【大人鐡Q】明知鉄道「食堂車(じねんじょ列車)」編

■はじめに
 この「大人鐡」シリーズでは、主に「大改造された車両」で「コース料理など」が提供されるものを中心に取り上げている。しかし途中から、「車両はほとんど改造されていない」ながらも、地方の私鉄や第三セクター鉄道が一所懸命にアイディアを詰め込んで企画している列車も、対象にして乗るようにした。例として挙げれば、第11回目の「道南いさりび鉄道」や、第13回目の「いすみ鉄道」などである。
 今回からは連続して、そのような「頑張っています」的な企画を実施している観光列車に何回か乗ることとしている。そして今回は、表題にもある明知鉄道である。明知鉄道では、「食堂車」として季節に応じて様々な列車を走らせている。今現在のウェブサイトにあるだけでも、「おばあちゃんのお弁当列車」「懐石料理寒天列車」「枡酒列車」「じねんじょ列車」「きのこ列車」とあり、冬のこの季節は「じねんじょ列車」がメインである。
 他の観光列車との違いとしては、「ほぼ毎日走っている」という点である(ただし、催行最少人数に満たない場合は運休)。価格も安く、明らかに、観光客だけでなく地元民も意識しているとも思える(もしかしたら地元民が中心かもしれない)。
 今回乗車する「じねんじょ列車」は通常は4,500円であるが、コロナ禍ということもあり補助があって特別に3,500円になっている。しかも、1,000円分のお土産付き。さらに、明知鉄道の一日乗車券も付いているということで、「実質、弁当代だけではないか」というくらいのお得感である。
 かなり前(去年の10月くらい)に申し込み、年明けに送られてきた振込用紙で入金。あとは、行くだけである。・・・という状況で、ご存じの通りの緊急事態宣言の再発出である。
 あれこれ考えたが、今回の緊急事態宣言は昨年4月のような「あらゆる経済活動を止める」というものでもないし、過剰に制限するのもどうかとも思える。そう思う反面、自分が原因で何かあってもいけないという気持ちもある。あちこち動き回ることが多いため、PCR検査も受けているが、それは去年のことであり、ここ数日で何かを拾っている可能性も否めない。
 そもそも論として、列車が運休になれば私も諦めるが、出発の数日前に鉄道会社よりメールがあり、「弊社では通常通り運行します」ということであった。ということで、万全の体制を整えて、出かけることにした。

 なお、明知鉄道に乗るだけではなく、豊橋鉄道(市内線を含む)と愛知環状鉄道、遠州鉄道にも乗ってくることにした。未乗であるのは豊橋鉄道渥美線の先端部分と市内線(路面電車)であり、それ以外は再訪である。
 そして、大人鐡シリーズのサブテーマである「大人グルメ」は、今回は「うなぎ」である。

@明智駅にて

■2021.1.9
 最寄駅の始発電車に乗り都心に向かい、東京発6時10分の熱海行に乗車。ひたすら豊橋へと乗り継いで行った。11時19分に豊橋に到着。まずは、豊橋鉄道渥美線である。
 券売機にて、520円の切符を購入(一日乗車券もあるが、正規で往復を買った方が安いため)。各列車には、様々な花の名前とそれを思わせるカラーリングが施されていた。

@これに乗る

 11時30分、新豊橋を出発。短い編成であるが、車掌が乗務していたのは意外であった。無人駅が多いため、そういう駅での切符の確認をしているようである。
 先頭部分でのんびりと景色を眺めていたが、ふと気づいたのは車内にあった銘板であった。米国のライセンス契約で製造された車両ということであるが、米国と言えば今や「鉄道後進国」である。昭和40年代は、まだ日本が「教わる」時代であったらしい。

@意外や意外

 この路線には、20年くらい前に仕事で乗ったことがあるが、途中の駅(思い出せない)までしか乗車していない(訪問先が途中の駅にあった)。ということで、今日が初制覇である。12時05分、終着の三河田原に到着した。
 さて、昼時である。三河田原の駅舎は真新しい奇麗なもので、待合室も清潔である。ということで、豊橋駅構内で買っておいた「いなり寿司」でお昼である。

@3種類あり

 寿司を食べ終えた時点で12時17分発の列車に飛び乗ることもできたが、それでは慌ただしいため、駅付近にあったいくつかのお寺を見たりしてから駅に戻ってきた。
 トイレに行ってみると、その前に何やらレールのモニュメントがあった。どうやら、この先に伸びていた廃線部分と未成線部分に関するものである。昭和19年に廃線になったということである。

