【大人鐡49】JR北海道「花たび そうや」編

■はじめに
 食事付き観光列車に乗るこのシリーズであるが、今回は初めてのJR北海道である。北海道の観光列車については、道南いさりび鉄道の「ながまれ海峡号」を紹介したことがあるが、観光列車不毛の地でもある北海道で、JRがやっと重い腰を上げて企画された列車である。運行区間は旭川から稚内までの宗谷本線で、土曜日が稚内行、日曜日が旭川行である。
 しかしこの「花たび そうや」号であるが、運行されるまでの道程は多難であった。本来は2020年の春に運行を開始する予定であったが、コロナにより運休(これは致し方ない)。翌2021年も計画されたが、緊急事態宣言もあり、運行前日になって運休が発表された(これに関してはJR北海道の完全な手落ち。遠方の人などはこの列車に乗るために前日に飛行機などで北海道入りしているわけで、そういう人にとっては大散財である。せめて、3日くらい前に発表すべきである)。そして2022年、やっと初めて運行されたのである。この年は私も指定券を申し込んでみたが、撃沈であった。
 激戦を承知で今年も指定券を申し込むことにしたが、仮に指定券発売日(運行の1か月前)に切符を取れたとして、その時点で航空券を買ったのでは高いチケットしかない。ということで、2か月以上前に往路新千歳・復路旭川の格安航空券を手配しておいた。指定券が取れなければ、別テーマで旅行をすればいい。
 指定券発売日は仕事があったので、「えきねっと」の事前申し込みを利用。このシステムの場合、10時を過ぎて数分すると「取れました」もしくは「残念でした」メールが届くが、この日に関しては10分経っても20分経っても梨のつぶてであった。試しにスマホで空席照会をしてみると、当然売り切れである。「別のテーマで旅行かな」と思い始めた10時29分、なんと「取れました」メールが来たではないか。通路側の席であるが、この観光列車は4両編成のうち1両は完全なフリースペースであり、また各車両のロングシート部分もフリーなので、その辺りに座ればよい。
 さて、残りの問題は弁当である。昨年度は「風と大地の恵み」という特製弁当があり、JR公式からもリンクされていたのであるが、どうやら今年はそれがないようである。「食事付きでないと大人鐡にならないなぁ」と思い、あれこれ探すと、事前申し込みをするとこの列車用に天塩中川駅で駅弁を手配してくれるサイトを発見。「スタミナステーキ丼」(1,500円)を事前購入し、これで準備万端である。

@塩狩駅にて

■2023.5.27
 始発の列車で成田空港へ向かい、LCCで新千歳空港へ。まずは今日明日と使う切符の手配である。購入するのは3日間有効の「きた北海道フリーパス」(14,150円)で、特急の自由席も乗り放題である。切符の前には「Peach」「Air Do」「ANA」のいずれかが付いているが、これは復路の機内(ANAは売店)で1,000円分の商品がもらえるためである。今回は復路についてはAir Doを使うため、そちらの切符を購入した。
 一番安い行程としては、稚内までは長距離バスを利用し、復路については稚内から旭川までの乗車券を購入する方法であるが、そうしたところでこの切符より1,000円くらいしか安くならない。であれば、土曜日は特急に乗り、日曜日の旭川到着後もこの切符を利用して観光をした方が良い。

@指定券も一緒に撮影

 快速エアポートで札幌へ。ロングシートが多くなってきたこの快速であるが、今日は久々にクロスシート車両であった。
 札幌では中途半端に40分ほど時間があったので、駅付近を適当にプラプラ(詳細後述)。11時00分発の特急ライラックに乗るべく、ホームへと向かった。
 しばらくすると列車が入線してきたが、よく考えたらここ最近の北海道旅行は青春18きっぷなどでの旅行が多く、ライラックに乗るのは久々の気がする。

