【非鐡の旅@】津軽海峡温泉巡り

■はじめに
 「非鐡の旅」の定義:私はたいてい鉄道を中心にした旅行をし、自分のホームページなどで「鐡旅」として掲載しているが、時折、鉄分の少ない普通の(?)旅行もする。わざわざ旅行記に纏めるほどでもないと思えるが、ちょっとした雑情報が他の人にとって有益である場合があるかもしれないため、簡単に纏めておきたい。
 今回は、津軽海峡を挟んだ地域の旅行である。年末年始をどうするか悩み、これまでに何回かしたことのある「湯治での年越し」を考えた。昨年は肘折温泉で3泊したが、あれこれ悩み、今回は青森の谷地温泉にした(最初は酸ヶ湯温泉にしたかったが、予約が取れなかった)。谷地温泉は以前一度だけ訪れたことがあるため2泊だけにし、結局なんだかんだ(往路を函館空港使用にしたり、宿泊サイトのポイントによる無料宿泊券を使用したり)で、以下のような行程になった。

 12月28日 羽田空港→函館空港 函館市内観光 ニヤマ温泉泊
 12月29日 フェリーで函館から大間へ 大間崎観光 下風呂温泉泊
 12月30日 船で佐井から青森へ 青森市内泊
 12月31日 午前は特になし お昼の送迎バスで谷地温泉へ 谷地温泉泊
 1月1日 谷地温泉泊
 1月2日 お昼の送迎バスで青森市内へ 昭和大仏で初詣 三沢空港→羽田空港

 ほとんどの日において宿泊先への到着が午後2?3時であり、私の普段の旅行(朝早くから日暮れまで移動してばかり)と比べて、驚くほどの時間的余裕がある。これも「非鐡」ならではか。
 航空券はいずれも特典であり、開通したばかりの東北新幹線新青森駅の体験は、あえて次の機会に取っておく(この辺りも「非鐡」である)。ただ、結果論からすると若干の鉄分が旅程に含められることになった。


@谷地温泉の「つらら」

■12月28日 いつもの函館
 函館に来るのは何回目であろうか。函館目当ての旅行自体はほとんどないのだが、この街が長距離列車の起点であることと、それ以外にも奥尻など別の観光地のついでに寄らざるを得なかったことなどもあり、市内の観光地はほぼ行ってしまっている。
 函館空港着は9時05分、すぐに連絡するバスに乗ってもいいのだが、ここはあえて少し待って9時30分発の路線バスに乗ることにする。こちらの方が、実は120円ほど安くなるのである(その代わり団地などを経由するため、駅到着には多少の時間がかかる)。1日に5本しかないが、急がない旅ならばお勧めである。

@直行リムジンバスの広告(1時間後にこれの本物を食べた)

 三角形の旧い駅舎も消えてはや7年、駅前の雰囲気もかなり変わってきている。とりあえず赤レンガ倉庫方面まで歩き、ハセガワストアの「やきとり弁当」を頂く。それからは公会堂などを適当に歩き、旧青函連絡船の摩周丸を観る(2回目)。

@5問連続で当たると褒められる(快晴のため市内観光地の綺麗な写真はたくさん撮れたが、それらをお蔵にしてあえてこの写真を載せる)

 14時26分発の各駅停車で、仁山へと向かう。途中、渡島大野付近では新幹線関連の建設が進められていた。

@数年後には大きな駅舎になる予定

 仁山駅から歩いてすぐの温泉施設に投宿。スキーの団体客がいるということで、特別に夕食は部屋食であった。大量のラム肉をつっつき、別途風呂場受付で購入した温泉卵を頂く。

■12月29日 待ち人(列車)来らず
 7時14分発の列車の乗るため、特別に朝食を早めに出してもらってから宿を出た。周囲に何もない仁山駅では、JRの作業員3人がすでに構内の除雪作業をしている。

@仁山駅

 しばらく駅舎内で待ち、ほどよい時刻になってからホームへ出たが、待てど暮らせど列車は来ない。予定時刻を10分も過ぎ、旅程の遂行が難しくなり始めた頃、備え付けのスピーカーから「線路不具合によって大幅に遅れる」というアナウンスがあった。具体的に「○分遅れ」という内容ではなかったため、これは重大な問題である可能性がある。すぐに駅舎内に貼られていた五稜郭駅の番号に電話をしたが、いつ回復するかは不明だという(函館本線のこの区間は2つに分かれているが、砂原経由方面からの列車だけが動いていないらしい)。都会の駅ならまだしも、このような何もない駅で何時間も放置されてはたまらない。
 藁をも縋る思いで除雪作業をしていた方に代替交通機関を訊いてみると、やはりバス停などは近場にないということである。そして状況を察してか、渡島大野まで乗せて行ってくれるということであった(除雪作業もちょうど終わりの頃合いであった)。

