【大人鐡28】三陸鉄道「プレミアムランチ列車」・JR西日本「うみやまむすび」編

■はじめに
 今回は、2つの観光列車を対象にしている。会社も地域も全く違うが、2週連続で乗車するため、まとめて旅行記にすることにした。
 まず1つ目は、三陸鉄道の「プレミアムランチ列車」である。ここ数年春と秋の週末を中心に実施されているものであり、海鮮を中心としたランチを申し込むことができる。今秋のシリーズでは、A「宮古名物!二刀流瓶ドン(磯汁つき)」・B「海の幸満載!特製握り三鉄寿司(あら汁つき)」・C「具だくさん!いちご煮弁当(磯汁つき)」とあり、私はAを注文した(瓶ドン=牛乳瓶に海鮮が入っており、それをご飯の上にかけて食べるもの)。値段は2,500円であり、Bと同額である(Cは1,500円)。別途、乗車券(フリー切符でも可)と指定券(300円)が必要。
 なお春のシリーズでは、瓶ドンは1,500円であった。ではなぜ値上がりしたのかというと、「二刀流」になったからである(瓶が2本に増えた)。岩手と言えばMLBの大谷選手の故郷であり、今年は二刀流になるのは当然の流れであろうか。
 列車としては、宮古を出発して南下し、車内では地元ガイドが案内、途中でホタテの殻剥き体験があり、終点の盛まで運行される。
 2つ目は、JR西日本の「うみやまむすび」である。この列車は運行パターンが不定期であり、しかも料理が付くようなツアーの数が少ないのだが、偶然にも11月に実施されるツアーを発見した。劇団とのコラボであり、車内では特製弁当「但馬の美味いもん三昧」も提供されるという。演劇に関する造詣は全くないが、参加してみることにした。
 ツアーの行程は、まず特急「きのさき」で京都から城崎温泉まで行き、そこから「うみやまむすび」に乗り換えとなる。香住、鎧、餘部の各駅でミニ演劇を鑑賞してから城崎温泉に戻り、そして復路も同様に特急「きのさき」で京都に戻る内容となっている。ツアー代は諸々込みで7,000円也。出発地が京都であるため、そこへの移動費と宿泊費も必要である。ということで、JR東海ツアーズの「ずらし旅」で新幹線往復とホテルを押さえておいた。

@宮古駅にて

■2021.10.30
 土曜日は仕事があったため、夜に新花巻まで移動して安宿に宿泊することに。新花巻駅周辺にはコンビニが1軒しかないことを事前に把握していたため、夕食の総菜は仕事の移動途中の岡山駅のスーパーで買ってある。それで一献し、就寝。

■2021.10.31
 6時半過ぎにチェックアウトをして、新花巻駅へと向かった。それにしても、新幹線駅なのに周囲に何もない。

@長閑

 今日はまずJRで釜石まで移動して、それから三陸鉄道で北上して宮古へ。宮古から「プレミアムランチ列車」で盛まで南下し、そこからJRのBRT(バス)などに乗って柳津・前谷地・小牛田経由で仙台に行くことにしている。
 あれこれ考え、JR部分は「いわてホリデーパス」と柳津以降の普通乗車券、三陸鉄道については「宮古−釜石」の部分フリー乗車券と、釜石以南の普通乗車券を組み合わせることにしている。

@JR部分(事前に買っておいた)

 新幹線駅構内にある野球選手関連の展示物(以前にも見たことはあるが、一部リニューアルされていた。大谷選手の活躍は、当然強調してあった)を見てから、釜石線の駅へと向かった。
 しばらくして6時53分発の釜石行が入線してきた。意外にも3両編成である。

@少し驚き

 同駅を定刻に出発。紅葉も若干始まりかけており、奇麗な景色も見ることができたが、旅行記の本筋ではないため省略。
 巨大なオメガループも過ぎ、8時57分に釜石に到着した。
 さて、ここでたったの6分で三陸鉄道に乗り換えなければならない。車両自体は目の前にいるが、私は「いったんJRの改札を出る」「三陸鉄道の券売機で乗車券を購入」しなければならない。いそいそと買い、9時にはホームに戻ってきた。別のホームには本日運行の「SL銀河」が煙を上げているが、あれを撮りに行く時間はない。