@今日は特急で

 定刻に札幌を出発。左手には、完全引退となったキハ183系の車両が係留されていて、すでに外壁なども崩れ気味であった。
 所々で菜の花なども満開であった石狩平野を快走し、12時25分に旭川に到着した。稚内行の特急「サロベツ」号の出発まで1時間以上あるため、スーパーであれこれ購入。
 それにしても、旭川駅内には「花たび そうや」の宣伝(ポスターなどを含む)がたくさんある。宣伝しなくても、季節を通して4往復しかなくて指定券は即完売であるが、これは売り込みというよりイメージ戦略的なものであろうか。

@あれこれあり

 13時過ぎ、列車の出発時刻まではまだ時間があるが、ホームへと入って行った(余所様のブログで「13時08分くらいに入線してきた」という記述があったため)。
 まだ人もまばらなホームで待っていると、やはり13時09分頃にサロベツ号が入線してきた。本来の4両編成が停まる位置より先に停車したのでよくよく見てみると、増結1号車が増えた5両編成であった。増結号車はラウンジ車両(自由席扱い)であり、複数人で酒盛りをするなら良さそうだが、今日は稚内まで通しで乗るため、私は普通座席の自由席(4号車)に陣取っている。

@これに乗る

 まだ出発前であるが、スーパー等で買った一式で一献の開始である(今日は終着まで乗るため、どれだけ酔って寝ても問題ない)。北海道と言えば鶏の半身揚げなので、これは旭川駅すぐ横のスーパーで調達。右側にあるサンドイッチは、札幌駅で時間があってプラプラしている際に、自販機近くに行列を発見。調べてみると札幌のサンドイッチ屋で、評判も良さそうである。ということで、トンカツとエビマヨを買ってみた。

@今日のセット(もちろん酒も買ってある)

 定刻の13時35分、旭川を出発した(乗車率は2割未満)。終着の稚内まで見所はあれこれあるが、紹介は明日に持ち越しである。
 すっかり酔っぱらってからひと眠り。小一時間のつもりが2時間弱も寝てしまい、もう天塩中川すら過ぎていた。その後は曇り空のサロベツ原野を眺めつつ、稚内には17時25分に到着した。安民宿に投宿。
 荷物を置いてからスーパーに向かい、いつも通りの安酒と安総菜(値引きシール付き)を籠に入れていると、地物のウニを発見した。この大人鐡シリーズでは時折「大人グルメ」を実施しているが、久々にそれを決行することにした。

@酒も日本酒に変更

■2023.5.28
 今日は朝から雨となる予報であったが、天気予報が変わり、雨は昼過ぎ以降となるようである。ということで、まずは早朝から稚内散策である。
 神社付近から遊歩道を歩き(普通に鹿がいるので吃驚)、稚内公園へと向かった。ここに来るのは指折り37年ぶりである。新しい碑もいくつかあるが、氷雪の門や樺太犬関係は昔のままである。37年前は、映画「南極物語」に出演したタロ・ジロ(本物かその子どもかはうろ覚え)が公園内の檻の中にいた。

@頂上から見下ろす

 麓に降りてからは、北防波堤ドームへ。ここは、樺太が日本であった頃に連絡船が発着していた場所であり、当然ここまで鉄道が通じていたことになる。よってドーム付近には、SLの車輪が展示されている。

@連絡船乗り場跡

 いったん部屋に戻って一休みして、8時前に稚内駅へと向かった。まずは、駅舎内にあるコンビニで酒の購入である。呑むのは弁当を入手できる10時台であり、今買ってしまっては温くなってしまうが、安民宿の冷蔵庫に氷があったのでそれを頂いてきている。
 今日は指定券を入手しているが、フリースペースである3号車に乗るべく、改札口の行列に並んだ。行先表示にある通り、この観光列車は「急行」として運行されるのも珍しい点である。

@久々に「急行」に乗る

 お見送りをする関係者(観光協会など)やゆるキャラなど、30人以上がまず最初にホームに入って行き、続いて乗客がホームへと移動した。3号車を確保すべく、後ろから6個目の乗降口でスタンバイ。しばらくすると、4両編成の「花たび そうや」が入線してきた。

