祝・南阿蘇鉄道復活+ひこぼしライン開業

■はじめに
 今回は九州を訪問して、7年ぶりに復活した南阿蘇鉄道と、BRT(バス・ラピッド・トランジット)として再開した「ひこぼしライン」を訪問することにしている。
 南阿蘇鉄道は、2016年の熊本地震によって不通となってしまっており、3か月後に中松から高森までは復活したものの、「尻切れトンボ」状態が続いていた。やっと新しい橋も完成して、今年の7月に完全復活となったものである。
 一方のひこぼしラインは、JRの日田彦山線であったが、2017年の豪雨によって不通となってしまっていた。元より幹線でもないし乗客も少なかったため、復旧協議は難航し、結局鉄道としての再開は断念されることとなった。そして、東日本大震災後の気仙沼線や大船渡線と同様に、BRTとして営業を再開することになったものである。ということで、純粋に「祝」とは言い難いところであるが、これを機に良い方向(停留所が増えたことによる乗客増など)になればいいかと思う。

@高森駅にて

■2023.9.9
 8時10分の便(特典航空券)で羽田から熊本に飛び、無料の「くまもとライナー」で肥後大津駅まで移動してきた。この小型バスは愛用しており、なにより無料でJRの駅までアクセスできるのが嬉しい。
 1時間ほど時間があったので、近場のスーパーで割引弁当(まだ朝なのになぜか割引シール付き)を買ってそれを待合室で頂いたりして時間を潰した。

@新たに増えていた

 窓口で大分までの切符を買い、11時49分発の列車に乗り込んだ。南阿蘇鉄道との接続駅である立野には、12時03分に到着。
 地震後の不通時にここを訪問したことがあるが(拙文「【どこかに鐡F】熊本空港編」参照)、その際は荒れ放題で廃墟のようであった。今は、新駅舎が完成して見違えるようである。

@新駅舎(上記旅行記にある駅写真と比較すると唖然とする)

 早速、新駅舎内にある南阿蘇鉄道のホームへ。現在は漫画「ONE PIECE」と様々なコラボ中であり、12時07分発の車両はまさにコラボ列車「サニー号」であった。

@ラッピング車両

 車内は大混雑で、通路やデッキも立つ人で一杯である。なんとか、車両前方にスペースを見つけて陣取った。旅行中は空いている方が良いが、収支のことを考えると、これが続いてほしいと思う。
 定刻に出発。しばらくすると、右手に建設中のダムが大きく見えて来る。

@こちらの面はほぼ完成

 その後には、一番の見所である架け替えられた第一白川橋梁となるが、これの紹介は復路のトロッコ車両からにしたいと思う。
 最前部は家族連れに占領されていたが、彼らは最初の停車駅で降りて行った(お試し乗車であった模様)。よって、それ以降は最前部から景色を眺めることにした。空調が届かなくて激暑の場所であるが、それは仕方がない。

@景色優先

 車内では、運転手が様々なアナウンス(観光情報や民話情報から、各駅にいるONE PIECEのキャラ情報まで)を細やかにしている。よく勉強されているようである。
 しばらくして到着したのは、以前は日本一長い駅名であった(今は3番目)「南阿蘇水の生まれる里白水高原」である。今からもう24年も前であるが、野宿セット(1人用テントなど)を積んでバイクでツーリングをしていた際に、この駅で一晩過ごした思い出のある場所である。

@白水高原駅

 長閑な景色の中を走り続け、終点である高森に近付いて行った。驚いたのは、たくさんの人が待ち構えていたことだけでなく、駅舎とその周辺が完全に新しくなっていたことである(調べてみたら、駅舎は今年の4月に完成したとのこと。周囲はまだ工事中である)。

@見違えるようになっていた

 12時45分に高森に到着。あのボロ駅舎と駅前にあった小さなSLが懐かしい気もするが、新駅舎は観光客で大混雑であり、再開を機に盛り上がっているようである。
 取り急ぎ窓口に行き、予約してあったトロッコ列車の指定券を発券してもらった。このトロッコ列車には以前に乗車したことがあるが、応援も込めて今日も乗ることにしている。

@乗車券(490円)+トロッコ指定券(1,010円)

 トロッコ列車の出発まで1時間弱あるため、まずは街中散策である。そう思って歩き出そうとすると、12時55分発の立野行が入線してきたのでそれを見に行った。再開に合わせて導入された新車両の2両編成であり、LEDの行先表示など最新装備満載であるが、中を見てみたらロングシートである。せっかくの阿蘇の雄大な景色があるのだから、そこはクロスシートにしてほしかったところである。

@新しいですが

 その後、散策へ。駅周辺は様変わりしていたが、街を歩けば「私が知っている高森」である。醤油屋や酒屋などをぶらぶら見てから、駅に戻って来た。
 上述した通り、復路はトロッコ列車である。

@客車3両+ミニ機関車2両

 残念ながら進行方向とは後ろ向きの席になってしまったが、出入口の近くであり足元のスペースは広いので、写真撮影の際は立って移動すれば良い。
 13時40分、高森を出発した。トロッコ車内でも、もちろん様々な観光アナウンスが行われている。元貨物の車両であったということで、乗り心地は良くないとのこと。確かに、振動が直接伝わってくる感じである。

