あてもなく台湾

■はじめに
 今回の台湾訪問の一番の目的は、台北機廠である。かつては車両工場であった場所であり、現在は水曜と土曜限定で見学が可能である(午前と午後それぞれ40人だけ)。単なる工場跡であればそれほどの興味はないが、なんと2017年より日本製の寝台電車「583系」が展示されるようになったのである。ということで、午前の便で飛べば見学に間に合う土曜の午後の見学について、申し込み開始日当日にネットで申し込んでおいた(航空券については、かなり前にこの旅程に合わせて特典航空券を押さえておいた)。
 日曜は丸々暇であるので、渓湖糖廠に行くことにした。台湾の観光向けサトウキビ鉄道に関しては、これまで嘉義の台糖蒜頭糖廠や新営の新営鉄道文化園区と烏樹林休濶区、高雄北部にある高雄糖業文化園区に乗車済みであるが、ここは未開の地である。
 最終日の月曜も昼の便まで時間があるので、福隆へ行って朝の駅弁を頂き、猫村(ホウトン)に寄って帰ってくることにした。

 という塩梅で始まる旅行記のはずであったが、出発の1週間くらい前に台北機廠のウェブサイトを見てみると、なんと22日の見学がキャンセルになっているではないか。しかも、施設が閉鎖されてしまうのならまだしも、15日と22日の土曜日だけがピンポイントでキャンセルなのである(挟まれている19日の水曜日は通常通り催行)。謎のキャンセルであるが、仕方がない。特典航空券は変更できるが、ホテルも鉄道も決済しているため、もう行かざるを得ない。
 主目的がなくなってしまったが、代替案といってもすぐに思い浮かばないので、2017年に開業した桃園空港MRTに乗ってくることにした。今回は松山空港利用であるため、使いもしない別の空港のアクセス鉄道に乗るのは変な話であるが、こうなってしまった以上、もうどうしようもない。

@渓湖糖廠にて

■2019.6.22
 10時05分の羽田発台北松山行のANA便に搭乗し、台北上空で混雑のため少しだけ旋回し、定刻から10分ほど遅れた12時40分に到着した。台湾には毎年のように来ているが、松山空港は久々のような気がする(と思ったが、5年前に利用していた模様)。
 地下鉄で台北へ。ここから桃園空港MRTに乗り換えるが、その前に明日の切符の受け取りである(往路は自強号、復路は台湾高鐵(新幹線))。

@最近は在来線も窓側指定もできるようになった

 さて、これからは「せっかく市内に近い松山空港に降りたのにわざわざ桃園空港に行く」という奇行である。空港MRTの乗り場は、同じ「台北駅」でも結構歩かされる場所にある(東京駅の京葉線ほどは離れていないが)。「どうせ地下なんだからあと一声掘ればいいのに」と思うが、国鉄台北駅周辺は既存の地下鉄で埋め尽くされているのであろう。

@まだまだ新しい

 目の前にいた14時15分発の直達(快速)はもう座席が埋まっていたので見送り、次にやってきた14時30分発に乗り込んだ。固定式ではあるが、窓に対して直角のシート(ロングシートではない)が嬉しい。
 高架が多いので景色はよく見えるが(意外にトンネルは少ない)、思ったよりも徐行区間が多い気がする。

@天気は良くないですが

 15時10分、空港第二ターミナル到着。徐行の設定がなければ、30分程度で走れそうな気がした。ここから先は各駅停車のみが走っている。料金的には、台北から空港まで乗っても終点まで乗っても同じなので、今日は終点まで乗り通すことにしている。
 15時15分にやってきた各駅停車に乗り込んだ。こちらはロングシートである。高鐵桃園にも経由するので、利用客はそれなりに多い。

@高鐵を見送る

 地下に潜り、終点の環北には15時44分に到着した。ここから先、国鉄の中レキ(レキは土へんに歴)までも工事中であり、結局今回ここまで乗っても「歯抜け」で残してしまうことになる。そのうち完成したら、乗りに来るのであろうか。
 歩いて30分ほどで中レキ駅へ。150元もかけて空港MRTに乗り、さらに終点から歩いてきたのに、この駅から台北まではたったの57元である。
 16時25分発の列車で台北に戻り、17時14分に到着。駅弁を2つ買って、激安ホテルに向かった(台湾の駅弁はそれほど大きくないので、2つ買っておかずをツマミにするのである)。

@駅弁2個

■2019.6.23
 今日はまず、6時30分発の自強号で員林に向かう。余裕をもって6時にはホテルを出て、6時15分には出発ホームへ。隣りのホームにキティちゃんの塗装がされている列車がいたので暇つぶしにそれを撮りに行こうと移動したら、タッチの差で出発してしまった。

@しぶとく階段から

 しばらくして入線してきた「これぞ自強号」という編成(南アフリカ製電気機関車+韓国製客車)に乗り込み、定刻に出発。
 しばらく走行すると地下区間が終わって地上に出たが、今日は残念な雨模様である。移動中は雨でも構わないが、雨粒のせいで撮影ができないのが残念である。
 7時73分、竹南を出発。ここからは「海線」経由となる。8時20分頃には曇り空になり右手奥に海も見えたりしたが(海線と言っても海が見える部分はごくわずか)、その後は前も見えないような大雨になり、再度小雨に戻った。今日は急変しやすい天気のようである。

@せっかく窓との相性最高の席になったのに

 珍しく高架となり、9時29分に員林に到着した。高架ということで意外に都会っぽい駅であるが、現代美術好きの人にとっては外せない見所が実はある駅でもある。

@右側の靴は草間彌生作

 駅から5分ほど歩いて、バスターミナルへ。時刻表は事前に調べてきたが、9時50分発の6703系統はないようで、次は10時05分発の6705系統である(これでも、11時発のサトウキビ鉄道には充分間に合うはずである)。
 待つことしばし、路線バスがやってきた。

