台湾鉄路、「鐡」と「猫」の旅

■はじめに

 9月の3連休、飛行機代が高いこの時期は出不精になりがちであるが、かなり早い段階(4月末頃)にLCCのページで検索してみると、台湾まで往復(燃油等すべて込み)で2万7千円を切るものがあったので、詳細な旅程など決めずにその場で決済してしまった。この値段なら、大阪に往復するくらいの気持ちで行くことができる。
 さて、都合4度目の台湾である。大きな鐡ネタとしては阿里山森林鉄路にまだ乗っていないというのがあるが、まだ災害から復旧していないので、今回も乗ることはできない。
 そこで今回は、平渓線の再訪を中心に、細々とした鐡ネタ(と猫ネタ)を集めることにした。

@駅と猫(落ちないでください)

■2013.9.21
 3時台に起床し、4時31分最寄駅発の京浜東北線、5時東京発の格安バスで成田に向かった。以前も一度だけ使用したことのある方法であるが、二度目もやはりしんどい。
 私がの乗るべき便は、台湾に台風が近づいているため「条件付運行」(場合によっては成田に引き返す)であった。遅延や欠航の際に面倒なLCCであるが、結局、台湾桃園には予定通り10時半頃に到着した。高速道路経由の空港連絡バスに乗り(註:桃園空港からのバスは多種類あり値段も様々であるが、安いものだと一般道経由でかなり時間がかかるものもある)、台北駅には11時50分頃に到着した。

@このバスが一番無難(高速道経由で、台湾駅前まで行く)

 大雨が降り出したので、バス降り場から急いで駅舎内に避難した。
 さて、台北駅でやるべきことといえば、やはり駅弁である。この駅の場合地域性が高い弁当はないが、数種の弁当を手に入れることが可能である。今回は、これまでまだ試したことのない八角形のものにしてみた。

@相変わらず美味

 駅のコンコースで弁当を平らげてからは、區間車(各駅停車)で侯トン(石偏に同)に向かった。目的は、まず「鐡」ではなく「猫」である。侯トン駅周辺は炭鉱産業が廃れたあとは寒村になっていたが、最近は「猫村」として観光客を牽き付けているのである(詳細な説明はガイドブックに任せる)。
 ドア近くに立って外を眺めていると、途中駅から籠に魚介類を載せたおばさん数人が乗ってきた。どこかで行商してきた帰りなのであろうか籠はほぼカラであるが、いくつかにはまだ品物が残っている。おばさんたちはそれらを、通路の中央に並べ始めた。

@軽くカルチャーショック

 おばさんたちは、お構いなしで大声で話し続けている。ただ単に置いているだけかと思ったら、近くの人と話をしているうちに、いくつかは売れ始めた。どうやら売り買いもできるようである。いつも通りの台湾の沿線風景であるが、いつもと違うのは車内が魚介の香りで包まれている点である。
 さて、これから訪問する猫村である。不安なことは、台風が近づきつつあるので時折強風が舞っている点である。もしかしたら、猫たちは塒で避難をしているかもしれない。
 約1時間で侯トンに着いたが、私の心配を余所に、猫村内は猫だらけであった。

@とにかく可愛い

 先ほどまでの雨も幸い上がったので、曇天ではあるが、時間をかけて村落内(駅西側にある)を歩き回ってたくさんの猫の写真を収めた。
 駅の東側は朽ち果てた炭鉱施設を中心に観光施設となっているが、こちらにも猫がたくさん溢れていた。
 引込線の線路近くをパトロールする猫、無人の警備員小屋で無線の前で昼寝をする猫(思わず「お疲れ様です、異常なしでしょうか」と尋ねた)など、様々である。
 廃墟となっている炭鉱施設からは、石炭運搬のトロッコ用の廃線が残されていた。猫スポットであるが、ある意味、ここは鐡スポットでもあった。

@「我是鐡路迷」

 予定より少し長居し、14時50分発の列車で隣駅の瑞芳に戻った。まだ訪問したことのない観光地、九フェン(人偏に分)に行くためである。
 事前に調べたとおり、駅を出て東へ100メートルほど歩いたところから路線バスに乗り、九フェンへ向かった(台湾のIC乗車券である悠遊カードを持っているので、こういう場合に便利である)。
 到着後は、人混みにまみれて旧い街並みをおのぼりさん的に歩き回った。

