島から海外へ出国してみる(鉄分若干少なめ)

■はじめに

 今年の夏、10月で撤退(実質は社名変更)するLCCのサイトを見ていたところ、特売で韓国等への路線が5,860円で売られていた。この値段なら懐具合にもあまり影響しないので、週末だけで韓国へ行ってみることにした。
 しかし、ただ往復したのでは面白味がない。そこで、復路は釜山からの便にしたが、往路はまず福岡へ飛び(値段は5,280円)、そこから高速船で対馬(厳原)へ行き、そこで釜山行の高速船に乗り継ぐことにした。目的は、「島から出国」である。高速船の料金はいずれも6,910円と10,100円で飛行機よりも高く、結果的に旅費の総額は普通に韓国へ行くのと変わらなくなってしまうが、それはご愛嬌である。
 日曜日には観光する時間もあるので、鐡ネタ(小ネタ)を少しだけ拾い、あとは「慶州リベンジ」ということで慶州観光をすることにした(慶州に行く理由については、拙文「船で行く韓国盲腸線の旅」 を参照してください)。

@釜山路面電車の行先票

■2013.10.19
 成田発7時05分の便に乗るべく、3時台に起床、最寄駅4時31分発の列車に乗り、東京駅5時発のバスに乗って移動した(9月に台湾に訪問した時と同じ方法)。安いとはいえ、やはりしんどい。
 空港に着いて待合室で座っていた際に、ふと「思い違い」をしていたことに気付いた。というのも、私は海外旅行をする際は余計なお金を持たないようにしているので(盗難等に備え)、両替用の現金以外は、最低限のクレジットカードと、あとは予約済みの航空券や現地の通貨(今回の場合はウォン)だけを身に着けている。いつもはそれでいいのであるが、よく考えたら今日の移動はほとんど国内であり、高速船については予約しただけで決済していないのであった。もちろん、カード決済できれば問題ないのであるが、少なくとも福岡市内での移動(地下鉄など)や厳原での観光には現金が必要である。
 幸い、「もしも」用にパスポートフォルダに日本円を入れておいてあったので、カードが使用できない場合はそれを使うことにした。今回は早朝のバスも5時発ではなくて6時発を押さえていたりして(出発2日前に気付いた)、少しネジがずれているようである。あまり旅慣れ過ぎるのも、気の緩みに繋がってしまうようで、少し要注意である。

@殺風景なLCC用待合室

 福岡行の便は、15分ほど早着した。地下鉄で天神駅まで行き、そこから港までの2キロ弱は歩いて行く(バス代の節約というよりは、歩くことによって町の様子などを感じ取ることができるためである)。
 予約済みの切符を発券してもらったが、今日はどうやら満席になるようである。窓際を押さえるため、出発の30分くらい前から列に並んだ。

@いざ、対馬へ

 途中、壱岐に寄港し、対馬着は13時05分であった。さすがに朝3時半過ぎに起きた代償は大きく、半分以上を居眠りしてしまった。
 対馬に来るのは4年ぶりである。ここ数年韓国からの観光客が急増しているというニュースを目にしていたが、その通りであった。街中を歩く観光客の使用言語はほぼハングルであり、街中の看板も同様である。
 それはさておき、まずは地元グルメである。目を付けておいた「対馬バーガー」なるものを供する店へ行って、それのセットを注文した。

@この写真ではわかりませんが、具材にイカが入っており、肉にはひじきが練り込んである

 それを美味しく頂いた後は、街中を適当に散策した。約12年ぶりに歴史民俗資料館へ訪問したが、建屋内は韓国人観光客だらけであった。
 15時過ぎに港へ戻り、国際線用の待合室へと入った。大勢の観光客がいたが、当然の如く韓国人だらけである。待合室に貼ってある注意事項などはハングルだけのものもあり、日本人の私にとっては意味不明である。

@「国際」ターミナルです

 それもそのはず、九州からの日本人観光客は飛行機や博多からの船で韓国へ行くので、厳原から乗船する日本人は「対馬在住の人」くらいなのである。私の周囲を見渡しても、全員がグリーンの韓国のパスポートを手にしている。

@いざ、釜山へ

 出国手続きをし、高速船へ乗り込んだ(韓国人の客室乗務員は韓国語で座席案内をしていたが、私が手にしていたパスポートを見て慌てて「…オレンジ色の座席でございます」と早口で言い直していた)。博多から厳原まで乗船した九州郵船の船と基本的構造は同じであるが、座席はこちらの方がかなりデラックスである。
 出航後、船は対馬を左手にして走行し続けた。やはり、ここでも半分近く寝てしまった。

@ほどよく晴れ

 釜山到着後は、歩いてチャガルチ方面へ行き、予約済みの安宿(予約サイトのポイントを使用したので、支払ったのは5ドル程度のみ)へ行った。「手違いで満室」と言われてしまい歩いて2分くらいの系列モーテルに案内してもらったが、部屋も綺麗で無線LANもあり、湯船もある部屋だったので特に問題はなかった。
 さて、釜山に泊まる際は儀式的に必ず行う「チャガルチの焼魚で一献」である。市場で大きめの焼魚一匹を買い、さらにスーパーで割引惣菜を買い(日本にいるときと行動パターンが同じである)、韓国特有の「ペットボトル入り1リットルビール」と焼酎と共に部屋でそれらを頂いた。

