思い付きで「サンキュー・ちば」の旅

■はじめに
 敬老の日を含んだ9月の三連休については、大人鐡シリーズ(食事付き観光列車に乗る旅)として、JR四国の「藍よしのがわトロッコ」に乗る予定であった。トロッコだけではすぐに終わってしまうため、高知空港入りで予土線等を経由して八幡浜にある銭湯に宿泊し、翌日は二代目車両になった「伊予灘ものがたり」を見送ったり比地大駅近くにある鉄道資料館を見学したりして、そして最終日にトロッコに乗って特製駅弁を食べることにしていた。しかし、台風の接近により、トロッコ列車が運休になってしまった。観光列車が動かないのであれば、四国に行く意味はない。ということで、旅行自体をキャンセルである。
 不幸中の幸いは、往復の航空券(復路は高松空港から)を、特典航空券で押さえていたということである。とりあえず往復とも来年の春の適当な週末に変更させた。ホテルや指定券も、無料でキャンセルすることができた。
 ここで問題なのは、急に「3日も暇ができてしまった」ということである。土曜日は指定券のキャンセル等に宛てるとして、日曜・祝日は何もすることがない。台風接近で九州は大変なことになりそうであるが、関東地方が影響を受けるのは連休最終日の夜以降である。
 そこで思い付いたのが、3年ぶりに発売された「サンキュー・ちばフリーパス」である(「・」の部分はハートマーク)。千葉県内のJR路線だけでなく、いすみ鉄道・小湊鉄道・銚子電鉄・流鉄が乗り放題で、それ以外にも東京湾フェリーと路線バスも乗り放題であり、2日間で3,970円と格安である。
 フリー区間の全路線に乗ることは不可能であるが、JR以外の4つの鉄道と東京湾フェリーに乗ることを目的に、急遽予定を立てて出かけることにした。

@外川駅にて

■2022.9.18
 件の切符は利用当日でも券売機で購入可能であるが、土曜日にJR駅の近くまで行った際に購入してある。本来ならば路線バスも乗ってみたいところであるが、金曜の午前(観光列車の運休を知って)から急に考えた旅程であるため、そこまでは細かくできなかった。しかし、JR・私鉄・第三セクター・フェリーの運賃だけでも、余裕で元を取れる切符である。

@初めて購入

 6時前くらいに家を出て、最寄駅からJRに乗車。南船橋や蘇我で乗り換えてひたすら浜金谷へ向かうこととなる。台風が予想よりゆっくり進んでいるため、本来は土曜の午後から雨予報であったが、日曜の朝でもまだ晴れ間が見え隠れしていた。

@南船橋で乗り換え

 東京湾フェリーに乗るために、浜金谷には8時19分に到着した。台風の影響で雲行きが不安定であり、ここでとんでもない大雨になってしまったが、レーダーを見ると10分も続かないようである。駅でしばらく雨宿りをしてから、港へと向かった。
 ターミナルの窓口で確認すると、特に別の切符を発券する必要はなく、この切符のままで船に乗れるという。9時過ぎに乗船を開始したので、船内へと向かった。

@初乗船

 定刻の9時20分、金谷を出港した。曇っていてどんよりした景色であるが、最前部の席に陣取って前方を眺め続けた。
 今回の旅行で乗る各交通機関について、鉄道についてはいずれも乗車経験があるが、このフェリーについては初めての乗船である。
 しばらくすると、反対側の船と行き違った。

@金谷行

 また雨が降り始めた中、定刻より5分ほど早い9時55分に久里浜に着岸した。
 さて、せっかくであるからペリー公園くらいは行きたいが、折り返しの便を1つ遅くすると玉突き的に遅くなってしまうため、10時20分の便ですぐに戻らなければならない。港付近くらい散策をしようと思ってきたが、ここに来てまた大雨である。ということで、ターミナル内のお土産店などを見るだけである。

@これが精一杯

 件の便に乗船し、定刻に出発。金谷には定刻から3分遅れた11時03分に着岸した(金谷発はまっすぐ出港してそのまま着岸するが、久里浜発は出発後に旋回して到着前にも旋回する必要があるため)。
 なお、浜金谷駅近くには驚くほど分厚いアジフライや刺身を出す店があるため、ぜひそこを再訪したいところであるが、年々人気も高まって「平日でも2時間待ち」のような記述もネットでは見られる。仕方ないので今日はスルーするが、せっかくなので8年前に訪問した際の写真を掲載したい。