@右下に小さく写っている作業員さんたちに助けられました

 有り難く業務用の自動車に乗せていただく。作業員のおじさんは、車内移動中に時刻表で函館方面を調べてくれ、そして運転していた別の作業員に「七飯まで行って」と指示した。より列車本数の多い七飯まで行ってくれるということである(結果的にこのご厚意が幸いして、旅程通りに進めることができた)。
 作業員に礼を言い、七飯駅で時刻表を借りてこの先を練り直す。当初は五稜郭で乗り換えて七重浜まで行ってそこから歩く予定であったが、それはもう不可能であるため、五稜郭まで行ってタクシーに乗ろうかと思った。しかしあれこれ考えると、函館まで行ってしまってもフェリー乗り場行きの直行バスにちょうど間に合うこともわかり、そうすることにした。
 七飯発812分、函館着は832分、アクセスバスはすぐの接続で840分発、ターミナル着は9時ちょうどであった。

@大間に向うフェリー

 乗船券を買い、今晩用のワインを売店で購入する。これから乗船する大間行の「ばあゆ」号の隣りには、燃料高騰や「引き波」の問題でなかなか活躍が出来ていない高速船の「ナッチャンworld」が停泊している。

@早期の定期的復活を望む

 大間までは1時間40分の船旅で、途中はそれなりに揺れた。大間港到着後は、しばらく街中を歩く。実は歩いて岬まで行く予定であったが、パラパラと降っている雪の温度が低くてほぼ雨のような状態であり、風も強かったため街中の大間バス停から路線バスに乗って岬へと向かった。
 約10年ぶり2度目の大間崎、前回もあまり天気は良くなかった気がする。ただ、以前はなかった新しい碑が増えていたりもする。近場の「本州最北」を謳っている食堂でミニ丼(うに・いくら・マグロ)を頂き、寒風吹き荒れるバス待合室で1時間半ほど次のバスを待つ。待合室は個室状になっているものの、あまりに風が冷たく強く、またドアがなかったため、だんだんと体温も下がってきてしまった。

@津軽海峡冬景色

 ほぼ定刻にやってきた13時58分発の下北駅行バスに乗り込み、下風呂へ向かう。今夜の宿は、予約サイトのポイントを1万使用し、実質1万円の部屋に無料で泊ることができる。宿の前には、未成線である大間線(大間鉄道)の高架があり、案内された部屋からは目前にそれを拝むことができた。

@部屋から未成線を望む(翌朝撮影)

 青森県であるのに北海道の地上波テレビを観ながら、大量の海の幸で満腹になり、就寝。

@海の幸てんこ盛り

■12月30日 下北半島左回り
 予定はゆっくりであるため、朝食後に下風呂の町中を散策する。雪に埋もれた観光用に整備された未成線高架を探索し、またそれ以外にも残されている未成線区間を探す。町の南側には、どういうわけか高架部分を地下道で潜れるようになっている所もあったが、当然列車も走らず、すぐ隣りに車道があるため、その用途は不明である。
 
@大間線高架部分(足湯併設)                        @中央部にはレールが敷設
 
@謎の地下道入口                               @謎の地下道出口

 1011分発の路線バスで佐井に向かう。今日は昨日とは打って変わって快晴で、海も凪いでいる。穏やかな大間崎を経て、現在建設中の大間原子力発電所をかすめ、佐井到着は2分遅れの1114分。フェリーターミナルを兼ねているアルサスは閑散としていたが、窓口で切符を買って小一時間ほど余った時間を町内の散策で潰した。

@高速船ポーラスター

 高速船ポーラスターは、定刻の12時35分に佐井港を出発した。乗客は私以外に、大間町内で路線バスに乗ってきた親子だけで、合わせて3人だけである。
 凪いではいるが、ゆっくりと波はうねっている。左手には仏ヶ浦の険しい崖が続いている。牛滝に寄港し(誰も乗降せず…あれ、福浦は通過?)、脇野沢到着は14時ちょっと前、ここで例の親子が降り、代わって10人ほどの団体さんが乗ってきた。要するに通しで乗るのは私だけである。冬季封鎖となる国道の代替や、原子力施設に関連する防災航路という意味合いのあるというこのルートであるが、これでは通常の収支については一抹の不安がある。
 青森市内が近づくにつれだんだん曇りになり、青森港到着はほぼ定刻の14時54分であった。

