【大人鐡23】近畿日本鉄道「青の交響曲(シンフォニー)」「しまかぜ」編

■はじめに
 久々の「大人鐡」であるが、今回はタイトルにもある近鉄の2つの観光列車に乗ることにしている。前者「青の交響曲」は、通勤車両を観光目的に改造したものであり、2号車のラウンジカーでは地元食材を使用した昼食やスイーツを買うことができる。料理などが超豪華というわけではないが、大人鐡シリーズのコンセプトに合う列車であるため、乗ってみることにした。
 後者の「しまかぜ」については説明するまでもないくらいの有名観光列車であるが、車両は新造であり、座席も(豪華ではあるが)普通の席であるため、本来はこのシリーズの対象ではない。しかし、せっかく近鉄に乗るのであるから、こちらも併せて乗ることにした。カフェ車両で提供される品々(ピラフやカレー等)は、各ブログでもあれこれ紹介されてくるくらい有名である。
 事前にあれこれと予約し(飛行機やホテル)、後は行くだけである。

 さて、ご存じの通りの緊急事態宣言である。旅行の実施自体の是非が問われるところであるが、持論としては「内容次第」であると思っている。杓子定規の休業要請については多くの人が異を唱えており、黙って観覧できる美術館や密にならないスポーツの屋外観戦が休館や無観客になる一方で、「酒が提供されない」という理由だけでパーテーションもない小さな机で大人数がマスクなしでランチを食べることは許されているという矛盾、である。いくら「県境を跨がない」からといって、近所の店で大人数でマスクなしの会話をしたのでは意味がない。
 私の旅行は、ただ1人で鉄道に乗っているだけであり、会話をするのはホテルのチェックインや物品等の注文時だけである。人との接触リスクは、かなり少ない。もちろん、不特定の椅子や手すりなどに触る確率は高くなるが、それはそれ、いつも通りに手洗いや除菌を繰り返しておくだけである。
 ということで、後ろ髪を引かれる部分はあるが、予定通りに実行することにした。注意を怠らず、そしていつも以上に、人と接触しない(会話しない)旅である。

@吉野駅にて

■2021.4.30
 前日に関西に移動して別の旅「第三セクター応援鐡旅」の初日を終えており、その旅の間に割り込む形で2日間にわたり「大人鐡」を実施することになっている。今日は、まずは「しまかぜ」の乗車である。
 大阪難波を10時40分に出発する「しまかぜ」の座席をネットで押さえてあるが、それまで待っていることもない。それに、今回は「近鉄週末フリーパス」(土日を含む3日間が乗り放題)を使うから、尚更である。ということで、意味もなく奈良へ往復することにした。

@これを使いまくる

 7時01分発の列車で大阪難波を出発し、7時41分に近鉄奈良に到着した。ここで2時間弱も時間があるため、人混みを避け、まずは春日大社まで歩いて向かった。
 参拝を終えてからは、JRの奈良駅まで久々に行ってみた。旧奈良駅は観光案内所になっているが、緊急事態宣言により急遽休館となっていた。

@残念

 9時24分発の列車で、大阪難波まで戻ってきた(10時05分到着)。
 さて、ここで「買い出し」をするか否かである。緊急事態宣言により観光列車内でのアルコールの販売が急遽中止になったため、呑むのであれば駅のコンビニで揃える必要がある。しばし考えたが、今日(と明日)はランチだけを楽しむことにした。
 阪神電鉄と繋がったことにより、大阪難波駅で各列車は長時間停車ができない構造になっている。出発の2分くらい前になって、やっと「しまかぜ」が入線してきた。

@勇ましい感じ

 車内に入り、押さえてある席へと向かった。1号車は展望車となっているが、前が良く見渡せるのは最前列だけである。指定券発売日の発売時間直後にチャレンジしたが、残念ながら取れたのは2列目であった。しかし、顔を少し横にずらせば前方を見ることもできるし、運転席の先の景色であれば座りながら斜めで見ることもできる。

@座席はかなり豪華

 定刻の10時40分に出発。しばらくしてから、3号車のカフェへ注文に向かった。
 さて、何を頼むかである。最初は「しまかぜ弁当」を考えていたが、この弁当自体は大阪難波駅でも買える代物であるため、一番有名な「海の幸ピラフ」を買うことにした。1,500円となかなかの値段設定であるが、他の「食事付き観光列車」に比べれば可愛いものである。
 提供時間が5分かかるということなので、カフェ席の写真だけを撮ってから一旦退散した。

@もちろんここでも飲食可能(1階席)

