バルト三鐡(リトアニア編)
■はじめに
今回の行先は、いわゆるバルト三国である。かなり前に、往路はリトアニアのヴィリニュスへ、復路はエストニアのタリンから(いずれもフランクフルト経由)の航空券を押さえておいた。
出発の2か月くらい前になり、「そろそろ旅程でも詰めるか」と思ってレイルパスを探すと、まずそれが見つからない。それでバルト三国の鉄道の状況を初めて真面目に検索すると、それぞれの国を連絡する鉄道はほとんどないことが判明した(ラトビアとエストニアは不可能ではないが、乗り換えを要し、本数もかなり少ない)。「バルト三国」と一括りに考えていたが、気楽に鉄道で彷徨できるような環境ではなかったのである。
そこで、それぞれの首都(ヴィリニュス・リガ・タリン)に泊りながら各国の鉄道に乗り、首都間の移動は格安航空会社(エアーバルチック)で移動することにし、航空券を予約・決済した。各国の鉄道についてもあれこれ調べ、ネットでの切符購入が可能な日(それぞれ約1週間くらい前)に、こちらもネットで予約・決済をした。鉄道網はあまり発達していないが、各国ともネット先進国であるため、この辺りの手配は非常に楽であった。
【旅程】
1日目:成田からフランクフルトへ移動(フランクフルト泊)。
2日目:フランクフルトからヴィリニュスへ移動し、ヴィリニュスの鉄道博物館を見学後、市内を徒歩観光(ヴィリニュス泊)。
3日目:鉄道でカウナスまで往復。夕方にヴィリニュスからリガへ移動(リガ泊)。
4日目:鉄道でツェーシスまで往復。リガの市内観光(鉄道博物館を含む)後、夜にタリンへ移動(タリン泊)。
5日目:鉄道でナルヴァまで往復(タリン泊)。
6日目:鉄道でパリティスキまで往復。タリンの市内観光後、午後にタリンからフランクフルトに移動し、夜の便で成田へ(機内泊)。
@ヴィリニュス駅にて
■2018.5.2
旅程の関係で、今日はフランクフルトへ移動するだけである。
いつものパターンで、ラウンジで酔っ払って離陸も気づかず4時間ほど寝て、時差ボケ対策をした。ドイツ時間16時23分に着陸し、入国手続き。
駅に向かい、手慣れた手順で自動販売機で市内までの切符を購入した(いつの間にか4.90ユーロに値上がりしていたが)。「いつもの赤い電車が来るのだろう」と思っていたが、まさかの気動車であった。
@フランクフルト到着時
駅から徒歩1分程度の安ホテルに投宿し、近場のスーパーでビールや鶏モモ肉やサラダを買って来て、19時過ぎには就寝。
■2018.5.3
今日は10時15分のフライトであるため、朝の余裕がある。まずは大聖堂方面に散策をして(以前にも行ったことがあるが、川沿いを歩いたら廃線跡を発見)、駅前付近で行われていた朝市を見てから部屋に戻り、身支度をしてから駅へ向かって空港を経由する列車に乗った(どこ行きかはわからなくても、行先に飛行機マークが付いているものに乗ればよいだけ)。
今日は、いつもの「赤い電車」である。
@一番手前
空港の自動手続機で搭乗券を発券し、荷物検査をしてからラウンジへ。もう何度目かの利用であるが、私のお気に入りのラウンジの一つである。というのも、美味しいビールとつまみがあるためである。今日はソーセージではなくてハンバーグのようなものであったが、美味しく頂いた。
ヴィリニュス行(JALで予約した乗り継ぎ便であるが、ルフトハンザ航空(スラーアライアンス)である)に搭乗し、約2時間のフライトで到着。
ヴィリニュス空港から駅への行き方はネット上でもいくつか紹介しているものがあるし、そもそも大して複雑ではない。歩いてしばらく行くと、左手に見えてくる。
@こんな駅
連絡鉄道は1日に16本しかないため、すぐに旧市街に行って観光をしたい人は、バスを利用するのがお勧めである。鉄分多めの人や、私のように到着後すぐに駅併設の鉄道博物館へ行くような人は、時間を狙って乗ってもよいだろう。
しばらくして、ヴィリニュス方面からの列車がやってきた(これが折り返す)。1両編成の、かわいい列車である。
@空港連絡列車
車内に乗り込み、定刻の13時42分に出発すると車掌が切符を売りに来たので、70セントで購入した。距離が非常に近いというのもあるが、日本円でたったの90円程度で移動できるというのはありがたい。
すぐにヴィリニュス駅に着き、まずは鉄道博物館である。建物の2階に受付があり、館内展示が1.80ユーロで屋外展示が1ユーロ、合わせて2.80ユーロであり、こちらも懐に優しい価格設定である(そもそも、展示数は多くはないが)。
@館内の様子
館内はすぐに見終わり、メインの屋外展示を見に行くことにした。屋外展示の入口がどこかは不明であるが、受付嬢が屋外(アウトサイド)と言った際に東側を指さしていたので、一番手前のホームを東側へ歩いていくと、数多くの展示車両が見えてきた。
おじさんの係員に支払い済みのレシートを見せて、そこに入った。
@車両展示の例
いくつか特筆すべきものがあるが、中でも目を引いたのは、車両内部に入ることのできた食堂車と寝台車であろう。後者の一室は、それだけで車両の半分くらいも使っていそうな豪華なものであり(独立したトイレやシャワーもあり)、要するにこういう車両が活躍できる長距離列車が以前にはあったということである。現在、バルト三国やポーランドをつなぐ国際列車が計画されているようであるが(完成はかなり先の模様)、そのうち寝台でも復活すれば、また来たいと思わせる展示であった。
@VIP用寝台?
