惜別「札沼線(北海道医療大学以降)」

■はじめに
 廃止となる路線や優等列車に「乗り納め」をする「惜別」シリーズであるが、今回は札沼線の一部区間(北海道医療大学−新十津川)である。と言っても、廃止になるのは2020年5月であり、まだ1年弱もある。
 しかし、このシリーズでいつも述べていることであるが、廃止直前はやたらと人が増えてしまい、しみじみと浸ることができない。ということで、かなり早めに乗り納めをしてしまうことにした。
 まだかなり先、と言っても、青春18きっぷが利用できる期間ではそれなりの混雑が見込まれてしまう。土日も然り。ということで、JR北海道の「一日散歩きっぷ」すら利用できない平日に訪問することにした。さすがに、物好きも少ないと思われる。
 札沼線だけではネタ不足であるため、つい2か月ほど前に廃線となった石勝線夕張支線の現状も見てくることにした。

@石狩月形駅にて

■2019.6.2
 前回の北海道訪問時は経費削減でLCCであったが、今回は復路が平日ということもあり、JALのツアーである(往路新千歳で復路旭川、札幌の宿泊1泊付で27,800円のみ)。
 7時半の便に搭乗し9時過ぎに新千歳空港へ。9時45分発の無料バスでモール街へ行き、40分ほどぶらぶらして(海外旅行に使えそうなナップサックを衝動買い)、歩いて南千歳駅へ向かって10時57分発の特急列車を待った。

@やって来ました

 定刻に出発。どうしてこのような旅程になったかというと、各駅停車に乗ったのでは新夕張で微妙にバスに乗り継げないためである。この距離で特急に乗るのは馬鹿らしいが、仕方がない。
 それにしても、たったの4両編成(自由席は1両のみ)とは、寂しい限りである。窓も泥水の水滴が残っており、「いろいろな意味でJR北海道も大変なのかな」と思わせるような印象であった。

@景色は良いが(窓が…)

 しかし、この区間を特急で快走するのは久々である。北海道的な景色を見ているうちに、あっという間に新夕張に到着した(少し遅れた11時37分着)。
 駅前には夕張バスが待ち構えていた。「らしく」ないくらいの新品車両であるが、今回のJR代替バスの運行開始に合わせて導入されたのであろうか。

@新しい

 バスには、私を含めて7人が乗車した。定刻の11時47分に出発したが、車内での様子(写真を撮ったり)からすると、半分くらいは観光客のようである。
 時折線路が見えるが、部分的に(高校付近など)重機が入ってレールが撤去されていたりした。そのうち、跡形もなくなってしまうかもしれない。

@南清水沢駅跡(バス車内より)

 南清水沢駅跡付近で右折し、バスは市街地を迂回し始めた。利用客にとっては、逆に便利になったと言えるだろう。
 住宅や商店を経由して、清水沢駅跡へやってきた。駅舎自体はそのままであるが、駅名などは剥ぎ取られてしまっている(残しておいてもいいと思うのだが)。

@そのうち駅舎も撤去されてしまう?

 幹線道路に戻り、一路夕張へ。本来はこのバスの終点である石炭博物館にでも行こうかと思っていたのだが、春先にまさかの坑道での火災発生。いつ再開するか見守ってきたが、つい先日ウェブサイトに出た案内では「6月8日から」ということであった。ということで、今日は終点まで行っても無意味である。
 前回利用したホテルシューパロ付近で降り、映画看板がたくさんある通りを歩いて、まずは市役所付近にある「なんでもない空き地」へ向かった。夕張駅は過去2回ほど移転しており、この辺りは2代目の駅があった付近である。

@この辺り(たぶん)

 さらに南下し、夕張駅(3代目)跡に到着した。廃線後まだたったの2か月であるから見た目は何も変わっていないが、列車はもちろん乗降客は当然いないため、なんだか寂しい雰囲気である。

@もう何も来ません

 唯一の観光要素である石炭博物館を省いたため、時間は有り余っている。ということで、さらに歩いて南下して夕鉄バスの本社ターミナルまで行くことにしている。
 しばらく歩くと、前回も訪問した鹿ノ谷駅である(ここも駅名等がすべて剥ぎ取られていた)。跨線橋から前回と同じアングルで撮影すると、あちらからディーゼルカーがやって来そうな錯覚を覚える。

