将軍様の

■はじめに
 近くて遠い国、そしてこのご時世において世襲により社会主義国家を継続している国、北朝鮮である。今ここでその詳細についてここで紹介する必要はないと思うが、旅行者としては、最も足の踏み入れ難い国のうちの1つである。
 日本政府は北朝鮮への入国を避けるよう国民に勧告しているが、いくつかの方法はある。最も手ごろなのは、在日などを対象にツアーを組んでいる日本の旅行社であり、通訳も日朝であるため楽ではあるが、値段(高い)やその内容(訪問先が定番のみ)からして、あまり惹かれる内容ではない。
 他の選択肢としては中国の旅行社であるが、これは言語的に無理である(私の中国語能力は買い物程度)。最後の選択肢としては、英国の旅行社(事務所は中国)である。英語さえできれば、これが最良の選択肢となる。
 ただし、旅行社の内容は様々である。「安かろう悪かろう」ではないであろうが、格安を謳っている某社では、米国人の参加者が旅行中に拘束され、その後しばらくして脳障害を負った状態で帰国して間もなく死亡した記事は記憶に新しいところである。
 ということで、別の旅行社(比較的歴史のある会社)のサイトを定期的に観察してきたが、ツアーの内容が「平壌に数日滞在して、正直見たくもない施設や演技を見るもの」ばかりであり、とても行きたいとは思えないものばかりであった。ところが今年の春、なんと平壌から夜行列車に乗って東端の都市(羅先(ラソン)特別市にある羅津(ラジン))まで行き、ロシアと中国との国境なども訪問、最終日には中国の東端にある延吉(朝鮮族自治州)に出国するという、その名も「Train Tour」なるものが発表されたではないか(ネットで検索すると、過去にも数は少ないが似たようなツアーが実施されていたようである)。諸般の理由で「行くべきではない国」であることは重々承知しているが、このようなツアーがあったのでは、どうしても逃したくない。
 ということで、すぐに申し込んでしまった。その2か月後くらい(出発の2か月以上前)に満員になってしまったので、主な参加者である欧州の人にも興味がある内容なのであろう。
 なお今回の旅では上述した通り東岸の町まで寝台列車で向かうが、過去の記事などを検索すると、2015年の秋に貸切列車でのツアーが実施されたのが最初のようである。2017年秋には「ロシアへ鉄道で抜けることが旅行者に許されるようだ」という英語ニュースがあり、実際に2018年の2月末には、前半は今回の旅程とほぼ同じで、そして中国ではなくてロシアに出国するという旅行が、私が参加する旅行社により実施されている。いずれにしても、最近になって許されるようになってきたレアなコースである。

 余談ではあるが、出発の約1か月前、日本人の旅行者「自称映像クリエイター」が北朝鮮で拘束されるという事件があった。私個人としては「良くないタイミングで面倒なことをしてくれた」という感じであったが、私が出発する前にその人は解放された。この事件に関する英文記事をあれこれ探したところ、私が参加する旅行社の代表が「我が社には関係ない」と言っているものを発見したので、幸いにもその日本人が参加したツアーは別会社のようであった。事前に旅行社から注意書きを羅列したパンフレットをもらっているが、要するに「きちんと言われたことを守る・禁止されたことをしない」ようにすれば、問題ないということである(おそらくその自称映像クリエイターは、こっそり何かを撮影したのであろう)。勧告を無視してシリアなどに行って人質に取られるのは論外であるが、しかるべき規範さえ守れば、なんとか(自己責任の範疇で)訪問することが可能な国でもある。

 出発前にさらに追加された問題が、「8月11日から9月5日まで外国人観光客受入を中止する」という発表であった。理由は不明であったが、帰国後に調べた情報によると、9月9日の軍事パレードと、同19日の南北首脳会談の準備であったようである。幸い、私の旅程(9月10日から17日まで)は影響されることがなかった。

【旅程】(あくまで書類上)
1日目:北京から丹東行の寝台列車に乗車(車中泊)。
2日目:丹東着。平壌行に乗り、夕方17〜18時に到着予定(平壌泊)。
3日目:平壌1日ツアー(地下鉄乗車含む)(平壌泊)。
4日目:朝、羅津方面行の寝台列車に乗車(車中泊)。
5日目:午後に羅津到着(羅津泊)。
6日目:羅津観光(羅津泊)。
7日目:豆満江(トマンガン)方面観光(当初旅程ではこの日の夕方に中国の延吉に出国する予定であったが、出国の都合(日曜日はイミグレが閉まっている)ということで、翌日に延期に。日本出発の前にわかっていたため、フライトは変更済みである)(羅津泊)。
8日目:午前中に延吉へ脱北(?)。

*北朝鮮への渡航は原則禁止されております。渡航に関するすべては自己責任となります。この旅行記は、渡航を奨励するものではありません。


@平壌にて

前編(2018.9.10〜9.12)

後編(2018.9.13〜9.17)

 

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