【第三セクター応援鐡旅E】四国編

■はじめに
 第三セクター鉄道を「鉄印」「(食べ物などの)消える系グッズ」「その他(駅弁等)」で応援するシリーズであるが、今回は四国の2会社(土佐くろしお鉄道と阿佐海岸鉄道)が対象である。なぜ夏まで待ったのかというと、阿佐海岸鉄道のDMV(デュアル・モード・ビークル:鉄道だけでなく一般道路も走行できる車両)の導入が延期続きとなり、「東京オリンピックの開会に合わせて」開業となったからである。また、鉄印の購入もDMV開通後となるため、この時期(8月の三連休)に訪問することを決めていた。
 しかし、である。DMVの導入が再度延期されてしまったのである(理由は安全系の再確認である模様)。ということで、鉄印の販売・購入も延期である。旅行自体の延期も考えたが、直前の予約では費用も掛かるので、土佐くろしお鉄道だけを目当てに訪問してしまうことにした。
 元々、三連休で2社だけであるから、旅程自体には余裕があった。初日は敢えて岡山空港入りして、瀬戸大橋や大歩危小歩危を経由して高知へ。2日目は、土佐くろしお鉄道で鉄印を得た以降は、バスで室戸岬へ行き、その後はバスや阿佐海岸鉄道やJRを経由して徳島へ。3日目は、ひたすらJRで高松・岡山・智頭を経由して北上して鳥取に向かい、鳥取空港から戻る旅程である(ただし、台風により3日目は大幅に変更となった)。

 さて、ご存じの通りの緊急事態宣言であるが、これは以前にも書いたが、「状況次第」であると思っている。私の旅行はひたすら公共交通機関の片隅に座っているだけで、人と話すのはホテルのチェックインと物品購入時くらいである(しかもお互いにマスクをしており、場合によっては両者間に仕切りもある)。比較するのは可笑しいが、しかし、昼間からマスクなしで呑みながら集団で飲食店にて盛り上がっている人々よりは、かなりリスクは低いと思っている。また個人的なことであるが、ワクチン2回目の摂取も終えてからしかるべき時間も経過している。少し前であるが、PCRテストも受けている。
 もちろん、万全の体制は取りつつの移動である。

@御免駅にて

■2021.8.7
 7時20分の便で羽田から岡山に飛び、空港連絡バスで岡山駅に向かった。
 今日は、ひたすら南下して高知に向かうだけである。青春18きっぷに押印してもらって改札を通り、快速「マリンライナー」が発着するホームへと向かった。瀬戸大橋線に乗るのは、案外に久々のはずである。

@先頭は指定(2階はグリーン)車(私が乗るのは自由席ですが)

 9時54分に岡山を出発し、瀬戸大橋を渡って対岸の坂出には10時35分に到着した。
 しばし駅で時間を潰してから(猛暑のため駅付近を散策する気にもなれず)、11時00分発の琴平行に乗車。琴平着11時32分。
 ここでもしばし待ち、11時57分発の阿波池田行に乗り込んだ。
 さて、土讃線自体は見所が多いが(スイッチバック駅や大歩危の渓谷など)、今回の旅の主目的ではない。ということで、琴平駅で買った品々で軽く一献である。地元の飲み物はもちろんであるが、普通のコンビニなのに「じゃこ天」が売っていたのは四国ならでは、であろうか。

@軽く一杯

 上述したスイッチバック駅である坪尻なども過ぎ、12時48分に阿波池田に到着した。
(主目的ではないとは言え、写真の1枚くらいであれば蛇足にはならないであろう。特急に追い抜かれる際に写した1葉を紹介)

@晴れ+アンパンマン列車

 阿波池田で1時間ほど時間があるため、スーパーに行って地元の「焼き肉のたれ」などを買い、駅に戻ってきた。歩いたのは往復でも15分程度であるが、酷暑のため日差しが痛いほどであった。
 13時49分発の列車に乗り、一路高知へ。16時06分に到着した。翌日に使用する切符(「徳島・室戸・高知きっぷ」の片道版)を駅窓口で買い、安ホテルに投宿した。
 近くのスーパーで地元の刺身(かつおなど)を山ほど買い、一献してから就寝。