 一旦自席に戻ると、ちょうど「乗車記念」とおしぼりが配られているところであった。このようなサービスがあるのも、観光列車ならでは、である。

@オリジナルおしぼりも

 5分くらい経過したので、ピラフを受け取るためにまたしても3号車へ向かった。カフェ席の2階にスタンプがあったのでまずはそれをスタンプ帳に押し、ピラフを受け取った。その際にふと横を見ると棚にスイーツがあり(食事メニューではピラフ以外にカレーやラーメンなどがあり、スイーツとしてケーキが数種類ある)、こちらまではお腹的に手が出せそうにないので、写真だけ撮っておいた。

@心で味わう

 自席へ戻り、さてピラフである。量はちょっと少な目であるが(イセエビも劇的に小さい)、貝類などもふっくらと出来上がっており、風味の良いご飯との相性もかなり良い感じであった。やはり、こちらにして正解である。

@美味

 多くない量であるので、あっという間に平らげてしまった。出発してまだ30分程度であるが、「しまかぜ」の要素をほとんど紹介し終えてしまった気がしなくもない。
 さすがに展望席は人気があるようで、時々子供がやってくる。しかし、「展望スペース」はないため、親に諭されて戻っていくパターンである。できれば、先頭の3列くらいは「段々」にして(小田急方式)、さらに小さな共用展望スペースがあるとベストのような気がする。

@2列目でも手を伸ばせばこう写せる

 腹もいっぱいになり眠くなったので、しばらくウトウトしたり起きたり、の繰り返しである。名張辺りから、沿線風景は家よりも木々の印象が強くなっていった。
 ふと目を覚ますと、車内販売がやって来ていた。しかし残念ながら私は収集癖がないので、見ているだけである。

@スルー

 伊勢を出発すると、景色もだんだんと長閑になっていった。鳥羽以降は時折超スロー走行になり(所々で単線+カーブのため)、ちらほらと海が見えたりしながら、定刻の13時03分に終着の賢島に到着した。
 以前、今回と同じ切符を使用して「近鉄乗り潰し」をした際にはすぐに折り返してしまったため、今日は30分くらい駅付近を散策することにしている。適当に歩くと、海が見えてきた。「いかにも志摩」という感じで、コロナでなければ「観光船に乗ってその後はホテルで宴会」と行きたいところである。

@天気もいいし

 駅に戻り、伊勢志摩サミットに関する無料展示を見て時間調整をしてから、13時45分の伊勢中川行に乗り込んだ。
 往路の逆回しの風景を見つつ、15時20分に伊勢中川に到着。大阪上本町行の出発まで30分弱あるため、またしても街歩きである。
 単なる乗換駅で何もない伊勢中川であるが、個人的には懐かしい思い出がある。今から28年前、大学(兵庫県西宮市)のサークルの活動で名古屋に行った際に、「帰りは特急料金をケチろう」と私を含めた4人で意気投合し、この駅で乗り換える必要が生じたのである。特急に乗らない→時間がかかる→伊勢中川の時点で日も暮れ始めお腹が空いたので、駅前にあった飲食店に飛び入り、そこで出てきたのがあの「伊勢うどん」だったのである。今ならば何でもネットで調べられるし、グルメサイトも多種多様であるが、いかんせん1993年である。全員で「なんですかこれは!」と驚いたことが、つい先日のように思い出される。
 うどん屋(定食屋?)は駅前にあったはずだが(超うろ覚え)、再開発されたようで、だだっ広い駐車場になっていた。ということで、「店との再会」までは果たせなかったが、約30年ぶりの途中下車は楽しいものであった。

@駅も新しくなっていた

 15時48分発の急行(大阪上本町行)に乗り、ロングシートであるためこの旅行記をパソコンで書いたりして時間を潰しつつ、終着駅で乗り換えて大阪難波に戻り、格安スーパー(いつもの「玉出」)で安食材を揃えてから、安ホテルへと向かった。

■2021.5.1
 さて、今日は「青の交響曲」である。復路(吉野発)の席をネットで押さえているため、午前中は暇である。フリー切符を使ってどこかに行くことも考えたが、密を避けることを最優先にして、吉野散策をすることにした。
 ということで、出だしは近鉄の大阪阿部野橋からである。

@絶賛宣伝中

 7時20分発の吉野行急行に乗り込み、橿原神宮以降はローカルな雰囲気を楽しみつつ、8時52分に吉野に到着した。4両編成であるが、吉野で下車したのは私を含めても4人だけであった。
 さて、ここで3時間半以上も時間を取ってある。桜の季節は終わってしまっているが、だからこそ人は少なくて歩きやすい。

