優等列車で九州一周の旅

■はじめに
 私事ではあるが、JRや第三セクター(つまり旧国鉄)の路線についてはずいぶん前に完乗しており、九州内の鉄道も当然そうである。しかし、思い出は「青春18きっぷでひたすら乗り続ける」というものが多く、特急の記憶はかなり薄い。というのも、特急が乗り放題のフリー切符というのがJR九州には意外とないため、どうしてもそうなってしまうのである(逆に、特急乗り放題のフリー切符があるJR北海道やJR四国は、特急の思い出ばかりである)。
 ところが、緊急事態宣言の終了後、各社が旅行客を呼び込むための新たな企画切符を出している中で、JR九州も「みんなの九州きっぷ」なるものを発売し始めた。利用は土日限定で、全九州内の特急が2日間乗り放題でたったの1万円、指定席も6回まで発券できるという。これは、利用しない手はない。
 切符自体はネットで買えるが(ネット限定切符である)、指定席はJR九州の窓口か券売機でないと手に入れられない。ということで、8月前半に「大人鐡」で北九州を訪問した際に、指定券を入手しておいた。
 ただ単に特急と新幹線で九州を1周するだけであるが、アクセントとして、今年の8月8日に4年4か月ぶりに運転を再開した豊肥本線にも乗ってくることにした。

【旅程】
1日目:博多→大分(特急ソニック)・大分→宮崎(特急にちりん)・宮崎→鹿児島中央(特急きりしま)
2日目:鹿児島中央→博多(新幹線さくら)・博多→熊本(新幹線さくら)・熊本→大分(特急あそぼーい)・大分→博多(特急ソニック)


@阿蘇駅にて

■2020.8.29
 博多へのアクセスは、特典航空券を利用した福岡空港である。地下鉄で博多へ移動して、指定席を押さえている特急「ソニック13号」に乗り込んだ。

@まずはこれから

 9時57分に博多を出発。プライベート以外にも仕事でも数えきれないくらい乗っている博多−小倉間であるが、特急に乗るのはもしかしたら初めてかもしれない。
 今回の旅行は「ただ乗っている」だけであるため、車内では適当に食べたり呑んだりすればいいだけである。そこで、博多駅で駅弁でも買おうと思ったが、「これいいな」と思うとたいていは1,300円などである。吝嗇癖が現れてきて、駅ビルの奥にスーパーがあったのを思い出して、高菜おにぎりやから揚げなどで、税込み700円以下の「ちょい呑みセット」を買い揃えてしまった。

@こんな感じ

 折尾を過ぎ、黒崎辺りで酒切れとなって「もう1本くらい」という気持ちになるが、残念ながら不可能である。昨今の流れにより、車内販売が廃止されているためである。
 アルコールも効いて後半は少しウトウトと。指定券は大分まで取ってあるが、時間に余裕があるため別府で下車した。11時50分着。
 しかし、とても街歩きができるような状態ではないほどの酷暑である。仕方なく、駅ナカの商店などを散策した。

@熊八さん(銅像)も暑そう

 本屋で時間を潰してから、12時25分発のソニックで大分に向かった。このようにして、ふらっと特急に乗車できるのも、フリー切符の醍醐味である。
 やってきたのは「白いかもめ」の車両であった。

@先程とは違う車両で(白いソニック)

 左手に広がる海を見ていると、すぐに大分に到着した。ホームに降りただけで厭になるくらいの酷暑である。ここでも若干の時間があったが、外に出る気にはなれず、駅構内のスーパーで時間を潰した。

@大分に来た証拠

 続いて乗るのは、13時04分発の「にちりん13号」である。車両は、思わず「つばめ」と言いたくなる車両(九州新幹線開通以前は、博多から西鹿児島(現在の鹿児島中央)までを走っていた九州を代表する特急)である。現在は「都落ち」状態で、B級特急(「かいおう」など)で運用されている。

@昔は一線級でした

 定刻に大分を出発。ここから先も「各駅停車の思い出」ばかりであり(宗太郎越えなど、部分的に特急に乗ったことがあるくらい)、特急で乗り通すのは初めてであろう。
 なお、他の区間で指定券6枚を発券してしまっているため、この区間は自由席である。コロナの影響もあり、言うまでもなくガラガラで、自由席でも全く問題はないが。
 所々で海が見えたりして、佐伯を過ぎると「宗太郎越え」である。峠が終わり、延岡から先はまた普通の景色となるが、海沿いのわりに意外と海は見えず、目立つのは昔のリニア実験線跡である。

@ソーラー施設が設置されていた

 16時16分に宮崎に到着し、5分の乗り継ぎで特急「きりしま15号」に乗り換えた。車両は先ほどまでと全く同じ787系であるが、違いは「ワンマン運転」であるという点である。

@特急すらワンマン

 日豊本線の宮崎から鹿児島中央までは、私が好きな景観が続く区間である。都城に至るまでは山深い部分も多く、後半には桜島も控えている。国鉄型の特急であった頃に特急で乗り通したことはあるが、この区間を特急で乗り通すのはかなり久々ではある。
 16時21分に宮崎を出発。上記の通り、山あり、谷あり、川あり、海ありで、最後は桜島である。

@お見事

 18時31分に終着である鹿児島中央に到着した。いつもならここで、安スーパー経由で安ホテルに行くだけであるが、今日は寄り道が必要である。というのも、この「みんなの九州きっぷ」があると、福岡・小倉・大分・鹿児島中央・長崎のアミュプラザで500円の金券がもらえるというのである(各所1回ずつ)。今回の旅では、長崎には行く予定がなく、小倉は途中下車している暇がないが、残り3つは利用可能である。
 ということで、インフォメーションに行って金券をもらってきた。

