リベンジ・インドネシア

■はじめに
 今回の目的地は、今年の1月に行こうとしてマレーシア航空のまさかの大遅延によりキャンセルとなった、インドネシア(スマトラ島)である(拙文「インドネシアに行った(つもり)」 参照)。旅の目的地とその内容については変わらないので、前回の「はじめに」から引用したい。

--(ここから)
 一部の観光鉄道や豪華寝台列車等を除いて、鉄道というものは旅行の「手段」であって「目的」ではないため、旅行ガイドブックでも巻末のおまけで移動手段の一例として紹介されている程度である。よって私が初めての国や地域を鉄道が目的で訪問する際、参考にするのはガイドブック等ではなく、個人のブログや旅行記などが中心である。
 世の中には物好きな人が多く(人のことをあれこれ言える立場ではないが)、よくぞこんな国のこんな鉄道に乗っているものだと感心するような旅行記が数多くあり、おかげでアクセス方法や切符の入手手段など、様々な情報を得ることができている。昨年秋にサバ州の鉄道に乗りに行った際も、ネット上で有益な情報をたくさん手にすることができた。
 さて、今回の目的はインドネシアのメダンである。しかしいつものパターンで鉄道情報をネットで探し始めたのであるが、これがどういうわけかほとんど見つからない。数年前に乗車した短い旅行記が一つあるだけで、その他の情報もほぼ皆無である。仕方がないので英語で検索してみたが、結果は似たようなものであった。
 これが僻地ならばわかるが、メダンはマレーシアのクアラルンプールから約1時間という距離であるため、アクセスはそれほど難しくはない場所である。日本の鉄道好きが何人も乗りに行ってそれをブログ等に纏めていても不思議ではないのであるが、なぜか先駆者は少ないようであった。
 いずれにせよ、自力であれこれ調べ上げ、情報収集や切符手配などをした。インドネシアはジャワ島を訪れたことがあり、その際は現地に着いてから切符を手配したので少しく苦労したが、いつの間にかネットでも予約決済が可能になっていた。メダン(スマトラ島)の鉄道も予約できたので、この点はかなり楽になったところである。
--(ここまで)

 今回も下調べをしたが、やはり情報はほとんどなかった。
 夜行便は疲れるのと、前回で懲りたので、今回は金曜日に夏休みを取ってゆったり移動することにした。

【旅程】
1日目:成田からマレーシア航空(コードシェア)でクアラルンプールへ。(クアラルンプール泊)
2日目:KTMB(マレー鉄道)でスリムリバーまで往復(前回は6時発の列車に乗ってイポーまで行く予定であったが、時刻改正があり朝一番が7時になってしまったため、仕方なく何もないところで折り返すことに)。クアラルンプールに戻ってから近郊鉄道に少し乗車して、夕方の便でメダンへ。(メダン泊)
3日目:インドネシア鉄道会社(Kereta api)のSri Bilah Utama号で、ランタウ・プラパット(Rantau Prapat)まで往復。(メダン泊)
4日目:メダン近郊路線でビンジャイ(Binjai)まで往復。午後の便でクアラルンプールへ。夜のJAL便で成田へ。(機内泊)

@メダン駅にて

■2015.8.7
 成田へ移動し、ラウンジでまったりしてからサテライトの一番端にある搭乗口へ。前回と同じ場所でありトラウマのように当時の様子を思い出すが、今回はスムーズに搭乗することができた(それが当たり前なのであるが)。
 16時半過ぎにクアラルンプールに到着。イミグレーションが混雑していて40分以上も待たされたが、KLIAエクスプレスにはほとんど待たずに乗ることができた。KLセントラル到着後に駅近くのスーパーで夜用食材を買いあさり、駅前のすぐ近くにある安ホテルにチェックイン。
 さて、時刻はまだ19時過ぎである。安ホテルがモノレール駅のすぐ近くだったので、それに乗ってブキッ・ビンタンまで行ってみることにした。

@久々に乗る

 ブキッ・ビンタンで適当に歩き回り、特に何も買わずに結局戻る。KLセントラル行のモノレールに乗ってみると、車内が見たことのある景色で埋まっているではないか。要するに、広告がすべてJR東日本で占用されているのである。そういえば、タイに行った際にも空港連絡鉄道でこのような「貸切広告」を見たことがある。東南アジア諸国へのビザ免除で旅行者が増えてきているが、このような広告もそれに追い打ち(?)をかけているのであろう。

@ゆるキャラ?