@急坂と階段を経て辿り着く

 時折休みながらぐるっと吉野を歩いてきたが、11時少し前には駅に辿り着いてしまった。「青の交響曲が」出発するまで、まだ1時間半以上もある。
 よって、ここで旅程変更の作戦タイムである。今日は西舞鶴まで移動する必要があるが(明日以降に「第三セクター応援鐡旅」シリーズを実施するため)、当初予定では、観光列車で大阪阿部野橋まで行き、JRで鶴橋まで移動して、フリー切符を活用して近鉄で鶴橋から京都まで移動し、そこからJRの各駅停車に乗り継ぐ予定であった(西舞鶴着18時18分)。しかし、あれこれ乗り換えるのが面倒になり(旅も3日目だから洗濯もしたいし)、吉野への往路移動中に再検討して、京都から特急「まいづる」に乗ることにした。そうすれば、西舞鶴到着は17時53分である。
 しかし、吉野散策中に「だったら青の交響曲を途中で降りれば」と思い付いた。ということで、駅の待合室でしばし検索。結果、橿原神宮前で降りて京都に向かえば、JRの特急に乗らなくても西舞鶴には17時19分に着くことが判明した。観光列車に乗っている時間が約半分になってしまうが、後半は市街地を走る部分が多いし、何度も乗った路線(そもそも今朝も乗っている)である。このようにして、急遽旅程が変更された。
 PCを突いていると、大阪阿部野橋からやってきた「青の交響曲」が入線してきた。

@1時間後に乗ります

 さて、この時点でまだ11時半前である。しばし、何もない駅付近を再度ぶらぶらした。
 ぶらぶらした、と言っても、駅付近には数件の土産物屋とロープウェー乗り場があるだけである。すぐに駅に戻ろうとしたとき、土産物屋で地ビール(吉野杉のペールエール)を発見してしまった。緊急事態宣言により観光列車内でのアルコール販売が急遽中止になったため、しばし考えたが、気づくと買ってしまっていた(ついでに、熊野古道ビールも)。
 すきっ腹に2本のビールだけでは厳しいので、別の店で安ツマミも買い、待合室で昼から一献である。

@いつの間にか

 吉野杉ビールは強めの苦みが印象的であった(本格的である)。それに比べると熊野古道ビールは苦みが若干軽めではあるが、味わい深いものであった。
 程よく酔ったところで、ホームに入り車両の撮影大会である。

@元通勤列車

 12時25分頃に列車のドアが開いたので、早速車内に入った。「青の交響曲」にはお1人様専用っぽい座席が2つあるが(1号車1Aなど)、残念ながら埋まっていたため、今日は3号車の普通の席を押さえてある。もちろん1人掛けであるし、通勤列車時代の欠片も残っていないほど大改造された車内である。

@3号車内

 自席に荷物を置き、しばし車内探索である。1号車と3号車の入口には観光列車や沿線の見所に関するパンフレットが置いてあり、2号車(ラウンジカー)の入口にはベンチ1つと吉野関連の書籍が多数置かれていた。

@お洒落な感じ

 さて、まだ出発前であるが、ラウンジのカウンターで食材の購入である。本来は、この列車オリジナルラベルの大吟醸酒(枡付き)を買い、ご当地のごま豆腐でちびちびやりたかったのであるが、上述した通りのアルコール販売中止である。ということで、今回はカレー(大和肉鶏カレー)を買うことに決めていた。
 1,100円をお支払い。ラウンジカーでも飲食可能であるが、ここで食べたのでは自席での滞在時間がほとんどなくなってしまうため、内装を見るだけである。

@広々

 よって、カレーは自席に持ち帰って頂くことにした。
 自席に戻り、さっそく頂く。コクのあるカレーであり、あまり辛さはないタイプであった。ビール2本でほろ酔い状態であったため、良い感じの「締め」の料理となった。

@オリジナルラベルの水付き

 定刻の12時34分に吉野を出発。景色を見ながら、美味しくいただく。景色自体は往路の巻き戻しであるので、どちらかと言えばカレーに集中である。
 車内アナウンスを聞いていると、「記念乗車証はカウンターで」というではないか。カレーを食べ終えてから、それをもらうために再度カウンターに向かった。

@こんな乗車証

 さて、後はのんびりの景色を眺めるだけであるが、先述した通り途中の橿原神宮前で下車することにしている。吉野で乗車してからたったの39分、13時13分に橿原神宮前で下車した。あっけないが、必要な要素は堪能できたのでこれでいいだろう。
 13時15分発の京都行に間に合うかと思ったがさすがに無理で、しばし駅近くにある寺院(久米寺)を参拝してから、13時45分発の京都行急行に乗り込んだ。15時02分、京都着。
 急いでJR側の駅に行き、西舞鶴までの切符を買って、15時08分発の園部行に乗り込んだ。その先は綾部で乗り継ぎ、西舞鶴へ。強風と雷雨の関係で少し遅れたが、17時25分に西舞鶴に到着した。

@雨雲一過(明日の別旅はここから開始)

 

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