台湾鉄路、さらに「落穂拾い」の旅

はじめに
 台湾への鐡旅は、3年前の春に1週間以上かけてあちこち周遊したのが初めてであり、その後も一昨年9月にもう一度訪問し、落穂をいくつか拾っている。
 ただし、台湾の鐡ネタはまだまだたくさん残されている。阿里山森林鉄路に乗っていないのが一番大きな取りこぼしであるが、まだ災害から復旧していないので、今回も乗車することはできない。そういうわけで、今回は以下について「落穂拾い」をすることにした。

 1.集集線完乗(3年前は路盤改良工事中で、途中までしか乗っていない)
 2.新営糖廠(新営鉄道文化園区の五分車)に乗車(観光化されたサトウキビ列車初体験)
 3.内湾線乗車(3年前は六家線建設の関係で一部不通だった)
 4.六家線乗車(2011年に開通した、新幹線駅への接続路線。「おまけ」程度)

 世間はゴールデンウィークの初日であるが、航空券はかなり前(年明け早々)に予約決済しているので、通常より若干高い程度にすることができた。

@八老爺駅にて(新営糖廠)

■2013.4.27
 成田発の便に搭乗し、約4時間弱で桃園空港に降り立った。本来は14時過ぎに到着する予定であったので、入国手続きをして14時30分過ぎの路線バスに乗っても、15時15分頃には桃園駅に到着する予定であった(予約している列車の時刻は桃園駅発16時31分であり、かなり余裕がある)。
 ところが、飛行機が15分ほど遅れてしまい、さらに入国審査も混んでいて、外に出られたのは14時45分であった。しかし、それでもまだ余裕がある。…と思っていたが、15時10分発のバスがなかなかやってこない(空港発なのに)。そのバスは、11分も遅れて15時21分にやってきた。
 しかし、このバスの桃園駅までの所要時間は40分であるから、まだまだ余裕がある。
 乗車時に100元札で払おうとしたら、両替はできない(おつりはない)というので困ってしまった。しかしふと右を見るとカードをかざす機械があり、以前訪問した時に買った悠遊カードを見せると運転手が頷いたので、それを使って乗ることが出来た。

@路線バスにはギャンブル要素が付き物

 出発後は安心していたが、途中でとてつもない大渋滞に嵌ってしまった。出発後30分経ったので印刷してきた系統図を見てみると、終点間近どころか、まだ1/3ちょっとしか進んでいないではないか。あと40分あるとはいえ、このペースでは絶望的である(ここで半ば諦めた)。
 その後はある程度スムーズに進みつつも、所々で渋滞に引っかかりながら、結局バスは空港から66分もかかって16時27分に終着である「今日大飯店」に到着した。あと4分しかないが、ダメ元で走ってみるしかない。
 バスを降りて走り始めると、左手に前回乗車した林口線のホームがあった付近の景色が見えたので、駅まではそれほど遠くなさそうである。必死になって走り、駅舎に駆け込んだのが16時29分。窓口が行列していたらアウトだが、右側2つの窓口には1人しか並んでいなかった。直感で左の方に並ぶと、もうホームには私が乗る予定の自強号(特急列車)が入線してくるではないか。幸いにも前の人はすぐに支払が終わり、私は予約決済した情報をプリントアウトした紙を手渡し、中国語が出てこなかったので「That train!」と言うと、駅員はプリントアウトされている出発予定時刻に気付き、超高速で予約番号等をキーボードに叩きつけ、出てきた切符を受け取った私は「謝謝!」と言って改札へと走った。列車はもう出発を待っている状態だが、こういうときに限って地下道を潜らなければならない。階段を駆け上がる頃にはすでに発車のベルが鳴っており、自分の号車まで移動する余裕などなく目の前にあったドアに飛び込んだ。

@写真など撮っている余裕がなかったので、出発前のバス乗り場でも

 奇跡的に間に合ったが、結局桃園では何もできなかった(1時間くらい余裕があるはずだったので、昨年末に運転を休止した林口線の乗り場を見に行ったり、夜用の駅弁でも買おうと思っていたのだが)。
 縦貫と台中線(山線)は、景色自体は地味な線区である(ほどほどの街並みが続く)。左手には工事中の高架も多くあり、じきにあちらに移るのであろう。台中には、18時13分に到着した。

@無事到着

 駅裏側にある安ホテル(4,000円程度)に荷を置き、夜の食材を探して駅付近を歩いた。桃園で駅弁を買うことができなかったのでまずは台中駅で1つ手に入れ、それから街中を適当に歩き、3年前に来た時に利用した鶏唐揚の店(何の変哲もないチェーン店)があったので懐かしさついでで購入し、その他コンビニでビールなどを買って部屋に戻った。

@こんな夕食(コップは自強号車内でもらってきたもの)