 マレーシアで難儀なのはアルコールの入手であるが、都会ならば比較的容易である。ホテルのすぐ近くのコンビニで大きな缶を3本仕入れ、スーパーの食材(鶏肉)で一献して就寝。

■2015.8.8
 5時前には起きてPCであれこれ作業し6時半にホテルを出たが、まだ薄暗い(その代わり、夜は7時半くらいまで明るい)。私は朝型だから構わないが、普通の人からすると、日本でもそのくらいの時刻設定(今よりも1時間くらいずらすの)がいいのかもしれない。
 インターシティの待合室へ行ってみたが、なんと電光掲示が「9:00」となっているではないか。慌てて案内カウンターに行ってEチケットを差し出して訊いてみたが、普通に「Aゲート」とチケットの上に書かれただけであった(要するに、電光掲示が壊れているだけ)。

@鐡キャラ?

 すでに改札が始まっていたので、印刷してきたEチケットを見せてホームへと降りて行った。私が本格的な海外での鐡旅を始めたのは2010年の春であるが、その年の6月にここを利用しており、薄暗さがなんとも懐かしい。
 すでに入線していたETS(エレクトリックトレインサービス)は6両編成で、発車15分前だというのにすでに半分以上の席が埋まっていた。一番後ろがA号車で先頭がF号車であり、途中のC号車には小さなカフェ(売店)もある。この路線自体は私はすでに乗ったことがあり、2010年の秋に運転を開始したこのETSに乗るのが今回のマレーシアでの目的である。

@まだまだ新しい

 車内は、東南アジアの公共交通機関にありがちであるが、恐ろしく寒いくらいに冷房が効いている。以前、KLセントラルからバターワース行の列車に乗った際に、やはり凍えそうなくらい寒かったのであるが、今回も同様である。急いで、対策用の厚手の長袖を着込んだ。
 乗車率は90%近くになり、定刻から3分遅れの7時03分に出発した。市内はコミューター路線が込み入っているため、徐行運転のような感じである。
 7時半を過ぎてから、C号車の売店へ行ってミーゴレンを買ってみた。値段は市内で買うより倍くらいするが、ある意味「駅弁」であるから利用しない手はない。

@ピンボケ

 7時47分にラワンを出発してから、やっと改良された高速走行用の路盤を快走し始めた。
 この車両は車体部分を韓国の現代ロテム社が製造しているが、韓国製の悪い所で「ブラインドが2列分連動している」のである(最新型KTX「山川」などと同様)。私の前にいたおばさんがブラインドを閉めてしまい、おかげで外が見えなくなってしまった(結局、おばさんがすぐに寝込んだので再度開けたが)。
 田舎風景の中を時速120キロ以上で快走し続け、意外に多くの貨物列車とすれ違い、定刻から少し遅れた8時30分にスリムリバーに到着した。下車したのは、なんと私1人だけである。

@お見送り

 スリムリバーについては事前にあれこれ調べたが、キャメロンハイランドへ行く旅行者がちらほら下車して観光バスに乗り換えているくらいで、近隣に関する情報はほぼ皆無であった。よって、適当に駅前を散策することにしている。
 駅の東側は意外に多くの店舗等があり、あちこちでかなり旧い看板(中国語入り)が掲げられている。野良猫も多く、それらの写真を収めたりしてから駅に戻り、跨線橋を渡って駅の西側にあるヒンズー教寺院を見たりして時間を潰した。

@ぶらり途中下車(折り返し下車ですが)

 駅へ戻り、9時17分発のKLセントラル行を待つ。アナウンスがあったのでホームに入ると、駅員が「切符を見せて」と言ってきた。印刷したEチケットを見せると、英語で「日本人ですか?」「ようこそマレーシアへ」という感じで、なかなか愛想が良い。というか、一人旅でこのような駅に訪れる人が珍しいのであろう。
 イポー方面からやってきた列車に乗り、定刻に出発。往路とは反対側の席に座っていたのであるが(マレーシア国鉄はウェブ上の配置図で座席指定ができる)、しばらくすると左手に崩れたり転がったりしている車両が見え始めた。理由は不明であるが、事故→そのまま放置、という感じのようである。

