【大人鐡J】道南いさりび鉄道「ながまれ海峡号」編

■はじめに
 豪華な食事を提供する観光列車をメインテーマにしている「大人鐡」シリーズであるが、条件として、車両が大改造(もしくは新造)されていること以外に、「一人でも参加しやすい」ことを挙げており、相席となる列車は原則として避けてきた。しかし、そうしていると対象が限られてしまうため、今後は「相席もやむを得ない」とすることにした。
 今回の対象は、道南いさりび鉄道の「ながまれ海峡号」である。改造といっても机を追加した程度であるし、1人でも参加はできるが、1人用席はロングシートでしかも相席必須である。本来ならば興味を示さないが、鍵は「北海道」である。
 私自身が道産子というのもあるため、北海道には思い入れが深いが、ただでさえJR北海道の経営が厳しい中、「食事付き観光列車」の企画など論外である(最近になって、東急のTHE ROYAL EXPRESSを道内で走らせることとなったが、これは稀なケースであり、あくまで単発ものである)。そんな中で、第三セクターである道南いさりび鉄道が、かなり不定期とはいえ食事付きの観光列車を走らせていること自体、応援したくなってくる。ということで、乗車することにした。ロングシートであれば景色などちゃんと見ることができないが、この路線はJR時代に何度も乗っているため、今回は食事等がメインである。
 旅行会社のサイトで空席を発見して、手続きを進める。ロングシートは10,800円であるが、山側は売り切れで、海側となってしまった(11,800円)。ボックス席なら海と山で景色が大違いであるが、ロングシートでも金額に差があるのは少し残念である。なお、この企画が始まった数年前の料金は8千円台であり、徐々に値上がりしているが、きっとあれこれ経費も嵩むのであろう。応援も込めて、お金のことは気にしないことにした。
 それよりは、どうやって函館に行くかである。ながまれ海峡号の運転再開と空席を発見したのが8月後半であり、飛行機の安い切符はもうなかった。JALのパック旅行でなんとか32,500円のものを発見し、GoTo割引を使って21,500円で決済した。宿泊付きであるから、これなら納得の額である。

@上磯駅にて

■2020.9.5
 7時45分の函館行の便で、羽田を飛び立つ。前便が離陸時に「バードストライク」をしたため滑走路で20分ほど待機したが、今日は急ぐ旅ではない(函館で時間が余りまくっている)ため、問題はない。
 函館空港からはバスに乗らず、歩いて市内へ向かう。途中の「湯の川」からは、久々に市電に乗り込んだ。

@鉄分補給

 終点の「函館どつく前」まで乗り通し、そこからはふらふら歩いて観光しながら函館駅付近まで戻ってきた。
 ホテルにチェックインして不要な荷物を置いて、再度函館駅へ。改札横で旅行会社の人にバウチャーを渡してパンフレット等をもらった(昨今の事情で、当然検温もした)。

@こんな一式(旅行中はバッチを付ける)

 その際に簡単な説明もあったが、実はこの「ながまれ海峡号」は、観光列車にしては珍しく飲食物の持ち込みが可能なのである(建前上の理由は「車内販売に限りがあるため」)。アルコールは復路で飲むつもりであるから木古内で買う予定であり、追加のツマミは市内を徒歩観光している途中に入手済みである。
 15時40分頃に再度改札付近に集合して、団体旅行枠であるため改札の横を通ってホームに向かった。

@今日の観光列車

 車内に入って手指消毒をしてから自席へ向かう。車内には海産物のぬいぐるみや大漁旗などがあれこれ飾られており、水戸岡デザインのような洗練さはないが(安上りでもある)、良く言えば手作り感満載である。そういう意味では、他の会社の観光列車とは一線を画していると言えよう。

@こんな感じ

 私の席(ロングシートの19番)には、スイーツが1人分セットされている。ということで、相席は避けられたようであった。これならば、片足をシートに乗せて座れば外もよく見えるので、海側席にした甲斐もあるということになる。
(他のボックス席も、今日は2人までとなっており、「定員10人」となっているロングシートにも、合計4人だけ(机の数だけ)しかセッティングされていない。たぶん、コロナ対策であろう)

@今日の席

 すでにセッティングされているスイーツは、ドーナツ(3種)である。以前は「見た目が海鮮丼風のスイーツ」であったらしいが、私個人としては今回の方がうれしい。というのも、お持ち帰りができるからである(呑む前に甘いものは大量にはいらない=1つだけ食べて、残りは持ち帰ることとした)。

@袋から出してみた

 定刻の15時53分に出発。道南いさりび鉄道社員に見送られて、函館市を後にした。五稜郭からはJRの路盤から離れて、この会社の路盤へと分岐していった。
 この手の観光列車には、沿線からの「お見送り」が定番である。幼稚園であったり、高齢者福祉施設であったり、特定の個人であったり。ということで、今回は水産高校の生徒によるお見送りがあった。

@行ってきます

 クーラーのない車両であり、今日の昼はかなり暑かったため、車内もまだまだ生暖かい。目の前の人はさっそくビールを開けているが、私は木古内まで我慢である。
 空調はないが、だからこそ窓は全開であり、昔ながらの旅行が楽しめるともいえる。車内では、女性係員による観光アナウンスがあれこれ続けられている。
 久根別を過ぎたころ、お土産の「バック」が配布された。

