【大人鐡51】JR東日本「カシオペア」編

■はじめに
 北海道の札幌まで運行されていた寝台特急「カシオペア」であるが、乗る機会がないまま2016年に通常運行を終えてしまった。というのも、2人以上での乗車が原則であったためであり(「ひとり利用券」というのもあったが、発売は限定的であった)、乗る機会がないまま、引退となってしまったのである。
 その後は旅行商品としての運行が始まったが、値段はかなり高くなってしまった。2人であれば10万円台もあるが、1人で乗るとなると20万円くらいになってしまう。海外旅行ならまだしも、国内(しかも1泊だけ)に20万も散財する気になれない。
 しかし、そんなことを言っているとカシオペア自体が無くなってしまうかもしれない。ということで、無理して乗ってみることにした。
 最安を探すと、青森までの乗車だけで19万7,000円というのがあったが、夕方に上野で乗車して翌朝に青森に到着するだけで20万弱も払うのは、いくら特製弁当があると言ってもやはり気が引ける。そこで、青森到着後に「大畑線の保存車両見学」「リゾートあすなろ乗車」「東京までの復路新幹線」が付いて22万5,000円のツアーを発見し、それにすることにした。正式名称は【「カシオペア紀行 青森行き」「リゾートあすなろ」乗車と貴重な動態保存された大畑線車両を見学「大畑線キハ85動態保存会」】と、かなり長い。
 今思えば、「現役時代に2人分払って乗ってしまえば良かった」とも思うが(20万もあれば、札幌までの片道+食堂車でフレンチも可能であったはず)、後の祭りである。しかし、乗ると決まれば、もう後は楽しむだけである。

@上野駅にて

■2023.7.15
 出発は15時台であるため、ゆっくりと家を出発。定期券が使える浅草で下車して、上野まで歩いて向かった。
 指定された場所へ向かい、受付を済ませて資料等一式を受け取った。

@ツアーにありがちな名札形式

 この時点でまだ14時45分くらいである。出発ホームへ入ることができるのが15時、列車が入線してくるのが15時18分ということで、しばしエキナカで買い物である(夜用食材の追加)。
 15時を過ぎて13番線に入れるようになったので、エスカレーターで降りて行った(ツアー客以外は13番線ホームに入れないようになっている)。ホームの端で待つことしばし、カシオペアが入線してきた。

@バックで入線

 一番後ろは一番豪華なスイート(の展望室タイプ)であるが、このような入線作業用に、係員が操作をするパネルのようなものがあるようである。入線後は、そこに蓋がされて部屋のカーテンが閉められた。
 時間はたっぷりあるので、一番先頭に向かって撮影である。通常、この部分は人が殺到して殺伐とする場所であるが、ツアー客しか入れないように制限されているため、平和そのものである。

@先頭も撮影

 そもそも論として、このように「機関車に牽引される客車形式」の優等列車自体、かなり数が少なくなっている絶滅危惧種である。
 ドアが開き、資機材搬入が終わってから乗客も入ることができるようになった。私の部屋は11号車で、残念ながら車両端にある平屋ではなかったが、2階席であった。1階席よりは、良い眺望が期待できる。

@ツイン

 しかもすぐ隣は展望室のある12号車であり、移動がかなり楽である。
 豪華寝台であるため、各部屋にトイレや洗面が付いている。ホテルと比べるとお世辞にも広いとは言えないが、列車と思えばかなりのスペースを占めている。デビュー当時との違いは、電源用コンセントも用意されている点である。

@水回りも紹介

 机の上には、しおり、オリジナルケーキ、ペットボトルの水、翌朝用の飲み物券が置いてある。写真には見えないが使い捨てスリッパもあり、またタオルと寝巻(持ち帰り不可)も用意されている。

@机上の一式

 なお受付でもらった資料一式であるが、詳細な時刻表も含まれている。ダイニングカーでの夕食や朝食の時間を確保するため(私のツアーではいずれも選択できないが)、長時間停車が数か所設定されている(最長は東福島の1時間30分)。もとより、本来は札幌まで行く寝台列車であり、青森までの距離で余裕のある時間を確保しようとすると、そうなってしまうのであろう。