@路線バスで移動

 ネットで予約できたりする鉄道と違って路線バスのハードルは高いが、ここ最近はネットに時刻表を掲載しているローカルバス会社も多く、またICカードの発達により(今日のバスも台北の「悠遊カード」が使用できる)支払いも簡単になり、最近はずいぶんと楽になってきた。
 定刻に出発。アナウンスがあるおかげで(中国語だけだが)、間違うことなく渓湖で下車することができた。10時31分着。
 そこから歩くこと10分程度で、渓湖糖廠に到着した。正門から奥に入って左手に進むと、SLが準備のためにもう煙を吐いているではないか。

@準備中

 料金は、大人一人150元である(SLの場合。ディーゼルの場合は100元)。10時56分頃に戻りの列車(ディーゼル機関車)が入線してきたが、小さい車両とはいえ30両近くも連結されているではないか(どうやら、団体客がいる模様)。
 乗客が降ろされ、車両が半分程度(17両くらい)に減った状態となり、改札が始まった。せっかく割高料金を支払っているので、煙いのを承知でSLのすぐ後ろに陣取った。

@煙が直撃

 乗降に時間が掛かったため、11時07分くらいに出発。敷地を過ぎると踏み切りを過ぎ、不安定な細いレールの上を走り続けた。案内係のおばさんの説明が大声で賑やかなこと。
 ちゃんとした踏切設備があるのは出発後すぐの1か所くらいで、後はSLの汽笛だけが頼りである。とある踏切では、あやうく小型トラックとぶつかりそうになってしまった。

@通過中

 15分ほど走り、折り返し地点に到着した。数軒の屋台のような店(野菜や飲料等を売っている)がある。烏樹林休濶区でも折り返し地点にこのような店があったが、日に数往復しか来ない観光列車の乗客相手では、ほとんど儲からないであろうと思う。

@全員がSLに集まってくる

 11時35分頃に折り返し便が出発し、11時50分少し前に戻ってきた。
 さて、この施設には他にも鐡分多目の展示がある。車庫のような場所にあるSLや機関車はもちろんのこと、製糖工場跡の前には鉄道関係の展示館もある。もちろん、せっかく来たのであるから、製糖工場自体も含めてあれこれと見学をした。

@SL

 なお、鐡ネタはそれだけではない。敷地内を北側へさらに歩いていくと、小さな転車台(ターンテーブル)が見えてくる。私の経験に限れば、一番小さな転車台である。さらにその先には復刻された駅舎もあるが、誰も来ないためか(現に私以外に誰もいない)、鍵が掛かっていて中にある展示物を見ることはできなかった。

@小さい(雨が降ってきた)

 歩いてバス停に戻り、大型スーパーがあったのでそこで見つけた惣菜(鴨肉など)をホクホク顔でいくつか買い求め、13時53分頃にやってきた路線バスで員林のバスターミナルへ移動した。
 さて、次の移動であるが、少し妙なルートとなる。復路も普通の鉄道(国鉄)にしようとしたが、なんと発売初日であるのに売り切れであった。「仕方ない、高速鉄道で帰るか」と思い、「この辺の駅となれば、彰化だな」と思ってネットで買ってしまったのだが、その後になって「しまった、高鐵の彰化は国鉄の彰化とは全然違う場所にあるんだった。しかも岐阜羽島のような変な場所に」と思い出したのであった(岐阜羽島近辺の方、ごめんなさい)。
 仕方ないので、国鉄で田中まで移動し、そこから30分ほど歩いて高鐵彰化に行くことにしている。

@員林駅で待っていたら、南海ラピートとのコラボ機関車が入ってきた

 15時03分発の各駅停車(通称「スネ夫」)に乗り、田中で下車した。
 こんなヘマさえしなければ、まず来ることはなかったであろう田中駅である。しかし、元より知らない町を歩くのが好きな性分なので、これはこれで面白い。
 30分強歩き、高鐵彰化に到着した。売店のアイスで体を冷やし、しばし時間を潰してからホームへ行き、16時41分発の南港行を待った。

@やってきました(ホームドアがないので撮影しやすい)

 過去何回か乗っているので、沿線風景は特筆すべきものはない。じきにトンネルが多くなり、17時55分に終点の南港に到着した。台北駅付近のホテルに泊まっているのにわざわざ南港に来たのは、台北以降を「乗り潰す」ためだけである。よって目的はないが、高鐵駅弁が売っていたので、それを買って在来線で台北へ戻った。

@こんな弁当(ホテルにて)

■2019.6.24
 さて、今日はまず福隆まで行って駅弁を買う予定であったが、昨日の買い過ぎが祟り(上記駅弁以外に、渓湖のスーパーで3つも惣菜を買っていた)、それがまだ少し冷蔵庫に残っている。ということで、猫村の再訪だけにすることにした。
 という事情もあり、珍しくゆっくりしてから出発。7時34分の各駅停車に乗り、1時間強でホウトンに到着した。
 しかし、今日は残念な雨模様であるため、猫の数は前回や前々回と比べて1/4〜1/5程度であった。

@それでも写真は撮る

 復路は、少し遅れてやってきた各駅停車に9時32分頃に乗車し、1時間弱で南港に戻ってきた。
 ここからは、地下鉄で1駅戻り、南港展覧館から「文湖線」に乗ることにしている。わざわざ遠回りをするには理由があり、この路線はほとんどが高架で、しかも自動運転であるため「ゆりかもめ」のように前方が見渡せるのである。

@こんな感じに

 という感じで最後の車窓を楽しんでから松山空港へ向かい、昼過ぎの便で東京に戻った。

 

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