@これは1号車

 車内に入り、無事に3号車のボックス席(海が見える側)を確保。出発まで時間があるため、側面にある行先票などをあれこれと撮影した。ちなみに私の本来の席は2号車であるが、通路側であり、さらに進行方向とは反対であり、そして山側という「三重苦」の席であった。
 なお、指定席(1・2・4号車のボックス部分)と3号車の違いは、「テーブルがあるかないか」くらいである。

@指定席には机あり

 定刻の8時35分、大人数にお見送りをされて稚内を出発した。大変賑やかであるが、昨今はこのような写真をネット上に掲載しようとすると、画像処理をしないといけないのが面倒である。ということで、今日の各駅での写真はゆるキャラ中心である。

@稚内でも

 各車両の様子を見てみると、各ボックスに1〜2名という状況である。指定券の数(120枚)の割には、若干乗客の数が少ない気もする。
 南稚内を出発してしばらくするとサロベツ原野となり、この路線の景色で白眉な部分の一つとなる。今日はさらに、スロー走行+一時停止もある。晴れていれば右手に雄大な利尻富士が見えるが、今日は残念ながら全く見えなかった。

@無念

 稚内公園に関する記述で映画「南極物語」について触れたが、しばらくして通過する抜海(ばっかい)駅もこの映画に出てくる。いつもは閑散としている駅であるが、今日はこの列車の撮影目当てで数人の撮影者がホームにいた。
 しばらくして、車内では乗車記念証が配布された。2種類である。

@こんな感じ

 車内ではあれこれ観光アナウンスが行われているが、キハ40系自体がボロい(走行音が大きい)のと、窓を開けている人がいるので、説明する人によってはあまり良く聞き取れないのが残念である。
 9時20分、豊富に停車した。この駅の近くには昔から旧車が置いてあるのだが、来るたびにボロくなっていき、もう朽ち果てそうである。

@倒壊寸前

 なおこんなボロ車両の写真を撮っているのは私だけで、他の人は小さな観光案内所に大挙詰めかけている。何かと思って私も入ってみると、記念入場券の販売であった。私は収集癖がないためスルーしたが、観光スタンプだけは押して行った。
 同駅を出発し、続いての停車は幌延である。ここでもスタンプを押しに行った。
 同駅を出発後はアナウンスの人が変わり、今度は良く聞こえる声である。廃駅となった上幌延駅に関する説明があり、そして同駅跡を通過。車内では、その駅のポストカードが配布された。

@駅(というか貨車)

 雄信内で対向列車と行き違い、同駅を出発してしばらくすると右手に天塩川が寄り添ってくるため、そこでスロー走行となった。
 10時36分、天塩中川に到着した。豊富や幌延では何回も降りたことがあるが、ここでは初下車である。途中下車してみたいと思っていたのだが、1回降りてしまうと次の列車がなかなか来ないのがこの路線なのである。
 今日はマルシェが行われていて、大人数が待ち構えていてくれた。謎のゆるキャラもいるが、明らかに中川の「中」であろう。

@謎キャラ

 予約しておいたステーキ弁当を受け取って車内にそれを置いてから、しばし駅付近を散策した。あれこれ出店があるが、ソーセージは弁当の中に入っているし、鉄道グッズは興味がない(収集癖がないため)。しかし名産品のところを見てみると、行者にんにくを使った焼き肉のたれ(中川町産)があるではないか。これは、即買いである。

@旨そう

 車内に戻り、動き出す前から弁当で一献の開始である(ここでやっと、稚内で買っておいたビールが登場)。ステーキ+ソーセージ+ポテトが中心であり、すべて茶色である。「ブログ映え」とか「可愛い」とかの評価は得られそうにないが、「美味しければ文句ないだろう」という心意気は大いに感じる。

@茶色ですが何か問題でも

 肉を齧っているうちに同駅を出発。しばらくまた、天塩川を中心とした長閑な景色の連続である。
 車内ではあれこれ観光アナウンスが続いている。知っている話もあれば、もちろん知らない話もある。もう数えきれないくらい乗っているこの路線であるが、対岸に「北海道命名之碑」があるとは知らなかった。数人ではあるが、こちらに向かって手を振っている。