@埠頭に降り立つと、目の前には八甲田丸が

 市内の安ビジネスホテルに入り、晩の食事はデパート地下の半額惣菜で済ませてしまった。

■12月31日 することなし
 今日の午前中は特に予定がない。近場の観光地は行ったことのある所が多く、また青森市内の観光施設は年末のため休館日がほとんどである。あれこれ考えたが、どうにも候補がない。
 市内の喫茶店で本でも読んでいればいいのだろうが、せっかくの青森、今月の初めに開通したばかりの新青森へ、ただ行って来るだけにした。
 強風と吹雪であり、列車は軒並み遅れている。しかし、やはり開通直後ということもあって新青森は混んでいた。特に買うものも食べるものもないが、しばらくぷらぷらとして時間を潰す。駅構内では、語り部によるイベントなども行われていた。

@駅の目の前に別のイベント会場もあったが、暴風でそこに辿り着くのが大変

 青森へ戻り、谷地温泉の送迎バスを待つ。しかし豪雪のためなかなか降りてこられないようで、予定の時刻を40分も過ぎてからやってきた。倒木のため十和田湖方面への道路は閉鎖されたようであり、同じ系列の十和田湖畔のホテルに宿泊予定の客は、バスから降ろされていた。
 まっすぐ向かえば1時間もかからない温泉であるが、山道を避けるたけに国道4号で十和田市方面を経由したため、2時間半くらいかけて温泉に到着した。途中、雪の重みに耐えられずに折れた太い枝にバスが衝突したり、吹雪で前がほとんど見えなかったりと、なかなか体験できない送迎であった。
 前回の宿泊時は本館2階のボロ部屋で今回もそれを逆に期待していたのだが、宛がわれた部屋は意外にも新しい西館の一室であった。ベッドもあるが、しかし広さ的には1人が精いっぱいである。予約時には年末年始で一人客は申し訳ないと思っていたが、このような部屋が元から用意されているのであろう。

@今年の年越し部屋

 取り急ぎ湯に浸かり、大晦日であるために蕎麦も付いた夕食を頂いて、テレビを観ながら眠りに落ちた。

11 寝正月
 念のため本を一冊持ってきたが(勉強用の語学書)、暇があっても結局テレビを観てしまうことは、昨年の肘折での3泊年越し湯治で実証済みである。

@元旦は快晴

 朝食には雑煮付き、昼は蕎麦(うどんと選択制)、午後は勢い余って結局ビール、夜は今日も鍋食べ放題・酒飲み放題であった。食後はテンが出るかどうかをずっと待っていたが、ついに初遭遇!

@距離も遠く、露出も弱くてこれが精一杯(しかし、これだけきちんと撮れたのは私だけであった)
※より鮮明な映像は「谷地温泉 テン」などで画像検索してください。

■1月2日 そして東京へ
 箱根駅伝を観たりしながら昼前の送迎バスを待ち、予定の11時から15分遅れで宿を出発した。青森駅前までは約1時間、そこから今度は市営バスに乗り換えて昭和大仏(青龍寺)へと向かう。
 当初は片道だけ利用して、帰りは最寄(とは言い難い)駅まで数十分歩こうかと思っていたが、雪もちらほら降っているため、少しく悩む。ふと掲示版を見ると、土日祝日に一日乗り放題で500円のカードがあるではないか(片道だけでも590円するため、充分元は取れる)。それを利用し往路は素直に乗車、復路は、バスの経路を見るとどうやら東青森駅近辺を通るかもしれないため、途中で降りて駅を探すことにした。

@バスカードも新青森開業モード

 地図を持っていないため、駅付近に掲示されていた市内図のイメージを頭に叩き込む。往路は沿道の様子やバス停の名を確認しながら乗車し続け、ここぞ東青森駅に最も近いに違いないと思えるバス停(古舘十文字)に目星を付けた。
 青龍寺は混雑していたが、三が日は参拝料が無料となる。今日は日曜日で件のカードも使えるため、かなりお安くすることができた。蛇足だが、青森ではなく東青森から乗ることによって、三沢までの乗車券は230円安くすることができる。実は、青森駅で「青い森鉄道」の料金表を見たとき、三沢の一歩手前で料金が上がっていることに気づき、この複雑な乗り換えを現地で急遽考えたのであった。

@雪を被る昭和大仏

 大仏からの帰路、例のバス停から東青森までは、徒歩で10分もかからなかった。すぐの待ち合わせで15時30分発の浅虫温泉行に乗車、同駅で50分ほどの待ち時間があったが、ちょうど日暮れ時で、近場の展望台からは綺麗な夕陽を拝むことができた。
 日も暮れた中再び鉄道で移動し、三沢でバスに乗り換え、空路東京へと向かった。

 

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