【大人鐡48】JR四国「藍よしのがわトロッコ」・小田急電鉄「VSEかながわの地酒」編

■はじめに
 食事付き観光列車に乗るこのシリーズであるが、今回は2週にわたって2つの列車に乗車する。まず1つ目は、JR四国の「藍よしのがわトロッコ(さとめぐみの風)」である。昨年9月の三連休に乗る予定で指定券も手配していたが、台風により運休。特典航空券(往路高知・復路高松)については、取り急ぎ今年3月の適当な週末に変更し、4月以降の席が解放されてから、4月2週目の土日に変更した。列車自体は普通のトロッコ列車であるが、特製弁当(徳島発の場合は「阿波尾鶏トロッコ駅弁」(1,300円))が買えるので、それを別途電話注文しておいた。乗車券以外に必要な経費は、指定券(530円)のみである。
 2つ目は、小田急電鉄が運行する臨時列車であり、正式名称は「神奈川県酒造組合×小田急まなたび ロマンスカーVSEに乗ってかながわの地酒を楽しもう!」と非常に長い。2022年3月に、デビューから20年も満たないのに諸般の事情で引退となったロマンスカーVSE(企画列車として運行されるのも今年末まで)を使い、神奈川県の地酒3種類と弁当が楽しめるというものである。大人鐡の趣旨に沿うので申し込もうとしたら、なんと15,800円(+1人参加の追加料金2,000円)と、かなり強気の値段設定である。観光列車に「相場」があるわけではないが、第三セクター等であれば7,000円くらい、JRでも1万円ちょっとくらいの内容と思われる。しばし悩んだが、例えば九州で運行されている観光列車に乗ろうとするとそこへ往復するだけで3万円くらいするので、それがないことを考えれば経費的には大きくはならない。ということで、VSEに乗れる数少ない機会でもあるため、申し込みを済ませた。

@貞光駅にて

■2023.4.8
 往路が高知空港なのは、前回の旅程は三連休であり四国一周を予定していたからであり、今回は土日だけであるため、今日はひたすら徳島に向かわなければならない。青春18きっぷの残りがあるが、18時台に徳島に着くためには12時台に高知を出発しなければならない(阿波池田乗り換えで、所要時間6時間弱)。試しにバスを調べてみると、なんとたったの2時間50分である(16時まで高知にいられる。JRの惨敗である)。圧倒的にバス有利であるが、高知付近でやることもないし、価格的にはバスの方が高い(4,000円)ので、のんびりと各駅停車で移動することにしている。
 8時台の便で羽田から高知に飛び、連絡バスで高知駅へ向かった。

@路面電車と並走

 高知駅前に到着。12時44分発の琴平行まで時間があるため、伊野へいくことにしている。本来ならば10時29分発の列車に乗る予定であったが、飛行機が25分遅れ、空港連絡バスも7分遅れてしまったため、高知駅到着時点で10時32分。次の列車は11時07分発であり、しばし時間がある。
 そこで、高知駅には格安駅弁があったのを思い出して、売店にいってそれを購入してきて早めの昼食である。

@ワンコイン(500円)

 待合コーナーで弁当を平らげ、駅付近を適当に散策して例の巨大な龍馬像などを見てからホームに行き、11時07分発の列車で伊野へ移動した。
 伊野と言えば和紙で有名なようであるが、私の世代であれば伊野商の甲子園での活躍などもあろう。11時28分に駅に到着してからは、街中を散策して神社を参拝して御朱印をもらったり、旧家が点在する街中を散策したりした。

@椙本(すぎもと)神社

 散策を終え、12時21分の列車に乗るべく駅へと戻った。
 先ほど和紙と甲子園のことを書いたが(「それしかない」的なニュアンスで)、駅構内の展示で、実は有名アニメのモデル地であったことが分かった。散策中に観光客はほぼ皆無であったが、もしかしたら映画公開後は、聖地巡礼的に訪れた人も多いのかもしれない。

@知りませんでした

 伊野から各駅停車に乗り、高知へ。乗り継ぎ時間が2分しかないのに3分遅れてしまったが、当然のように接続を取り、琴平行は定刻から2分遅れの12時46分に出発した。
 13時12分、土佐山田に到着。ここまでは3両編成であったが、琴平まで行くのは先頭の1両だけとなり、後ろの2両は切り離されて高知行となる。ここで30分以上も停車することもあり、実質の運行形態は分断されているようである。

@切り離し作業前

 13時43分、土佐山田を出発した。1両編成になってしまったが、どのみち乗客は10名程度しかいないから問題はない。先頭部分のロングシートに居座り、前方を眺め続けた。
 土佐山田以降は急に山間の景色となり、次の駅はスイッチバックで有名な新改である。土讃線には2つのスイッチバック駅があり、坪尻駅の方は度々訪問しているが、新改駅はかなり久々である。山中にある秘境駅であるが、普通の切符を利用している地元客が1人降りて行ったのには驚いた。

