個人的支援・大井川鉄道

■はじめに
 ここしばらくは、大人鐡(食事付き観光列車に乗る旅)などのシリーズものばかりであり、普通の鉄道旅行をしていない気がする。せっかく旅行支援があるし、暖かくなってきたので、どこかに行こうと計画した。そこで、大井川鉄道を思い出した。
 アプト式鉄道やSLの運行だけでなく、各種私鉄車両の「お下がり」を使用していることなどで有名な鉄道会社であり、私も数回乗車しているが(SLにも乗車済み)、昨年9月の台風15号の影響により大井川本線が運休となり、12月に金谷から家山までの区間で運転を再開したものの、今日現在でも家山から千頭までが代行バスとなっている。SLの運転も再開となったが、運行区間は新金谷から家山までである。
 静岡県に公的支援を要請したというニュースもあるが、ここはもう、「個人的支援」として再訪である。
 せっかくであるから、井川線にも乗ることにしている。過去の訪問では、井川では折り返すだけであったため、今回は4時間以上時間を取って周辺にある廃線跡や観光スポットを巡ることにしている。
 宿泊は、寸又峡温泉にある温泉宿。2食付で13,750円であるが、旅行支援で2,750円引かれて11,000円(そしてクーポンが1,000円分付く)。ということで、過去の訪問では民宿等での宿泊であったが、今回は少し贅沢である(私的には)。

@長島ダム駅にて

■2023.3.18
 最寄駅を6時頃に出る列車に乗り、新橋からJRに乗り換え、小田原と熱海と沼津と興津で更に乗り換えて、10時52分に金谷に到着した。ここで、大井川鉄道に乗り換えである。
 フリー切符やSL乗車券(ネット予約済み)は金谷駅窓口でも買えるが、そこそこの行列である。ということで、「乗車駅証明」の紙を受け取ってすぐに出発する列車に乗ってしまい、新金谷駅近くにあるプラザロコで買うことにした。
 ホームに佇んでいたのは、旧南海のズームカー(青ガエルもどき)である。

@個人的に当たり車両

 10時57分に金谷を出発し、11時02分に新金谷に到着した。駅前にあるプラザロコへ行って、切符の購入である。「ゆるキャン」とのコラボ中ということであり、切符も特別仕様であるし、それ以外にも切符ホルダーやポスターなどあれこれと付属品が付いてきた。なお、黄色い紐は、家山からの接続バス予約済みを示すものである。

@一式

 さて、本来は11時半くらいに新金谷に来る予定であったが、上述の通り手続きの場所を変えたため、しばし時間がある。売店では駅弁が数種類売っているので、支援の一環でそれを買うことにした。
 大井川鉄道の駅弁と言えば「大井川ふるさと弁当」であるが、これは前回のSL乗車時に購入済みである。今回は、やはり「ゆるキャン」とのコラボで特別に「トマすき弁当」が限定販売されていたので、それを買うことにした。

@葉っぱの下に肉があります

 本来ならSLの車内で頂くのが筋であるが、不通区間があり乗車時間が30分にも満たないため、プラザロコの待合室(椅子がたくさんある)で頂くことにした。同じような考えの家族連れも多く(子どもなどは食べるのに時間が掛かるため)、たくさんの人が弁当を広げていた。
 食後は、以前も見たことがあるが、建屋内にある車両等の見学である。

@色々あり

 あれこれ見学しているうちに、SLが入線する様子を見るのをうっかり逃してしまった。もうすでに入線した後であるが、駅のホームへと移動した。今日のヘッドマークは「さくら」である。

@SL

 今日は客車が7両も連結されている。私の座席は1号車の1番A席であり、SLからは一番遠くなってしまうが、個人的にSLは「乗るもの」ではなくて「見るもの」であると思っているので、問題はない。
 自分が乗る最後尾まで行ってみると、EL(電気機関車)が補機として連結されていた。やはり、小さいSLだけで7両を牽引するのは厳しいのであろう。