@恒例行事

■2013.10.20
 今日の鐡ネタ(小ネタ)の第一弾は、釜山市内で保存されている路面電車の車両である。場所の詳細データは掴めていないが、「東亜大学」という情報は得ている。安宿のあるチャガルチからは地下鉄1駅分しかないので、歩いて大学の方へ向かって行った。
 件の車両は、大学の敷地の南側、大通りに沿ったかなり目立つ部分にあったので迷わず発見することができた。大学の門も開いていたので敷地内に入り、あれこれと写真撮影をした。

@残存しているのはこの1両のみとのこと

 その後は地下鉄で釜山駅へ移動し、予約済みの情報をプリントアウトしたものとパスポートを窓口に渡して、今日の切符2枚を発券してもらった。それからは駅スタンプを押し、出発時刻前まで適当にコンコースを歩き回った。
 さて、まずは新慶州駅までKTXでの移動となる。車両は旧式のもので、この車両は「車内の半分は後ろ向き」「窓際でも半分以上は壁ばかり」なので、ちゃんと「進行方向の窓際で窓ばかり」という席は1両に6席ほどしかないが、奇跡的にその席であった(だたし、今日は30分未満で降りなければならないが…)。

@旧式KTX

 新慶州には7時59分に到着した。乗り継ぐ路線バスの出発時刻まで6分しかないため、急いで駅正面に停まっていたバス付近のところへ行ってみたが、「700番はあっち」と指差されてしまった。慌ててそちらに向かったが、残念ながらタッチの差で乗り遅れてしまった。
 ただしかし、今日は急ぐ旅ではない。そのおかげと言ってはなんだが、新慶州駅をゆっくりと探索できる(しかし探索するほどネタは多くなく、かなりの時間はベンチに座っていたが)。それと、次のバスなら並ぶこともできるので、先頭の座席に座ることができるというのも利点であろう。

@700番のバス

 次のバスは定刻の8時55分に出発した。先頭の座席に陣取っているので景色も良く見えるが、帰りに慶州駅の1つ手前のバス停で降りるので、路線図と車内アナウンスを比較しながらヒアリングの練習もしなければならない。韓国の路線バスは、「次はAです。Aの次はBです」とアナウンスするので、目的のバス停Bが聞こえたからといって降車ボタンを押してはいけないのである(1つ手前で降りることになってしまう)。
 目的地である世界遺産の仏国寺には、9時46分頃に到着した。
 上り坂の参道を歩いて行ったが、やたらとポンテギ(蚕のサナギを茹でたもの)の屋台が多いのが気になる(3軒連続もあった)。もちろん、私は買わないが。
 山門には、5分程度ですぐに到着した。切符を買って寺院内に入る。

@快晴

 晴れているだけでなく紅葉も2割ほど始まっており、なかなか良い季節である。世界遺産ということもあり、今日は日曜日であるので、至る所「人人人」であった。
 寺院内にあるいくつかの御堂を見たりしてから、下山して帰りのバスを待った。駐車場内にバス停があるが、その前面には乗用車が停められてしまっている。様子を見ていると、どうやらバスは駐車場内には入って来ないで、道路上で客を拾うらしい。このシステムを知らないと、うっかり取り残される危険がある。
 700番のバスで市内へ戻り、慶州駅の1つ手前で無事に降りてからは、おのぼりさん的な観光である。まずは無料の博物館へ行き、その後は古墳周辺を散策した。

@のんびりと

 前回訪問時はまさかの台風直撃であったが、今日はそれを補って余りあるほどである。
 さて、時刻は昼時である。慶州名物の「サムパプ」(小皿料理が山ほど出てくるもの)があるので、事前に調べておいた「おひとり様でも時間帯によってはOKの店」(サムパプは皿数が多いので2人以上でないと不可の店がある)へ行ってみた。
 出てきた料理を見た瞬間、「これは食べきれないな」と思わされるに十分であった。

@この写真ではイメージが湧かないでしょうが、1皿は手のひらサイズです

 私は出されたものは極力残さないようにしているが、今回はさすがに1/4くらいは残してしまった。もったいないが、仕様がない。
 食べすぎで少し痛くなった胃をさすりながら慶州駅まで歩き、14時08分発のムグンファ号を待った。列車は8分ほど遅れて入線してきた。

@韓国の鉄道は種類が少ないのが残念(どれも同じに見えてしまう)

 さて、この路線に乗るのは3回目である。初めての時は曇りで、そして前回はすでに述べたように台風直撃であったから、今日はかなり期待ができる。終点の釜田到着の30分くらい前には、海を見られる区間もある。
 車内は、団体さんが焼酎などで酒盛りをしていてかなり五月蠅いが、日曜の午後だから仕方がないであろう。

@充分に車窓を堪能できました

 釜田到着後は釜田市場を通り抜け、西面から地下鉄に乗った。
 さて、今回の鐡ネタ(小ネタ)の最後は、2011年9月に開通した釜山-金海軽電鉄である(以前に釜山金浦空港を利用した時はまだ完成されていなかった)。
 沙上駅で地下鉄から乗り換え、件の鉄道の乗り場へ行く。自動運転であり、前方は大きな窓になっており全体的に見渡せるようになっている。今日は時間がないが、いつか終点まで乗ってみたいと思わせるものであった。

@先頭から対向車を撮影

 

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