【非鐡の旅】ボリビア日帰り旅行とクスコへのバス旅行

■はじめに
 ペルー訪問時に、プーノで丸1日の暇ができた。プーノと言えばチチカカ湖にあるウロス島やタキーレ島への日帰りツアーが有名であるが、ネットで調べてみるとどうにも観光色が強いようで、あまり惹かれるような内容でもない。そこでどこかに日帰り旅行ができないものかとあれこれ調べた結果、行先として候補に挙がったのがボリビアのコパカバーナであった。長閑な観光都市のようで、散策にもちょうど良さそうである。
 問題は交通手段であるが、チケットボリビア( http://www.ticketsbolivia.com/ )というのがあり、英語で調べてみるとちゃんとした代理店のようであったので、ネット上で往復のバスの予約決済をしておいた。現地滞在時間は2時間に満たない程度であるが、どうせ私の旅行は知らない土地を適当に歩いたりするだけであるから、これで充分である。

 また、プーノからクスコに戻る際の鉄道が満席で予約できなかったため、こちらもバス旅行(ツアー)を手配してある。鉄道のような豪華な演出(音楽演奏やコース料理)はないが、バスならではの機敏性を活かしていくつかの観光スポットに寄りながらクスコへと移動するものである。日本語のできるネットの代理店を通して予約決済したが、価格は55ドル(約6,600円)であり、約3万5,000円も支払った鉄道と比べるとかなりの安価であった。

@プーノのバスターミナルにて

■2015.9.22
 夜中に、またしても大雨があったようである。それが原因というわけではないが、あまり良く寝られず、少し頭痛もする。「高山病かな」と思ったが、めまいなどの症状はない。それよりも、お腹の調子が良くなく、朝から2回ほどトイレに行って用を足した。
 バスターミナル発6時のバス(プリントアウトした案内には「出発の30分前までに来るように」とある)に乗るために、5時15分頃に宿の人にタクシーを呼んでもらってある(この宿の主人は頼りないところもあるが、早朝にタクシーを呼んでくれたり朝食代わりのセット(ジュースとバナナとクラッカー)を渡してくれたりと、気は利くようである)。
 タクシーでターミナルへ向かうと、プーノ駅の南側にさらに線路の路盤が伸びているのを発見した。今日は15時半過ぎに戻ってくる予定であるので、治安の問題はあるが、できればあの辺りを歩いてみようと思った(この時分では、このように考えることができるくらい元気であったが、この後急変する)。

@プーノ駅近くの路盤跡(翌日撮影したもの)

 ターミナルに到着して約束通りの5ソルを支払い、指定されたバス会社のカウンターへと向かった。印刷済みのバウチャーを渡してみたが、幸い英語のできる人だったので、座席の指定や帰りのバスの時刻指定など滞りなく済ませることができた。ただわかりづらかったのが、「そこへ行って1.50ソルの税金を払って」という点であった。言われた方に行ったがわからず、カウンターに戻ると、今度はわざわざ一緒に2階まで付いて来てくれて「ここだ」と教えてくれた。そういえば、どこかのサイトで入国時の税金について書いてあるものがあったが、それのことのようである。今ではこうして乗車前に支払ってその証明を切符に貼ることによって、国境での支払いをしなくてよくなっているようである。

@切符

 お腹の調子がまた下降気味になったのでトイレに行ったが、かなりの水状態であった。「バスは2時間以上も乗りっぱなしだから、下痢が続くようだと困るな」と思ったが、幸いこの時に出すべきものは出し切ったようで、トイレの心配は杞憂に終わった。
 指定された乗り場でバスを待ったが、6時を過ぎてもなかなか来ない。そのうちに先ほどカウンターにいた人がやって来て、「40分」と言ってきた。せっかくの早起きが半分無駄になってしまうが、南米で40分程度の遅れならさほど問題ではないだろう。
 天気は最高に良く、これならば素晴らしいチチカカ湖が拝めそうである。

@湖沿いにあるバスターミナル

 6時40分頃にバスが来て、一人ずつ切符の確認等をして、結局出発したのは7時少し前であった。
 体調も芳しくないので小一時間ほどウトウトとしてから目を覚ましたが、気付くと明らかに熱と関節痛が増している状態であった。私の場合、この2つがあってその他の風邪の症状(鼻水等)がない場合は、これは確実に「食あたり・水あたり」である。最悪の場合は嘔吐も加わるが、今日の場合は多少の気持ち悪さはあるものの、そこまでの重傷ではないようである。朝の時点でこの状態ならば日帰り旅行を諦めるという選択肢もあったかもしれないが、もう出発してしまったのだから仕様がない。