見学後は、予約済のホテルに行って荷物を置いた。たった45ユーロの宿であるが、独立したキッチンや調理道具などがあるもので(要するに、本来の大き目のマンションをそのまま貸しているようなもの)、かなり豪華であった。ドイツやフランスでこんな部屋を借りたら、3万円はするだろう。
身軽になり、旧市街を散策。普通の観光である。
@暑いくらいの天気
観光後は、スーパーで食材を買い(今日はキッチンがあるため、生肉等を購入)、部屋に戻って調理をしてから頂いた。リトアニアはビールが有名であり、かなり特色のあるビール(コクがあったり、香りが良かったり)が、大きいサイズで1本1ユーロ程度である。3本買ったが、もっと試したい種類がたくさんあったので、そういう目的でもまた来たいと思わせる国であった。
■2018.5.4
6時前にホテルを出て、駅へと向かった。
@ヴィリニュス駅
切符はネットで予約決済して印刷してあるので、電光掲示でホームを確認してそこに行くだけである。
待ち構えていたのは、3両編成の電車であった。ドイツでの「あの赤い電車」にそっくりな、欧州にありがちな二階建て車両である。1両目の2階席がファーストクラスで、残りがセカンドクラスという編成である。
@今日の相棒
まばらな客を乗せて、定刻の6時21分に出発した。最初は徐行していたが、郊外に出るとかなりの快走である(「ガタンゴトン」ではなく「シャー」という音)。路盤も安定しており、しかも複線で、都市間特急を今すぐにでもデビューさせられそうなくらいである。短い編成の客車が一日に数本往復するだけでは、もったいない感じもする。
車掌が来たので、印刷済みのEチケットを渡した。こういう場合、たいていはチェックするだけだが、それを機械にかざしてレシートのようなものを渡された。
@確認済みの証?
この電車は快速であり、小さい駅は飛ばして比較的大きい駅だけに停まって行った。
路盤が安定して快走するのには理由があり、それはこの国の鉄道が貨物中心だからである(昨日ヴィリニュス空港に着陸する際も、長大な貨物列車が走っているのを上空から見かけている)。すれ違う列車の本数も圧倒的に貨物が多く、その編成も非常に長い。
@貨物(曇ってきたので、写真が撮りにくい)
6時34分、53分、7時02分と、駅に停まっていく。多少の乗降はあるが、それほどの数ではない。
@途中駅の例
7時08分に停車した駅で比較的多くの客が乗り込んできて(早めの通勤であろうか)、工場などが増えてきてそれに伴い人家も多くなり、トンネルを過ぎてしばらくすると、終着のカウナスに到着した。見事なまでに、定刻7時34分ぴったりであった。
@カウナス駅(到着時は曇りだったので、復路時に撮影。杉原千畝のレリーフは右下)
さて、これから3時間半ほど時間があるので、旧市街などの散策である。…という予定であったが、到着直前の数百メートル手前(トンネルを出た辺り)でSLが展示されていたのを見つけていたので、まずはそれを見に行くことにした(一人旅ならではの予定変更である)。歩くこと数分、そこにたどり着いた。
@鐡ネタは逃さない
SLを撮影してからは、観光スポットを巡りながら旧市街へと向かった(3キロ以上あるので、なかなか遠い)。
旧市街でもあれこれ見たが、いつものパターンでそういう写真は余所様のサイトにお願いするとして、ここでは1枚だけ掲載。
@カウナス城
3時間近く歩いてへとへとになり、高台側から駅に戻る途中で、展望台のようなものを発見した。行ってみると、駅方面が全体的に見渡せるではないか。
@疲れを癒す
駅へと戻り、「日本のシンドラー」と言われた杉原千畝の記念プレートなどの写真を撮ってから駅舎内に入ると、先述したバルト三国とポーランドを繋ぐ鉄道の宣伝を発見した。それによると、開通は2025年ということである(2015とあるのはポーランド方面からカウナスまで)。どれだけ正確な予定なのかはわからないが、本当に開通すればぜひ乗りに来たいところである。
@予定は未定
駅のホームでは、日本人の団体旅行客が撮影をしていた(彼らは電車で来たのではなく、バスで各所を回っている)。旧市街でもそういう団体がいたので、さすが杉原千畝の影響力は大きいようである。
私は電車でヴィリニュスに戻るが、復路は各駅停車ということもあり、たったの2両編成であった。
@短い
復路については、試しにファーストクラスにしてある(各駅停車は元から値段設定が安いのと、往復割引もあるため、往路のセカンドクラスよりも安く買ってある)。
ファーストの問題点は「座席が指定されてしまう」という点であるが、乗車してみると私の席にもう座っている人がいた。これはおそらく、「ファーストのチケットをもっていれば、どこに座ってもいい」というアバウトな感じなのであろう。
本来の私の席が進行方向とは逆だったので、ありがたく他の席に座った。欧州では、セカンドと席の大きさが同じの「名ばかりファースト」が多いが、この車両は横3列の席であり、かなり余裕があるものであった。
定刻の11時05分に出発。駅舎もないような、小さい駅にもすべて停まって行った。
@こういう駅にも
ファーストだけの特典かこの車両全体かは不明であるが、Wi-fiも使用できるようであった(ためしにスマホを開いてみたら、繋がった)。
往路の倍くらいの駅に停まりながらも、ヴィリニュスには定刻より1分早い12時40分に到着した。
さて、また2時間くらい余裕があるので、旧市街を散策である。昨日見ていない教会などを中心に歩き回り、リトアニアの旅を締めくくることにした。
@観光の一例
最後は、あの1両の空港連絡鉄道で帰るだけである。往路は車内で切符を買ったが、復路については乗るべき列車を決めていたので、ネットで決済してある。
@ほとんどの車両にリトアニアの政府旗あり