ぶらり韓国
■はじめに
3月は後半に3連休があり、そして私は当然の如く旅行を計画しているため、他の週は出かけない予定であった。しかし、ネットで検索していた際にLCCで片道4,000円の切符があったため、ぶらっと韓国へ行ってみることにした。
国際線なので空港使用料等がかかるため、あれこれ足すと往復で1万4,000円弱になってしまうが、新幹線でいえば「静岡以上、浜松未満」くらいの感覚である。これならば、「ちょっとしたお出かけ」気分である。
過去に韓国へは5回訪問しているが、1泊2日というのは今回が初めてである。これまでは、「せっかく海外に行くのであるから少しでも長く滞在を」という気持ちがあったためであるし、また、JALやANAだと復路が翌日の場合は高い料金しかない、という理由もあった。しかしLCCのこの程度の料金であれば、国内旅行気分で、あまり気張らずに出かけることができるだろう。
さて、問題は行先である。韓国で未乗の鉄道路線(地下鉄や近郊路線を除く)となると、DMZ(非武装地帯)付近の都羅山まで行く京義線だけである。よって当初は、都羅山まで行ってDMZ観光をせず「単純往復」をしてこようとも思ったが、せっかく行って観光しないのは片手落ちであるし、それに、2010年に北朝鮮が延坪島にミサイルを撃ち込んで以降事情が悪化したため、単純往復をして駅だけ見学するのは認められなくなったというネット上の未確認情報もあった。よって、今後の機会に後回しである。
未乗区間となると、実はあと1か所ある。私は約3年前に京元線に乗車済みであるが、その時の終着駅は新炭里であった。2012年の秋年にそこから先の白馬高地まで1駅分開業しており、その区間のみ未乗車である。それに決めかかったが、わずか数キロのためだけに訪問するのもバカらしい。それに白馬高地駅からは日帰りツアーがあり、以前は北朝鮮へ繋がっていた時分の旧い駅(月井里)なども訪問できるらしいので、せっかくならばそれに参加したいが、そうしたのでは帰りの飛行機(夕方発)に間に合わない。よって、この案もボツとなってしまった。
さて、他に鐡ネタはないものかと思案した結果ふと思い出したのが、やはり3年前に韓国を訪問した際に、谷城駅付近で鉄道公園みたいなものを発見していたことであった。あれこれネットで調べてみると、意外に大規模な鉄道公園のようである。これで、やっと目的地が決まった。
【旅程】
1日目:午後の便で仁川空港へ移動し、連絡鉄道でソウルへ。KTXで益山へ移動(益山泊)。
2日目:ムグンファ号で谷城へ。鉄道公園を見学してから、ムグンファとKTXの乗り継ぎでソウルへ戻る。ソウル市内で鐡ネタ(小ネタ)を拾ってから、夕方の便で成田へ。
@トイレ列車(これは走りません)
■2014.3.15
早朝の便は取れなかったため、午後(13時20分発)の便である。しかしそれほど遅い時間帯でもないためソウルには夕方早くに到着できるし、その後の移動も無理がない範囲である。
週の初めまでに留まっていた寒波も通り過ぎ、抜けるような青空となった。いつものように、東京駅からの900円バスで成田へと向かった。
これまで何度か成田でLCCを利用しており、すべてバスによる案内であったが、今日は普通の搭乗口からの案内であった(ただし、一番遠い88番スポット)。第二ターミナルのサテライトに移動しようとすると、いつの間にか連絡用シャトルが廃止されてしまっていた。
@ある意味「廃線跡」を歩く
到着便が遅れたため出発も遅れ、仁川空港には定刻より15分ほど遅れて到着した。
さて、韓国内で移動するための鉄道の切符については、すでにネットで予約してある。前回は空港1階にあるKORAILのカウンターで発券手続をしたのであるが、今日はいくら探してもそのカウンターが見つからない。案内カウンターに行って英語で訊いてみると、「駅へ行かないとだめです」とのことであった。
言われたように歩き、空港連絡鉄道(A'REX)の入口に行く手前に「レールパス」などと表示してあったカウンターがあったので、そこへ行って尋ねてみると、発券できるということであった。3人いた係員のおねぇさんとは最初は英語で接していたが、すぐに向こうは流暢な日本語となり、私も簡単な部分は韓国語で答えたので、三か国語が入り乱れた変な状態であった。