@片付ければよいのに

 直線区間では快走し(車内テレビの速度表示がどれくらい正確かは不明であるが、最高速は146キロ)、10時36分にKLセントラルに到着した。
 さて、空港に行くにはまだ早いので、少しだけ近郊鉄道に乗ることにしている。そこで選んだのは、ケラナジャヤ行のLRTである。何に乗っても良かったのであるが、この路線は無人運転であり、先頭からは前方が見渡せるので、乗っていてなかなか楽しいものなのである。

@こんな感じに

 ケラナジャヤまで往復し、KLIAエクスプレスで空港へと向かった。
 これから乗るのはマレーシア航空によるメダン行であるが、ワンワールドであるためラウンジの利用が可能である。サテライトの方にあるゴールデンラウンジは何回か利用したことがあるが、コンタクトピアでは初めてである。行ってみると、お膝元ということもあり内装等も立派なところであった。注文式のヌードルバーなどもあったので、つい注文してしまった。

@具沢山のワンタンメンとカレー(食べ過ぎ)

 飛行機は15時頃に動き出し、50分後にはメダン(クアラナム空港)に到着した(時差があるため、時刻は再度15時頃に)。2年前にできたばかりであり、まだまだ新しい。
 東南アジアの入国審査は何も聞かれずにハンコを押されることが多いが、ここは観光客が少ないためか、やたらあれこれ聞かれた(もちろん、無事に通過)。空港内に変な客引きはいないが、競争が激しいためか、定位置(店舗内)から「タクシー?」と訊いてきたりする。両替所に向かったが、若い女の子たちが「こっちこっち!」という感じで、なんだか飲み屋の勧誘みたいに異様に愛想が良い。
 久々のインドネシアであるため1万円ほど両替をし、空港に直結している連絡鉄道の駅へと向かった。

@入口

 駅に入ってすぐのところで切符を買ったが、10万ルピアもする(ネットで調べた限りでは8万ルピアであったので、値上がりしたようである)。日本円にすればたったの1,000円であるが、現地の物価を考慮すればかなりの値段であろう。
 改札を通り、ホームへと入った。列車との間はガラスで仕切られており、これでは撮影はままならない。

@無理矢理写す

 レシートを見ると座席が指定されているようだが、空いているので適当な所に座った。定刻の15時15分、列車はゆっくりと動き出した。
 開通後しばらくは旧い車両を使用していたようであるが、その後に導入された新型車両は快適である。6分ほど走ると左手から路盤が合流してくるが、これは明日に乗る予定の在来線である。
 車両は新しいが、沿線風景は「いかにもインドネシア」という感じで、マレーシアとは大違いである。崩れそうな家が多く、その周囲で遊んでいる小さな子どもも多く、そしてメダン市街地が近づくにつれてゴミだらけのスラムのような様相を呈してくる。

@車内は綺麗で別世界

 途中駅で10分ほど停車して行き違いをして、その後は超スローペースとなった(近くにいる子どもらが、動いている車体を触って遊んでいるくらいである)。スコールが降り出して、16時10分頃にメダンに到着した。
 まだ時刻も早いため、駅東側に新設されたショッピングモールへ行き、地下のロッテマートに行ってみた。ここに来たのはビールを探すためであるが、残念ながら空振りであった(インドネシアでは今年からさらにアルコールへの制限が厳しくなりコンビニ等では買えなくなっており、大手スーパー等でしか買えないのである)。
 仕方なく、予約済みのホテル(駅に直結)へ行くことにした。駅南部に跨線橋があることを知らなかったので北側の道路に回ってみると、ちょうど貨物列車が踏切を通り過ぎているところであった。

@これも鐡ネタ

 チェックインの前に、まずは駅で予約済の切符を手にすることにした。予約自体は、ネット上の予約サイト「Ticket.com」で手配済みである。ただしこのサイトは鉄道会社のオフィシャルサイトではないため、予約結果を印刷してもマレーシア国鉄のEチケットのようにそのまま乗車することはできず、駅で実際の切符に交換する必要がある。
 Ticket.comの使用方法については少ないながらも日本語のブログで紹介されたものがあり、それによると大きな駅では自動発券機があるということであった。メダン駅がそれに入るのかどうかは不明であったが、行ってみると改札の近くに設置されていた。