@右が本線、左が駅へ

 土讃線の土佐山田から阿波池田までは、見所が多い区間である。川の上の橋に駅がある土佐北川や、大歩危や小歩危付近の渓谷などである。しかし、今回の旅程とは直接関係ないため、省略である。
(大歩危で15分ほど停車時間があったため、駅前の「歩危マート」で怪しげなお茶と油揚げとこごみを購入。油揚げは夕飯用に、こごみは日曜に帰ってから天ぷらにする予定である→こごみは肉厚で、たったの130円なのに個人的には過去最高の品質であった)

@敢えてこの写真を掲載

 15時47分、阿波池田に到着。私はここで下車するが、この列車自体、阿波池田で1時間弱も停車するため、ここでも運行形態は分かれている。よって、すべての乗客が下車した。
 さて、この後は16時09分発の各駅停車で徳島に向かうだけである。明日トロッコで乗る区間であり、できれば避けたい行程であったが、短縮行程になったのだから仕様がない。ということで、この区間の紹介は明日に持ち越しである。
 代わりに、阿波池田に係留されていた珍しい車両を紹介。

@JR西日本キヤ141系(ドクターWEST)

 件の列車で徳島へ移動し、すぐに乗り換えて阿波富田で下車して、安ホテルに投宿した。

■2023.4.9
 トロッコ列車の出発は10時32分と余裕があるため、青春18きっぷを活用して朝はプチ旅行である。散歩がてらにホテルから徳島駅まで20分ほど歩き、7時30分発の鳴門行に乗車。金比羅前で下車し、200段以上の階段を上って金刀比羅神社へ行き(駅名と微妙に違うのがミソ)、その足で立道駅まで旧街道を歩いて行った。
 徳島に戻り、駅地下や駅前ビルで車内用の食材を買い込み10時20分頃にホームに向かうと、もうすでに列車は入線していた。

@2両編成

 1両目がトロッコ車両で、2両目が普通の座席である(動力車も兼ねている)。出発してから石井駅までは2両目に乗り、石井でトロッコ車両に乗り換える仕様となっている。徳島からトロッコ車両でも良さそうだが、それだと説明も聞き辛いし、切符なども飛ばされそうなので、この方式が落ち着くのであろう。

@こちらがトロッコ車両の1号車(右にあるキャラは出発前に取り外された)

 車内の乗車率は85%くらいである。予定変更による恩恵であるが、昨年9月の際は団体予約が入っていたため指定券発売日当日にも拘わらず通路側(しかも残り2席)しか空いていなかったが、今回は進行方向右側の窓側を余裕で押さえられている点であろう。私の横は数少ない空席であり、その点もラッキーである。
 出発前であるが、パンフレットと乗車記念が配付された。

@裏面にスタンプを押せる

 定刻に徳島を出発。左手のホーム上では駅員等が、右手の線路の奥では保線要員とかが団扇などを振ってお見送りをしてくれている。
 石井までは全員2号車(普通席)にいるため、ここで車内販売メニューの配付・確認や、切符の検札、その他の説明が行われた。
 石井に到着すると、トロッコ車両へ民族大移動である。

@トロッコ車両の座席とは(出発前に撮影)

 同駅出発後は、トロッコ車内から景色を眺めた。もう何度も乗っている路線であるし、正直なところ地味な景色であるが、改めて車内アナウンスによりあれこれ説明を聞くと、新たに発見するものもあった(川島城が見えることなど、実は知らなかった)。
 今日は4月の割に全国的に寒気に覆われており、トロッコ車内はかなり寒い。「もう寒うてかなわんわ」と言いながら、2号車に戻る年配の客もいるくらいである。私のボックスも本来はあと1人いるのだが、最初から最後までずっと独り占め出来た(寒さのおかげ?)。
 寒さに耐えつつ、11時半くらいから、駅付近で仕入れておいた「徳島らしいもの」で一杯やり始めた。

@ザ・徳島

 一升瓶などを複数持ち込んでいるグループ客は大盛り上がりであるが(酒の勢いか)、だんだん寒くなってきたため、トロッコ車内は本来の乗客数の半分くらいまで減ってしまった(まだ吉野川も見える前である)。ホットワインが欲しいような冷たい風であるが、プチ我慢大会のような状況で呑み続けた。
 11時40分頃、やっと吉野川が右手に見えてきた。

@壮大

 沿線では手を振ってくれる人もいて、とある場所では、恒例の団体さんが全員で黄色い法被を着て手を振ってくれていた(列車は減速して対応)。
 12時07分に貞光に到着(表紙写真)。ここで弁当の積み込みなどがあるため、しばし停車する。駅前に出たりして、しばし動いて体を温めた。天気自体は良く、風さえなければポカポカ陽気である。
 同駅停車時に、予約しておいた弁当を受け取った。動き出す前から、それを頂くことにする。