@いつか再び

 それはさておき、浜金谷駅発の列車は11時09分発で、その次は12時13分である。前者に乗るべく、猛ダッシュをして駅に向かってギリギリ間に合った。
 JRで北上し、五井には12時19分に到着した。ここからは小湊鉄道となる。
 鉄道の料金は件の切符に込々であるため、応援も込めて鉄道会社直営の「こみなと待合室」に行くことにした。店内には行先票なども掲示されており、鉄な人におすすめの場所である。

@鉄分多め

 最初はコーヒーくらいにしようと思っていたが、ジビエのホットドックセットがあるということで、これはもう即決である。なぜジビエかというと、つい先月に小湊鉄道の「夜トロジビエ列車」に乗っており、そこでジビエを堪能していたからである(詳細については、拙文「【大人鐡39】小湊鉄道『夜トロビール列車(夜トロジビエ列車)』編」参照)。なかなか、噛み応えのあるソーセージであった。

@こういうセット

 食後はしばし休憩。13時近くになったのでそろそろ駅に向かうが、その前にお土産の購入である。というのも、詳細は上記旅行記に記載したのであるが、ジビエ列車乗車時に酔い過ぎてお土産をどこかに置き忘れてしまい、後日小湊鉄道の社員の方が自費でハンバーグ等を再送してくれたのである。ということで、売り上げに貢献するためにグッズの購入である。
 と言っても、私は物の収集癖はない。よって、買うのは消えていくもの(食べ物など)である。あれこれ考え、カレーと「おこし」とドロップを購入した。

@一式

 13時過ぎに五井駅の小湊鉄道ホームに向かい、13時16分発の上総中野行の入線を待った。じきに入線してきたが、残念ながらJR払下げのキハ40系ではなくて、2両とも小湊鉄道オリジナル車両であった(「残念」というのは、この車両はロングシートであるためである)。しかし、こちらの車両の方が古い(引退も早い?)ことを考えると、希少価値はあるのかもしれない。

@古い

 早速乗車。ロングシートではあるが、最前部に座って前方を見渡せるのはこの車両の良い点である。定刻に出発したが、残念ながらまた雨が降って来てしまい、前方の景色は見づらくなってしまった。
 それにしても、つい先月に乗ったばかりの鉄道に乗車しているのは、不思議な感覚である。
 沿線風景も、もちろんまだ見覚えがある。上総村上ではトロッコ列車と行き違い、上総牛久や里見ではキハ40系と行き違ったが、いかんせん窓は大粒の雨が邪魔で撮影はままならなかった。

@停車時くらいしか撮影できない

 とんでもない大雨が降るが、5分もすると止んでいく。大雨時は運転手も徐行するし、踏切前では汽笛を長時間鳴らしたりして、大変そうである。上総牛久以降に時刻を確認してみると、4分ほど遅れているようであった。
 里見でタブレット交換をして、その後も少し徐行をして、終着の上総中野には定刻から5分遅れの14時41分に到着した。しかし、ここで乗り継ぐいすみ鉄道の出発時刻は15時21分であるため、心配は無用である。

@長閑な駅

 雨も上がっているのでしばし駅周辺を散策したり、駅舎内にある絵画や掲示物を眺めたりして時間を潰した。
 15時16分、折り返しで大原行となるいすみ鉄道の車両が入線してきた。

@1両編成

 定刻の15時21分、上総中野を出発した。車内の乗客は10人以下である。
 小湊鉄道と比較すると、こちらはかなり新しい車両である。第三セクター鉄道であるため、自治体からの補助でもあるからであろうか、と邪推してみる。
 15時58分に到着した国吉で下車。というのも、このまま大原まで行っても接続が悪くて1時間以上も待つ必要があるため、この駅から歩ける距離にあるスーパーに行って総菜などを買うためである。
 目星を付けておいたスーパーに行き、あれこれと調達した。

@途中で見つけた猫

 駅へと戻り、16時45分発の列車に乗り込んで大原へと向かった。17時03分着。
 さて、今日はここまでであり、残りの銚子電鉄と流鉄は明日の予定である。今からでも家に帰ることもできるが、この辺りに宿泊した方が楽であるし、旅行気分にもなれる。しかし、散財もしたくない。
 そこで役立つのが、千葉県民割である。先月は6千円以上が対象であったが、今月は4千円以上にハードルが下げられた。そこであれこれ探すと、勝浦で素泊り5,500円の宿を発見。県民割で半額の2,750円になり、「じゃらん」の1,000円クーポンが配付されていたので支払額は1,750円に。そして地域クーポン券が2,000円分もらえるので、実質マイナスである。ということで、今日の宿は勝浦である。
 当初の旅程では17時19分発の列車に乗る予定であったが、雨の影響で8分ほど遅れてやって来た。