@ごわごわした感じ

 16時20分前に通過した清川口は、駅自体が「ながまれ海峡号」と同じ意匠で塗装されていた。

@通過中

 16時19分、上磯に到着した。ここでは、商店街の人による「立ち売り」があるという。「ホッキしゅうまい」を狙って一番手で降りたが、残念ながら今日はやっていないとのことであった。売っていたのはぶどうとラスクであったが、他の乗客によって完売となっていた。
 ここでの長時間停車は、貨物列車とすれ違うためである。とにかく、走行中も何本もの貨物列車とすれ違う(本州と北海道との物流の大動脈であるため)。私は、ついシベリア鉄道に乗った時のことを思い出した(あちらも貨物が中心)。いずれにしても、貨車の通過料はこの会社にとっても大きな収入源であろう。

@やってきました

 16時38分に上磯を出発して、しばらくすると左手に路盤が分かれて行った。「単線の江差線(道南いさりび鉄道)なのに?」と不思議に思ってシャッターを切ったが、すぐ後にあった車内アナウンスでその理由を知ることができた。

@なぜか分岐

 観光列車が乗り入れて行った区間は、大量輸送を前提にJR時代の1990年に敷設されたものであり、通常の旅客列車は通らない部分ということである。列車はその路盤を通り、トンネルを抜け、矢不来(やふらい)信号所に停車した。この列車がここを通る理由は、定期列車(上下各1本ずつ)を先に通すためである(よって、ここで19分も停車する)。
 しばらく待っていると、木古内方面に行く定期列車がやってきた。

@海側席の特権(撮影しやすい)

 矢不来信号所を出発してしばらくすると、茂辺地に到着した(理由は、やはり貨物列車の通過を待つため)。5分停車するため、駅前まで出てみた。
 17時15分、同駅を出発。あれこれ観光アナウンスが続いているが、見所や駅舎など、基本的にすべて進行方向の左側(つまり海側)にある(右側にあったのは道南いさりび鉄道の本社くらい)。これなら、1,000円差も納得である。

@特権その2

 17時41分、終着駅である木古内に到着した。まだ新幹線が開通する前、JR江差線が江差まで走っていた頃や、駅近くの食堂「急行」の焼きそばなどを思い出すが、いずれももう昔話(再現不可)である。

@巨大な新幹線駅舎を背景に

 ここで30分以上のお買い物タイム(道の駅)がある。駅前にある道の駅へ行ってスタンプを押したりしてから、肝心のアルコールはドラッグストアで入手し(こちらの方が安いので)、車内へ戻っていった。
 席にセットされていたのは、パスタと冷製スープ、塩パンである。

@ディナーその1

 18時22分の出発を待たず、それらで一献の開始である。なお、これらメニューは事前に調べてあり、「ツマミ的なものが欲しいな」と思っていたことから、函館市内散策中にザンギ(から揚げ)を入手済である。木古内を定刻に出発。
 それにしても、他の乗客の食べるのが早いのなんの。出発後5分後には、もう食べ終わっている人ばかりである。「酒を呑みつつ、ちびちび」は私くらいであるが、我関せずでちびちびやり続けた。

@貨車を再利用した釜谷駅

 ツマミ不足を心配していたが、パスタも意外にベーコンがゴロゴロと入っており、ツマミ代わりになった。冷製スープも口直しに丁度良い。
 18時59分に茂辺地に到着し、ここでお待ちかねのバーベキューである。跨線橋を渡って駅舎のあるホームへ行き、最終仕上げ中の海鮮類とご対面である。

@待っていました

 ホッキ、ツブ、ホタテを頑丈な入れ物に配膳してもらい、ご飯類(おにぎりといなり)と一緒に袋に入れてもらい、貝汁がこぼれないように注意して自席まで運んで行った。本格的なツマミが追加となり、一献の継続である。

@ディナーその2(動き出す前から頂く)

 貝をかじりつつ、ビールや焼酎を続ける。
 19時19分、茂辺地を出発した。土曜日ということで海上の漁火は少ないが、きれいな夜景も広がっている(さすがに、夜景はうまく撮影ができず)。
 食後にはぶどうとペットボトルのお茶が配膳され、食べ物尽くしの観光列車は19時47分に函館に到着して終了となった。

@車内にいた「ずーしーほっきー」(北斗市のゆるキャラ)

 千鳥足で安ホテルに戻り、就寝。

■2020.9.6
 さて、今日はこの「大人鐡」シリーズのサブテーマである「大人グルメ」を頂くことにしている。北海道ということで、海鮮丼(特に「うに丼」)である。
 食前の運動も兼ねて、早朝に立待岬まで片道1時間弱の散策である。

@曇り

 うに丼は、朝市付近の店であれば2千円台であるが、せっかくであるのでミョウバンを使用していない生うにを使用している店に行くことにしている。
 その店へ行き、早速注文。シンプルなうに丼ではなく、味の変化を求めて「うに・いくら丼」にしたが、それでも4,000円超の価格である。
 しばらくして、それが配膳された。生うにということもあり、これが美味しくないわけがない。

@超豪華な朝食

 美味しく頂いて、この時点で朝の8時25分。いつもなら「では大沼公園にでも」となるが、今日は10時の便で戻ることにしている(午後便にすると、ツアー料金がぼんと高くなるため)。
 ということで、8時38分の路線バス(空港行)に乗り込んだ。これで、恐らく最初で最後の「北海道の観光列車による大人鐡」は終了である。

@心のどこかで、JR北海道の新企画に期待

 

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