【大人鐡27】関東鉄道「ビール列車」編(おまけで「急行夜空」号も)
■はじめに
今回対象となる列車は、関東鉄道の「ビール列車」である。この手のイベントは他の鉄道会社でもちらほら実施されているが、関東鉄道は比較的実施回数も多めであり、しかも私の居住地域から近いということもあり、参加してみることにした。
当初は8月の実施が予定されていたが、コロナによる緊急事態宣言により中止。「このまま今年はもうないのかな」と思っていたが、緊急事態宣言が解けた10月、早速実施の予告が関東鉄道のウェブサイトに登場してきたので、電話で10月17日開催の分を予約しておいた。本来、この手の列車は「複数人で申し込んでワイワイやる」のが本筋であろうが、コロナ禍もあって他者との距離や仕切り版もあるようなので、かえってお1人様でも参加しやすいかもしれない。
おまけとして、10月23日に実施された「急行夜空」号も追加しておきたい。これは、関東鉄道が初めて「寝台列車」の運行をイベントとして提案したものである。もちろんこの鉄道会社は短距離路線であるため寝台を走らせる余裕はないし、そもそも寝台車両を保有していない。ということで、「普通のロングシートに寝る」という奇想天外な発想を本当に実行したものである。発売されるのは、C寝台(13,000円)とD寝台(12,000円)で、その違いはシートの長さ(Cは200cm、Dは160cm)である。幅はいずれも、たったの45cmである。
なおこのネーミングは、JR(国鉄)の寝台区分がA寝台とB寝台になっていたことに由来する。ちなみに、鉄道業界での隠語では、C寝台はロングシートに寝ることで(酔っ払いなど)、D寝台は網棚に寝ることでもあるという(今回のC・Dはいずれもロングシートである)。
10月7日の12時にウェブサイトで発売開始ということで、興味半分でD寝台の申し込みをしてみると、すんなりと仮予約ができてしまった。ここで、「30席あるC寝台と違って、D寝台は6席しかないから、やっぱりCにしてみるか」と思ってウェブサイトからC寝台の申し込み画面を操作してみると、もう満席であった。即日(というか即時)完売であったようである。
後日、D寝台の正式予約がメールで伝えられて、無事に参加決定である。
@取手駅にて
■2021.10.17
取手駅での受付が11:25〜11:55であるため、11時45分過ぎに取手駅に到着するようにして移動した。それにしても、一昨日までは30度を超えるような残暑であったのに、今日は急に12度くらいになってしまった。ビールよりはホットワインが欲しくなるが、とにかく今日は「ビールの日」である。
@受付に向かう
「ビール列車に乗ります」と断って改札を通り、受付に行って参加費5,000円を支払って資料一式(1日フリーきっぷ・乗車記念券・行程表・座席表)をもらった。しばしホームで待機である(それにしても寒い)。
@硬券が嬉しい
しばらくすると、フーテンの寅さんの格好をした案内人が、旅の注意点などを話し始めた(車両にトイレがないため、停車時間が記載されている駅である程度停車することなど)。今日は3両編成であるという。
電光掲示版にもビール列車が記載されているが、1両編成がデフォルトと言っても過言ではない関東鉄道にしては、違和感のある表示でもある。
@まもなく登場
12時を過ぎてからしばし、ビール列車が入線してきた。お手製のヘッドマークが付いている以外は、いつもの関東鉄道の外見である。
@入線
手指消毒をしてから、早速車内へ。机の上にはすでに弁当と「最初の1杯」がセットアップされた状態である。
@もう始められます
定刻の12時14分に取手を出発。寅さんっぽい案内人の掛け声で乾杯をして、一献の始まりである。
ビールはもちろん、お弁当もこの列車のお目当てである。
@こういう掛け紙
弁当箱の入れ物に入っているが、中身はソーセージやチーズなど、ビールの「つまみ」となるようなものばかりである。ハムや燻製を含めて、地元で作られているようである。
@こういう中身