■2013.4.28
 空は残念ながら雨模様である。6時30分頃にチェックアウトして駅へと向かったが、狙っていた車両の最前部には先客が乗っていた(この車両は、運転手の反対側に座れるようになっているものがあるのである)。
 ここまでのパターン(初日は台中まで移動し、翌日に集集線に乗る)は、3年前に初めて台湾に来た時と似たような感じであるので、デジャビュのような感じがする(3年前は、桃園空港到着後はバスで台北まで移動したが)。

@集集線のディーゼルカー(途中の二水までは、台中線と縦貫線を走る)

 社頭駅で最前部に座っていた乗客が降りたので、そちらへ移動した。酷い雨模様であったが次第に雨も上がり、雲の切れ目も見えてきた。8時02分、集集線が分岐する二水に到着し、タブレットが交換された。
 集集線に入ると、にわかにローカル線ぽくなってくる。8時20分着の濁水では、再度タブレットが交換された。同駅出発後しばらくすると右手に戦車が見え、左手に軍施設への引込線が見えてくると、前回私が代替バスに乗り換えた龍泉に8時30分に到着した。

@並木道に沿って走る

 ここからは「新装開店」になった部分であるが、路盤はあまり良くなく、見るからにレールも歪んでいる感じがする。どうやら、応急手当程度しかしていないようでもある。
 8時38分、この路線の中心地である集集に到着した(前回は代替バスでここまで来た)。観光地であるため、まだ朝早いというのにホーム上は人で賑わっている。
 集集から先も、路盤はあまり良くなかった。石で枕木が見えなくなっている所もあり、逆に悪く言えばスカスカな状態の所もあった(最前列に乗っているため、路盤の状況が良くわかる)。

@なので、ゆっくり走る

 定刻から4分ほど遅れて、8時54分に終着の車テイに到着した。辺りは林業をテーマに観光地化されており、観光バスで乗り付けた大勢の人が待ち構えていた。
 敷地内には貨車や機関車も展示されており、その他の鉄道関係資料も展示されている。空は、いつの間にか痛いくらいの日差しになっていた。

@晴れ

 この集落では桶に入った弁当が有名であるが、桶などは荷物になってしまうので選択肢外である。中身だけ(排骨飯)だけでも店で注文できるが、まだ朝の9時過ぎなのでそんな気にもならない(お店自体も、人はいるが営業は「これから」という感じである)。結局、この地とはなんの関係もない牛舌餅というお菓子を15元で買って食べ歩いただけにした。

@はい、ポーズ(老街にて)

 辺りは、さらに観光客が増えてきた。ただし、私が着いた後には集集線の列車は1本も来ていない。つまり、全員が自家用車や観光バスで来ているのである。
 散策にも疲れて、駅へ向かって二水までの切符を買った。訪問前に調べていた通り、ここで発売している切符は昔懐かしい硬券である。

@硬券

 10時14分発の列車に乗るためホームで待っていたのだが、出発10分前になっても私1人だけである。直前になってあと数人増えたが、やはりメインは観光バスのようであった。しかし、折り返しでやってきた列車にはそこそこ乗客が乗っていた(10時過ぎ以降が、観光としても本番なのであろう)。
 件の列車に乗り二水まで折り返して、その後は前回も訪問したSL展示場まで歩いて行った(単なる時間つぶし)。

@日本製

 さて、これからは區間車(普通列車)を乗り継いで新営まで行く予定である。11時26分発に乗ろうとしたのだが、自動販売機の行先に新営がなかったので、窓口で「二水→新営 1張」と書いて出すと、なぜだか掲示してある料金と違う料金を請求されてしまった(掲示では105元なのに126元)。切符を見てみると、11時31分発のキョ光号(急行列車)になっているではないか(以前は「區間車」「全票」なども書いていたのだが、面倒になって省略した私のミス)。
 しかし、料金の差はたったの21元であるし、キョ光号だと乗り換えをしなくても良い。區間車のロングシートは面白みに欠けるので、ありがたくそのまま乗車することにした。

@久々のキョ光号

 疲れのため少しだけウトウトとし、12時42分に新営に到着した。
 駅から南南西へ歩いて行くと、すぐにサトウキビ列車の踏切跡を発見した。そのすぐ先には、いくつかの引込線のある旧い施設(昔の集積場か何か)もあった。その他にも至る所に廃線跡や踏切跡があり、否が応でも雰囲気は盛り上がってくる。

@鐡ネタづくし

 新営糖廠の中興駅までは、駅から歩いて15分程度であった。周辺は様々なサトウキビ鉄道関係の車両が展示されている。ご多分に漏れずここにも観光バスが停まっており、団体客で溢れかえっていた。
 時間が余っていたのであれこれ見ていたが、いい加減暑くなってきたので、建物に入って切符とアイスを買った。