@こういうもの

 画面上のタッチパネルで予約番号(アルファベット)を入力すると、隣りにあるプリンター(昔のプロッターのようなもの)がカタカタと動き出し、無事に明日のチケットを入手することができた。インドネシアの鉄道は、車両等のインフラは旧いままであるが、予約に関しては以前に比べると格段に便利になったといえよう。

@戦利品(後ろにある用紙は、Ticket.comの予約票)

 その後は駅直結のホテルにチェックインし、シャワー+シャツ等の洗濯。終了後は、再度ビール探しの旅(?)である。グーグルマップによると、駅から1キロ程度のところにYaohan(ヤオハン)があるようである。そこまで歩いて行き、まずは飲料コーナー等を探したが、当然のように見付からない。諦めかけた頃、レジの近くの足元に、埃を被ったような状態で「常温」のビールが少しだけ置いてあるのを発見した。冷えていればベストであるが、これ以上の我儘は言えないので、明日の分も含めて6本ほど購入した(常温のビールは、中国旅行で慣れたものである)。
 その後は、先ほど覗いたロッテマートでチキンのローストやパンを買い、いつも通りの「ホテルの部屋での一献」である。

@戦利品その2(常温ビールとトリ)

■2015.8.9
 1泊3,600円程度の安ホテルであるが、清潔であり英語も通じ、またコンプリメンタリー(無料)の水2本以外にカップラーメンも2個ついており、そして朝の無料朝食は同じ建物内にあるスターバックスのコーヒーとクロワッサンということで、これはなかなかお勧めのところである。
 朝食後はゆったりとし、8時過ぎにホテルを出た。改札で切符と身分証(私の場合はパスポート)を見せてから構内に入り、すでに客車のみが入線しているホームへと向かった。

@改札に入ってすぐの様子

 車両は8両繋がれており、前から「エグゼクティブ2両」「電源車+荷物車+乗務員用の混成」「ビジネス4両」「荷物車」である。車両はいずれもかなりくたびれており、年代物のようである。
 私は高価な方であるエグゼクティブの切符を押さえているが、ランタウ・プラパットまで約6時間の乗車で13万5,000ルピア(約1,350円)である。空港連絡鉄道(乗車時間は45分前後)が、いかに高いかがわかるであろう。
 後ろまで行って編成を確認してから前方へ戻ってみると、ちょうど機関車が連結されるところであった。

@子どもも注目

 車内は90%近い乗車率である。出発の5分も前からピンポンパンポンという音が構内に響き渡り、定刻の8時40分ぴったりに列車は動き出した。
 しばらくすると、枕の無料サービスがあった(私は不要のためお断り)。それ以外にも、いずれも有償であるが水やお菓子などサービスがあった(欲しい人はお盆から取り、お金を払う)。
 メダンを出発してしばらくは、ゴミだらけのスラム街のような感じである。

@これなどはマシな方

 左手に空港への路線が分岐し、しばらくすると検札が始まった。おじさんの車掌が1人いるのは当然として、それ以外の若手の車掌(?)2人、警備員(警察かもしれない)3人という塩梅で、どうにも物々しい(写真を撮って何か言われると困るので、撮影はしなかった)。
 9時30分過ぎにどこぞの駅で運転停車をしている時に、係員(上記の車掌らとは違う)が食事の注文を取りに来た。写真と値段付きで、これなら私でも注文可能である。朝はスターバックスで軽食を食べたが、これはこれで記念として注文しておいた。
 随分と待って9時55分となり、行き違いの列車が来てやっとこちらも動き出した。

@対向列車はシアンタールからやって来たもの

 しばらくすると、先ほど注文した料理が運ばれてきた。どの車両で作ったのかは不明であるが、温かいしちゃんとした皿に乗っている。前から3両目(混合車両)に、小さなキッチンでもあるのかもしれない。
 パクチー風味のナシゴレンは美味であったが、いかんせん机がない座席なので、食べるのも一苦労である。

@こんな感じ(2万2,000ルピア)

