【大人鐡47】伊賀鉄道「利き酒とれいん」編

■はじめに
 食事付き観光列車に乗るこのシリーズであるが、今回は伊賀鉄道の「利き酒とれいん」である。今回が2回目の運行ということで、コロナもあって約3年半ぶりとのこと。おつまみ(食事)と8種類の日本酒(お猪口で提供)、それに鉄道の一日券が付いて3,000円だけである。そして、私の場合は集合場所である上野市駅までも伊賀鉄道を使うため、事前に一日券を購入する。そのような場合、一日券を除いた2,260円が参加費となる。あれこれ条件が違うので一概には言えないが、この手の「食事付き観光列車」の中ではかなり格安の部類であろう(明知鉄道の「おばあちゃんのお弁当列車」(一日券込みで2,500円)と良い勝負である)。1便と2便があり、遅い方の2便を電話で予約しておいた。1週間くらい前に案内書が郵送されてきて、事前準備は完了である。
 さて、後はどうやって上野市まで移動するかである。時期的に最安の手段は青春18きっぷであるが、受付締切である13時50分までに上野市に着く時刻を検索したところ、品川発5時10分の始発になってしまい、これはもうお手上げである。金曜の夜に品川に泊まる方法もあるが、ホテル代で数千円も散財したのでは本末転倒である(それならば、土曜の移動の一部分に新幹線を挟めばよい)。
 しかし、川崎周辺なら安宿がありそうである。ということで、川崎駅に近いカプセルホテルを手配した。旅行支援が適用されて2,560円になり、クーポンも2,000円分もらえる。それを使って仕事終わりの金曜の夜に川崎で一杯呑んで、翌朝に各駅停車だけで移動することにした。
 大人鐡シリーズとしては、6列車連続で日本酒関係である。

@上野市駅にて

■2023.3.24
 仕事を終えてから、JRで川崎へ。カプセルホテルに投宿した。
 神奈川県のクーポンの場合、使えるのは飲食店や土産物店が中心であり、コンビニやスーパーでは使用できない。幸か不幸かカプセルホテルでは内部での飲食ができないため、近くのチェーン店でクーポンを使うことにした。
 唐揚げやポテトでハイボールを数杯呑み、締めに定食を頂けば、ほぼ2千円弱に収めることができた。

@まずは唐揚げで一杯

■2023.3.25
 久々のカプセルホテル、他人のイビキが気になって熟睡はできなかったが、列車乗車中はいくらでも居眠りできるため問題はない。
 当然のように早起きをして川崎駅に向かい、5時19分発の小田原行に乗り込んだ。小田原と熱海と浜松と豊橋で乗り換え、名古屋へ。ここまではプチ修行である。

@名古屋めしで燃料補給

 名古屋からは、関西本線に乗り換える。桑名まではつい先日乗りに来たばかりであるが、その先は久々である。
 12時09分に亀山に到着し、ここで電化区間が終わるため、ディーゼルカーに乗り換えとなる。2両編成の電車にはかなりの乗客がいたため乗り換える列車で席が確保できるかどうか不安であったが、こちらの編成も2両編成であったので無事確保することができた。

@ここから先はかなり久々に乗る

 12時14分、亀山を出発した。関西本線の非電化区間は長閑な田舎風景の中を走るため、景色が良い区間が多い。
 12時58分、伊賀上野で下車した。ここで伊賀鉄道に乗り換えとなる。この駅で一日券を買うことはできないが(JRの窓口しかないため)、スマホ切符で手配済みである。

@こんな切符

 乗り換え時間があるため、しばし何もない駅周辺を散策してから、JRと共通の改札を通って伊賀鉄道の乗り場へと向かった。待ち構えていたのは、ピンク色の「忍者列車」である。元は東急で使用されていた車両であり、伊賀鉄道用に改造されたものである。

@松本零士先生を偲ぶ

 13時21分に伊賀上野を出発し、上野市には13時28分に到着した。駅舎を出てすぐの場所にあった臨時受付で手続きを済ませて2,260円を支払い、その後はまだ出発まで時間があったため、駅前広場で臨時開催されていたイベントを見たり、商店街を散策したりして時間を潰した。
 忍者の町であるから、駅構内以外にも忍者だらけである。バスの塗装も忍者だらけであった。

@本来の駅名よりも大きい

 他にすることもないので、14時過ぎにはホームに入って行った。引込線にはゆるキャラ「フクニン」カラーの列車が係留されているが、あれが「利き酒とれいん」である(先頭にはその表示もされているし、内部はセッティング作業も終えた状態になっている)。

@今日の観光列車

 14時08分発の通常ダイヤの伊賀神戸行(表紙写真)が出発した後、引込線から上記の列車がいったん本線上に入り、そこからバックで入線してきた。
 ドアが開いたので、早速乗り込んだ。長テーブルが設置されており、すでに弁当などが置かれている。2両編成で参加者は36人だけである(この2便は満席とのこと)。