@補機

 できれば塗装が茶色の超絶古い客車(木製率が高い)が良かったが、今日の車両はオレンジ色のものである(ただし、この車両にしても昭和27〜29年製とのことであり、結構古い)。
 定刻より2分遅れた11時54分、新金谷を出発した。車両が古くて連結部分のクッションが良くないため、かなりの衝撃であった(特に最後尾の1号車はその程度が酷い)。久々の旧型客車であり、個人的には嬉しい衝撃である。

@車内販売もあり

 しばらく走行すると、右手に大井川が見えてきた。SLから一番遠い1号車の一番後ろの席であるが、その利点は「窓を開け放題」というところである。今日は雨がひどく、こんな日に窓を全開にすると「寒い」「雨が入ってくる」ため後ろに迷惑がかかるが、それを全く気にしなくていい位置である。

@カーブで撮影を試みる

 SLの乗車時間はあっという間に過ぎ、12時21分に家山に到着して終了である。
 家山からは代行バスに乗り(ほぼ満席)、12時35分に出発。13時15分に千頭に到着した。
 さて、今日は井川線の途中にある長島ダム駅まで移動し、そこからアプトいちしろ駅まで歩くことにしている。というのも、旧廃線跡を歩くことができるためである。
 井川線の乗り場に向かうとすでにトロッコ列車が入線していたが、こちらもヘッドマークは「さくら」であった。

@「さくら」再び

 最前部の座席が空いていたので、そこに陣取った。13時30分に千頭を出発。
 今日は残念な雨模様であるが、右側に広がる景色(川や橋など)は、やはり素晴らしいものであった。
 アプトいちしろで、後ろ側にアプト式専用の電気機関車が連結される(最後尾であるし、雨も降っているので、連結作業を見に行くのは取り止め)。同駅からは90パーミルの急坂を上り、14時21分に長島ダムに到着した。下車して最後尾に行き、切り離し作業の見学である。

@これまた「さくら」

 ここからは、上述した通りの廃線跡巡りである。そもそも井川線にアプト式鉄道ができた経緯は、長島ダム建設→井川線の一部が水没→迂回ルート(急勾配)の一部分をアプト式で建設、であるが、旧線のすべてが水没したわけではなく、当然のことではあるが、ダムの下流ではまだ残っているのである。
 まずは、ダムの上部を経由して散策の開始である。

@なかなかの絶景

 満開の梅を愛でたり、ダム関係の展示館を見たりして、下の方まで降りて行くと旧線のトンネルとの遭遇である。トンネルは2つあるが、これらが「ミステリートンネル」として整備されている。

@トンネル入口

 トンネルの中はかなり暗いが、所々で来訪者を驚かせるための仕掛け(人形など)があり、それらが出す明かりだけが拠り所である。
 最初のトンネルを抜けるとキャンプ場があり、そこを過ぎると2つ目のトンネルである。こちらはかなり真っ暗であり、スマホの明かりで壁を探しながら、手探り状態で進むこととなる。数十メートルごとに仕掛けがあるが、「早くそれが来ないかな」と期待するくらいである。

@明るさを求めて

 2つ目のトンネルを抜けると、朽ち果てた「川根市代」の駅名標があり、その隣がアプトいちしろ駅である。駅舎内にはトンネル散策用の懐中電灯があるらしいが、コロナの影響で貸し出し中止とのことであった。
 15時48分発の列車で千頭に戻り、16時40分発のバスで寸又峡温泉へ。ホテルに投宿し、トロっとした温泉に浸かってから、夕食処では鹿肉やアマゴやニジマスなどを美味しく頂いた。

■2023.3.19
 早朝、虹の吊橋まで散策。朝食を頂いてから、8時半過ぎにチェックアウトをした。今日はまず、奥泉駅までバスでの移動である。

@バス乗り場近くに森林鉄道機関車等あり

 8時47分に出発し、山道を走り続けて、9時08分に奥泉駅に到着した。しばし集落を散策したり駅にあった展示物を見たりして時間調整をしてから、9時49分発の井川行に乗り込んだ。今日はかなり車内が混んでいたため、最後尾の車両に陣取った。
 長島ダムまでは昨日と同じ風景であるが、今日は晴れであるのが大きな違いである。アプトいちしろ到着後は、アプト式機関車の連結を見に行くことにした。