 満腹になったことも影響し、少しだけウトウトとする。ふと目を開けると、掃除の人が3人乗車しているのに気付いた。それ以外に食事の注文受け等をする人も2人いるため、客車部分が6両の列車に11人(もしくはそれ以上)の乗務員が勤務していることになる(当然、それ以外に運転手がいる)。人件費が安いからこそできるのであろうが。
 久々に舗装道路を目にして、巨大なモスクが左手に見えてくると、キサランであった。到着時刻は定刻より9分遅れの12時09分である(先ほどの長時間の運転停車で最大16分ほど遅れていたが、少し取り戻したようである)。
 本来の時刻表であれば、ここで10分間の停車となる。それを切り詰めて遅延をカバーするのかと思ったが、どうやらそうではなさそうなので、ホームに降りてみた。機関車は点検され、喫煙者は煙草をするための、貴重な時間のようである。

@私は撮影に

 定刻から7分遅れの12時17分に同駅を出発。すぐに左手にタンジュン・バライ方面に行く路盤が分岐していった。
 景色自体は、渓谷になったりしないので大きな変化はない(よって、時々うつらうつらとしてしまった)。変化といえば、時折小さな茶色い川を渡る程度である。
 駅に停まるごとに遅れは6分、4分、2分と減っていき、終着のランタウ・プラパット着は定刻から1分だけ遅れた14時28分であった。大々合格点といえよう。
 出口から出ると、とてつもないバイクタクシーの客引きの数である。それらを切り抜け、線路の先まで行ってみた。

@そこから撮影

 柵の先まで線路は伸びていたが、それも20〜30メートルだけでぷっつりと切れていた。
 暑いのを我慢して少し散策でもしようかと思ったが、路肩を歩いているだけで客引きが声を掛けてくるし、そもそもかなり暑いので、駅へ戻って車両の入れ替え作業を見たりして時間を潰すことにした。

@駅自体はこういう感じ

 機関車だけ前後を替えるのかと思っていたが、そうではなく少し複雑で、往路に最後尾にあった荷物車はやはり復路も最後尾になるのである(つまり、その車両だけ切り離して反対側に移動させる必要がある)。また号車番号も、前方(機関車が付いている側)が若い番号になるため、往路にビジネスの4号車だったものはビジネスの1号車に、同じくエグゼクティブの2号車だったものはエグゼクティブの1号車になるという、微妙に面倒なものであった。

@車内清掃中

 引込線で清掃等をされていた客車は、それが終わるとバックで入線してきて、件の荷物車に連結された。これで、復路の編成が完成したことになる。
 復路でもやはり出発の5分前からピンポンパンポンと鳴り続け、そしてなんと1分の早発で15時29分に出発してしまった。
 復路は基本的に往路と同じであるが、さらに気づいた点としては、「行き違いのためにわざわざスイッチバックをすることもある」「どう見ても9歳くらいの子どもまでバイクを運転している(しかも3人乗りで)」などなど、である。

@エグゼクティブの車両(リクライニングが壊れている座席多数)

 日が暮れてからは、PCと睨めっこ。地方に行くほどダイヤに余裕がある往路とは違って、復路は徐々に遅れが増えていき、終着のメダン到着は定刻から33分遅れの21時45分であった。

■2015.8.10
 今日は近郊列車に乗ってビンジャイまで往復することにしているが、長距離列車に増してさらに情報が少なかったのがこの近郊列車についてである。時刻については英語でなんとか検索することができたが、料金その他については、まったく情報がなかった(メダン、ビンジャイ、鉄道で検索すると、前回の私のキャンセル旅行がヒットしてしまうくらいである)。
 7時半過ぎにホテルを出て、まずは駅の北西側に置いてあるSLの撮影である。

@無造作に置かれている

 駅の窓口に行ってみると、「Medan-Binjai」という窓口は1つしかなくて数人並んでおり、しかもそれぞれの発券に時間がかかっているようである。少し焦りそうになったが、5分くらい並んで無事に買うことができた。
 値段については、少し前の英語の情報で3,000ルピアというのがあったが、現状でいくらなのか不明であるためとりあえず2万ルピア札を出してみたところ、おつりは1万ルピアだけであった(切符にも値段として1万ルピアと書いてある)。インフレ率がかなり高いようで、地元民は大変であるかもしれない。
 ビンジャイ行は、目の前のホームに入線していた。4両編成の非冷房ディーゼルカーで、そのうち1両は女性専用車のようである。