@知らなかった

 12時32分の列車で新豊橋に戻り、駅前にあるその名も「駅前」という市電の停車場へ。続いて乗るのは、市内線(路面電車)である。

@初乗車

 13時14分に出発。終着である運動公園前まで行き、そこからは別系統の終着駅である赤岩口まで歩いて向かった。
 赤岩口に到着し、時間があったので裏手にある車庫に行ってみると、偶然にも「おでんしゃ」が整備中であった。このシリーズ(大人鐡)を実行するうえでは、あれこれ情報を検索しており、この「おでんしゃ」も当然調べていたが、運行本数が少ないのと、団体単位での申し込みしかできないため、早々に諦めていたものである。車体だけ拝めたので、これで良しとしよう。

@乗ってみたい気もするが

 14時03分の路面電車で赤岩口から駅前に戻り、JRの豊橋駅まで移動して、14時42分の飯田線に乗り込んだ。今日は、これで飯田まで移動して安民宿に泊まるだけである。
 定刻に豊橋を出発。飯田線のうち景色が一番きれいな区間(水窪から天竜峡まで)で日が暮れてしまい何も見られなかったが、今回の旅のメインは明日の「じねんじょ列車」であるから、これでいいだろう。

@長時間停車中に撮影

■2021.1.10
 かなり早起きして飯田にある安宿を出発。今日は5時45分発の快速「みすず」からである。快速といっても、通過する駅は少ないし、そもそも飯田線は駅間が短いし、しかもロングシート車両なので、あまり快速という感じはしない。
 定刻に出発。駒ヶ根付近から明るくなってきて景色も見えるようになってきた。7時45分に到着した辰野で塩尻行に乗り換え、塩尻で8時16分発の中津川行に乗り換えた。

@雪が付着

 こちらも定刻に出発。前回乗車時はロングシートであったため中津川までの道のりが味気ないものになってしまったが、今日はちゃんとしたクロスシートであるため、落ち着いて景色を見続けることができた。
 10時27分に中津川に到着し、快速の名古屋行に乗り換えて、恵那には11時01分に到着した。
 さて、まずは切符の入手である。明知鉄道の窓口へ行き、名前を告げて一日乗車券を受け取った(じねんじょ列車の座席配置は掲示板にあり)。

@手形になっている

 出発まで1時間以上あるため、旧街道などをあれこれ散策し、スーパーに行って車内用の酒を購入したりしてから駅に戻ってきた。
 12時15分、じねんじょ列車も連結されている列車(定期列車1両も含む)が入線してきた。先頭部分(出発時は最後部)が食堂車であり、明智光秀カラーである。

@光秀ラッピング車両

 早速車内に乗り込む。通常のロングシート車両であり、運び込まれた長椅子の上にはすでに弁当箱が配膳されている状態である。コロナ対策で定員もかなり削減されており、他の乗客との距離も十分である。

@こんな車内

 指定されている席に座る。弁当箱の上にはメニューがあるが、天子(あまご)や公魚(わかさぎ)、むかごなど、田舎料理らしい文字が期待を膨らませてくれる。
 お土産(1,000円分)は、バッグとタオルであった(いずれも販売価格は500円)。

@自席の様子

 参加者全員が揃っているため、出発前からすでにアナウンスがあり、食事も開始である。なお、食堂車の料理担当は日替わりということであり、今日は「明知ゴルフ倶楽部」の担当である。早速ふたを開けて食べ始めたが、なかなか充実した内容である。件の天子も大きな1匹であるし、むかごとわさび漬けのコンビネーションも意外な食感であった。

@豪華

 さて、こんな料理が目の前にあれば、酒を呑まないという選択肢はない。ということで、先ほども少し書いた通り、散策中に日本酒を入手してある。1つは、明知鉄道沿線にある酒蔵が造っている「女城主」、もう1つは、午前中に乗車した中央線沿線の酒蔵が造っている「七笑」である。

@地酒で固める

 さて、続いて提供されたのが、温かいご飯と自然薯(ダシ入り)とお茶である。いつもならご飯は「締め」で頂くが、せっかくなので呑みながら頂くことにした。
 ちなみに、自然薯とご飯のお代わりは何回でも自由である。目の前にいた人たちは、私が1杯目に手を付けようかと思った時点ですでに2杯目をお願いしていた。