ついでに、連絡鉄道の直通列車の切符もここで買った。安く行くのであれば各駅停車(電子マネーを使えば3,950ウォン)なのであるが、昨年度開始した直通列車の値引き(8,000ウォン)が今年も継続しているのである(そもそも、本来の設定である14,500ウォンが高すぎるのである)。しかも、KTXに乗り継ぐ場合はさらに割引となり、6,900ウォンとなる。これならば、各駅停車のロングシートに乗る気にはならないだろう。
@直通列車で
ソウルに到着したのは、17時45分頃であった。
最近私は外国旅行に悪い意味で「旅慣れ」している部分があり、時々やらかしそうになってしまう。今日も、「ソウルで30分以上あれば、まぁ両替とお店めぐり(夕食探し)くらいならできるな」と思っていたが、今日のKTXはソウル発ではなくて龍山発なのである(あまり良い譬えではないが、品川始発の新幹線のようなもの)。仁川空港で、カウンターのおねぇさんが龍山駅の場所を案内しようとしてくれて、「行ったことがあるので知ってます」と答えた際に思い出した次第である。危うく、乗り損ねるところであった。
ソウル駅構内で両替し(空港は手数料が高いので)、T-moneyカードを使って地下鉄移動し、龍山に到着したのは出発の10分前であった(意外とギリギリであった)。
@出発5分前にはホームへ
すでに入線していた旧型のKTXに乗り込んだが、残念ながら窓との相性は悪い席(3分の2くらいは壁)であった。しかし、進行方向側の席であったから、それだけは幸いであった。
定刻の18時20分に出発。KTXの新幹線との最大の違いであるが、KTXは軌道の幅が在来線と同じであるため、走行区間によってはムグンファ号や貨物列車と普通にすれ違う点であろう。
じきに高架に上がって、速度を増してった。東京よりは西にあるため19時前まで明るく、外の景色を眺めることができた。
さて、陽が暮れた後は手持無沙汰である。頭の片隅に「KTXではWiFiが使用できる」というのを思い出したのでPCを起動してみると、無事に繋がったので、その後はネットをして時間つぶしをすることにした。
しかし、鶏龍を過ぎた辺りで、ネットがぷっつりと切れてしまった。何やら注意事項があるので、ほぼ忘れかけてしまったハングルの知識を思い出しつつ読んでみると、「1シガン(=1時間)」とある。どうやら、フリーで使用できるのはその時間内だけのようであった。
@なるほど(そのうち、「ソビス」(サービス)も思い出した)
定刻の20時17分、益山に到着した。この周辺にはネット予約ができるような安宿がないため、今日はモーテルで泊まることにしている。グーグルで検索して、駅西側すぐのところと東南へ1キロ強のところにモーテル街があることは知っていたので、駅前のコンビニで食材を揃えて駅西側へ行くことにした。
しかし、駅の改修工事に合わせて周辺も大規模な再開発中であり、西側へ抜ける道路が閉鎖中のようであった。南側へ大きく迂回して反対側へ行ける道を探し続けて、かなり歩いてからやっと見つけたが、辺りは暗く少しく不安である。しかし、おばさんも一人歩きしているし、治安は問題ないのであろう。
かなり遠回りした挙句、モーテル街に到着したのは、益山に到着してから30分も後であった。
あまり派手すぎないモーテルを選んで投宿し、コンビニ食材で酔いどれて、じきに就寝。
@こんな夜
■2014.3.16
5時過ぎに起床し、6時15分頃にはモーテルを出た。列車の出発時間は6時55分であるが、大迂回をする必要があるためである。
モーテル街を抜けて駅西側に行ってみると、やはり地下道は閉鎖中であった。連絡橋はあるが、まだ工事中で入れる雰囲気ではない。
@仮駅舎と工事中の新駅舎(この写真は駅東側からのもの)
仕方なく戻ろうとすると、おばさんが話しかけてきた(おそらく「駅に行くのかい?」みたいなこと)。文章で答えられる語学力はないので、駅舎を指差しながら英語とハングルで「ステーション。ヨッ(ク)」と言うと、それならこっちだという感じで駅の方に進んでいくではないか。
一緒に来るように言われているようなので、おばさんに付いていくことにした。どこかに簡易連絡道でもあるのかと思ったが、なんのことはない、駅構内の操作場を無断で横切るだけのことであった。
@注意(機関車移動中)