@ボロボロ

 車両はインカ社製であり、インドネシア国産である。数年前にジャワ島で鉄道に乗った際にも思ったことであるが、インドネシアが鉄道車両を国産しているというのは意外な感じがする。
 定刻の8時00分ちょうどに列車は動き出した。すぐに右手に路盤が分岐し、そこから先ビンジャイまではほぼ直線の連続である。前方を人や車が直前まで横切るため、列車は絶えず汽笛を鳴らし続けている。乗客は少なく、各車両に数人ずつという感じである。
 この路線も、やはり路盤の両脇はスラム街のような様相を呈している。しかし、こういう「観光客が絶対に乗らないような地域鉄道」に乗る際は、いつも言いようのない高揚感に襲われる(物好きなだけかもしれないが)。

@窓が開くのでこういう撮影も可能

 そんな貧民街をぼんやりと眺めていると、今度は家々が水没しているのが目に入ってくるではないか。昨晩スコールがあったが、その程度でこんな状態になるようでは話にならないであろう。衛生的にも非常に良くないと思われるが、かといって彼らは引っ越すこともできないので、仕様がないのかもしれない。
(グーグルマップを見てみると、この辺りは路盤と川が重なっている部分である。治水されてない可能性があるが、しかし、到底人が住むような環境とは思えない)

@水だらけ

 そもそも、鉄道はこんな状況の上を走ることはできない。運転席の部分から前方を見ることができるのでそこへ行って見てみると、路盤が結構高めに盛られており、そしてその両側が完全に水没しているようであった。

@鉄道珍百景決定?

 スラム街ばかり続くのかと思っていたら、じきに農村風景に変わっていった。再度民家が増えてきて、定刻より1分早い8時31分にビンジャイに到着した。途中駅はなし(ノンストップ)であった。
 地方なのでメダンより酷いのかと思っていたが、予想よりも小奇麗な街である。散策している時間はないので駅の写真しか撮っていないが、この駅舎が旧い西洋風の雰囲気を醸し出しており、なかなか瀟洒な建物であった。

@意外

 ほぼ直線で続いてきた路盤は、ビンジャイから先右折して北方へ向かっている。しかし、今この路盤を走る列車はない。
 駅構内や駅猫の撮影をしてから、8時45分発の列車でメダン方面へ戻った。往路よりはかなり混んでおり、座席に対する乗車率は60%くらいであろうか。通勤というよりは、「ちょっとメダンにお買い物」といった感じである。
 復路も、当然だがあの水没地区を通ることになる。子どもは無邪気に泥水の中で泳いでいるが、やはり大変そうである。
 踏切はあるが、目の前を横切る人や車の多いこと。それらは直前にはなんとか避けてくれるが、それ以外にも犬や猫や鶏や鼠など、様々なものが寸前を横切っていく(鶏については、1〜2羽轢いてしまったかもしれない…)。

@泥水で泳いだり、線路上を走ったり

 メダンに到着後は、徒歩圏内の寺院を散策したり、ロッテマートで自分用土産(ナシゴレンの素など)を買ったりしてからホテルに戻った。
 チェックアウト限界ギリギリの12時前にチェックアウトし、同じ建物の2階にある空港連絡鉄道のカウンターへ行って切符を買った(バスの方が安いが、もうメダンに来ることもないだろうし、最後はやはり鐡で締めるべきであろう)。
 最後の見納め、と思って車内からの景色を堪能としたが、車両の窓の部分のラッピング(模様)が濃すぎたためほとんど外が見えなかった。まぁ、これも愛嬌である。

 さて、メダンの鐡旅はこれで終了であるが、皆さまの旅情報になるかもしれない(先述の通り、メダン情報は収集に苦労した)ので、余計かもしれないがメダン関連情報を少し足しておきたい。
 まず空港連絡鉄道は、在来線の駅とは違っており、在来線駅舎の北側に独立して造られている。2階が切符売り場(カウンター)であり、3階は私が宿泊したホテルの受付である。

@切符売り場

 連絡鉄道は全車指定席であり、混んでいたので復路は私も指定された席に座ることにした。まだまだ路盤工事をしていたので、将来的にはもっと時間短縮がなされるかもしれない。
 また、これまた新装オープンしてからそれほど時間が経っていないクアラナム空港であるが、所定の様々なステータスを満たすと利用することができるラウンジ(SAPHIRE MANDAI)が国際線出発エリアにある(私はワンワールドとして利用)。アルコールはないが、ナシゴレンやミーゴレン、その他インドネシアらしい食材も数種類あり、ついつい食べ過ぎてしまった。

@ラウンジ入口

 

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