@ですから、もう何も来ません

 さらに歩いて、バスターミナルへ。それにしても暑いこと! 6月になったばかりの北海道とは思えない暑さである。先週、異常気象により道東で30度後半になったというニュースがあり、今日はそこまでではないにしても、かなりの暑さである。北海道と言えば、道東などでは「5月末まで暖房費をいただく」ような宿があるくらいである。
 その後も、ひたすら歩き続ける。踏切がある場所では、踏切と道路上の線路が撤去されていた。

@例(この写真は鹿ノ谷駅より手前で撮影)

 予想外の暑さにやられて、やっとターミナルへ。しばし待ち、札幌(新さっぽろ)行の急行バスを待った。

@やって来ました

 夕鉄バス「らしい」古さのバスに乗り込み、定刻の14時35分に出発。先頭に陣取り、北海道的な景色を楽しんだ。
 大谷地バスターミナルで下車し、地下鉄で大通へ。さて、今日の宿である。
 ツアーに付いてくる中で最も安いホテルを選ぶため、いつもは「そういうホテル」である。今回も同様にしたのだが、なんと一番安い数件の中に「オークラ札幌」が混ざっていたので、それにしてみた。
 恭しくフロントで対応され、自室まで丁寧に案内されてしまったので、却って「場違い」な感じがするが、部屋は広いからいつもとは別世界である。

@こんな感じ

 ツアーの宿泊など「おまけ」みたいなものであるが、日曜に宿泊する人など少ないから、ツアー向けに「投げ売り」しているのであろう。
 広い部屋であるが、やることはいつもと同じ(スーパー食材で一献)である。酔ってから、就寝。

■2019.6.3
 今日の天気予報(最高気温)も、東京が24度で札幌が28度である。
 6時過ぎにホテルを出て、徒歩でJR札幌駅へ。切符はすでにJR東日本の「えきねっと」で購入済みである。事前入手は便利であるし、行先の駅名が入った切符になるのもいい(しかし、この切符は新十津川駅下車時に没収されてしまった。ルール通り(ワンマンからの下車時は無効印がないので記念譲渡はできない)ではあるが、これまでの経験上はすべて「いいよいいよ」で見逃してくれたため、まさかJR北海道で没収されるとは思わなかった。ルール通りとはいえ、心情的には、かなり「うーん」である)。

@写真撮っといてよかった

 まずは、6時39分発の石狩当別行である(次の列車に乗っても乗り継ぎできるが、直前では良い席が取れない可能性があるため、1本早いものに乗車することにしている)。最初は1両目に陣取っていたが、全車両自由席であることを思い出し、Uシート(空港へ行く快速として運行されていた際、指定席として使用されていた車両)に移動した。定刻に出発。

@これで石狩当別まで

 7時18分に石狩当別に到着し、新十津川行が停まっているホームへと移動した。早く来たおかげでまだ車内には数人だけであり、日の当たらない左側を陣取ることができた。
 車両の撮影をしたが、嬉しいことに「宇都宮富士重工 昭和56年」という銘板があるではないか。私は親の転勤で昭和56年から宇都宮に7年ほど住んでおり、富士重工の工場に繋がる線路で完成したばかりのキハ183系や50系客車を見かけたことがある(その写真もある)。キハ40の記憶はないが、もしかしたら見かけていたかもしれない。

@もしかして(右側赤色灯の横に銘板が)

 札沼線にはここ10年以内でも数回乗車しているが、いつも新十津川側からの乗車である。下り列車に乗るのは、随分久しぶり(おそらく、初めて札沼線に乗った時以来)であるかもしれない。
 7時38分に到着した列車から乗り継ぎ客を飲み込み、乗車率は70%くらいになった(札幌発を1本早くして正解であった)。定刻の7時45分に出発。
 7時48分に到着した北海道医療大学で学生が下車し、乗車率は50%くらいになった。