■2021.8.8
 偶然にも日曜日であるため、高知で一番大規模な日曜市を訪問することができる。まだ6時台であったので準備中の店が多かったが、「田舎寿司」を見つけてしまったので買ってしまった。お腹に優しい朝食である。

@肉・魚類無し

 昨日のうちに買っておいた「徳島・室戸・高知きっぷ」は、高知から御免まで(JR四国)、御免から安芸もしくは奈半利まで(土佐くろしお鉄道)、安芸もしくは奈半利から甲浦まで(高知東部交通(バス))、甲浦から阿波海南まで(阿佐海岸鉄道)、阿波海南から徳島まで(JR四国)乗ることができ、JRの部分については特急の自由席にも乗ることができる。
 と言っても、牟岐線は特急の本数自体が少ないし、高知から御免までも短距離であるため、どちらも実用的ではない。しかし、せっかくなので7時00分発の特急に乗ることにしている。

@せっかくですから

 定刻に高知を出発し、御免まではたったの7分である。加速の良いディーゼル車に揺られていると、久々にまた北海道に行って「特急乗り潰し」をやりたくなってきた。
 それにしても、良い天気(暑過ぎ)である。今日の日本列島は2つの台風に挟まれている状態であるが、その中間にある四国近辺は台風を感じさせない快晴であった。
 御免でホームを移動して、やっと第三セクター鉄道の旅の始まりである。

@貫禄の1両編成

 しばらくあれこれと写真を撮っていたが、車内にいるのは私1人だけである。出発直前に高知方面からの各駅停車が接続し(これに乗ることもできたが、意地で先述の特急に乗った次第である)、そこから3人増えたが、それでもたったの4人だけである。「応援」する側としては、もっと乗客がいてほしいとは思うが。
 定刻の7時17分に御免を出発した。「のいち」などで対向列車と行き違ったが、上り線にはそれなりに乗客がいるようで安心であった。
 定刻の7時58分に安芸に到着した。バスへの乗り換えと、鉄印入手がミッションである。

@まずは鉄印から

 今回の旅では、これが最初で最後の鉄印となってしまうが、阿佐海岸鉄道の状況が状況だけに仕様がない。
 さて、この駅の隣には地場産の物品を売る店があり、しかもすでに開店している。土佐くろしお鉄道のグッズも置いてあったが、残念ながら「消える系(食べ物など)」はないようであった。しかし、あめご(あまご)の唐揚げなるものを発見してしまったので、夜用に入手しておいた。
 続いて乗るのは、8時26分発のバスであり、行先は「室戸世界ジオパークセンター」である。

@やって来ました

 少し年代物のバスは、なかなかのスピードで海岸沿いの道を快走し続けた。
 奈半利までは鉄道があるが、そこから先はバス路線のみである。私個人の思い出に照らし合わせると、十数年前に実施した四国お遍路で、折り畳み自転車でこの道を走って以来である。
 9時50分過ぎに到着した室戸岬バス停で下車。短距離で乗降する乗客もちらほらいたが、安芸からここまでずっと乗っていたのは私を含めても2人だけであった。
 まずは散策であるが、日差しが痛いこと。黒焦げになりそうである。

@展望台より

 見所は他にもあるので、バス停3つ分くらい(20分程度)散策しようと思っていたのだが、痛いほどの日差しに負けて断念である。バス停の近くにクーラーの効いた観光待合所があったので、そこで油を売ることにした。
 10時50分にやってきたバスに乗り、10分ほどで終着の室戸世界ジオパークセンターに到着した。
 甲浦行のバスまでは1時間以上あるため、まずはセンターの見学である(無料なのが嬉しい)。見学後は、売店にあった「ジオソフト」の購入である。土佐備長炭+海洋深層水の塩ということで、見た目インパクト大である。

@目を瞑って食べたら分からないかも

 小さい資料館であるため、ソフトクリームを食べた後にさらに2回転ほど展示物を見て時間を潰した。
 12時10分発のバスに乗り、一路甲浦へ。12時49分、甲浦に到着した。
 本来ならば今回の旅のメインイベントになるはずであったDMVであるが、もちろん影も形もない。仕方ないので、周辺インフラの撮影である。
 鉄道自体は高架であり、そこから道路まで降りないといけないため、ループ状の道路が完成していた。線路との接続部分を見てみたかったが、旧駅舎の部分には入れないとのこと(立入禁止)。