@これを買うのが精一杯

 9時03分に釜石を出発。プレミアムランチ列車の電話予約時に「山側しかもう空いていないのですが」「全然かまわないですよ」というやり取りがあったので、海側に陣取った(ただし、三陸鉄道から海が見えるのはほんの一部分だけである)。
 10時25分に宮古に到着。三陸鉄道の窓口に行き、ランチ料金と指定席券を支払った。座席指定券は硬券である。

@一式

 プレミアムランチ列車の改札開始は10時55分頃ということなので、それまでは適当に駅周辺を散策したり、隣接する「三鉄ショップ」で酒やツマミを購入したりして時間を潰した。
 時刻となり、ホームへ。1両編成のお座敷列車がすでに入線していた(表紙写真)。
 手指消毒をしてから、早速車内へ。お座敷は4人席であるが、コロナ対策で2人ずつ座るようになっている。天井には、多くの大漁旗が掲げられている。

@こんな車内

 私のテーブルに相席の人はいなくて、1人だけである。車内には12テーブルあるが、そのうち10テーブルが団体さん(19人+ツアーガイド1人)、1テーブルが私、残り1テーブルが関係者席で、満席のようである。
 それにしても、乗客の平均年齢の高いこと。ツアーガイドさんは若いが、それ以外はかなりの高齢者で、乗客という意味では私が最年少である。

@食事がセット済みの席

 定刻の11時05分に、宮古を出発した。車掌のアナウンスがあったが、瓶ドンの瓶は再利用するため持ち帰り不可とのこと。残念であるが、持ち帰ったところで使い道はないので(置いておくくらい)、構わないのであるが。
 車内では、地元ガイドによる案内が始まった。ではさっそく瓶ドンに、とする前に、まずは駅で買いそろえた地元の酒と地元のツマミで一献の開始である。

@地元づくし

 瓶ドンであるが、元々はウニを保存するために牛乳瓶が使われていたことに由来するものである(今の若い人に「牛乳瓶」と言ってもピンと来ないかもしれないが)。そして、その独特のスタイルに目をつけ、海鮮一式を瓶の中に入れ、食べる人が瓶から海鮮を出して丼に乗せてから食べるように開発されたのが、宮古名物の瓶ドンである。
 今回は二刀流であるため2つあるが、右側が牛乳瓶サイズ、左側は瓶ドンのために特別に作られた小さなものである。

@二刀流

 車内では、地元ガイドによる案内が続けられていた。私は酒を呑み続けていたが、瓶ドンの中身も当然ツマミになるような代物であるため、まずは丼を完成させてみることにした。
 パンフレットによれば、「あわび・いくら・宮古産トラウトサーモン・タコ他」となっているが、白身の魚やメカブも入っていた。

@美しさは合格点?

 陸中山田で地元ガイドが下車して、代わって「ホタテの殻剥き」体験をやってくれる地元民が乗車して来た。11時45分に同駅を出発。
 殻剥き体験は車両の前方にて3人ずつくらいで行われるが、自分では剥かないで「剥いてもらってそれを食べる」ことも可能であるという(超高齢の人向けの対応であろうか)。ツアーガイドさんが各テーブルを周って自分でやるかどうか確認しているが、私のところも確認していった(まぁ、団体さん以外の乗客は私だけであるので、まとめて確認するのが簡単なのであろう)。

@みなさん体験中

 私も実際にやってみたが、ヘラをうまい具合に入れられず、残念ながら貝柱が横に半分になってしまった(味に違いは出ないから、よしとしよう)。
 自席へ持って帰り、美味しく頂いた。
(写真では貝柱だけだが、この後に「ヒモ」の部分も頂いた)