@でも景色は綺麗なので写真は撮る

 9時頃にバスが止まったので、とりあえず下車した。辺りは何もないが、どうやらここで両替をすることになっているようである。両替自体は国境付近にもあるのだが、ここの方がレートがいいのか、それともバス会社とこの店が共謀しているのかは不明であるが、いずれにしても両替のためだけの停車である。斯く言う私もボリビアーノを持っていないので、手持ちの20ソル札だけを両替した。

@両替商(左側の建物)とバス

 バスに再び乗り、しばらくしてから国境に到着である。まず出国手続きをして、そしてこれは各サイトの旅行記でも書かれていることであるが、その後は歩いて国境を抜けるのである。事前にそれは知っていたのであるが、歩き出してみると、もう3歩だけでしんどくて足が止まりそうになってしまった。高地にいることも関係しているのだろうが、何より関節痛と高熱が先ほどよりも増している状態であり、とても歩ける状況ではないのである。

@でも写真撮影だけは…

 体温計などは持ち歩いていないが、経験則からすると熱が38.5度くらい、下手すると39度弱はありそうである。しかし歩かなければならないので、なんとか丘を越えてボリビア側へと足を運ばせた。天気は最高に良く、本来ならば清々しい散歩日和なのであるが、今日に限ってはほぼ拷問状態である。

@左下にあるカタカナの「トイレ」は各旅行記で有名なもの

 入国手続きを済ませてからバスへ戻り、やっと一息付いた。
 バスが出発すると、今度は途中で人が乗り込んできてボリビア側の税金の支払いを求められた。2ボリビア―ノということであったが、先ほど両替した40ボリビア―ノが手元にあるだけである。なので20ボリビア―ノ札を出すと、「もっと細かいものは」と聞かれてしまい、「ない」と答えると「だったらソルでも良い」ということで、結局ソルで支払うこととなった。
 時差の関係で1時間進み、11時頃にコパカバーナに到着した。とりあえず必死になって歩き、坂を下ってチチカカ湖畔の所まで来たが、もう力尽きて歩けない。巨大な錨の下で、15分ほど休んだ。

@散歩日和なのに…

 休憩後、せめて中心街の観光スポットまで行こうと思って歩き始めたが、上り坂ということもあって50メートル毎に道端に座って休まなければならない体たらくであった。なんとか中央部にある公園まで戻ってきたので、そこでまた休憩を取る。
 休んでいるうちに、どこからともなく音楽隊の音が聞こえてきた。なんだか意味はわからないが、パレードのようなものをやっているようである。これ幸い、これならば座ったまま観光ができるということで、それを眺めたりして時間を潰した。

@仮装パレード?

 その後もぐったりとしてから、最後の力を振り絞って大聖堂まで行ってみた(距離としては200メートルくらいしかないが)。そしてその後は、結局中央部にあった公園に戻ってそこで小一時間ほど休み続けた。
 バスの出発時間の30分くらい前に乗り場に行ってみると、係員は往路と同じ人であった。私のことを覚えていたようで、「もうプーノに帰るのか」と驚いたように笑っていた。

@こういう裏路地をガンガン歩く予定だったのですが

 13時30分発のバスに乗り、右手にチチカカ湖を眺めながら、復路もほぼ修行状態である。ただし高熱のピークは昼ごろだったようで、若干ではあるが治まりつつあるようであった(それでもしんどいが)。
 ペルー時間(マイナス1時間)に戻り、15時30分頃にプーノのバスターミナルに到着した。朝の予定では、ここから歩いて駅方面まで行き、途中からは廃線跡巡りをする気持ちでいたが、とてもそういう状態ではない。タクシーで速攻帰るだけである。
 交渉が面倒だなと思ったが、値段を聞いてみると「6ソル」という常識的価格だったので、即決してそのタクシーで宿へと向かった。
 プーノ駅の写真すら撮っていない(昨晩は夜暗くなってからの到着だった)ので、宿に荷物を置いてから駅(宿から徒歩10分もない)まで行くことも考えたが、それももうしんどい。宿の人に「今日はもう出かけないから」と言って、風邪薬(胃腸薬を持って来るのを忘れたので)を飲んで夕方早々から寝入ってしまった。

@プーノ駅のゲート(帰りのタクシーから撮影)

■2015.9.23
 12時間以上横になり、早朝には風邪薬も切らしてしまったので頭痛薬も飲んだりして、なんとか少しはマシになってきた。歩くのもしんどいことに変わりないが、熱はほとんど下がり、関節痛もかなり引いている。
 6時半過ぎに、予定通りツアー会社の迎えの車がやって来た。それに乗り込んだが、どうやらツアーバスはバスターミナルではないところから出発するようである。民家の中に紛れて広めの駐車場があり、そこにツアー用バスが停まっていた。

