符の確認に来た。これは中国やロシアにも言えることだが、人件費の観念が日本とは違うようである。
 乗客が乗れる列車は数えるほどしかないが、貨物列車は頻繁に走っている。というか、シベリア鉄道と同様に、この鉄道の主目的は荷物運搬なのである。

@旅客はオマケ

 駅付近以外では、ひたすら白化粧の景色を見続ける。晴れていれば青空とのコントラストが美しいのであろうが、今日は降雪であるため、上も下も真っ白なので写真撮影には向かない日である。
 11時16分にエメールトに到着し、同駅を11時20分に出発した。するとここで、車内販売がやって来た。私は何も買わないが、外の景色を写してもあまり絵にならないので、こちらを撮影。

@車内販売ワゴン

 それにしても、駅に停まる度にドアを手動で開けて乗降部の鉄板を引き上げないといけないので(ホームが低いため、デッキにある階段部分を使えるように重い鉄板の蓋を開ける必要がある)、車掌も大変そうである。
 11時31分、ダワーニに到着して、同駅を11時35分に出発した。乗降客が少ないどんなに小さな駅でも、駅員が配置されている場合は、列車の出発・通過時には駅員が出てきて確認作業をしている。

@ダワーニ駅にて

 その後は、361-p KM駅に11時45分に到着して11時46分に出発、アルシャント駅に11時55分に到着して11時56分に出発した。いつもはこのような「正確な時刻把握」はしないのであるが、今日は車内アナウンスが皆無であるため(外国人旅行客など誰も乗らない列車であるため)、マンダルで確実に下車するために各駅の出発状況を把握する必要がある。
 車内は賑やかであり、マスクをする人もほとんどいない(しているのは車掌くらい)。外は相変わらず真っ白で写真撮影には向かないが、馬の群れなどが見えて来ると、「モンゴルにいるんだな」という気になってくる。

@馬

 あまり写真映えしないが、せっかくなので馬や牛の写真をあれこれ撮っていると、遠くにゲルと羊の群れが見えてきた。あれこそ、まさに遊牧民であろうか。

@ズーム撮影

 12時50分、定刻ぴったりにマンダルに到着した。この路線は物流の中心でありながら単線であるため(駅で正確に行き違う必要があるため)、定時運行に近い運用が求められているのであろう。旅客列車の時刻表を見ると、大きな駅では15分くらい停車時間があったりするので、これはおそらくバッファーとして時間調整できるようにしていると思われる。
 マンダルでは、私以外にもちらほらと乗客が下車した。

@無事到着

 さて、特に目的もなく来た町である(事前にネット検索したが、日本語の訪問記など皆無であった)。小さな駅の前は空き地で何もなく、非舗装の道を数百メートル歩いて大通りに出たが、目立つのは道路を平気な顔で歩いている牛の群れや、バイク替わりに馬に乗っている地元民、野良犬や野良猫、とにかく動物ばかりが印象に残る小さな集落であった。

@牛横断中

 45分ほど適当に散策して、駅へと戻った。小さな駅であるため待合室も狭いが、14時02分の列車の出発も近づいているため、席はほぼ埋まっていた。
 室内には、時刻表や路線図以外に、鉄道の絵も掲げられていた。

@この付近でしょうか

 外にいた丸々と太った野良猫(恐らく駅員にたらふく餌をもらっている)を相手にしていると、13時57分頃に列車が入線してきた(復路も及第点の運転時刻である)。さて問題は、私が乗る車両がどこなのかが不明なのである。ホームの中間地点に立ち、通過する客車を見続けたが、該当なし。途中にあった0号車のデッキにいた女性車掌に聞くと、一番後ろの方だという。急いで向かったが、後ろ側の数両はその低いホームからも外れているため、地面から這い上がらなくてはならない。

@あの人に続け

 最後尾まで行き、必死になってデッキ部分をよじ登って車内に入った(私はまだこれが可能であるが、高齢者では無理であろう)。
 復路については、座席が満席であることをネット検索時に知っていたため、1等寝台にしている(ただし上段。1等と言っても、料金はたったの310円)。車内はやはり満席であり、かなり賑やかであった。

@上段(上がるの面倒。寝具もいらないし)

 マンダル出発後、トイレに行って席に戻ると、同室の女性2人が「英語話せますか」と聞いていたので「はい」と答えると、「ここ(下段の通路側)に座っていいですよ。上に登るのは大変ですから」ということで、そしてその後はあれこれと質問タイムとなった。2人ともモンゴル人の大学生で米国留学の経験があるということで、流暢な英語である。どうせ復路は往路と同じ景色なので、あれこれと話をしながら室内で過ごした。
 しかし、そのうち路盤が蛇行し始めて先頭の車両が見え始めたので、廊下に出てそれを撮影した。

@雄大

 その後は、廊下で撮影+室内で四方山話、である。日本やモンゴルのことだけでなく、これまで旅した国のことなど、あれやこれやと聞かれたのでそれに答え続けた。
 今日は朝から雪模様であったが、ここに来て少しだけ晴れ間も見えてきた。最後尾車両であったことを思い出し、後ろのデッキに行って少しだけ撮影タイムである。

@朝から晴れてほしかったが

 往路の巻き戻しの風景を見続けて、ウランバートルには定刻から2分遅れの16時32分に到着した。海外であることを考えると、充分に及第点である。
 しかし、出発時と違うホームに到着したのであるが、このホームは日本と同様の「背が高い」ホームであった。つまり、デッキの階段を使わないで下車できるはずなのだが、まっすぐの(曲がっていない)ホームなのになぜか車両とホームの間が40センチ近くも空いている。施工の間違いか、それとも違う規格の車両も入線するためなのか、謎は解けない。

@遠い(介助が必要)

 その後は1時間くらい歩いてホテルに戻り、仕事モードになるだけである。

■2022.11.1
 さて、今日は機関車博物館を訪問することにしている。
 8時過ぎにホテルを出て、マイナス15度の寒さの中を歩き続けた(もちろん、カイロは前後に装着済みである)。
 機関車博物館に行く前に、空港からの送迎時に見つけていた大きなラクダの像を見に行こうとして跨線橋を渡ると、ちょうど貨物列車が通過しているところであった。

@偶然

 その後はラクダの像を見て、それから少し戻って跨線橋を越えてから駅方面に歩き、機関車博物館へとやって来た。さらっと書いているが、この時点でホテルから1時間20分くらい書いている。
 博物館と言っても、屋外に車両が係留されているだけである。しかも、鍵が掛かっているため敷地内には入れない。ただし、柵がスカスカなので、撮影は可能である。
 敷地内には、SLが4両、機関車が3両、客車が1両展示されている。

@SLの例

 各車両の前には小さい説明版があるが、モンゴル語オンリーなので解読は不明である(「恐らくあの部分が最高速度かな」などの推測は可能であるが)。

@機関車の例

 3年2か月前に列車乗車中に偶然発見した機関車博物館であるが、落ち着いて全車両の撮影ができたので、もうこれで充分に満足である。
 その後は、市内にある寺院等を普通に観光して、そしてデパートに行って土産品を買ったりした。後はもう思い残すことなく、翌日に帰国するだけである。

@市内散策中にまた貨物列車と遭遇

 

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