臨機応変・九州満喫の旅

■はじめに
 今回の旅は、“【非鐡の旅M】フェリー「みしま」で行く黒島”となる予定であった。以下は、それを前提で書き始めていたものである。
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 鹿児島県三島村には以前訪問したことがあり、しかもツアーのセスナ機で薩摩硫黄島へ行くという特異なものであった(拙文「【非鐡の旅B】セスナで行く薩摩硫黄島」参照)。その際に、次は航路で来てみたいと思っていた。
 フェリーの場合、読んで字のごとく竹島・硫黄島・黒島という3つの島(4つの港)に寄港するが、せっかくなので一番遠い黒島まで行ってみることにした。
 前々から行こうと思っていたのだが、フェリーの鹿児島発(土曜日)が朝早いため、どうしても金曜日に移動する必要があり、これまで先延ばしになってしまった(やはり、土日だけで消化できる旅が優先になってしまう)。今回は金曜午後に会社を早退し、土曜朝の船に乗れるよう旅程を調整。復路は日曜日中に東京まで戻ることができるが、久々の鹿児島なのであと1泊して、月曜の午前は会社を遅刻することにした。
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 しかし、雨模様であった土曜日(すでに鹿児島市内にいる)の朝に念のためフェリー会社に電話をしたところ、まさかの欠航であった。そんなに大きい船ではないので、ある程度の悪天候で欠航してしまうようである。
 さてこういう場合、如何に埋め合わせるかが、旅慣れている者としての腕の見せ所である。以前にも種子島への船が欠航になり、肥薩おれんじ鉄道沿線への温泉旅行を急遽アレンジしたことがある。
 まずは使用する切符の検討である。青春18きっぷが使用できない期間であるため、あれこれ検討し、「九州満喫きっぷ」(九州内のJR及び各私鉄の普通列車が3日間乗り放題)を使用することにした(土日に使用し、残り1日はネットで売り払う)。
 続いて、訪問先である。鹿児島近辺で最近ご無沙汰・有名な鉄道スポットは肥薩線であるが、雨の日では日本三大車窓が拝めないため、日曜に晴れるという予報を信じて肥薩線の人吉−吉松間を日曜午後に訪問することとし、そこから逆算して宿泊地を八代に決め、ネットで安ホテルを手配した。
 土曜日についてであるが、あれこれ検索している時点ですでに朝8時頃であり、あまり選択肢もない。ということで、指宿枕崎線の途中まで往復し、後は肥薩おれんじ鉄道の途中で下車して鐡ネタを拾ったりして八代に向かうことにした。

@真幸駅にて

■2018.5.25
 13時50分の便で羽田から鹿児島へ。鹿児島空港から市内への移動は直通バスがあるが、それでは芸がなさすぎる。その他の選択肢は数多とあるが、国内出張が多い部署にいた時代(10年ほど前)に何度も訪れており、その際にほとんど経験済みである。
 新たな手段ではないが、今回は国分方面に行く路線バス乗り西光寺で下車し、日当山温泉に浸かってから市内に行くことにした。
 飛行機が遅れて焦ったが、走ってバス乗り場へ向かい、出発の3秒前に路線バスに乗ることができた(なお、これを乗り過ごした場合は、第二案として別の路線バスでJR嘉例川駅を訪問するプランもあった)。
 西光寺で下車し、温泉に向かって歩く。以前と変わらない鄙び具合であるが、なんだか新しい施設があった。

@見慣れないものを発見

 今年はNHKの大河ドラマ「西郷どん」の影響もあり、この建屋も去年の暮れにオープンした施設のようである。
 その後は、温泉へと向かった。「温泉センター」と「西郷どん湯」、いずれも250円でどちらもすばらしい鄙び具合であるが、とりあえず後者に入ってみた。ここに限らず、鹿児島にはこの手の「鄙び切った」温泉がたくさんあるのが嬉しい。

@いかにもな雰囲気

 その後は近場のスーパーで「鶏の刺身」や「さつま揚げ」など、鹿児島らしい食材を買い、JR日向山駅から鹿児島中央まで移動して、安ホテルに投宿した。

■2018.5.26
 出発前は曇り予定であったが、昨日の夕方に予報が変わり、かなり強い雨となっている。ただし黒島到着時は曇りで、明日は晴れ予報である。今日はどうせ船に乗っているだけであるから、大きな問題はないだろう…と思って念のためフェリー会社に電話した結果、上記の「はじめに」に書いた通りの欠航であった。
 慌ただしくネット検索・予約等を済ませ、鹿児島中央駅へ向かった。まずは、9時17分発の山川行である。