@ここから先は「乗り納め」区間

 景色自体は函館本線と変わりないが、路盤が弱いためガタンゴトンと左右に揺れていく。
 8時17分に石狩月形に到着。高校生が下車し、乗車率は30%くらいになった。ここで20分以上も停車時間があるため、乗車目的の人々(というか、そういう人しかもう車内には残っていない)は、写真を撮ったり散策したりするためにホームや駅舎やその周辺の散策をし始めた。

@私も同様に

 それを見越してか、窓口では記念入場券や切符(区間を指定したもの)が売られている。私は収集癖がないので見ているだけだが、結構買っている人もいた。それなりの収入源になっていそうである。
 駅の時刻表を見ると、石狩当別方面(上り)が7本、浦臼方面(下り)が6本ある。札沼線の部分廃止が話題になった際に、「あわよくば石狩月形まで存続」と思ったこともあるが、そうは甘くなかったようである。

@あと1年

 8時35分に浦臼からの上り列車が入線し、タブレットを交換して、8時40分に出発した。車内には15人ほどの乗客がいるが、地元民らしき人はゼロである。
 9時05分に浦臼到着。新十津川行の1往復以外はここ発着であるくらいの主要(?)駅であるが、この列車には誰も乗ってこなかった。
 その後もゆらりゆらりと走り続け、9時28分に新十津川に到着した。幼稚園児が迎えてくれるのは知っていたが、今日は駅長犬もいる。

@到着

 久々に来た新十津川駅であるが、駅前付近には土産物店もオープンしたりして、「最後の狂騒曲」の準備は万端のようである。そういうの(地物)にはお金を落とさねばと思ってしまうため、新十津川駅の写真付きワンカップ日本酒や地元のお菓子を買ってしまった。
 折り返しの石狩当別行の出発は10時00分である。駅付近の散策や撮影など10分もあれば充分なため、することもなくなり、犬撮影タイムの開始である。

@モデル犬

 10時00分発の列車を見送り、さて滝川駅まで歩かねばならない(9時台には何本かバスがあるのに、10時台は皆無なのである)。急ぐ旅ではないのだが、旭川市内にどうしても行きたい場所があるため、10時52分発の特急にぜひとも乗りたい。新十津川駅から滝川駅まで、グーグルマップに計算させると「徒歩53分」である。ということで、急ぎ足で歩き始めた。これはもう「新十津川ダッシュ」と命名してもよいであろう。
(註:異なる駅間で、異なる列車に効率的に乗り継ぐため、もしくは同じ列車に追い付いて乗り込むため、駅間を急いで移動することを「〇〇ダッシュ」と言う。前者には「厚別ダッシュ」、後者には「下山ダッシュ」がある)
 かなり早歩きで歩き続け、滝川駅には10時46分に到着した。

@間に合った

 特急に30分強揺られ、11時25分に旭川に到着。ここで石北本線の各駅停車に乗り換えるが、滝川であんなに急いだのに、待ち合わせ時間が40分弱もある(本数が少ないのだから仕方ない)。
 12時04分の列車に乗り込み、12時20分に東旭川に到着した。旭川近辺には何度も来ており、何を隠そう私は旭川生まれ(3歳半までしかいなかったので記憶はないが、その後何回か帰省している)なのだが、この駅で降りたのは初めてである。

@暑い(本当に気温28度になった)

 なぜこの駅に来たのかというと、東旭川公民館にある旭川電気軌道の車両を見るためである。季節外れの暑さの中を歩き続けること約20分弱、その場所に辿り着いた。心無い人に窓ガラスを割られてしまって無残な姿になっていたが、車両自体は健在であったのは何よりである。

@無事撮影

 撮影も終えたためあとは戻るだけであるが、列車は本数が少ないため復路は路線バスである。公民館の近くに旭川神社があったのでお参りし、路線バスで市内に戻り、スーパーでジンギスカンのたれなどを買い、空港連絡バスで旭川空港へと向かった。

 三江線廃止の時などは、「今度こそ最後」と言いつつ何度も訪問してしまったが、さすがに札沼線はこれが最後であろう(実のところ、それほどまでの思い入れもない)。しかし、何があるかわからない。いきなり札幌出張が入り、「仕事の翌日は昼間まで暇だ」なんてなったら、またうっかり来てしまうかもしれない。

@まだ1年弱ありますから

 

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