@これに乗る

 14時00分、観光鉄道は出発した。台湾に数多くあるサトウキビ鉄道を利用した観光鉄道のうち私がこれに乗ろうとしたのは、ただ単に交通アクセスが簡単(駅から歩ける)というのが理由なのだが、ただこの新営糖廠は、その規模が他の観光鉄道とは桁違いである。たいていの観光鉄道は走り出したらすぐに終わってしまうのであるが、この新営糖廠は片道が30分もあるのである。
 走り出してしばらくすると、大きな道路と本格的な踏切で交差する。その後もたくさんの分岐があり(それらは廃線)、橋を渡り、再び道路を渡る(踏切がないところもある)。途中、おじさんとタブレットを交換し、その場で対向列車とも行き違った。

@すべてが本格的

 ガタゴトと走り続け、14時30分に終着の八老爺駅に到着した。周囲は観光地化しており、乳製品メインの飲食店や売店、小さな動物園などまである。
 アイスを買ってそれを折り返し列車の車内で頂き、14時52分に出発して同じ線路を戻って行った。

@超低速なので、踏切の竿がなくても事故にはならない

 15時22分に到着し、そのまま歩いて新営駅へと戻った。旅程が順調に進んだので、まだ15時40分頃である。予約決済しているキョ光号は16時47分発であるが、何もない新営で1時間も待っても仕様がないので、15時52分発に乗れるのならそうしたいところである。中国語の文法はまだよくわからないが、適当に「可以改変?」などと紙に書いて駅員とあれこれ筆談したが、どうやら変えられないようである。仕方なくフンフンと頷いたのだが、手元にやってきた切符は15時52分発の列車の「無座」であった(彼女の答えは「変更できない」ではなく「座席がない」だったのである)。3時間半も座席なしはしんどいが、到着が1時間前倒しになるのも捨てがたい。結局、そのまま乗車することにした。

@昨日に引き続き

 無座の切符は、指定券を持っている人が来るまでは適当な席に座っていても良い。それで、いつまで座れるかわからないが空いている席を見つけてそこに座った。
 走り始めてからふと思ったのだが、途中(台中の少し南側)に新幹線駅と連絡する新烏日駅があったはずである。そこで新幹線に乗り換えて、高鐵新竹まで行ってさらに在来線に乗り換えることも可能ではないかと思ったのである。現地での旅程変更は一人旅ならではの醍醐味であるが、それは勝手知った国内なら可能な話である。かなり真剣にいくつかのパターンを考えたが、昨日今日の経験を元にすると、新烏日から新竹までは、在来線でも2時間かからない距離のはずである。そうなると、いくら新幹線を利用するといっても2回の乗り換えが増えるわけであるから、実用的でないと判断して諦めることにした。

@諦めてスルー(新烏日駅)

 幸い、座れなかったのは最後の30分だけで、新竹には19時30分頃に到着した。
 新竹到着後は、駅近くの店で鶏の唐揚げや餃子を買い、コンビニでビールなどを買って駅にほど近い予約済のホテルに投宿した。

■2013.4.29
 今日は、惚れ惚れするほどの快晴である。ホテルの朝食を済ませた後、新竹市内を適当に散策した(3年前にも歩いた街なので、見覚えがある)。
 新竹駅の駅舎は、台中駅と同じく、風格のある建物である。

@日本統治時代の普請(台湾最古の駅舎)

 7時56分発の内湾行の列車は、ロングシートが7割ほど埋まる乗客で出発し、すぐ次の北新竹で立客が出るまで増えた。なかなか盛況であるが、8時11分に到着した新荘で1/3が降り、竹中では1/2までに減ってしまった。さらに8時29分に到着した竹東ではほとんどが下車してしまい、私が乗っていた前方の車両は3人だけになってしまった。
 俄かにローカル色が強くなった中、終着の内湾には8時55分に到着した。

@駅の飾り付け

 この内湾も、昨日訪問した車テイと同様に観光地化されているが、まだ朝の9時ということで人影はまばらである。客家料理などが有名であるが、時間帯からしてそれを食べようと思う雰囲気でもない(店の営業も、やはり10時以降のようである)。
 となると散策であるが、事前に調べた限りでは吊り橋が2つあるようである。そのうちの片方は車内から見えたのであるが、結構遠かった感じがしていた。しかし他に行くところもないので、炎天下に晒されながら、片道15分程度を歩いて行ってみた。

@高所恐怖症の人には無理

 老街へ戻り、適当にふらふらと散策してから駅へと戻った。
 復路は、「かぶりつき」の最前列である。カメラ片手に、色々な写真を撮ったりした。

@行き違い

 竹中には10時45分に到着し、ここからは高鐵連絡鉄道となる六家線に乗車することとなる。暑いホームで17分ほど待ち合わせ、六家行に乗り込んだ。乗車時間は5分程度であり、感想を書くまでもなく終了である。
 せっかく高鐵の駅まで来たので、ここからは新幹線で台北まで行くことにしている(切符は1か月くらい前に割引運賃で予約決済している)。
 台北まではたったの32分、定刻の12時00分に到着した。台北の駅舎は改装工事が終了しており、駅の中は見違えるほど広々とした空間に生まれ変わっていたので、かなり驚いてしまった。

@駅東側にはSLの展示も

 

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