@今日はこれで移動

 満員の乗客(ほとんどは西洋人)を乗せたバスは、7時02分に出発した。しばらくはプーノ市内を走るが、一昨晩に走った鉄道の路盤が道路のすぐ横に沿い続けている。その後しばらくすると田舎風景になるが、鉄道は相変わらず右か左に沿い続けていった。景色は綺麗であるが、体調がすぐれないのでしばらくウトウトとする。
 9時を過ぎて、最初の観光スポットに到着した。バスの出発後に各停車地での観光についてのアナウンスがガイドから各個人にあったのだが、私は最初は「行かない」と言って断っていた。しかし、とりあえず最初のものだけ行ってみることにした。

@こんな建物(この写真には写っていない博物館へ行く)

 行くには行ってみたが、やはり歩き回るのはかなりしんどい。次以降の観光スポットはすべてパスして、車内に留まることとした。
 荒涼とした光景が続くが、時折線路と交差するところがある。そういう場面があれば写真に収めるようにしているが、もちろんそんな写真を撮っているのは私だけである。

@他の人は興味なし

 次の停車地は11時過ぎで、例の最高地点である。元気であれば駅まで行ってみるのであるが、車内で大人しくしていた(他の観光客はすべて降りて、屋台のような土産店をあれこれ見て回っていたようである)。
 時刻的には、プーノ行の鉄道そろそろすれ違ってもいい頃である。よってバスの再出発後は、それ見逃さないようにうたた寝は控えることにした。
 12時頃にレストランに到着し、ここでツアーに付いてくる無料の昼食となる。「いらない」と断ったが、「運転手も降りるので車内が暑くなる」ということで、とりあえず下車することにした。
 料理はバイキング方式で多種類あり、お肉の香りを嗅ぐとそれなりに惹かれてしまうが、いかんせん昨日の朝から断食状態である(口に入れられたのはジュースと水だけ)。とても固形物を口に入れられそうにはないので、庭で飼われているアルパカなどを見て時間を潰した。

@こいつはちょっと凶暴(観光客に頭突きを繰り返して恐れられていた)

 しばらくするうちに遠くから警笛の音が聞こえてきたので慌てて庭の外側へ出てみると、なんとここでプーノ行の列車と対面することになった。残念ながら昼食は口にすることができなかったが、バスから降りていたおかげで、走っているアンデアン・エクスプローラーを目にすることができたことになる。

@こういうのは私以外の人も撮影する

 その後も座り続けていたが、2人いるバスガイドのうちの1人(男性の方)が「どうしたのか」と聞いてきたので、体調不良で食べられないことを伝えると、「コカ茶だけでも飲んだらどうか。少しだけでも」ということを、半分日本語混じりで言ってきた。日本人の扱いも慣れているのであろうか、「チョットダケマッテイテ」と言い、その後お茶を私のところまで持ってきてくれた。そういえば今日までティーパックのコカ茶ばかり飲んでおり、ちゃんとした茶葉で飲むのは初めてである。
 庭には、民族衣装を着た女の子が動物と一緒に撮影に応えている。南米の観光地でこういう写真を撮ると、すぐ横からババアが現れて「お金」と言われるのであるが、どうやらこの子は違うようである(レストランの客寄せであろうか)。とりあえず、記念で1枚。

@この白い奴は優しい(頭突きなどはしない)

 昼食時間が終わってからバスは再び出発し、草原の中を走り続けた。鉄道の路盤は、相も変わらず右に左にと寄り添い続けている。
 その後もバスは2か所ほどで観光用の停車をしたが、私は参加はせずにバスの近場のベンチで待つことにした(車内は窮屈なので)。しかし、徐々にではあるが体調は回復してきているようである。

@立ち寄った観光地

 クスコ到着は17時10分頃であった。市街地の少し外れ(ワンチャック駅から1キロほど南側)であるが、この辺りは到着日に空港から歩いてきたので土地勘はある。かなり体力も回復してきたし、タクシーとの交渉も面倒なので、歩いて安宿へと向かった。
 宿の女主人は私のことを当然の如く覚えており、「今日は違う部屋よ」と案内してくれた。時刻は18時前であり、本来なら夕食に繰り出すところであるが、今日ばかりは体が受け付けてくれない。しかし回復傾向にあるので、ほぼ48時間ぶりに固形物(出発時に朝食代わりにもらったバナナ)を口にして、明日に備えてそのまま就寝した。

 

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