ぶらり韓国Part2

■はじめに
 今年の3月、片道4,000円のバーゲン航空券を手にしたので、1泊2日で韓国へ行ってきた(拙文「ぶらり韓国」参照)。
 その後、再度またバーゲンを見つけてしまった。今度はさらに安くなって、片道3,000円である。諸費用(空港使用税等)を入れても往復で12,000円未満であり、当然の如く国内旅行よりも安いくらいであるため、うっかりまた予約決済をしてしまった。
 例によって例の如く、鐡ネタを集めることにしている。今回のネタは、以下の通りである。

その1:月尾銀河レール
 仁川駅と月尾島の間で運行が予定されていた観光用モノレール。インフラは完成していたが、手抜き工事などの問題やその他の不正や汚職などにより未だ営業運転されておらず、このまま撤去される可能性が高い。
その2:DMZトレイン
 2014年5月4日に運転を開始した観光列車。終着駅である都羅山駅は、2009年に一般人の観光が制限されて以来久々に開放されることとなる。
その3:ソウル市内で走っていた市電の保存車両等(国立ソウル科学館)

 なお、以下の鐡ネタについては、諸事情により今回は対象から外れることとなった。

その1:仁川空港磁気浮上鉄道(リニア)
 2012年8月に竣工しているが、未だ営業運転はしていない。2014年7月に運転開始予定。
その2:KTXの仁川空港乗り入れ
 2013年末に開始する予定であったが、遅れに遅れ、タッチの差で2014年6月30日に開始予定(新規路線というわけでもないので、乗れなくてもそれほど残念ではない)。
その3:富川ファンタスティックスタジオ
 映画をモチーフにした観光施設。敷地内にはレールが敷かれ、ソウル市電の路面電車2台が再現されていた。そのうち行こうと思っていたが、いつの間にか(2011年に)閉鎖してしまっていた。


@DMZトレイン

■2014.6.28
 成田空港10時45分発の便で飛び立ち、仁川空港には13時半頃に到着した。今までのパターンであると空港連絡鉄道(A'REX)で移動、となるのであるが、今回は変わった方法でソウル市内に行くことにしている。
 ただ単に宿に早く着いても仕方ないからでもあるが、あれこれ調べてみると、対岸の仁川市の月尾島(件の月尾銀河レールがあるところ)までフェリーで移動できるらしい。フェリー乗り場(永宗船着場)まで行く路線バスが1時間に1本しかないが、急ぐ旅ではないので問題はない。仁川空港到着後、早速、下調べをした3階のバス乗り場へ向かった。ほどなくして、13時45分頃に1台やってきた。

@リムジンバスとは違う階から出発

 202系統のバスは永宗船着場には行かないものもあるので(島の反対側方面にも行く)、運転手に「ヨンジョンソンチャッチャン(永宗船着場)?」と訊いてみると、首を横に振る。10分後に隣りのバス乗り場に202番が来たが、あちらは反対側方面のはずである。念のために行って訊いてみると、やはり首を振る。バスは1時間に1本のはずであるし、こりゃ困ったな…と今後の身の振り方を考えていると、14時05分頃に再度202番がやって来た。運転手に同様のことを聞いたが、なんだかあれこれと返事が長い。「…インチョン…」というのだけは聞えたので、「ええいままよ」でICカード(T-moneyカード)をタッチして乗車することにした。

@バス前面にある赤い注意書きが、実は伏線(これが読めていれば!)

 しばらく空港付近を走り、ほどなくして右手に海を見ながら走り始めた(つまり永宗方面に向かい始めた)ので、ここで一安心となった。
 空港のある島であり、人などあまり住んでいないのかと思っていたが、意外に大きな街中を走り続けていく。最初はまばらであった乗客も、立客で混み合ってきた。
 空港を出発してから約1時間、永宗にある新興高層住宅街を迷路のように走り続けていたが、いつまで経ってもまだフェリー乗り場には到着しない。それどころか、ソウル市内へ向かう高速道路の橋に向かっているような気がする。そのうち、本当に高速に乗って対岸へ渡り始めてしまった。