@残念な出来

 12時24分に鵜住居(うのすまい)に到着し、殻剥き体験を実施してくれた賑やかなおばさんたちが下車していった。行き違い列車があるため、ここで8分ほど停車となる。
 同駅を出発して13分ほど走り、12時45分に釜石に到着。10分停車してから出発した。
 釜石以降は、ハイカラガイドによる沿線の案内である。

@紙芝居もあり

 海が奇麗にみえる「恋し浜」で5分停車し、終着の盛には13時55分に到着した。
 団体さんは駅前で待ち構えていたバスに乗りどこかへ。私は14時16分発のBRTに乗って気仙沼へと向かった。気仙沼到着は、定刻より少し早い15時41分。乗り換え時間が少しあったため、隣駅である「不動の沢」まで歩き(途中にあった地場産の店に寄るため)、同駅発16時21分のBRTで前谷地に向かった。

@BRT乗り継ぎ

 以前は柳津で鉄道に乗り換えが必須であり、しかも中途半端に長い接続時間があったのであるが、今は前谷地まで直通する便も存在するようになって便利になった。しかし、残念ながらその区間の乗客は私だけであったが。
 前谷地から石巻線で小牛田に向かい、東北本線に乗り換えて仙台到着は20時04分であった。
 まだ関東まで帰ることが可能な時間帯であるが、これから新幹線に乗って東京に向かったのでは、自宅到着は23時頃になってしまう。ということで、今日は仙台泊りである。
 というのも、コロナ禍でビジネスホテルのダンピング状態が続いており(3,000円しない)、また月曜朝の新幹線であれば「えきねっと」で50%割引が取りやすいため、却って安くなるからである。

@ごちそうさまでした

■2021.11.5
 金曜日は少し早退して(そうすることで、京都着が遅くならず、また「ずらし旅」対象の新幹線に乗れるため安くなる)、京都へと移動した。パック旅行に付いてくるホテルに投宿。

■2021.11.6
 6時半頃にチェックアウトして、まずは京都駅へ(7時までに待合場所へ行くように指示があったため)。旅行会社の前で最終手続きをして、コンビニで車内用の食材を揃えてからホームへと向かった。
 今日まず乗るのは、7時32分発の特急「きのさき」である。この辺りを旅行するときはいつも各駅停車なので、恐らくこれに乗るのは初めてかもしれない。

@今日は特急で

 定刻に京都を出発。保津峡を抜けて、山陰本線をひたすら走り続けた。
 さて、「うみやまむすび」に乗り換える城崎温泉まで、特にすることもない。ということで、福知山を過ぎたころから、京都駅で買った酒(と昨日夜に買っておいた食材)で一献である。京都の地ビールと伏見の吟醸酒、九条ねぎと、京都づくしである。

@京都セット

 9時52分、城崎温泉に到着した。「うみやまむすび」の出発時刻は10時09分であるが、すぐにホームを移動しなければならない。というのも、ここ城崎温泉駅のホームからすでにミニ演劇が始まるからである。

@その前に車両を撮影

 スイッチ(ここの場合は旗)を乗客が上げると、川の土手で待機していた劇団員が演技を始め、駅員(本物)やガイド(役の劇団員)も交えて、短いエピソードが展開された。乗客も笑顔である。
 その後、車内へと案内された。私の席は写真左側後方のカウンター席で、海が見える側である。コロナで間引いているので、3人席を占領できた。

@こんな車内

 車内では、出発前から観光ガイドがあれこれとアナウンスをしている。それによると、今日はまさにカニ漁の解禁日であるという。
 出発直前、土手で演技をしていた人が「切符を1枚だけ取れた」という設定で飛び乗ってきた。なかなか凝った設定である。
 定刻の10時09分に城崎温泉を出発した。しばらくは地味な景色であるが、竹野を過ぎると、海のお出ましである。

@日本海

 10時35分、香住に到着した。ここでも演劇が披露される。
 と言っても、乗客がスイッチを押さないと何も始まらない。この駅で用意されていたのは
「日本酒」と「カニ」の2か所で、それぞれについて指示された内容を乗客が行うと、劇団員が現れてきて短いエピソードを展開する、という流れである。