@こんな感じ

 周囲をぐるっと歩いてみたが、やはり日差しが痛いので、その後はクーラーが効き過ぎなくらい寒いプレハブの待合室で時間を潰した。
 しばらくしてやって来たのが、13時15分発の代行バスである。DMVに乗れなかったのは残念であるが、これ(代行バス)に乗る経験ができたから、良しとしよう。

@これまた年季もの

 定刻に甲浦を出発。代行バスであるため、どんな遠回りをしてでも「駅前」まで辿り着かなければならない。時折細い路地にも入ったりして、各駅の前に停まっていった。
 13時45分、阿波海南に到着した。これまではJRの終着は1つ南の海部までであったが、海部駅がDMVの発着に向かない高架駅であることなど、あれこれ事情があって、昨年度に阿波海南から海部までが阿佐海岸鉄道に編入されたのである。
 この駅は地上面が良く見えるため、DMVが鉄道からバスに転換する場所も見ることができた。

@ここで「変身」する

 あれこれ撮影し、続いて乗るのは14時08分発の徳島行である。これに乗ると徳島には16時11分に着いてしまうため、当初はどこか(南小松島辺り)で途中下車して鐡ネタを探すことにしていたが、あまりの暑さに断念である。乗車の時点で、最後まで乗り通すことを心に決めた。

@見るからに暑そう

 徳島到着後は、ロープウェー乗り場付近にある安ホテルまで歩いて行き投宿。夕飯は、いつも通りに「地元スーパーで地元の食材(刺身など)」である。

■2021.8.9
 夜中の1時前に、強風の音で目を覚ました。四国を挟んでいた2つの台風の左側が九州に上陸したようである(次は四国の番)。眠気眼でネット検索をすると、JR四国でも計画運休を予定しているようであった。
 作戦会議の時間を得るため、目覚ましを3時半にセットして、二度寝。そして、その時刻に起きてから、作戦会議再開である。
 今日の目的は久々に津山線などに乗ることであったが、これを諦めるのも手である。となれば、「徳島脱出」が必要であるが、夜中の1時半くらいに淡路島ルートが通行止めになっており、午後までは無理そうである。
 そこで、JR四国のウェブサイトをよくよく見ると、快速マリンライナーが運休になるのは9時頃からであり、私が乗る予定のマリンライナー14号(高松発8時22分発)は、なんとギリギリ間に合うのである。もちろん、計画通りにならないこともあり得るが、これは掛けてみる価値があるかもしれない(そもそも、淡路に抜けるのは午前中には無理である)。
 そこまで決めたら、急いで荷物をまとめて徳島駅に向かった(当初予定では6時02分発の列車に乗る予定であったが、何があるかわからないため、5時47分発に乗ることにしたのである)。急ぎ足で駅に向かい、発車ベルが鳴り終わると同時に滑り込んだ(よって写真は無し)。
 沿線風景であるが、台風接近とは思えないような晴れ+凪である。

@虹まで

 だんだん天気も悪くなるのかと思っていたが、高松到着までほぼ晴れ+凪であった。これは期待が高まる。
 定刻の7時50分に高松に到着した(7時48分発の快速マリンライナーが遅延しているかも、という期待は叶わなかったが)。駅で適当に時間を潰し、ホームに行くと、8時05分過ぎに急に雲が流れ出して大雨が降り始めてしまった。「あと1時間、せめて30分」という心の声も空しく。

@そこにマリンライナーが入線

 一応、折り返し8時22分発となるその車両に乗り込んだが、すぐに車内アナウンスがあり、「瀬戸大橋の風速が制限を超えてしまったため運転見合わせ」ということであった。
 ホームに戻り、しばらく粘ったが、8時20分過ぎに運休が正式決定した。8時55分発以降のマリンライナーは計画運休が決まっていたため、これで万事休すである。
 改札を出て、四国脱出の作戦会議である。こういう状況になると高松は意外に「陸の孤島」であり、実は徳島の方が抜け出せる可能性は高い(仮に同じ風であるとしても、瀬戸大橋と明石海峡大橋では規模が違う)。そこで、徳島に戻る戦法を取ることにした。
 それはさておき、腹が減っては戦ができない。ということで、高松ならではの「あなご飯」である。