@驚きの展開

 先のある旅行であれば大問題であるが、今日はそれほど縛りがない。逆に、どこへ連れて行かれるのか不明な「ミステリーツアー」のような楽しさがあるとも言える。
 橋を渡り終わり、バスは青羅国際都市駅(つい1週間前、6月21日に開業したばかり)に到着した。ソウル市内に向かうことが先決であればここで下車するのであるが、物は試しでもう少しこのミステリーツアーを続けてみることにした。
 バスに乗ろうとした乗客に対して、運転手はバス前面に置いてある赤い大きな注意書きを見せながら、何か言っている。バス車内には、「202…」という、何かを説明してある長文の貼り紙もある。ということは、やはりこの系統につい最近「何かがあった」ということである。そういえば、空港から乗車した後、その後のバス停から乗ろうとする客が乗車時にやたらとあれこれ質問していたことを思い出した。
(…帰国後に調べてわかったのであるが、何を隠そう、バス前面に赤字で大きくかかれていたのは「青羅国際都市方面」だったのである)
 バスは、月尾島より北側、仁川北港のある埋立地付近を走っているようである(幸い、大雑把な地図を持参していた)。「あわよくばこのまま仁川駅まで…?」という淡い希望も空しく、終点が近づいたようで、運転手が「オディ(どこ)?」と訊いてきた。絶対無理とは思いつつも、地図を出して「ヨンジョンソンチャッチャン」と言うと、両手で×を示す(当たり前である)。終点である車庫に到着した後、運転手はどうしたものかと心配してくれたが、私は地図を指差しながら「私はここ、仁川駅、タクシー」と文章になっていないハングルで答えてその場を後にした。
 そうは言ったものの、流しのタクシーなどまったく見当たらない。どうしたものかと適当に歩いていると、A'REXの黔岩駅まで行くバス停を発見した。市内バスであれば、バス停表示も詳細であるし、到着を知らせる電光掲示もあるので私でも間違いなく乗車することができる。

@結局駅へ

 予想外のミステリーツアーはここで終了となり、鐡旅に戻るだけである。見方によっては「3時間ほど無駄にした」と思われてしまうかもしれないが、私にとって旅とは必ずしも名所旧跡を見ることではなく、あくまでも「日常からの脱却」であるので、これでも意外に充分なのである。「仁川空港から船で脱出」という当初の想定はクリアできなかったが、路線バスでそれを成し遂げたのであるから、違う意味で成功と言ってよい。それに、1つのバスに1時間40分も乗車し続けたが、料金は一律の1,300ウォン(約130円)であったため、費用的には問題がなかったのも幸いである。
 鐡旅に戻ると言ったものの、これから仁川へ行ったのでは日も暮れてしまうので、予定を変えて、今日はソウル科学館にある展示車両を見ることにした。
 再度路線バスに30分ほど揺られて、黔岩駅に到着した。駅の入口には、明後日に控えたKTX乗り入れ開業の宣伝が掲げられている。

@これは、まぁそのうち機会があれば

 その後、A'REXから地下鉄に乗り換えて(2回乗り換えるのであるが、私にしては珍しく乗り換えを間違えてしまった。どうにも今日は調子が悪いようである)、ソウル科学館へと向かった。到着したのは18時頃で、もう開館時間は過ぎているが、件の車両は外部展示であるから問題はないはずである。
 ただし、今日はどうにもツキがない。まさかの「門が閉まっていて敷地内に入れなかった」という悪夢まで想定しながら奥の方へ向かってみたが、幸いそうではなく、無事に車両を見学することができた。

@市電は中も見学可能。すぐ隣りにSLも展示されている

 今日のミッションを無事終えてからは、地下鉄を乗り継いて江南地区にある安宿(18,000ウォン。2畳未満の激狭であるが、ご飯とキムチが食べ放題)に向かい、永東伝統市場で買ったチヂミとコンビニで買った酒類で一献し、就寝。