@台風接近

 今回の宿泊地は、基隆である。九フェンからは路線バスだけで基隆へ行くことが可能であるが、瑞芳から鉄道で行こうと考えていた。
 台北行のバスに乗り瑞芳で降り、駅舎内の掲示を見てみると、次の発車は15分後のようである。…と、その右に「晩25分」(遅延25分)とあるではないか。もう夕方であるし、瑞芳で40分も待ちぼうけなのは…と思って振り返ると、先ほど降りた駅前バス停に基隆行のバスが入ってきたではないか。後先を考えず、とりあえずそれに飛び乗った。

@助け舟

 時折狭い道で時間がかかったりしたが、特に大きな渋滞もなく、30分程度で基隆の街に到着した。地図を確認し、駅から一つ手前のバス停で降り、今回の宿に投宿した。
 さて、基隆といえば夜市でも有名である。雑踏内をあれこれ歩き回り、とりあえずこの夜市で有名な「天婦羅」「營養三明治(サンドイッチ)」「一口吃香腸」と買い漁り(ついでに無名のから揚げも)、コンビニでビールを大量に仕入れて、今晩の宴(一人きりであるが)の始まりである。

@B級グルメ的

■2013.9.22
 今回の台風「Usagi」は、かなり巨大なようである(今年度最大。ちなみに日本語の「ウサギ」から来ている)。私の中国語能力は幼児並みなのでCNNにチャンネルを合わせていたのだが、その天気予報でもUsagiの進路予想をやっていたくらいであった。
 7時半頃にホテルを出て基隆駅へ行き、平渓線の一日切符などを買ったりした。7時50分発の列車に乗り、八堵で下車した。平渓線に直接乗り入れる列車に乗るためである。
 列車は、13分ほど遅れてやってきた。

@これに乗る

 車内は、意外なほどにガラ空きであった。余所様の旅行記を読むと、「平渓線は人がいっぱいで乗り切れない人も」のような叙述があったりするのであるが、私が来るときはいつも(と言っても2回目であるが)この程度である。
 三貂嶺で分岐し、列車は平渓線に入っていった。景色は雨のせいで陰鬱なものになっており、列車はその中を走り続けていく。
 終着の菁桐には、9時35分に到着した。思えば、前回の訪問時も雨であった。

@またしても雨(駅近くの様子)

 前回はすぐに折り返してしまったので、今回は30〜40分ほど付近を歩いて散策し、お寺などを発見して参拝したりした。
 駅へ戻り、10時20分発の列車で戻り、十分で下車した。目的は、台湾煤鉱博物館である。先ほどまでの大雨も上がり、十分名物となっている天燈を大空に放っている観光客もいる。

@生で見たのは初めて

 駅から5分ほど歩き、博物館の入口(実際の入口はもっと山の上の方にあり、ここにあるのは単なる受付)に到着した。
 前回の訪問時もこの付近までは来たのであるが、平日であったため係りの人間がいなかった。今日は日曜であるので、おばさんが一人待機している。

@受付付近と廃れたトロッコ用機関車

 おばさんは英語・日本語ともできないが、「ここで料金を払って待っていれば迎えの車が来る」という情報は仕入れていたので、トロッコの写真を指差されたのでウンウンと頷き、200元を払ってしばらく待つと、迎えの乗用車がやってきたのでそれに乗り込んだ。
 車で5分ほど高台へ上がり、かなり若い係員から日本語(かなり早口)で博物館内の展示物の説明を受けて、さて、お待ちかねのトロッコである。
 しかし、ここでバケツをひっくり返したような大雨になってしまい、雨が弱まるまで待つことになった。

@客車(これに乗る)

 10分くらいして雨が少し弱まったので出発したが、動き出してすぐにまた大豪雨となってしまった。仕方がないので傘を半開きにし、腰から下を隠すようにしたが、それでもかなり濡れてしまった。
 トロッコの乗車時間は片道約10分、終点で機関車を入れ替えるので、最前部にいた私は復路は最後尾となった。こんな大雨の日にトロッコに乗る人など他にはおらず、もちろん私だけである。だんだんと、修行の様子を呈してきた。

@機関車入れ替え作業(雨でレールが見えない)

 無事に修行を終え、送迎の車で下界に降りてきたのが12時頃であった。大雨ではあったが、意外にスムーズに乗車体験ができたので、予定よりも1本早い列車で移動できそうである(乗り継ぎの時刻は調べていないが、なんとかなるとの算段である)。
 しばらくすると十分駅に下りの列車がやってきたが、結構たくさんの乗客が降りてきている。今朝の乗客が少なかったのはただ単に朝早すぎただけで、普通の日帰り観光客はこのくらいの時間から来るのであろう。
 12時15分発の列車に乗り、宜蘭線との接続駅である三貂嶺に降りたのが12時30分であった。