@日も暮れてきた

 17時43分くらいに、勝浦に到着した。歩いて10分ほどの場所にある旅館に投宿。
 落ち着いてからは地元のスーパーに行って追加総菜でも買おうと思っていたが、雨が降ったり止んだりしているので、国吉で買い揃えたものを中心にして、残りは宿近くのコンビニで追加することにした。
 コンビニでパック総菜と酒をあれこれ買い、宿に戻って安食材に囲まれて一献し、就寝。

@味わいのある宿

■2022.9.19
 台風は九州に上陸したようであるが、こちら(房総半島)は穏やかな天気で晴れ模様である。起床後はしばしこの旅行記を書いたりしていたが、勝浦と言えば朝市があることを思い出したので、7時過ぎに荷物をまとめて宿を後にした。
 しかし、祝日だからであろうか、出店しているのは5軒程度であった。

@寂しい

 あれこれ海産物などを見たりすることもできず、そのまま駅へと向かった。
 7時44分発の外房線に乗り、北上する。この路線は海から遠い場所を走るため、景色は地味である。今日はこの先、大網と成東で乗り換えて銚子へ向かうことにしている。
 8時38分に大網に到着し、ここで東金線に乗り換えた。内房線や外房線は良く乗るが、東金線は、千葉県内では馴染みが薄い線区の上位に来る。

@50周年だそうです

 9時01分に大網を出発し、外房線と似たような地味な景色の中を走り続けて、東金には9時22分に到着した。3分の接続で銚子行に乗り換え、銚子には10時15分に到着した。
 ここで、銚子電鉄への乗り換えとなる。ホームはJRと繋がっており、すでに2両編成の列車が入線していた。

@古い

 車内に入ると、バルーンやぬいぐるみなどが山のように展示されており、異様な雰囲気である。「問題だらけの“もんだいがある”きゃりー電車」ということで、2両とも車内の意匠がそのように仕立てられているのであった。出発後の車内アナウンスでも、きゃりーぱみゅぱみゅの音声よる案内があったりした。

@車内の一例

 10時20分に銚子を出発して、超低速で走り続けて小さな駅に停まって行った。
 この路線の終着駅は外川であるが、その1つ手前の犬吠で下車した(10時40分着)。というのも、大きな売店がこの駅にあるからである。
 銚子電鉄もサンキュー・ちばフリーパスで乗車できるが、営業距離(たったの6.4km)からして、購入金額のうち銚子電鉄に割り当てられる金額は雀の涙程度かもしれない。ということで、本来の切符代くらいのグッズは買っておこうと思ったのである。
 と言っても、前述した通り収集癖はないため、食べ物系だけである。ぬれ煎餅や「まずい棒」では目新しさはないなと思っていたが、カレーの新シリーズが出ていたのでそれを買うことにした。バナナカステラもあったので、昼用に1つ購入。

@今日の応援品

 なおカレーの中身は普通のチキンカレーである。銚子電鉄のグッズは自虐的なネーミングが多いが、このチキンカレーも、資金枯れ(シキンカレ)に拠るという。
 さて、グッズを買ってカステラをベンチで食べても、時間は有り余っている。ということで、終点の外川までは歩いて行くことにした。こうすることで、外川駅構内に係留されている車両(デハ801)もゆっくり見ることができる。
 15分弱ほど歩いて、外川駅へとやって来た。

@古い車両あり

 なお、コロナ禍と日射病防止ということで、車両内に入ることはできなかった。
 余った時間で駅周辺の散策をして、その後は外川発11時44分発の列車に乗り、12時03分に到着した銚子で成田行の成田線に乗り換え、成田で我孫子行に乗り換え、我孫子で常磐線に乗り換えて馬橋には14時52分に到着した。千葉県の東端から西端まで、大移動した感じである。
 流鉄のホームに移動して、これに乗車すれば今回の旅のミッションは終了である。

@流星号

 14時58分に出発し、JRとは違ってゆらゆらと揺られながら走り、15時10分に流山に到着した。改札を出て駅スタンプを押しただけですぐにホームに戻り、15時14分発の列車で戻る。復路は馬橋まで戻らず、1つ手前の幸谷で下車し、すぐ近くにあるJRの新松戸から自宅最寄り駅へと向かった。
 しかし、家に帰る前に地域クーポン券を使わなければならない(宿泊費をチャラにするためにも)。ドラッグストアに行き、酒や食料品などを買い込んで家路についた。

@ありがたや

 

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