@待っていました

 車内は、3人の家族連れ2組と、2人の地元の高齢者が1組、私のようなお1人様が2人の、合計10人である。実は、昨年暮れの時点では人が集まらず、「運行されないかもしれないため、日程の再考を」というメールをもらっていたのだが、今年に入って無事に人数が増えたのである。もしかしたら、「遠出できないから、地元の食堂車にでも乗るか」と思って申し込んだ人がいたのかもしれない。

@自然薯追加作業中

 なお、車内では観光アナウンスも随時行われている。急勾配(33パーミル)にある飯田駅や、極楽駅舎、岩村の町並みなどなど、である。
 私はもともと昼は食べないためお代わりは必要ないが、せっかくの機会であるためお代わりを「芋多め」で注文した(芋ダク?)。
 幸いにも運行されているこの食堂車であるが、1月9日に岐阜県知事が県独自の非常事態を宣言したため、来週以降の運行は未定(もしかしたら来月頭まで運休になるかも)ということであった。

@沿線風景

 ずっと上り勾配であったが、途中から下り勾配になり、13時19分に終着の明智に到着した(「明知」鉄道の「明智」駅なので、少しややこしい)。
 折り返しの列車まで35分あるため、旧い西洋建築のある街をぶらぶらしてから駅に戻り、13時54分発の列車で恵那に戻った(岩村の町並みに心が惹かれるが、今日は降りている時間がない。次回、別の食堂車、できれば桝酒列車にでも乗りに来て、その際は途中下車してぶらぶらと歩いてみることとしたい)。

@戻りはこれで

 14時44分に恵那に到着。快速の名古屋行に乗り、高蔵寺で下車した。
 今日は青春18きっぷで移動しており、宿泊先の浜松までは金山経由で行けば追加料金は発生しない。しかし、今日はあえて追加の890円を支払って愛知環状鉄道経由で移動することにしている。
 この路線自体、大昔に乗ったはずなのであるが(自宅にある地図には色が付いている)、しかし、いつ乗ったのか思い出せないくらいなのである。ということで、再訪である。
 しばし待ち、15時59分発の岡崎行に乗り込んだ。

@第三セクター鉄道

 トンネルと高架の多い線区を走り、岡崎でJRに乗り換え、浜松には18時18分に到着した。駅近くにある安ホテルに投宿。

■2021.1.11
 さて、そもそもなぜ浜松に泊まっているのかというと、「日曜日にそのまま青春18きっぷで東京に移動しても、到着が夜中になってしまう」→「それならば浜松で泊まり、遠州鉄道に久々に乗車して、大人グルメとしてうなぎを頂こう」と思ったためである。
 ということで、まずは前菜的に遠州鉄道の乗車である。

@久々の乗車

 8時20分に新浜松を出発。しばらくは高架上を走り、その後は土の路盤に。最後はまた高架になって、8時52分に終点の西鹿島に到着した。
 特に目的があってこの駅に来たわけではないが、すぐに折り返すのも味気ないため、天竜川の土手まで散歩してから駅に戻り、9時20分発の列車で浜松市内へ。最後までは乗らず、2つ手前の遠州病院前で下車して、歩いて浜松城を見に行ったりした。昨日は光秀づくしであったが、今日は秀康づくしである。

@鉄道にも

 そのまま歩いてJR浜松駅まで行き、さて、久々のサブテーマ「大人グルメ」である。
 目途を付けておいた鰻屋(11時開店)へ。うな重だけでは面白みがないため、まずは「きもわさ」「きもの天ぷら」と地酒を頼んだ。

@「大人セット」です

 きもわさはすっきりとした味わいであり、「きも焼き」が予約分で売り切れということで急遽頼んだ天ぷらは、予想以上の出来栄えであった(こういう食べ方をしたことがないので、新鮮であった)。そして、地酒に付いてきた骨もいいアクセントである。
 続いてやってきたのが、真打のうな重である。私は舌が肥えていないので、スーパーのうなぎでも美味しく頂けるが、さすがに雲泥の違いである。やわらかい食感と軽やかな風味は、普段とは全然違うものであった。

@劇的に美味

 滞在30分ほどで、お支払いへ。一品料理や酒を頼んだとはいえ、ランチで6千円以上も払うのは初めてであるが、こんなご時世であるからこそ、しかるべき場所でお金をしっかりと落とすべきであろう。
 ということで、後は帰るだけである。うなぎで散財した分、交通費は削らねばならないが、青春18きっぷが使えるのは昨日までである。あれこれ考え、JRの高速バスで帰ることにしている。
 今回の旅程では、このバスだけが懸念事項であった。満席ならかなりの「密」になってしまうが、幸いにも乗客は10人程度であった。

@これで帰ります

 

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