@国鉄マークの扇風機

 往路と同じ内容のアナウンスもあれば、違う内容もある。以前に乗った時も似たようなことを聞いているので、「また『午後の紅茶』ネタか」などと思いながら、様々な説明を聞き続けた(詳しく知りたい方はググってください)。
 大きな湧水公園の脇を通るが、今日はメンテナンスで水を抜いているとのこと(逆に珍しい光景)。

@ONE PIECEネタもあり

 その後も、様々な大小の湧水の紹介があったり、ホーム上で喫茶店員の即興歌唱があったりと、色々なものが続いて行った。
 さて、大きなトンネルを抜けると、メインの第一白川橋梁である。

@遠くに様々な橋があり

 本当は遠くから見た方がより臨場感があるが(橋の上からだとその雄大さにあまり気付かない)、しかし下を覗き込めば、かなり高い位置にいることが分かる。

@物を落としたら最後

 ガタゴトと走り続け、14時30分に立野に到着して、トロッコは終了である。
 上述の旅行記では、誰もいない駅で私1人だけで駅前で売っているニコニコ饅頭を買って食べたが、今日は団体さんも含めて大量の観光客がいる。饅頭もかなり売れているようで、何よりである。
 次に乗るべきは15時07分発の宮地行であるが、ホームに何やら列車が入線している。行ってみると、キヤ141系であった。

@4月に阿波池田で会って以来

 入線してきた宮地行に乗り込み、15時07分に出発。スイッチバック駅であるため、いったんバックしてから勾配を上り続けて行った。右手には、先ほど見えていた複数の橋が横たわっているのが見える。熊本地震で落下してしまった橋の残骸も、まだ残ったままであった。
 宮地で乗り換え、その次は肥後竹田で乗り換え、大分到着は19時19分。安ホテルに投宿した。

■2023.9.10
 今日はそれなりに移動するためフリー切符が欲しいところであるが、青春18きっぷについては、今夏はもう3セットを使い切ってしまった。よって使用するのは、JR九州の株主優待である。入手額は2,800円であり青春18きっぷより高いが、正規の切符よりは安く済ませられる。

@押印後

 7時24分の列車で由布院へ行き、散策後に久留米行に乗って日田へ。スーパーへ行って買い物をしてから、駅に戻って来た。
 案内には、乗客が多い場合は「ご乗車いただけない可能性があります」とある。私は11時10分発に乗れないと飛行機に間に合わなくなるので、出発の15分くらい前に並び始めた(ただし、今日は臨時便も追加されるということで、杞憂に終わったが)。

@黄色がやって来ました

 ひこぼしライン開業に合わせて導入された電気バスであるが、あっという間に満席となり、乗れなかった人はすぐ後ろを追走する臨時便へと乗り込んで行った。
 その臨時便を見に行ってみると、普通のバスであった。前方を眺めるのであればあちらの最前列に陣取った方が良さそうであるが、せっかくであるから電気バスで行くことにした。

@次回はこれに?

 定刻に日田を出発。しばらくはこれまでの代行バスと同じようなルートであるが、正式開業に合わせて増えたバス停もある(代行バスはあくまでも代行であり、駅もしくは駅の近くでしか停まれないが、新たに開業した路線であれば話は別である)。

@新バス停

 夜明駅から先は、旧日田彦山線のルートとなる。ただしここでも、代行バスとは違うルートが含められていた。今山駅付近では、旧駅跡付近が公園として整備されている途中であった。調べてみると「防災にも役立つ公園」ということであるが、鉄道関係の何かしらも残してくれないかしら、と希望する。

@工事中

 その後も日田彦山線の代行バスルートを走り続けたが、宝珠山から先は、鉄道の路盤であった部分を舗装した専用道路となる。代行バスでは大迂回をしていた部分であり、これが開通したことにより、大幅な時間短縮となった。
 専用道路を走り続けるが、低床バスであり前方を見渡せないのが玉に瑕である。しかし、アーチ橋の上から眺める景色は、バスとは思えないくらいであった。

@鉄道の橋であった部分から

 筑前岩屋を過ぎると、長大なトンネルに入る。このBRTの最大の長所が、このトンネルの活用であろう。
 トンネルを抜けて彦山に到着すると、専用道路は終了であり、代行バスのルートに戻ることになる。

@ここまで

 その後も走り続け、終着の添田には12時42分に到着した。代行バス時代は駅から離れた駐車場から発着していたが、今は鉄道のホームに横づけができるようになっており、乗り換え時間は10秒で可能である(なお、BRTだけでなく、西鉄バスもその乗り場を共有していた。これは良案である)。

@乗り換えが楽

 さて、ミッションも終了したので、後はJRを乗り継いで朽網まで行き、北九州空港から帰るだけである。

 

■ 鐡旅のメニューへ戻る

 「仮営業中」の表紙へ戻る

inserted by FC2 system