【非鐡の旅A】アイランダーで行く佐渡島

■はじめに
 今回のメインテーマは、久々に「非鐡」であり、BN-2(アイランダー)である。
 BN-2の詳細について記す紙幅はないが、そもそも私自身あまり飛行機に詳しいわけではないので余所様のサイトにお任せしたい。飛行機自体は9人乗りの小さな機体で、かつては離島路線などで活躍していたが、僻地における公共交通機関の衰退が激しくなって以降その数は減り続け、ここ数年は定期航路から外されていた機体でもある。
 私自身これまで2回ほど乗ったことがあり、長崎―上五島と那覇―粟国であるが、いずれも航路自体が廃止されてしまっている。
 この機体が定期航路から消えて久しかったが、今年の7月末、3年前(平成20年)に廃止されていた新潟―佐渡の航路が復活し、そこにBN-2が就航するという。今年の秋口まではキャンペーン価格で幾分か安く乗れるということなので、さっそく予約してみた。
 大型の台風12号の接近によって旅行自体が台無し(キャンセル)になるかと思っていたが、日に日に台風は西に逸れ、甚大な災害をもたらされた地域の方には申し訳ないが、私個人としては幸いにも旅行中ほとんど雨に降られることもなく平穏に旅程を遂行することができた。

@アイランダー(佐渡空港にて)

■2011.9.3 トンネルを抜けるとそこは
 東京からの足は、7時08分発の「とき305」号である。「トクだ値」というインターネット限定の料金(安いが、振替などはいっさい効かない)があったためであるが、今となっては最も古い新幹線車両であろう200系であり、新潟までの道程をそれなりに楽しんだ。関東は台風の影響で薄曇りであり、群馬県では雨が窓枠に叩きつけられていたが、新潟県に入るともう快晴である(旅行とは関係ないが、グリーン車にはヌード写真などで有名な写真家のS山氏がいた)。

@今となっては希少価値

 新潟駅新幹線コンコースでは、旅行客を迎えるイベントが行われており、大きな太鼓の音が響いていた。在来線ホームの方へ行くと、どうやら今日はSL運航日のようである。いつもは「SLばんえつ物語」で使用されているSLと客車が臨時列車として運行され、客車もすべて自由席として解放されているという。
 駅前は、台風によるフェーン現象で、とてつもない蒸し暑さとなっている(晩になってニュースで確認したところ、新潟市内で35℃を越えていたらしい)。

@SL(私の旅行とはまったく関係ありません)

 仕事で厭というほど来たことのある新潟駅であるが、駅前のバスターミナルに行って掲示を確認してみると、空港行のバスが1時間に1本(それも中途半端な出発時間)しかない。変だと思って案内所で聞いてみると、なんとリムジンバスは南口から出るというではないか。猛暑の中を必死に走り、そちらへ向かう。南口も土地勘はあったが、改装工事中でなかなか降り口を発見できず、やっとの思いで見つけたバスに出発間際に飛び乗った。
 当該航路を運航しているのは新日本航空で、新潟空港での窓口は新潟交通である。空港到着後にそこへ向かったが、フライトの案内板があるだけで周囲には誰も人がいない。よくよくパンフレットを見てみると、「25分前に集合してください」とあり、「25分前までに」ではないことに気付く。つまり、集合時間はピンポイントであるということである(そうすることによって、余計な人件費を使わないようにしているのだろう)。台風の影響で若干風が強いため、条件付運行である旨も掲示されている。

@早く行っても誰もいません

 その時刻になると、社用車で乗り付けたスタッフが搭乗者名簿を手にしてやってきた。そこで名前を告げ、その車ですぐ近くにある別のプレハブのような建物に案内される。この建物が当該航路の受付兼搭乗口であり、他の航路が使っているような荷物検査場などは使用しないのである。

@こちらで手続き

 簡単な名簿に記入し、現金で支払いをする。しばらくして渡された搭乗券(座席位置)はいたってお手製感がありシンプルである。いの一番で手続きをしたため、席はパイロット右後方という最良の位置である。その後、これまた超お手製な安全ビデオを見させられる。搭乗予定者は予約者が私を含めて2名のみ、その後駆け込みで2名やってきて、都合4名となった。

@搭乗券?