@戦利品

 お土産でも買うか、と思って各店舗を見ていたところ、地鶏の店が「半額シール祭り」になっていたため、そこで各種総菜と弁当(総額千円ちょっと)を金券+小銭で得ることに成功した。
 ということで、スーパーでは追加の鶏刺身と酒だけを買い、コロナダンピング+GoToキャンペーンで超激安になっているホテルに投宿した。

■2020.8.30
 今日も天気予報では「危険な暑さ」となっている。ただし、昨日以上に「ただ乗っているだけ」の旅程であるため、問題はない。
 まずは鹿児島中央駅へ行き、6時08分の新幹線「さくら400号」に乗り込んだ。

@今日は新幹線から

 定刻に出発。トンネルが多いのは、高速鉄道の定めである。特筆することもなく、7時44分に博多に到着した。比較的停車駅の多い列車であったが、それにしてもたったの1時間半強である(まさに、あっという間)。
 ここで、メインテーマである「九州一周」が終わったため、サブテーマである豊肥本線に乗るために熊本にとんぼ返りをすることとなる。7時58分発の「さくら405号」の指定券は取ってあるが(自由席は座席が横5列に対して指定席は横4列であるため)、しかし、指定席の座席には電源コンセントがなかったのである。ということで、あえて自由席に乗り込んだ。

@指定席の座席は豪華(問題は電源)

 定刻に出発。充電しつつスマホをいじっているうちに、8時36分に熊本に戻ってきた。
 ここで、車内でいただく食材を駅であれこれと購入。昨日はケチってしまったので、今日は豪華に攻めてみた。
 9時頃にホームに向かうと、ちょうど「あそぼーい」が入線してきたところであった。

@これで豊肥本線を乗り通す

 九州を代表するような観光列車であるが、塗装の角が剥げている部分もあり、かなり年季を感じるようになってきた。
(車内の様子(設備や座席)については、詳細に紹介しているブログ等がたくさんあるため、割愛いたします)
 車内アナウンスによると、今日は満席とのこと。ここまではずっと「ガラガラ状態」であったが、この列車はかなりの「密状態」である。

@クロちゃんが各所に

 定刻の9時08分に熊本を出発。まだ朝の9時台であるが、駅で購入した品々で一献の開始である。熊本と言えば、ということで、「ちくわサラダ」(ちくわ+ポテトサラダの揚げ物)である。飲み物も、今日は「本物のビール」にしてみた(発泡酒とか第三ではないものに)。

@知る人ぞ知るB級グルメ

 ちくわサラダをアテにしてビールを平らげ、続いては駅弁である。熊本県ということで、肥後牛を使用した弁当である。

@卵は半生状態

 肥後大津から先が、随分と長期間普通になっていた区間である。2年前に肥後大津を散策した際に、町中で雑草だらけの路盤を見かけて「この先大丈夫なのか?」と心配になったが、今月やっと再開に至った次第である。

@2年前の写真

 9時52分に立野に到着。4分ほどの停車時間があるということでホームに降りてみると、なんと向かいに入線していたのは超豪華列車の「ななつ星」ではないか。将来、私がこれに乗車することはまずないであろうが、ありがたくその光り輝く光沢の外観を拝んでおく。

@見るだけ

 同駅を出発し、スイッチバックを経由してからは、ひたすら急な路盤を上り続けて行った(列車もウンウン唸っている)。車窓としては、阿蘇山も阿蘇大橋もすべて右側であるが、日が当たってしまうため、今日はあえて左側の窓側を押さえている。

@ということで、景色の写真はこの程度で

 宮地を過ぎ、外輪山を降りる頃には左手にも景色が大きく広がっていった。平地に降りてからは快走し続け、12時17分に大分に到着した。あそぼーいは別府まで行くが、例の金券を得るためにここで降りることにしている。
 インフォメーションへ行き、無事にゲット。

@戦利品その2

 さて、何に使うかであるが、「買物券」も兼ねている鹿児島や博多と違って、大分は「食事券」である。しかも、この後は12時45分発の特急で博多に移動しなければならないため、ゆっくり食事をしている時間もない。ということで、何の地域色もない「ケンタッキーの持ち帰り」に落ち着いたのであった。
 ホームに向かい、「ソニック30号」に乗り込んだ。

@中間車両は新しい

 定刻に出発。景色は昨日の巻き戻しであるが、大分−小倉−博多がこんなに近いとは思わなかった。やはり、特急の旅である。
 14時46分に博多に到着。さて、最後の金券である。インフォメーションに行き(博多のみ、アミュプラザではなくてアミュエストに行く必要あり)、ここでも無事にゲットした。

@戦利品その3

 さて、さすがに博多だけあって、店舗の選択肢はかなり多い(しかも、お土産も購入可能である)。あれこれ悩んだが、地元のお菓子(チロリアン)が税込みでちょうど500円で売っていたので、それに決定した。
 その後は福岡空港へ移動して、戻るだけである。

 それにしても、2日間でたったの1万円(しかも各所での金券付き)は、かなりのお買い得な切符である。期間限定ではなくて、今後も定期的に発売してほしい代物である。もし今後も販売されるのであれば、久大本線や肥薩線が運転再開をする頃にこれを使って再訪したいと思う。

@やはり500系は格好良い(博多駅にて)

 

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