ビールはお代わり自由であるが、注文しなくても、量が少なくなると「どうですか」と言われて半自動的に次のものが出てくる。出発して5分後にはもう2杯目であり、このペースで3時間も呑んだら大変なことになりそうである。
なお、この列車は他のアルコール類や食べ物類一式、すべて持ち込み可能である。ということで、生ハムとチーズを持ち込んでいる。
@もう2杯目(マヨも持ち込んでみた)
車内は複数人のグループが多いが、常連さんも多いようである(「今日は〇〇さん達もいるね」のような会話あり)。私のようなお1人様は少数派ではあるが、ちらほらいるようである。
12時30分頃に、もう3杯目。ハイペース継続である。
12時41分に水海道に到着した。ここでの7分停車は、貴重な「トイレ休憩」である。
@トイレに向かう人々
12時48分に水海道を出発。この後も、ひたすらビールの追加である。
列車はなかなかの高速であり、それなりに揺れるため配膳する人も大変そうである。「もっとゆっくり走っても」と思うが、通常ダイヤの合間を縫っているため、「いつもの速さ」で走らざるを得ないのであろう。
もうすでに呑み過ぎ状態であるが、この列車のプランにはチューハイやソフトドリンクも含まれているため、気分転換でチューハイを注文してみた。
@氷も付けてくれる
13時00分に到着した石下で11分のトイレタイムがあり、同駅を出発後、折り返し地点である下妻には13時18分に到着した。すぐには下車できず、いったん下館方面に移動して、普段は使用されていないであろう番線に移動。こうすることで、定期列車の運用を邪魔することがなくなる。
ホーム上では、物品販売やイベントの準備がなされていた。まずはシンセサイザーの演奏会である。
@演奏会
演奏会では、鉄道にちなんだ楽曲があれこれと演奏されていた。アルコールの力もあり、踊ったりしてノリノリの人もいた。
それにしても、一昨日までの「夏日」が嘘のような低温である。長袖でも寒いため車内に戻って、遠くから聞こえる演奏を聴くことにした。
なお、ホーム上で熱々のモツ煮が売っていたので、天候も後押ししてつい買ってしまった。
@つい買ってしまう寒さ
イベント系も終わり、14時06分に車両がいったん下館方面に移動し、定期列車が発着するホームへ移動。14時10分に下妻を出発した。
その後も、ひたすらビールである。さすがに出発時と同じペースでは続けられないが、ちびちび呑み、なくなったら追加、である。
@どんよりとした筑波山を見ながら
おつまみの車内販売もあるが、銚子電鉄の「ぬれ煎」の販売もあった。どこか別の場所(長良川鉄道だったか)でもぬれ煎が売っていたのを見ており、銚子電鉄の商魂はなかなかのようである(というか、他の鉄道会社による「協力」であろうか)。
寅さんっぽい案内人が各テーブルを周り、簡単なクイズ(なぞなぞ)を出していった。私がいる一角にもやって来て、私が正解を答えてバッチを1つもらった。なお、このバッチを10個集めると、「関東鉄道の『バスで行く』ハワイ旅行」が当たるという。
@みんなへべれけなので、こんなネタでも大盛り上がり
往路と同じく、石下と水海道でトイレタイムがあるが、なにせ全員が山のように呑んでおり、さらにトイレの数が少ないので、なかなか終わらない。水海道発は14時42分の予定であったが、3分くらい遅れてしまった。
@トイレ休憩後に撮影
その後は取手に戻り、JRで帰路に就いた。それにしても、昼間っからひたすら呑み続けた1日である。
■2021.10.23
「急行夜空」の受付時間は23:15〜23:30ということで、23時08分に守谷に着く列車に乗り込んだ。なお、取手での乗車時は改札で「今日は寝台列車に乗ります」と宣言するだけである。
つい1週間前にも「ビール列車」で乗車した常総線に乗り、定刻に守谷に到着した。受付が設営されるのをしばし待ち、手続きを済ませた。
@一式(切符はラミネート)
それにしても、受付の周囲にいるのは男性で「鐡分多め」の人ばかりある(まぁ、興味のない人は申し込まないであろう)。