@新しいがロングシートなので、できればボロい方に乗りたかった

 最初は地味な路線であるが、五位野を過ぎると左手に大きく海が広がる(水滴が窓にあるため、写真撮影は断念)。
 10時33分に指宿に到着し、ここで下車した(次の山川まで行って駅近くにある店で久々にカツオのたたきを食べることも検討したが、戻り列車の時刻の関係で断念)。雨が強く降っているため、駅前にあるシャッター商店街を散策しただけで駅に戻った。

@ここも西郷どんでアピール中

 11時27分の列車で鹿児島中央に戻り(帰りもロングシート…)、中途半端な乗り換え時間は駅地下のスーパーでの食材探しに充て、13時26分発の川内行に乗り込んだ。
 川内に向かっている途中には、午前中の雨が信じられないような青空になっていった。
 14時15分に川内に到着し、8分の乗り換え時間で肥薩おれんじ鉄道へ。

@動物園カラー

 外装および内装は「平川動物園」一色である。宣伝で車両のカラーリング等をするのはよくあることであるが、この動物園は肥薩おれんじ鉄道沿線にあるのではなく、先ほど乗っていた指宿枕崎線沿線(五位野駅付近)である。少しく、意外な感じがした。
 それより気になるのが、反対側のホームに停まっている「おれんじ食堂」である。そのうち、貧乏旅行ばかりでなくこういう列車に乗るようなゆったりした旅行をしたいものである。

@そのうち

 川内を定刻に出発。その後は、所々で海が大きく広がる所があった。新幹線開通によって半ば見捨てられたような沿線の都市であるし、観光産業への影響が心配されるところであるが、景観という意味ではこちらの圧勝である。

@車内からの景色です

 意外と頻繁に対抗列車と行違うが、中には「団体」という行先表示もあった。色々と、企業努力をされているようである。
 14時59分に阿久根に到着し、途中下車した。この駅前には「寝台特急なは」の車両を再利用した宿泊施設があり、NPO法人が運営していたのだが、その後営業を停止したということを耳にしていたためである(当該施設訪問については、拙文「「動かない列車」に乗る旅」をご参照ください)。
 車両自体は、かなり色褪せていたがまだ駅前にあった。なんとか再利用できないものかと思う。

@このまま朽ちていくのはもったいない

 次の列車まで1時間ほどあるため、本町方面や漁港などを散策してから駅に戻ってきた。それにしても、以前の訪問時と比べて駅舎が大きく変わったことときたら。駅前ロータリーなども含めて全体的に新しくなっており、なんだか別の町に来たかのようである。

@小洒落ています

 15時54分の列車に乗り込み、再度ぼんやりと景色を見続けた。阿久根までと同様に、時折いきなり海が左手に広がる。天気も申し分なく、この旅程にしてよかったと思った。
 肥薩おれんじ鉄道は原則単線であるが、まれに行き違いのできる複線施設がある。すれ違うのは1〜2両のディーゼルカーばかりであるが、国鉄時代は長大な特急列車がすれ違っていたものであり、今となっては場違いなくらい立派なものである。

@ぽつり

 八代着は17時43分。市街地にある安ホテルまでは2キロほどあり、歩ける距離ではあるが、17時48分にバスがやってきたのでそれで移動した。スーパーで半額シール付きの安食材を揃えて、投宿。

■2018.5.27
 6時前にチェックアウトし、少し遠回りをして城址などを経由してから駅へ向かった。
 さて、今日はまず6時57分発の肥薩線人吉行からである。やってきたのは、「いさぶろう・しんぺい」で使用されている車両であった。

@今日はこれから

 定刻に出発。鹿児島本線の路盤から離れると、しばらくは右手に球磨川が寄り添う。いくつかの駅を過ぎて橋を渡ると、その後はずっと左手に寄り添っていく。今日も快晴であり、眺めは素晴らしい。
 三江線なき今となっては、これだけ滔々とした川が寄り添う区間は、肥薩線のこの辺りが随一であろう(個人的感想)。

@水量多し

 8時11分に人吉に到着し、くま川鉄道の乗り場へと移動した。久々の乗車であるが、「九州満喫きっぷ」で乗ることが出来るから、というのもこれに乗ることにした理由の一つである。というのも、肥薩線では水量豊かな球磨川が沿い続けるが、その名が冠にあるくま川鉄道はほとんど川に沿うことはなく、地味な沿線風景なのである。
 入線してきた車両は、洒落た外装であった。

@こんな感じ

 車内に入ると、こちらも洒落た内装である(ただし、乗車しているのは休日の部活に行くような学生ばかりであるが)。
 その優雅な席に座ってもいいのだが、最前部にいかにも「お子様用」の小さい席があり、車内に家族連れもいなさそうであったので、そこに座ることにした。