■2014.6.29
 今日は、今回の鐡旅のメインである「DMZトレイン」に乗車することとなっている。この列車はつい1か月半前に運転を開始したばかりであるが、すでに乗車記をネットに掲載されている方もいるので、車両内部の詳細等についてはそちらをご参照いただきたい。
 7時過ぎに安宿を出て、7時45分頃にソウル駅に到着。切符についてはネットで予約済であり、窓口でそれを発券してもらった。
 8時15分頃、3両編成のDMZトレインが入線してきた。先頭の3号車にはSLが描かれており、残りの2両には民族衣装を着た人々などが描かれている。

@旧いディーゼルカーを改造したものですが

 定刻の8時30分、列車はソウルを出発した。乗車率は80%程度、といった感じであろうか。たった3両の編成であるが、2号車にはミニカウンターがあって飲食物などを売っており、また女性の係員が4人も乗車して、車内アナウンスや申請書(後述)の配布などをしている。
 ふと気づいた点は、網棚がない(よって荷物を足元に置かなければならない)という点である。不便といえば不便であるが、車内にはDMZに関連する歴史的資料が展示してあったり、その他様々な面で意匠を凝っているので、それらの邪魔しないために網棚を撤去したのであろう。

@こんな感じの車内

 しばらくして、DMZを観光するための申請書が配られた。この申請書が曲者で、ハングルでしか書かれてないのである(ただし乗務員のお姉さんが英語を話せるため、書き方については教えてもらえるらしい)。私は他の人の乗車記をネットで読み、この申請書を見て自力で解読を試み、重要な部分について8割方理解できたものの少し不安があったので、わざわざ会社の同僚である韓国人にまで見てもらったりして準備をしておいた。
 さて、配られた申請書を見ると、これまでのものがよほど悪評であったのか(それもそのはず、例えば今日も西洋人が乗車しており、そういう人にとっては障壁となるからである)、部分的に改訂されて英語が加えられている(これなら私でも記入できる)。チュミンバンホ(住民番号。韓国人ならば所有している)のところの訳がなぜか「Birthdate」になっており、数字の桁が合わないが、言われるがまま誕生日の数字を左詰めで入れておいた。

@これなら日本人でも記入可能

 車内では音楽が流れ続けており、中にはそれに合わせて踊る変な乗客もいたりして、またそれが車内モニターで映されたりして、和やかな雰囲気であった。係員に言うと無料のポストカードももらえるし、それ専用のスタンプも設置されている。
 9時15分、ムンサンに到着してさらに乗客が何人か増えた。そして定刻の9時25分、臨津江に到着。ここでいったん全員下車し、申請書と身分証明書(外国人の場合はパスポート)を駅舎内で確認され、ツアー用の名札を渡されることとなる(これ以降、人数管理が厳しくなる。万が一頭数が合わないと、大変なことになるらしい)。
 武装した軍人が何人かいて物々しい感じがするが、それ以外は、片田舎にある駅といった感じである。駅名標には、平壌まで209キロ、という表示がある。

@臨津江駅から北方を見渡す

 同駅からは、各車両に軍人が同乗することとなる。出発するとすぐ右手に、板門店ツアーで訪問したことのある臨津閣が見えてくる。車内の音楽もそれまでのポップなものから荘厳なものとなり、列車は臨津江を渡り始めた。ここから先は制限区域であるため、撮影禁止となる旨のアナウンスがあった。

@撮影はここまで

 終着の都羅山には、定刻の9時50分に到着した。駅舎内でバスツアーを申し込む(どういうわけか第3トンネルのエスカレーター付(11,700ウォン)はないようで、仕方ないので徒歩(8,700ウォン)を申し込んだ)。構内には米国のブッシュ大統領がサインをした枕木なども置いているが、一瞥だけし、駅スタンプを押したりして時間を潰した。

@都羅山駅

 購入順に宛がわれるバスの座席は、幸いにも窓側であった。ツアーバスは10時15分頃に出発し、都羅山展望台から北朝鮮を望み(撮影は禁止)、第3トンネルを徒歩で往復したりした(通常のツアー内容であるため、鐡旅コンテンツからは削除)。
 あえて鐡ネタと言えば、エスカレーターが「KTXもどき」であったことであろうか。ちょっと乗ってみたかった気もする。