いったん改札を出てコンビニでビールを買い、ホームで入線を待った。23時30分過ぎ、ゆっくりと3両編成の列車が入線してきた。
@夜行寝台(急行)です
早速車内へ。机なども置いてあるのかと思ったが、シートの状態だけのシンプルなままである。シートの上に置かれている四角いものは、シートと同じ材質で作成された特製枕である。
@こんな車内
さて自席は、と思って探していくと、最後に発見した。取手側の先頭部分(運転席の後ろ)である。D寝台は確かに短いが、足が少しくらい出ても気にならないし、それに片方が壁なので却って安心でもある。
@今日の寝床
車内にあった銘板を見ると、この車両(キハ002)は昭和57年の新潟鐵工所製である。天井の扇風機には、国鉄の「JNR」マークが付いている。
定刻の23時45分、まずは取手に向かって出発した。その後すぐに車内アナウンスがあったが、その前に流れたのが「あのオルゴール」である(鉄道唱歌ではない、シンプルなやつ)。これは懐かしい。
ちなみにアナウンスによると、今日の座席は30秒ですべて売り切れたという。
@行先票も特製
コンビニで買ってきたビールと持参したツマミ類で、一献の始まりである。「夜行列車に乗って酒を呑みつつ景色を見る」のが好きなのだが、最近は寝台列車が淘汰されてしまい、なかなかできなくなってしまったので、これをやるのは久々である。
しかし、周囲を見てみると、皆さん真面目に(?)乗車しているだけで、酒を呑んでいるのは少なくとも私がいる車両では他にいないようであった。
車内では、今後のスケジュールもアナウンスされている。資料にも記載されているが、全部に参加したら寝ている時間はなさそうである。
@寝たら寝たで諦める
24時05分、取手に到着。ここで最終列車の係留作業を見学した。ホーム上では、係員があれこれと説明をしてくれている。
なお今日は、終電の後にもこの寝台列車が走ることとなる。掲示板にも表示されているが、「夜の旅をお楽しみください」とは心憎い表現である。
@地味にアピール
取手駅ホームの電源がすべて落ちて真っ暗になり、24時22分に同駅を出発した。
出発後は、車内販売である。私は収集癖がないので特に買わなかったが、他の人はあれやこれやと大量に購入していた。
なお簡単なクイズ用紙があり、それを提出すると(正解すると)車内補充券がもらえる。ということで、それだけはありがたく頂いた。
@こんなもの
24時54分、水海道に到着した。ここでは夜食が配付される予定である。
さてトイレにでも、と思ってホーム上を歩くと、他の皆さんは車両に向かって大撮影大会である(中には、本格的な三脚などを持参している人もいる)。どうやらほとんどの人は、稀なものの撮影・物品の収集が目的であり、私のように「寝台で酒でも呑もう」というのは少数派のようである。
いずれにせよ、無事に夜食をゲット。
@おにぎりとおかず
イベントの行程表によれば水海道発は1時30分であるが、その記憶はなく就寝。
■2021.10.24
ドアの開閉の音と寒さで目を覚ますと、またしても水海道であった(5時15分着)。ということで、騰波ノ江での「木造駅舎と旧型車両の撮影会」(3時37分)と下妻での「駅・列車の営業準備の様子」(4時28分)は完全に見過ごしたが、それを見ようとしたらほぼ徹夜をしないといけないので、仕方ないであろう(他の人は起きていたのであろうか)。
5時25分に水海道を出発し、しばらくすると車庫付近で一時停車である。
@撮影タイム
5時40分、守谷に戻ってきて、短い夜行列車の旅も終了である。
このイベントには24日の一日乗車券も付いているので、この後に常総線沿線を観光することもできるが、今日は「秋の乗り放題パス」の余りを使って大原まで行って「いすみ鉄道」に乗る予定であるため、5時46分の列車ですぐに取手に向かってしまう(ちなみに、車内には6時まで残ることが可能とのことであった)。
乗車時間が短い夜行列車であるが、路線の長さからして仕方ないであろう。それにしても、よく考えたものだと思う。
@お疲れさまでした