@時刻表あり

 15時50分、駅員等に見送られて上野を出発した。反対側のホームには、撮影目的の人がたくさん連なってこちらを見送っていた。
 各駅停車で何度も乗った東北本線(宇都宮線)であるが、今日は雰囲気がかなり異なっている。沿線の撮影隊も多い。
 それにしても、かなりの鈍足である。定期運行時は特急用のスジ(時刻)があったのであろうが、今は数多ある各駅停車の合間を走るからであろうか。
 16時50分、最初のディナーの案内があり(私は縁なし。それどころかパブタイムすら選択できないプラン)、その後、各部屋に乗車記念カードが配付された。

@このような図柄

 その後はツアーに付いて来るスペシャル弁当が配布され、続いて車内販売がやって来た。すべて個室であるが、車内販売が来ると車内の警告灯にランプが付いて音が鳴る仕様となっている。私もビールを買う必要があるが、この時点でまだ17時30分であり、呑み始めるにはまだ早い。ということで、スルーである。

@このような仕組み

 「呑み始めるのは19時くらいからでいいかな」と思って時刻表を見ると、白河で19時05分から40分も停車するではないか。停まっている時間に呑んでも面白くないので、少し早めに始めてしまおうと思い、18時30分過ぎに車内販売を探して後ろの車両の方に歩いて行った。しかし、残念ながら出会うことができず(準備中であった模様)。

@休憩スペース(ミニロビー)あり(2か所)

 そのまま自室に戻ったが、18時45分頃に「売店の営業を開始しました」とのアナウンスが(案内書によると19時開始のはずであった)。売店はすぐ隣の12号車(展望室のある号車)にあるため、すぐにそちらに向かってビールを手に入れた。
 ということで、一献の開始である。

@豪華三段重

 詳細はお品書きに書いてあるが、牛タンやハタハタやじゅんさいや米沢牛など、東北の有名食材をあれこれと詰め込んだものとなっている。もちろん、ビール1本だけで酒が足りるはずもなく、それが終わったら持ち込んでいる安ワインの開始である。
 それにしても、青春18きっぷで乗るこの区間はまさに修行のような感じであるが、今日は優雅そのものである。

@お品書き

 20時前には大量の酒も弁当も上野で買った追加食材もすべてなくなってしまい、もう寝る体制である。
 ツインであるため、部屋の奥側にある部分を使えばそのまま寝られるが、せっかくなので窓と並行に寝たい(昔の解放A寝台のように)。ということで、ベッドメイクである。

@完成

 歪んだ窓から夜空などを見つつ、就寝。

■2023.7.16
 薄明るくなった4時過ぎに起床。天気予報通り窓には小さな雨粒が付いているが、激しくは降っていないようである(秋田地方は災害クラスの雨のようであるが、青森は大丈夫のようであった)。
 なお今日(7月16日)は、カシオペアの誕生日である。今日からは、25歳とのこと。

@昨日の売店にて

 朝起きれば洗面であるが、洗面台はトイレの中にある。手前に引っ張ると便器の上に洗面台が出てくる形になっており、鏡の奥には歯ブラシや石鹸などが置いてある。私のプランではシャワー室すら使えなかったので、ここで使える温水は重宝されるものであった。

@温水も出ます

 身支度を終えた後は朝食までやることもないので、展望室へ行って外を見るだけである。さすがに朝の5時台では誰もいなくて、先頭部分も座り放題であった。ガラス部分が多いため、いつもとは違った景色を見ることができる。

@こんな感じで

 飲み物券(コーヒーもしくは紅茶)は朝6時から車内販売で使えるとのことであるが、部屋で待っていたのでは朝食が先に来てしまうので(先にコーヒーを飲みたい)、後ろの方の車両まで歩いて行ってコーヒーをもらってきて自室で頂いた。
 6時45分頃、朝食が配布された。軽食ということであったが、予想以上にちゃんとした弁当であった。