@「スイッチ」の例

 それらを見てから車内に戻ると、机にはお弁当「但馬の美味いもん三昧」が配膳されていた。それにしても、弁当箱の大きさときたら! 通常の折詰の倍くらいあるのではないか、というくらいの大きさである。

@敢えてお茶と比較してみる

 内容であるが、但馬牛のすき焼きに但東町産の卵焼き、但馬産野菜と日本海の魚の天ぷらや香住カニの寿司、そして出石そばなど、この一帯の地の物づくしである。ハタハタも入っているが、ガイドの案内によれば、兵庫県も産地としては有名であるとのこと(秋田県の場合は、魚卵付きのハタハタが有名)。

@内容も豪華

 同駅を11時05分に出発し、奇麗な海を時々見ながら、鎧(よろい)には11時12分に到着した。ここでの設定は、乗客がベンチに座ると「何かが始まる」というものであった。
 鎧駅は、以前は海側にもホームとレールがあったが、今はそれが撤去されてしまっている。しかし、海を見るにはこちらのホーム跡の方が良い。ということで、そこからの1葉を掲載したい。

@しかも晴れているし

 鎧を11時27分に出発すると、次は折り返し地点となる餘部(あまるべ)である。鉄道ファンには有名な駅であるが、運転本数が少ないため途中下車をするのが難しく、これまでじっくり探索したことがない。今日はここで40分弱時間があるため、私にとっては有難い時刻設定であった。
 まずは演劇であるが、2か所あったスイッチもやはり餘部鉄橋に関するものであった。

@旧鉄橋と新鉄橋

 演劇を見てからは、エレベータで下まで降りて道の駅へ。旧鉄橋に関する資料や実際の鉄橋跡を見たりしてからエレベータで上部に戻った。
 12時09分に餘部を出発し、12時19分に香住に戻ってきた。ここでまた演劇があり(往路と同じスイッチであったが、内容に変更あり)、続いては、車内での「お土産争奪じゃんけん大会」である。
 ちなみに、私はこの手の抽選会やじゃんけん大会は、まず当たらない(勝てない)星の元に生まれている。最初は海苔の佃煮セット(2人分)であったが、もちろん撃沈。続いては地元の旅館のTシャツ(2着)であったが、なんとここで最後まで勝ち残ってしまった。

@まさか(広げてみた)

 かなり癖があるデザインなので着る場所が限られそうだが、この手の消耗品はいくらあっても困らないので嬉しい限りである。
 続いて、今回の演劇を行っている劇団の関連商品や、豊岡演劇祭のTシャツとあり(当然負けた)、最後は地元の食材セット(お米など)で、これは一番欲しかったが、やはり力んで最終戦前で撃沈した(惜しかった)。
 最後に「参加賞」として、全員にJRの「カニカニ日帰りエクスプレス」のカニスプーンとウェットティッシュが配られた。

@誰でももらえる

 列車はそのまま山陰本線を走り続け、13時16分に城崎温泉に到着した。これですべて終了である。後は「きのさき」で京都に向かい、ずらし旅の「のぞみ」で東京に帰るだけである。

 演劇となると、演じる方も見に行く方も「若者」というイメージがある。今回のプランは「おとなび」(50歳以上が会員)向けであり、実際の乗客も、家族連れの子供1名を除いてはかなり高齢者が多かったが、皆さん楽しんでいるようであった。
 それにしても、本来ならば京都と城崎温泉の単純往復で9,860円するし、それに観光列車が付いてきて、そしてあの豪華弁当と演劇まであってたったの7,000円というのは、破格の値段設定であると思う。
 ちなみにこの「うみやまむすび」の車両であるが、通常の列車でも使用されている。実は3週間前に播但線に乗る機会があったのだが、途中の竹田で行き違った列車の1両目がこの車両であった。中はぎっしりと中高生で埋まっており、少しく違和感があったことを覚えている。

@観光していない観光列車(竹田駅にて)

 

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