@実はチューハイも買ってしまった

 宮島の「あなごめし」より穴子の枚数が少ないが、その分良心的な価格設定である(1,000円)。穴子自体も柔らかくて上品な味わいであり、私好みであった。
 酒と穴子を頂きながら、ANAに連絡して復路の特典航空券を払い戻してもらい、ネットで徳島から大阪までのバス(13時45分発)を予約決済した。
 この時点で、まだ午前9時頃である(徳島行の各駅停車は10時02分までない)。改札付近には地元のテレビクルーもニュースの撮影に来ており、インタビューされている旅行者もいた。私もうっかり、女子アナウンサーから「影響はございました?」と聞かれてしまった。影響は大ありだが、地方局とはいえ私の間抜けな姿が映って同僚にでも見つけられたら大変なので、「(影響は)あるんですが、(取材は)いいです」という、奇妙な返事をしてその場を切り抜けた。
 ふと時刻表を見ると、三本松までであれば9時16分発がある。三本松への途中にある志度であればお遍路などで行ったことがあるので、少し観光もできるであろう。ということで、それに飛び乗ることにした。

@「ふりだし」に戻る

 定刻に出発し、9時49分に志度に到着した。小雨は降っているが、散策はできそうである。
 そう思って歩き始めたが、風が意外に強くて、寺まで辿り着くのが大変である。ふと雨宿りしたのが、平賀源内の資料館である。そういえば、過去2〜3回の志度訪問ではここをスルーしていたので、せっかくなので入ってみることにした。
 資料館自体は小さい建物で、「これで500円?」と思ったが、同じ拝観券で入場できる旧居(違う場所にある)の方が、どちらかというと趣があった。冷たいお茶やお菓子も提供してくれ、あれこれと説明もしてもらえた。

@旧居内

 駅に戻り、10時43分発の徳島行に乗り込んだ。台風の関係で対向列車が遅れていたため各駅で何回か待ったが、元から停車時間が長い駅が多かったこともあり、徳島到着は定刻の12時44分であった。
 その足でバス乗り場に向かったが、予約していた13時45分発は運休になっていた。ということで、次の14時15分を別途購入。

@無事に乗れるか

 この時点で、時刻は12時50分過ぎである。ネット上の「つぶやき」を見続けていると、13時頃に「明石大橋・制限解除」の一報が入ってきた。これで無事に四国(徳島)脱出である。
 気持ちに余裕もでき、また雨も降っていなかったので、スーパーに行って「すだち」などを買ってから駅に戻ってきた。
 さて、後は14時15分発のバスで逃げ切るのみである。瀬戸大橋はこの時点でもまだ通行止めが続いており、徳島に戻る作戦は大成功であった(結局、瀬戸大橋線が再開したのは16時過ぎであったとのこと)。

@無事に帰れる

 無事に四国を脱出し、JR大阪駅には16時50分頃に到着。駅近くにあったチケットショップで東京までの新幹線(自由席)の切符を買い、後はひたすら東に向かうだけである。

 紆余曲折があったが、無事に帰ることができただけでも良しとしたい。
 以前であれば、このような無駄(久々にいくつかの路線に乗車するという目的は果たせないし、徳島と高松の往復だけで青春18きっぷを1回分使ってしまうし、高速バスや新幹線代も追加で発生)に対してはあれこれ思うこともあったが、特にブログを書くようになってからは、「アクシデントもネタの1つ」と思えるようになり、気楽になれるようになった気がする。また、こういう状況の時に「どうやって次の手を考えるか」というのも、旅慣れた人間としてはチャレンジングで面白い場面でもある。
 また、時代の推移も痛感できる。昔は、こういうことがあると駅の窓口に大行列であったが、今はスマホやPCで自分で簡単にあれこれ決められてしまう。世の中も変わったものである。

@今晩はこれで一杯(すだち)

 

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