@今朝も色々あり

 朝食後は、まだ展望室へ戻った(私は食べるのが速いため、誰もいなくて貸切であった)。ひたすら、外を見ながらあれこれと撮影をするだけである。

@誰もいない瞬間

 8時32分、青森に到着した。到着直前に少し雨粒が落ちてきたが、それ以外は基本的に曇りであったので、車窓はきちんと楽しむことができたと思う。
 古い演歌ではないが、「上野発の夜行列車」で青森に来たのは久々である(「あけぼの」を愛用していた頃以来か)。もう、これが最後であろう。

@反対側のホームから撮影

 ここで、各ツアーの内容に分かれて別行動となる(今日は100人ほどの乗客がいて、5つのコースに分かれるとのこと)。青森駅から貸切バスに乗るツアーもあるが、私の場合は9時に改札に再集合して9時24分の列車に乗ることとなる。大雨の影響で秋田方面に行くツアーは予定変更(「リゾートしらかみ」の運休)があって大変なようであるが、青森県側は予定通りである。
 しばし時間を潰してから再集合して(総勢14人)、件の列車に乗るべくホームへと向かった。すぐ隣にはカシオペアが停まったままであり、反対側に機関車が付いている状態であった。これから、回送されるのであろう。

@私は右側に乗る

 定刻に青森を出発し、野辺地へと向かう。野辺地自体、先ほど乗っていたカシオペアでも通っていた駅であり、ツアーならではの「行ったり戻ったり」である。
 野辺地でJR大湊線に乗り換え、続いては下北へと向かった。残念な曇り模様であるが、陸奥横浜に至る草原と海はいつ見ても壮大である。

@曇りでも壮大

 敢えて席には座らず先頭部分で立ち続け、景色を見続けた。
 11時07分に下北に到着。ここからは、貸切バスでの移動となる。まずは昼食会場ということで、下北名産センターへと向かった。大間が近いということで、昼食はマグロ丼である。

@美味しく頂く

 食後はあれこれと自分用のおみやげを買い、そしてバスで大畑駅へと向かった。鉄道自体はかなり前に廃線となっているが、路線バスのターミナルとして駅舎はまだ利用されている。
 同駅には、13時少し前に到着。200円を支払って一日会員になれば(今回はツアー代に含まれている)、動態保存されている車両に「乗り放題」である。運行日は春から秋の第三日曜日だけであり、年に6回だけである。

@切符

 動態保存されている車両の次の運転は13時30分ということで、しばし待っていると、車庫から1両編成の列車が出てきた。ということで、これに乗ることになる。背後には、国鉄時代の車掌車も係留されている。

@塗装は奇麗

 車両の床は木の部分が多いし、網棚はまさに網(ロープ)である。縦型のエンジンを震わせながら、敷地内を行ったり来たりと運転した。
 なお行先票は、運転の度に違うものに入れ替えられた。本来の「大畑」以外にも、「音威子府」や「さかり」などもある。私が一番気になったのは、「瀬棚」行であった。

@本物には乗ることができませんでした(中身はキハ85)

 14時00分発はスルーしてスーパーに行って買い物をして(青森に来たら必ず買う焼肉のタレや特売のニンニクなどを購入)、駅に戻って14時30分発に再乗車した。
 なお今回、特別に車内販売をしているという。それは瓶の飲料であり、各座席にある国鉄時代のセンヌキで開けるという趣旨である。ということで、200円で瓶コーラを購入である。

@これは試さないと

 動態保存の乗車を終えてから、バスに乗って大湊駅へ。最後に「リゾートあすなろ」に乗って、ツアーの目的は終了である。
 この列車は来月引退となるが、車両自体は新しいハイブリッド車両である。つまり、引退といっても廃車になるわけではなく、新たな観光列車に生まれ変わるのである。
 つい先月も「さんりくトレイン」として乗ったばかりでありが、引退前に駆け込みで2回も乗ることになった。

@1か月ぶりです

 この列車で八戸まで行き、その後は新幹線で帰るだけである。

 

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