@当初は「北加伊道」であった

 11時32分に到着した音威子府では、木の丸太のようなゆるキャラがお出迎え。しかしここでの停車は3分しかないので、写真撮影をしただけで終了である。黒い蕎麦で有名であった駅であるが、駅蕎麦がなくなり、そして蕎麦の製造自体もなくなってしまっている。
 同駅を出発するとアルコールの影響もあって30分弱ウトウトとしてしまい、目を覚ますと美深到着直前であった。同駅には、12時03分に到着。ここでは、ゆるキャラから飴をもらった。

@2体いた

 10分の停車時間があるため跨線橋を渡って駅舎に行ってみると、売店で丸々太ったアスパラの束がたったの150円で売っているではないか。これまた、即買いである(他の乗客はスイーツなどを中心に買っているが、私は系統がちょっと違う)。
 12時13分に美深を出発。ずっと曇り空で頑張っていたが、ついに大雨が降ってきてしまった。
 12時34分、名寄に到着。もちろんここでもお出迎えがある。そしてもちろん、ゆるキャラも含まれている。

@ここはこんな感じで

 12時43分に同駅を出発し、左手にSLを先頭にした「キマロキ編成」を見遣りながら進んで行った。
 続いての停車は士別で、13時00分に到着した。お出迎えはもちろんのこと、演奏隊による管楽器の大合奏がホーム上で行われていた。唯一点残念なのが、ここでさらに大雨になってしまった点である(しかも横殴りの風も)。
 大合奏の写真は掲載し難いので、やはりここでもゆるキャラである。

@こんな奴ら

 ここからは、ほぼ各駅のように停車していく。士別の次は剣淵であるが、ホームが短いためドアが開くのは2両だけである。ここでも雨が降っていたため、狭い駅舎内は乗客とゆるキャラでぎゅうぎゅう詰め状態であった。
 続いての停車駅は和寒(わっさむ)で、13時32分に到着した(オリジナルのポケットティッシュをもらった)。先ほどまでの大雨はいつの間にか上がっており、この付近は道路も濡れていない。どうやら雨は局地的に降っているようである。
 同駅を出発すると、剣淵町のふるさと納税の資料が配布された。

@ちなみに和寒駅にいたのはこれ

 同駅を13時42分に出発し、続いての停車は塩狩である(13時52分到着)。昨年は、この駅でこの観光列車を見送ったが、今日は見送られる側である。ホーム上でポストカードをもらい、特急と行き違ってから出発した。
 続いての停車は比布(ぴっぷ)である。お洒落なカフェが併設されており、イチゴが有名なようでそれの販売も行われている。ということで、ゆるキャラも当然のようにイチゴである。

@ゆるキャラ5連発

 長いこと乗車して来たが、この駅が最後の停車駅である。同駅を出発後は、終着の旭川に向かうだけである。
 車内では飴が配布され、そして最後に「全区間走破証」が配布された。これをもらうためには、稚内から旭川までの指定券を見せる必要がある。

@名前は自分で書くタイプ

 14時45分に旭川に到着し、ゆるキャラ尽くしであった観光列車の旅は終了した。
 さて今日は旭川空港を19時30分に出発する便であるため、まだ時間の余裕がある。ということで、深川まで行って「石狩沼田までの短小路線」となってしまった留萌本線に乗ることにしている。
 15時00分発の特急「カムイ」号で深川に移動。しばし時間があったので駅近くのスーパーに行ったりしてから駅に戻り、16時08分の石狩沼田行に乗り込んだ。

@当然1両編成

 定刻に深川を出発。車内には11人の乗客がいるが、いかにもな荷物を持っている旅行客が5人いるので、地元客は半分くらいである。
 終着の石狩沼田には、16時25分に到着した。留萌方面は今年の春に廃止となったため、当然行き止まりとなっている。ここまでは生き残ったが、残り3年弱の命である。
 折り返しの出発は16時40分であるが、車内にいる5人はすべて旅行客であった。「廃線もやむなし」というところであろうか。

@「花たび そうや」の行先票

 

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