@タブレットも交換

 ちなみにこの駅は、ネット情報によると一日の乗降客が20人くらいしかいないという「秘境駅」である。そのためか、駅員が「どこへ行くのか」みたいなことを訪ねてきた(聞き取れたのは語尾の「ナァーリ」だけであるが)。
 私が南側を指差して「ルォドン(羅東)」と言うと、駅員は北側(私が乗ってきた列車が走り去った方)を指差してルォドンと言うではないか。違う地名に聞こえてしまったのかと思い同じ仕草をすると、なぜか駅員も同じことをする。振り返ってみると、羅東方面へ行く列車がすでに入線してきているではないか(つまり、「羅東に行くなら、ほら、そっち方面に行く列車がもうすぐそこに来ているよ」という意味だったのである)。
 切符も買えずに、慌ててその列車に飛び乗った。切符については、下車時に清算すればいいだろう(車内で車掌から買うこともできる)。
 さて、少し早い時間帯の列車に乗れたことによる嬉しい誤算は、有名な福隆の駅弁を昼食として買うことができるということである(本来は昼過ぎになってしまうため、帰りに夜用として買う予定であった)。
 福隆到着は12時53分、100元札を握り締め、到着と同時にホーム上にいる売り子とアイコンタクトを取り、無事に手にすることができた。

@バランスが美しい(これでたったの60元)

 この路線はこれまで何度も利用してきたが、福隆を通過する列車ばかりであったので、今回が初めての体験である。台湾の駅弁は排骨がドーンと乗りあとは添え物、というものが多いが、ここの駅弁は一品一品が自立しているのが素晴らしい(台湾で一番有名な池上の駅弁にも言えることである)。
 ロングシートの上で弁当を頂きながら、景色を眺める。しばらくすると海が見え始めるが、残念ながら大荒れである。
 目的地である羅東には、14時5分頃に到着した。ここでの目的地は「羅東林業文化園區」である。ここは旧い森林鉄道跡を活かして、文化スポットに仕立て上げているのである。幸い、雨も上がった。

@SL数量と客車が保存

 羅東駅から徒歩10分程度で、文化園區に到着した。日曜ということもあり、子ども連れなどでかなり賑わっていた。
 鐡ネタをしっかりと拾ってからは駅へ戻り、その後はひたすら區間車で基隆を目指した(自強号などに乗ることも考えたが、日曜午後の台北方面の列車は混雑しているようで、立席客ばかりなのを見て諦めてしまったのである)。
 結局、復路も福隆駅で弁当を買ってしまった(もちろん夜用)。
 さて、ホテルに到着後は、二夜続けての夜市巡りである(店舗はたくさんあるので何日でも可能である)。昨日とは違う三明治(サンドイッチ)など、あれこれと買い込んだ。

@賑やか

■2013.9.23
 3連休の最終日、今日はほぼ「帰るだけ」しかできないが、今日になってやっと晴れ間が覗き始めた。恨めしい限りであるが、晴れたら晴れたで刺すような南国特有の日差しでもある。いずれにせよ、帰国前に晴れ渡った基隆の海を見ることが出来ただけでも良しとしなければならない。

@せめてあと1日早く…

 7時28分発の列車で台北へ行き、予約決済してある新幹線の切符を受け取り、些細な鐡ネタとして二二八和平公園に展示されているSLを見に行った。
 さて、あとは空港(桃園)へ行くだけである。普通ならバスを利用するところであるが、バスの一番怖いところは「渋滞がある」という点である。今は月曜日の8時台、一番危険な時間帯である。
 それを想定して、今回は高鐵桃園まで新幹線で行き、そこから連絡バスで移動することにしている。この方法で気になるのは、やはり料金であろう。台北へのバスならば83〜150元で移動できるが、新幹線を利用すると、160元(台北〜高鐡桃園)+30元(連絡バス)で190元になってしまうのである。
 しかし、新幹線の特定の列車にある割引を利用すると、差はほとんどなくなる(早期に予約する必要あり)。私の場合は、割引料金100元+30元=130元であり、往路のバス(125元)とは5元しか違わなかった。時間が読めない入国時は難しいが、出国時には充分に使える方法であると言えよう。

@私からもお勧め

 11時20分頃、実は余命1か月(その後別会社になる)のLCCは、無事に台北を飛びだった。

 

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