@特製駅弁

 徳島県では駅弁が根絶してしまったが、この弁当によりそれが復活したことになる。小さいカップに入っているドレッシング風のタレがネット上では賛否色々あるようであったが、私にとっては非常に合うものであった(舐めるように頂いた)。
 12時19分に貞光を出発。12時半過ぎには弁当も酒もすべて平らげたが、寒風は相変わらずである。しかし、2号車(普通席)に戻るのも癪に障る。そこでトロッコの先頭部分に行ってみると、そこはもう最適の場所(風はないし前方も見渡せる)であったので、最後の方はずっとそこに居座り続けた。

@かぶり付き

 12時59分、昨日も下車した阿波池田に到着して、観光列車の旅は終了である。
 復路の飛行機は高松空港からなので、13時35分の多度津行に乗り、そこから高松に乗り換えて移動して、後はひたすら帰るだけである。

■2023.4.15
 受付は9時45分からということなので、その時間に着くように新宿へ向かった。指定された旅行センターへ行き、資料一式と、切符のような参加証(自動改札は通れない)をもらい、簡単な説明を受けて手続きは終了である。ホームに入れるのは11時10分からということなので、しばし雨の新宿の町を彷徨い、車内用の追加食材を買ったりして時間を潰した。

@一式

 指定された時間に有人改札を通り、ホームへと向かった。通常のロマンスカーが出発するホームを使用するため、この時点では11時20分発の箱根湯本行の真紅のロマンスカー(GSE)が停まっている。それが定刻に出発し、ホーム上の電光掲示が「団体専用」となり、11時27分頃になってVSEが入線してきた。

@VSE

 しばし待ち、11時30分過ぎになってやっとドアが開いたので、中へと入っていった。車内はまだ新品のようであり、昨年に定期運用から引退してしまったのが信じられないくらいである。座席は外が見えやすくなるように少しだけ角度が付いており、外側に傾いている(調べてみると5度とのこと)。

@まだ新しい

 11時40分、新宿を出発した。大雨であるが、小田急沿線は景色を楽しむ路線ではないので、問題はない。
 それよりは、ルートが気になる。今日は11時台に新宿を出発して15時台に秦野に着くことだけはわかっているが、それ以外は不明である(ミステリートレインに乗っているような感じである)。新宿から秦野に直行したのでは1時間程度であるため、どこかに寄るはずである。
 なお、今日は日本酒3本以外に弁当が付くとのことであるが、その内容やボリュームもわからないため、出発後は事前に購入しておいたビールとケンタッキーで一献を始めた(最初の1杯はビールという思いもあり)。しばらくすると、パンフレット、プラスチックのコップの順に配布され、そしてお待ちかねの日本酒が配られた。

@3種類×300ml

 車内では、Miss SAKE神奈川や各酒蔵の担当者による挨拶や説明が行われている。準備が整ったところで、乾杯の音頭が取られた。
 車内での物品配布は続いており、チェーサー用のペットボトルの水2本、今回のツアー用のお猪口、ウェットティッシュが配布された。町田通過の時点でもう12時10分を過ぎているが、まだ弁当は配布されていない。ケンタッキーを多めに買っておいたのは、正解であった(ツマミとして大活躍)。

@特製お猪口

 相模大野を出発すると、列車は左手に進んでいった。「藤沢方面に行くのか」と思ったが、列車は車両基地に入っていった。ここでしばし、時間調整となるようである。
 弁当はまだだが、日本酒はもう2本目に突入である。コンビニでビールを買った際にコロッケも衝動買いしてあったので、ツマミはそれである。
 しばらくして、やっと弁当が配布された。これで、ツマミも充実である。

@タケノコごはん

 かなり停車してから、列車は本線に戻るためにバックをして、相模大野駅構内へと入っていった。ここでまた、しばらく停車である。
 今回のツアーでは、列車の前後方にある展望室部分は、ラウンジとして一般開放されている。列車が前後に動いている=運転手の出入りがあるはずなので、展望室部分へ行ってみると、まさに運転室へつながる階段の出し入れが行われているところであった。

@運転室専用階段

 相模大野を12時46分に出発。しばし走り、相武台前でもしばし停車をした。車内では、Miss SAKE神奈川が各車両を回ってきたので、私も一緒に記念撮影をしてもらった。
 弁当も平らげ、日本酒は2本ちょっとだけでギブアップし、その後はしばしウトウトとした。目を覚ますと、小田原であった。
 小田原からは、秦野を目指して逆走する。私は出発時点で後ろ側の号車にいたので、展望室に行って残り少ないVSEの乗車を楽しむことにした。

@残念な雨ですが

 15時07分、秦野に無事に到着して、小田急の日本酒の旅は終了である。

 

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