不法侵入になってしまうので日本でやったら大変なことになるが、駅の関係者も気に留めていないようである。他のおばさんも渡っているので、「代替手段は造らないが、敷地内を勝手に渡ってよい」ということのようであった(あくまでも、自己責任であるが)。
6時55分発予定の麗水エキスポ行のムグンファ号は、発車の12分前に入線してきた。客車は4両だけの短い編成である。
同駅を定刻に出発すると、新しい路盤の上を快走し続けた。私は1回しか乗車経験はないが、全羅線といえば田舎をのんびり走るイメージであった。2012年春に行われた麗水エキスポの直前に改良(高速化)工事が行われたためであるが、路盤だけでなく駅やトンネルも新しく、改良工事の範疇を超えて、これはもう新線開通に近いものがある。
@朝日を受けて
帰国後に調べてみると、3年前の益山から谷城までの所要時間は1時間20分前後、それに対して今日のダイヤだと1時間3分であり、大幅短縮がなされていた。
最初は閑散としていた車内であるが、7時13分に到着した全州で大勢の客を乗せ、乗車率は9割ほどになった。その後も新しい路盤を走り続け、谷城には7時58分に到着した。今日の天気予報は晴れであったのだが、どういうわけか濃霧注意報でも出そうなくらいの濃い霧である。
@見えない…
今日は谷城駅近くにある鉄道公園をぶらつくだけであるので多少靄っていてもいいのであるが、今日の霧は写真撮影にも影響しそうなくらいの濃度である。
それはとにかく、他に見るものもないので、公園内を適当に歩き続けた(開園は9時頃のようで作業員しかいなかったが、どうせ敷地内にある車両を見るだけでアトラクションなどには乗らないので問題はない)。
敷地内には様々な車両があって売店や事務所や住居(?)に使用されており、中にはトイレ専用に改造されたものまであった(表紙写真)。奥の方へ行くと、レジャー用のSLが今日の営業の準備をしていたが、残念ながらこれは本物のSLではなく、ディーゼルカーである。
@エンジンが「ガラガラ」と音を立てます
時間だけはたっぷりあるので公園内をあちこち歩き回り、それでも持て余してしまったので駅付近の市街地を適当に散策したりして、10時少し前に駅へ戻ったが、そこ頃になってやっと霧がなくなって綺麗に晴れてきた。
@立派な駅舎
10時07分発の龍山行ムグンファ号は、カフェカーを含めて7両連結であった。それに乗り込み、往路と同じ風景を眺め続けた。時折、旧い路盤が近づいたり離れたりしている。
11時13分に、益山に戻ってきた。駅西側を見てみると、やはり線路の上を歩いて横断している人が何人かいた。
さて、ここでKTX(新型の「山川」)に乗り換えてソウル方面へ向かうこととなる。私は山川にはすでに乗車済みであり特に珍しいものはないが、益山駅では2編成の連結場面を見ることができる。
@このような感じで
11時27分に益山を出発した。しばらくは在来線の路盤であるため、山川といえども猛スピードは出さない。
ぼんやり外を眺めていると、車内販売が通りかかった。ワゴンの中には、明らかに弁当らしきものも積まれている。時間的にはちょうど良い頃合いであるが、KTX車内の弁当は割高であり(市場価格の倍ほどではないが、3割増しくらい)、内容的にそれほどそそられるものではない。しかし、そうはいっても「列車内の弁当(駅弁)」の魅力には勝てないので、せっかくなのでKORAILマーク入りの弁当を買うことにした。
@10,000ウォン(約1,000円)は高いが、気分優先で
西太田を過ぎて専用高架に乗った山川は、怖いくらいの速度で快走し続けた(速度自体は「のぞみ」より遅いのであるが、安定感がイマイチなのと、完全な高架ではなく土手の部分もあるので、体感速度が速いのである)。
さて、あとはソウル市内で小ネタを拾うだけである。終着の龍山からは地下鉄に乗り換え、市庁で降りて徒歩10分くらいのところにあるソウル歴史博物館へ向かった。ここには、復元されたソウル市電の車両が展示されているのである(しかも敷地外にあるため、これだけを見るのなら無料である)。
@道路沿いにあります
ソウル市内で市電を展示しているのはここだけではなく、他にも国立ソウル科学館などにもあるが、今日はそこまで行っている時間はもうない。この後は歩いてソウル駅へ戻り、ロッテマート(スーパー)で自分用のお土産を買い、空港へ向かうだけである。