@今回のDMZトレインツアーでは、徒歩が義務

 12時頃に都羅山駅に戻り、駅近くにあったレールのモニュメントなどの撮影をしてから、ツアー用の名札を返却し(そして頭数をきっちり数えられ)、帰りの列車に乗り込んだ。
 時刻も程よい頃であるので、2号車にあったカウンターで駅弁を購入した。KORAILの弁当は、前にも書いたが、高い割には中身が乏しいのであるが、やはり「車窓のお供に駅弁」は外せないであろう(最近ソウル駅では駅弁屋が増えており、あちらの方が選択肢は多岐にわたるのであるが、致し方ない)。
 出発も待たずに、それを食べ始めた。

@残念なことに「和風」であった(不味くはないが、せっかく韓国に来たのであるから…)

 列車は定刻の12時10分に出発、臨津江を渡り、12時17分に到着した臨津江駅で半分弱が降りてしまった。このままソウルに帰っても昼過ぎであるから、1日観光にするためにここで下車してあれこれ見て回るのであろう。
 この手の列車の復路というのは手持無沙汰になりがちであるが、それを心得ているのか、4人のおねえさんが「宝探しゲーム」(カードを車内のどこかに隠し、子どもらにそれを探させる。賞品あり)や、写真撮影(彼女らが乗客の写真を撮って回り、ベストショットを選ぶ。これも賞品あり)などをしていた。

@復路出発時の写真(なんと「宝探しゲーム」の答えが写っています。天井の一番右、赤と赤に挟まれた青い部分の中央に、「お宝」のカードが貼ってあります)

 そんなことをやりながら、列車は定刻より5分遅れの13時20分にソウルに到着した。
 さて、あとは昨日の落穂である「月尾銀河レール」である。地下鉄1号線(そのまま国鉄の路盤に入り仁川まで行く)に乗り、ロングシートに耐えること1時間強、14時50分過ぎに仁川に到着した。
 駅前にあるビルから、「いかにも」な構造物が伸びている。とりあえず駅前から路線バスに乗り込み、月尾島へと向かった。バスの経路はモノレールの橋脚とほぼ平行しているため、ずっと目に入り続けてくる。

@こんな風に

 月尾島に入り、遊園地の付近でほとんどすべての乗客が降りたため、私もそこで下車した。海沿いには食べ物の屋台も連なっており、天気が良かったこともあって家族連れで大賑わいであった(例のフェリー沈没事故以降、レジャー関係が下火ということであったが、ここではそうでもなさそうであった)。
 ぱっと見は何の変哲もないレジャー施設とそれを堪能する人々、であるが、妙に違和感を覚えるのは、やはりその無意味な構造物(汚職と手抜き工事の象徴であり、近代韓国の病を表現したかのような「長城」)である。これをどうするかについては官民合わせて侃々諤々あったそうであるが、どうやら撤去されてしまうようである。

@大違和感

 実は、今回の鐡旅で月尾銀河レールを見ようと思ったのは、ほんの偶然であった。このモノレールに関するニュース自体は知っており、数年前にネットで読んだ際には「まったく…」と思っていたのであるが、詳細な場所等は知らなかった。そして今回、「いつもと違う方法で仁川空港から出る」ということを思い付き、そして月尾島へ行くフェリーの存在を知り(乗船することはできなかったが)、そしてその到着地である月尾島を調べた際に、偶然発見したのである(しかも出発前日に)。思わず、「ここにあったのか!」と驚いてしまった。
 ちなみに月尾島の散策中、遊覧船乗り場はあったものの、永宗島(仁川空港がある島)への船の乗り場については見付けることができなかった(詳細情報求む)。
 長城(すでに遺構?)を検証してからは、再度路線バスで仁川駅へ戻った。駅前には中華街があるので、あとはここを適当に散策してから、空港へ向かうだけである。

@有名な「窯焼き餃子」は長蛇の列だったため諦めた

 

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