 出発時刻直前となり、搭乗手続きとなる。荷物検査、といっても機械などないため、係員が手動で機器を使用して体を探るだけであり、バックも少し開ける程度である。それが終わると、搭乗口、といってもプレハブ小屋のドアだが、を超える。
 その後は車で案内されるのかと思っていたが、なんと目の前がすぐに小型機の車庫になっており、そこを抜けると佐渡行のBN-2がスタンバイしているのである。プライベート感たっぷりの手順である。座席の構造上、後ろの席の人から乗るようになっており、私が最後に搭乗することとなった。

@いざ搭乗(車内はかなり暑かった)

 滑走路自体は他の航路と同じであるため、飛行場の敷地をぐるっと回るようにして向かって行く。大型ジェット機ならば滑走路の端まで行くが、もちろんそのような必要はないため、滑走路半ばくらいにいったん停止し、そこでパイロットが「離陸します」の札を客席に向かって掲げ(プロペラの音量が大きいため、口頭では伝えられないのだろう)、滑走路に入るや否やスピードを上げ、あっという間に車輪は浮き上がった。

@新潟市内を眼下に

 右手には阿賀野川が広がり、すぐに機体は佐渡方面に反転して、今度は左手に信濃川河口と新潟市街地が広がる。大型機では味わえない振動であるが、思いのほか揺れはない。
 右手の下には、佐渡からの大型フェリーが浮かんでいるのが見える。そのうちに、佐渡に向かっているジェットフォイルが見え始め、当然のごとくそれを追い抜いて行く。

@ライバル?(向こうはそう思っていない)を追い抜く

 大型フェリーも追い抜き、両津市街地が見えてくると、パイロットが「着陸します」の札を掲げた。しばらくすると滑走路800メートルの小さな佐渡空港が見え、機体はゴムまりのようにバウンドしながら着陸した(若干の横風が影響したであろうか)。
 小さな小さな佐渡空港であるが、定期便復活に伴いこちらにもスタッフがいる。待合室には、日本全国の離島と空港の大きさが地図で解説されていて、いかに佐渡に大型空港が必要かを説いている。

@佐渡空港

 空港からは、乗り合いタクシーで市役所方面へ向かう。最初は路線バスを考えていたのだが、このタクシーの存在を知り、1人300円という値段のためこれに乗ることにしたのである。なかなか良心的な設定だとは思うが、いかんせん機体の小ささ(満席でも9人)では、あまり需要は望めないであろう。

 佐渡自体、私は以前2回ほど来たことがあり、レンタカーでかなり隈なく回っている。よって今回は、路線バスを中心にさらっと観光する予定である。
 まずは金井(タクシーを降りたところ)から炎天下を歩き、黒木御所跡を訪問して、それから妙照寺を参拝する。その足で河原田の市街地へ行き、今度は路線バスで妙宣寺へと向かう。このバス路線は、本来(平日)はルートが違っており、今年の春から秋口まで試験的に土日だけ観光地を迂回するルートにしているのだという。肝心の観光地で降りたのは私だけ(そもそも乗客は3人くらい)だが、こういう試みが成功して路線バスの延命に繋がればいいと思う。

@歩いている途中にあった仏舎利塔

 妙宣寺からは歩いて真野の町に行き、そこからまた路線バスで赤泊へと向かう。車内は私を含めて3人だけであり、走り出してから川茂までは人家すらない峠道を走り続けた。
 夕方5時過ぎに赤泊に着いた。ここでの宿は、二階屋旅館である(宿泊先の固有名をほとんど出さない私がこうして書くのは、かなり良いということである)。以前宿泊した際の海産物づくしが忘れられず今回も予約したのだが、その期待を裏切らない豪華さであった。しかも、季節的に前回はなかったカニも1パイ付である。刺身盛り合わせも、見た目だけ豪華にするのではなく、実質優先で重なり合って盛られており、見た目以上にかなりボリュームがあった。煮つけは、明らかにノドグロであろう。すべてを平らげ、あまりにも苦しくて、食後は部屋で横になってすぐに寝てしまった。

@これで2食付8000円はお値打ち

■2011.9.4 そして、あとは帰るだけ
 早朝、台風はまだゆっくりと進んでいるようで、朝日すら拝むことができた。せっかくなので、街並みの散策をする。赤泊は落ち着いた港町で、旧い建物や酒蔵などがたくさんあるため、両津や相川などで賑やかに過ごすのもいいのだろうが、佐渡に渡る人にはぜひお勧めしたい場所である。

@猫が道路中央で寝られる平和さ

 さて、今日は東京へ戻るだけである。まずは美味しい朝食を頂き、路線バスで小木方面へと向かう。大橋バス停で降り、そこからはプラプラと歩いて行く。小木周辺では、今日開催される佐渡トライアスロンの準備が各所で行われていた。
 その足で矢島・経島と宿根木を観光する。帰りも歩き始めたがさすがに疲れた(昨日を含めると6時間弱も歩いている)ため、幸福地蔵の近くからはバスで小木に戻った。有名な小木蕎麦を2杯ほど平らげ、いつの間にか始まったトライアスロンを地味に見学し、12時50分発の直江津行フェリーに乗った。

@小木そば

 両津と比較すると地味な航路なのだが、船舶は比較的新しいものであり、場違い(といっては佐渡に失礼だが)なほど綺麗な船内であった。
 しかし乗客はほとんどおらず、ドライバー以外のいわゆる「徒歩客」は5人程度であり、私は2?30人は寝られそうなスペースを独り占めして、耐え切れずに買ってしまったビールを飲んで、そしてすぐに疲れのために寝てしまった。

@何をしても誰にも迷惑を掛けない状況

 

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