@こんな状態

 受付時にもらった紙にある座席番号に従い、自席に陣取った。席上には、お猪口以外にお茶と紙コップも置かれている。紙コップは、チェーサーとして置いてある水などを飲むためのものである。
 なお出発後は、長テーブルを手前に引っ張って中央に通路ができるようにした。これは、このシリーズの45回目に紹介した養老鉄道の「枡酒列車」と同じ手法である。

@自席の様子

 14時19分、上野市を出発した。
 最初にお猪口に注がれたのは、純米大吟醸「半蔵」の花ラベルである。全員に注がれたところで、乾杯の音頭が取られた。

@こういうラベル

 さて、酒もそろったので、弁当の蓋を開けて頂くこととする。肉やエビもあるが、野菜が中心となっている。ネット上で事前に拾っておいたこの列車のパンフレットによると、地元の野菜ソムリエの方が作っているとのこと。内容も多種多様であるが、予想以上にボリュームもある。

@食べ応えあり

 車内では、伊賀鉄道社員による沿線アナウンスと、酒蔵の人による酒の説明が行われている。
 しばらくして、先ほど上野市までの移動で乗ったピンクの忍者列車と行き違った。最近の車両点検に伴い、ライトがLEDになったとのことである。
 市部付近では、桜並木のことが紹介された。今日は生憎の曇り模様であるが、日本酒と桜の相性は良い。

@とりあえず撮影

 今日の利き酒は、往路で4種類、復路で4種類出てくるという(足りない場合は、お猪口1杯200円で追加可能)。3つ目に出てきた「春のるみ子」は、アルコール度数が18度もあるというものであった。「日本酒の漫画」で真っ先に思い浮かぶあの作品を書いた漫画家による意匠である。

@こういうラベルその2

 2人だけで営まれている小さな酒蔵の酒が4つ目に出てきて、往路は終了である。伊賀神戸駅で1分だけの停車で、すぐに折り返した。
 それぞれの酒はお猪口に注がれるが、お世辞にも路盤が良い状態とは言えないので、注ぐ人は大変そうである。時折、「あっ!」という声と共にこぼれることもあった。

@停車中が一番注ぎやすい

 上述した通り、復路も4種類の利き酒を行った(うち2種類はにごり酒)。どれも印象的であったが、この地域っぽいラベルだけを紹介したい。

@伊賀ですから

 全種類の利き酒が終わり、最後に各酒蔵のパンフレット類と酒粕が配付されて(この値段で、まさかお土産まで付いて来るとは思わなかった)、今回の観光列車は終了である(上野市着15時29分)。

@いい香りの酒粕

 15時48分の列車で伊賀上野に戻り、JRを乗り継いで名古屋まで移動してきた(名古屋着18時40分)。今日は、ここで安ホテルに泊まることにしている。駅から15分ほど歩いてチェックインし、もらった1,000円分のクーポンは近場のコンビニで酒やツマミへと変身した。
 さて、この大人鐡シリーズでは、時折「大人グルメ」を実施している。名古屋と言えば「ひつまぶし」なども有名であるが、今日は巨大なエビフライを頂くことにしている。ということで、名古屋駅にある有名店でテイクアウトをした品が、今日の締めである。

@エビフライ弁当(予想以上に巨大なエビ)

■2023.3.26
 今日は、青春18きっぷを使ってひたすら戻るだけである。東海道本線は元から選択肢にないが、飯田線経由は時間が掛かりすぎるため、今日は中央本線経由で戻り、途中の木曽福島で観光をすることにしている。
 ホテルをチェックアウトして名古屋駅に向かい、6時13分発の多治見行に乗り込んだ。多治見で松本行に乗り換え。多治見までは正直地味な沿線風景であるが、ここからは山深くなっていく。

@雨模様

 山村風景や川などを眺めているうちに、8時54分に到着した木曽福島で下車した。ここで、しばし散策である。
 「あと1枚羽織るもの」を持ってこなかったことを後悔するくらい寒い中(しかも結構な雨の中)を、小一時間歩き続けた。外国人を含めて観光客もいるが、以前のような賑わいではない。インバウンドを含めて観光客は戻りつつあるようであるが、地方はまだまだ「これから」のようである。

@今日は天気も悪いし

 さて、後は帰るだけであるが、首都圏まではここから5時間以上かかる。ずっと外を見ている必要もないので、呑んだくれてその影響で寝て帰るのも一案である。
 ということで、木曽福島駅に近いスーパーで総菜や安酒を購入。締めの一品として、長野県では有名な「牛乳パン」も別途パン屋で購入した。松本市などでは買ったことがあるが、木曽福島のこの店(一説では牛乳パンの元祖とも言われている)では、初購入である。

@コーヒー味も

 

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