@2日連続でアプト式

 長島ダムでアプト式機関車を切り離し、ディーゼル機関車だけとなって出発した。
 しばらくすると、奥大井湖上である。ここで多数の乗客が下車したため、車内の混雑具合はかなり改善した(私も随分前にこの駅で降りて散策をしたことがあるが、その際は数人しか下車しなかった。観光要素として、認知度が上がってきたようである)。

@奥大井湖上到着直前(左手に廃線跡が見える)

 接岨峡温泉などでさらに乗客が減り、各車両とも数人だけの状態になって、11時06分に終着の井川に到着した。なお、ここまでほとんどは川根本町内を走っていたが、井川線の先っぽだけは、市町村統合の関係でなぜか静岡市である。

@到着

 ここには過去2回くらい来たことがあるが、駅周辺のダム等を散策した程度である。今日はたっぷり時間があるので、まずは廃線跡ハイキングである。
 ダム関係の無料の展示館を見てから、廃線跡へと向かった。昨日の廃線跡(ミステリートンネル)を歩いていたのは私だけであったが、今日は数組の同業者がいる。

@ここを歩く

 以前は貨物線として井川駅から鉄道が通じていたが(大昔は営業列車もあった模様)、平成の初期に運用が終わっており、10年くらい前に遊歩道として整備されたものである。
 レールはほとんどの区間で残っており、堂平駅跡まで続いていた。途中にトンネルもあったが、今日のトンネルは短かったため、スマホの明かりは不要であった。

@短小トンネル

 堂平駅跡を過ぎてからは、夢の吊橋(寸又峡にあるのとは違う)に向かった。先ほど「同業者がいる」と書いたが、私以外の人は吊橋を渡った時点で引き返していた(井川駅12時30分発に乗るためであろう)。
 その後は井川大仏まで急な階段を経由して向かったが、観光客は私だけになってしまった。

@誰もいない

 その後は、井川ビジターセンターへ行ったり、井川の古い町並みを歩いたり、地場産品加工販売所に行ったりして、県道中心に歩いて井川駅まで戻って来た(私以外の観光客らしき人は、皆無であった)。アップダウンを含めて3時間強も歩いたためかなり疲れたが、15時30分発までまだ1時間以上もあるため、待合室で休憩をしつつ、この旅行記の作成である。

@静岡市ですから

 ボロ駅舎であるが、待合室の中央に石油ストーブが置いてあるのがありがたい。それに当たりながら、PCで作業を続けた。
 15時30分発の列車は、今日の同駅発2本目でありながら、最終列車でもある。井川線の車両は原則暖房なしであるが、井川側の先頭(千頭行の最後尾)には確実に暖房設備があるはずなので、その車両に乗り込んだ。

@これまでとは違うデザインの「さくら」

 定刻に井川を出発。出発時は寒かったが、しばらくして足元から暖かい空気が流れてきた。
 長時間の徒歩による疲労もあって所々でうつらうつらとし、千頭到着後は代行バスに乗り換えて、家山には18時20分に到着した。ここからは大井川本線に乗ることになる。
 今回の旅程で最後となる大井川鉄道であるが、残念ながら旧東急の車両であった。車両自体は古くないのだが、いかんせんロングシートなのである。

@無念

 暗くなった中を金谷まで走行し、そこでJRに乗り換え。静岡には19時38分に到着した。
 今からでも新幹線で帰ることも可能であるが、今回は月曜に休みを取って静岡に泊まることにしている。通常であれば宿泊=経費増であるが、いかんせん4,000円の安ホテルが「じゃらん」のクーポンを使用して3,000円(旅行支援が使える最低限度額)となり、そして旅行支援で2,400円に。それでいて2,000円分のクーポンがもらえるのであるから、タダみたいなものである。

■2023.3.20
 今日は、青春18きっぷを使って帰るだけである。直帰では面白くないため、富士宮に行って神社や富士山関係施設を見て、甲府経由で戻ることにしている。大井川鉄道がメインのこの旅行記で、これらについて詳述するのは「蛇足」であろう。

@富士山本宮にて

 

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