@大人にはしんどい

 8時22分に出発し、地味な沿線風景の中を走り続けていった。
 土曜の朝に大急ぎで旅程を考えた際には、ただ単に終着駅である湯前まで往復することにしていたが、ふと思い立って途中の多良木で下車することにした。というのも、この駅の近くにも寝台車を再利用した宿泊施設(以前に宿泊済み)があるからである。
 ということで、ふらりと多良木に降り立った。こちらの寝台車はまだ営業中であったが、そろそろ再塗装が必要な感じである。

@色褪せてきました

 寝台車の確認はすぐに終わってしまい、次の湯前行まで2時間弱もある。とりあえず駅横にある物産館へ行き、地元の人が作ったおにぎり1つと、大きなニンニクを3個で210円(スーパーに行く人ならわかるであろうが、国産でこの値段はまずない)で買ったりした。
 その店の奥に行くと、なんと多良木産の鹿肉ローストが売っているではないか。地物好き・獣肉好きとしては外せないが、こういうのは「ご飯のお供」にはならない。ということで、近くのコンビニで発泡酒を買い、朝から一杯やることにした。

@地物その1

 10時59分発の列車で湯前へ。折り返しまで18分しか時間がないが、取り急ぎ駅の隣りにある物産館へ行ってみた。次なる地物であるが、なんとイチゴが108円で売っているではないか。確かに粒は小さいが、100円+税は論外である。普段はフルーツなど買わないが、つい買ってしまった(ついでに野菜も)。

@地物その2

 11時26分の列車で、人吉に戻った。ちょうど「SL人吉」が入線しているところであった。
 さて、13時22分発の肥薩線まで、1時間強時間がある。急遽思い立った旅程であるため人吉の下調べはしていないが、駅にあった地図をみると、なんだか「鉄道ミュージアム」なるものができているようである(前回訪問時はなかった)。ということでそこに行ってみたが、無料というのが嬉しい。

@ミュージアムから撮影

 駅へ戻り、「いさぶろう・しんぺい」の入線を待つ。この列車はほとんど指定席であるが、車両の端に少しだけ自由席がある。指定席代金をケチるわけではないが、自由に左右を移動した方が気楽であるので、そこを狙っている(無事確保)。
 そのうち隣りのホームには「かわせみ・やませみ」も入線してきたりして、なんだか賑やかになった。

@観光列車ばかり

 13時22分に出発し、くま川鉄道から分かれていくと、すぐにも山岳風景である。
 肥薩線のこの区間こそ、今回の旅の中心でもあるが、最近は観光地としても有名になり詳細な旅行記を書かれている人も多いことから、簡単に紹介するだけにしておきたい。
 まずは、大畑駅付近である。

@ループ+スイッチバック

 大畑に限らず、次の矢岳や真幸でも、物産販売が行われていた。地元の人が盛り上げようとしている感じが、ひしひしと伝わって来る。
 以前、普通列車だけが走っていた頃は、矢岳にあるSLなどもわざわざ途中下車しないと見ることができなかった。観光列車化したことによって各駅に数分停まってくれるようになったので、そこはありがたいことである。
 さて、「簡単に」と言いながらも、三大車窓くらいは紹介しなければならないだろう。

@天気良し

 14時48分に、吉松に到着した。
 吉松では乗り継ぎが悪く、来る度に待たされている記憶がある。よって、駅近くにある小さな鉄道展示館もSLも、すでに確認済みである。しかも今日は1時間50分も待ち時間があり、これは恐らく過去最大である。
 川を越えた先にあるスーパーに行ったりしたが、それでも時間が大量にあるので、駅前にある日帰り温泉に入浴した。期待はしていなかったが、なかなか良いお湯であった。
 時間潰しも終わり、16時32分発の隼人行に乗り込んだ。実は、金曜の夕方に日当山から乗車したのは、この列車なのである。まさか、2日後に同じ列車に乗るとは、つゆにも予想できなかった。

@再会?

 駅弁でも有名になってきた嘉例川などに停まり、件の日当山に到着した。ここから先は、2日前とまったく同じ乗り継ぎである。
 しかし2日前と全く違う点は、天気である。金曜日は曇っていたせいで桜島を拝めなかったが、今日は写真撮り放題である。

@こうでないと

 鹿児島で降り、ホテルまでの距離は近いがあえて市電に乗って移動をした(九州満喫きっぷで市電も乗れるため)。激安ホテルに投宿し、明日は鹿児島から出勤である。

 

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